東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
…………………………少女達飛行中…………………………
「何となくここが怪しい気がする………」
「お、霊夢の勘は当たるからなぁ。って、さっきから睨んでいるあそこの3人はお前の知り合いか?」
「失礼ね、あそこまでおめでたそうな奴とは知り合いになりたくないわよ」
「お前がそれを言うのか?」
「お前らも、アイツの仲間?」
よく見ると、三人のうち、意識があるのは1人だけだった。残りの二人は、大量の刃物で切られたかの様な切り傷をつけていた。
「アイツって誰だ?」
「だってあんた達言ってたじゃない、異変がどうとか、春がどうとか。アイツも似たような事言ってたし、仲間なんでしょう?」
「だから、その『アイツ』って誰なんだよ」
「あんたらの仲間でしょ?銀髪で、メイド服を着た女よ」
「「アイツか………」」
大方、レミリアにでも言われたのかな?
「ほら、やっぱり仲間なんじゃない」
「いやーー、どうだろう、仲間、なのか?」
「とにかく、何しに来たのよ」
「冬が長すぎるから。お花見もしたいし、さっさと春になって貰わないとね」
「え、桜なら、あのお屋敷にいっぱいあるじゃない」
「え、どこよ?」
「ほら、あそこに結界が見えるでしょう?その中よ。わたし達はあそこで演奏をする予定だったんだけど、二人が怪我しちゃったし、中止かなぁ」
「へえ、つまりあそこに黒幕がいるってことね。情報提供感謝するわ、それじゃ」
「待ちなさい」
「なに?」
「あんたらの仲間に伝えておきなさい、必ずやり返すってね」
「あー、分かったわ、伝えておく」
そのまま結界に向かって飛んで行った。
「良し、結界ドーン!」パリン!
結界を破って侵入すると、
「くっ……!何でそのタイミングでよけられる……?」
「私、避ける時間が足りない、なんて感じた事ないもの」
銀髪の幽霊と交戦している咲夜を発見。
「あれ、咲夜じゃないか」
「あら、魔理沙じゃない。それに霊夢も。奇遇ね」
「奇遇じゃないだろ?大方、レミリアにでも命令されたんだろ」
「ええ、いつまでも冬だと、お花見が出来ないじゃない、と」
「いかにもあいつらしいわね」
ま、面倒ごとが減るなら良いんだけどね。
「で?今戦ってるそいつは誰よ?」
「さあ?次の黒幕を探していたら、この屋敷に辿りついて、いざ入ろうとしたら、この銀髪に襲われた。それだけよ」
「へえ?というか、何でその銀髪は今襲って来ないのかしら?」
「(三人組……もしかして、こいつらが幽々子様と紫様の言っていた?それなら、私は引き返して、凜さんと幽々子様を呼んできた方が…………)」
「おーい……銀髪ー」
「何かしら」
「あんたじゃない」
「(いや、今は相手の動向を窺おう。1人を相手するのなら、大丈夫な筈だ)」
「何よ?」
「あんたは今回の異変を起こした奴、知ってるの?」
「ええ、知ってるわよ?西行妖を満開にするために、うちのお嬢様が起こした異変よ」
「まーたお嬢様か。こーゆーのはお嬢様が起こす傾向でもあるのか?」
「たまたまだろ、たまたま。たまたま二件連続でお嬢様が起こしただけだぜ。なあ、咲夜」
「そうね。苦労人っぽいし、もしかしたら、同じような境遇かしら」
「まあ、苦労してることは、否定できないわね~」
「あらそう。仲良くなれるかもね?」
「そうかもしれないわね。でも、現時点では敵な訳だ。だから、私は斬って異変を完遂する」
銀髪が長刀を構える。咲夜がナイフを構える。って、どっちも銀髪か。
「咲夜、一人で十分よね?」
「あら、手伝ってくれないの?」
「あんた一人で勝てるわよね、って聞いてるのよ」
「もちろん。何でこんな銀髪に負けないといけないのかしら」
「咲夜、お前も銀髪だぜ」
「私も嘗められたものね。でも、流石に三人は無理だから、嘗めてもらった方が良いのかもね」
「貴方達の持っているなけなしの春で、西行妖もきっと満開になる。妖怪が鍛えたこの楼観剣に、斬れぬものなど、少しはある!」
「え、何そのシュールギャグ」
敵の銀髪が剣閃で、咲夜を切りつけようとする。
「それはさっきやってたでしょ?」
隙間は少ないようだが、無いわけではないので、咲夜は悠々とよけていく。まあ、能力を使用しているのだろうが。
「こっちからもね」
幻符「殺人ドール」
大量のナイフが咲夜の周囲に現れ、銀髪へと向かう。
「ふん、こんなもの!」
剣閃でナイフを落としつつ、銀髪がスペルカードを見せる。
「縮地法、って知ってるかしら?」
「聞いたことはあるわよ。たくさんの距離を、一瞬で縮めるんでしょ?」
「んー、それはまた違う縮地ね。私が言ってるのは、相手との距離を一瞬で詰める方の縮地よ」
「一瞬で、ねぇ。速いって、かかる時間が短いってことでしょう?そんなの、どうってことないわよ」
「そう言ってられるのも今の内。ふー、行かせてもらうわ」
銀髪が剣を構える。
「人符「現世斬」!」
声を出した瞬間、銀髪が一気に咲夜に近づき、剣を降ろす。
「遅いわねぇ。そんなんじゃ、速さを扱う人間としては落第よ?」
が、咲夜には全く効いていなかった。当然でしょうね、速さで咲夜に勝負なんて、負けるに決まってる。
「せめて、これ位はやって貰わなきゃね」
咲夜が一気に距離を取り、ナイフを構える。どうやら、あの銀髪がやってた縮地法とやらを、やってみせるつもりらしい。
「………………」シュン
銀髪の周りに、咲夜と、大量のナイフが登場。時を止めでもして、一気に近づいただけだろうけど。
「これくらいやって、初めて及第かしらね」
「え?きゃあああああ!」
銀髪に、次々とナイフが刺さっていく。頭は狙っていないようだが、それ以外の所には際限なくぶっ刺さっていた。あれ、死んだんじゃない?
「咲夜、殺ったのか?」
「死んではいないんじゃない?というか、遊びで殺すわけないでしょう?」
「レミリアの時は殺されかけたわよ?私じゃなくて、凜だけど」
「多分だけど、調整ミスったんじゃない?可愛らしいミスじゃない。それに、凜だから大丈夫でしょ」
「まあ、ね。正直、一番戦いたくないわね」
「全くだぜ。咲夜もそう思うよな?」
「あら、私は戦ってみたいけど?前のリベンジもあるしね」
その時。
「あっそう?そんなに俺怖がられてた?でも、本人の前でそんなこと言うなんて、2人とも酷いぜ。それに引き換え、咲夜は嬉しいこと言ってくれるねぇ。再戦ならいつでも受けるぜ、なんなら今すぐでもな」
「………凜?なんでこんな所に………」
「そう簡単に人に聞くなよ。自分で考えな、自分で」
「………まさか、まさかだけど、この異変起こしたの、あんた?凜」
「はっはー、ふせーかい!この俺がこんなに面白みのない事起こすと思うか?俺ならもっと楽しいことをやるぜ?」
「じゃあ………」
「おっと。お前らの味方をする気はないぜ。異変を起こしてこそないが、今日の俺は敵だぜ。そうだろ、ゆゆちゃん?」
「ひどいわよ~、私の事を面白くない女だなんて!ありえないわ~、私は傷ついたわよ~?」
「はは、わりーわりー。許してちょ」
桃色の髪をした亡霊らしき女が、こっちに向かってきた。
「凜が黒幕じゃないなら、あんたが黒幕?」
「まあ、そうなるのかしら。そう言えば貴方達、桜の花びら持ってない?後もう少しなのよ」
「まあ、持ってるが、譲る気はないね」
「そう?というかどうしましょうか、凜。本来ならここで妖夢も入れて一対一を3組作るつもりだったんだけど」
「うーん、ゆかりん呼べば?」
「それが、呼ぶ気なかったから、連絡手段がないのよ」
「良し、こんな時こそあれを使うべきだな」
「管理人「八雲 紫」!」
凜の持っているスペルカードから、次元空間が現れ、そこから金髪の女が現れた。
「ん、いきなり何よ?」
「いやー、予定変更。魂魄がダウンしたから、ゆかりんに戦って貰おうかと」
「あー、そう言う事ね。あ、一応自己紹介した方が良いんじゃない?」
「ん、それもそうだね。じゃーゆかりんからどうぞ」
「そこの通りすがりの巫女さんと魔法使いさんとメイドさん、初めまして。ここ、幻想郷を管理する妖怪、八雲 紫ですわ。凜みたいに、ゆかりんって呼んでも構わないわよ♪」
「ゆかりん、そんなにゆかりんって呼ばれたいの?」
「別に?ただ、呼ばれることが凜しかないから、広めておこうかな、って」
「ふうん?」
「幻想郷を……管理する妖怪?」
「ええ。博麗の巫女さん、あなたはここを維持する立場だけど、私はここを管理する立場。私はここの創設者の一人だからね」
管理人、創設者……なかなか壮大な単語が並ぶ。
「ふうん、そんな奴がいたのね。魔理沙、知ってた?」
「知るわけがないぜ。咲夜は?」
「知ってるはずないじゃない」
「あらあら、知名度ないわねぇ、私。そこそこ有名な筈なんだけどなぁ」
「この三人は知らないんだろ。そうそう、三人とも、いい事を教えてやろう」
「いい事?何よ、それ」
「こいつの能力についてだ。ゆかりんこと八雲 紫の能力は、境界を操る程度の能力だ。まあ、俺にも並ぶレベルのチート能力な訳だが…………」
「境界を操る、ねえ。それって強いの?」
「チートだって言ってるだろうに。まあ、強いよ。万物には必ず境界ってもんがあるんだよ。境界が存在しなければ、個々の存在が成り立たないからだ。それを操るって事は、世界を操る事と同意義だぜ」
「まあ、否定はしないけどね」
「ふうん、ホントに強いのね。それで?」
凜としては脅しの意味も有ったのかもしれないが、今更どんな奴が来たところで萎縮などしない。
「いやー、もう終わりだよ。次、ゆゆちゃんね」
「はぁーい♪ここ、白玉楼の主、西行寺幽々子よー。冥界の幽霊の管理も行ってるわー。凜みたいに、ゆゆちゃんって呼んでもいいわよ♪」
「またあだ名か。お前どんだけあだ名好きなんだよ、凜」
「いやー、ノリで言ったら定着しちゃって。これで良いかなって。お前らも欲しい?」
「いらないわよ」
「私もいらん」
「私は有っても良いけど」
「おお、咲夜はいい奴だなぁ。それに引き換えお前ら二人はよー。俺のハートの事も考えてくれよー」
「ふん、敵に気を遣う訳ないでしょ?」
「全くだぜ」
「ん、何か怒ってるか?霊夢」
「………何でもないわよ」
なんだか分からないけど、イライラする。この感情は何なんだろうか?
「もしかして、お前、妬いてる?」
「はあ!?」
「大声出すなよ。別にいいぜ?信頼できる相手が、味方じゃないんだし。妬いちゃっても仕方ない」ウンウン
「や、妬いてなんかいないわよっ!なんで私が凜なんかにっ!」
「あっはっは、そう恥ずかしがるなよ、可愛いなぁ。ただまあ、今回は俺は敵だ。そこら辺は割り切ってくれよ?」
「ふん、そんなの分かってるわよ」
「じゃあ、ゆゆちゃんの自己紹介も終わったし、俺に行こうか。んで、終わったら始めるとしよう」
「改めまして、高橋 凜だ。そう言えば、お前らには俺の職業を言っていなかったようなので、一応言っておく」
凜は、ひと呼吸おいて、
「幻想郷の守護者、高橋 凜。せいぜい頑張りな、主人公たち。俺は……強いぜ?」ニヤッ
凜から溢れ出る、大量の霊力。その量、質が、彼の実力を物語っていた。
それに、幻想郷の守護者?凜が?
意味が分からないが……現在、彼が敵であることは分かっている。
ならば、退治するまで。相手が凜であろうと、お構いなしに。
「全く、こんな所で、一番戦いたくない奴とやらなきゃいけないなんて、ついてないぜ」
他の二人も、凜に倣ったのか、霊力と妖力を垂れ流していた。その量、質。他の二人も、生半可な実力ではないことが分かる。
「どーすんだよ、霊夢。あいつら半端じゃない位強いぜ?」
「そんなの分かってるわよ、でも、どうしましょうか」
「それなら、私が凜に行かせてもらえる?」
「大丈夫?凜、強いわよ?」
「ふふ、言ったでしょ?リベンジよ、リベンジ。凜もそれでいいわよね?」
「咲夜、か。そうだねぇ、一番勝率が高いかもね?」
「む。嘗めないでよ?」
「だって、霊夢の戦い方は大体分かってるし、魔理沙はそんなに強くないし。だったら咲夜が一番勝率が高いかなぁ」
「凜、酷いぜ。私ゃ傷ついたよ。咲夜、ボッコボコにしてやれ」
「了解。じゃ、行ってくるわね」
咲夜が凜と場所を移動する。
「じゃ、霊夢はどっちを相手する?」
「そうね、あの、管理人とか言ってた奴にしようかしら」
「んじゃ、私はあっちの亡霊の方か」
「じゃ、健闘を祈るわ」
「そっちこそ、な」
case.sakuya VS rin
side.sakuya
まったく、異変を解決しに来たら、とんでもないことになったわね……。
高橋 凜。私の知る限り、最も強い男。って、そもそも幻想郷には強い男は少ないんだけど。
とにかく、凜は強い。前も負けたし、それからというもの、何となく戦おうとしなかった気がする。それは、彼の性格によるものなのだろう。寛容で、優しく、面白い。まあ、いたずらがすぎるところはあるが、おおよそいい人だと思う。彼が来て、紅魔館の雰囲気も変わった。今では普通だけど、妹様は明るくなり、お嬢様をはじめとした、私達とも仲良くなった。手加減の特訓や、自制心の育成も順調らしい。まさに彼は恩人であり、友人でもあるのだが…………。
「それでも、立ち塞がるというのなら、私はあなたを倒すわ、凜!」
「気合は充分、ってか。良いだろう。全力で手加減してやるから、全力で向かってきな!」
「今回は俺が敵キャラなんでな!まずはこっちから行かせてもらうぜ!」
「空弾「アイディアル・エアガン」」
凜が無数の弾幕を生み出し、私へと放つ。
「時符「プライベートスクウェア」」
時を止め、弾幕にナイフを投げ、相殺しようとする。
時が動き、弾幕は相殺された筈だが……。
「嘘、相殺出来ていない!?」
「敵キャラらしく解説をしてやろうか。そもそも、このスペルカードは気体を圧縮して作り出している。その時、気体の種類によって様々な性質を持っているんだ。あくまでそーいう設定ってだけで、気体にそんな性質はないが。例えば、二酸化炭素なら威力が高く、酸素なら疲労を縮小し、窒素なら封印の力を持つ。ま、酸素は使わないけどな」
「ほらほら、まだスペルブレイクまで行ってねぇぞ!?」
凜が残った赤の弾幕を放ってくる。仕方ない、よけるしかないか。
「……くっ、流石に数が多い……!」
「元は空気だからね。無駄に多く作れるのさ!」
もちろん、時を止めているからよけられるが、弾幕に囲まれたらアウトだ。このままよけるしかないが。
「うーん、あんまり続けるのも美しくない、か」
凜がスペルカードを中断し、新しいスペルカードを見せてくる。
「じゃ、次はアレでいくよ。よけられると思うなよ?必ず当たる運命にあるからね」
「理想神槍「スピア・ザ・グングニル」」
凜の手から、お嬢様の使うような槍が作られる。強大な霊力の奔流………私とは比べ物にならないような。よけるしかない、が、アレがお嬢様の槍と同じような効果を持つのなら。避けることは不可能。
「ほいっと!」ポイッ
霊力の槍が、こちらに向かってくる。槍に追尾効果があるなら、凜を盾にするしかない。
「ふっ!」トキトメ
時を止め、凜を拘束する。
「これであなたは動けない……」
「………咲夜」
「……何?」
「お前意外と、胸あるんだな」
「ふえっ!?」
「あっは、油断大敵っと!せいっ!」
「しまっ!」
凜に拘束を緩ませられ、そのまま槍に向かって投げられてしまった。
「っっ!いっつぅ……」
手に掠ったので、致命傷ではないが…………。
「凜……なぜ外したの?あなた程の人なら、確実に私を倒せたはずよ」
「あはっ、そんな事する訳ないでしょ?手や足以外に当たったら、死ぬよ?」ニッ
「っっ!命の危険があるなんて、斬新な遊びね」
掠っただけでもこの威力。確かにまともに当たったら、私の命を奪っていただろう。
「面白いだろう?でもま、手加減はしているけど」
「…………随分と余裕ね?」
「実際余裕だからね。例えあの槍が当たっても死なないし」
「ずるいわねぇ。私は命の危険があるのに、あなたにはないんだもの」
「大丈夫だ、問題ない。当たったとしても治癒してやるからね。流石に、死んだら生き返らせはしないけど」
「それが無難ね。あなたの能力なら可能でしょうけど、死を冒涜するものではないわ」
「あっは、とーぜんでしょ。それにしても、咲夜は可愛いねぇ。あれくらいのジョークで動揺するなんてねぇ」
「あ、あれは、あなたがあんな場面で変なこと言うから、少し驚いただけよ」
「えー、うっそだぁ。キモデブニートとかに言われても、あんな反応返さないでしょ?それはつまり、俺の事をある程度好意的に捉えてる訳だ」
「その、キモデブニートとやらが何を指すのか分からないけど。あなたの事を、その、好意的に見ている事は否定しないわ」
「え、マジか。うーん、嫌われてはないとは思ってたけど。ありがとう、嬉しいよ」ニコッ
「っ!べ、別にそれ以上の意味はないからね。あくまで、友人として、好きなだけなんだから」
「あっは、分かってるって。そんなに念を押さないでも。さて、ちゃっちゃとスペルカードを使い切らなきゃな」
どうやらあちらは、全てのスペルカードを使い切って、負けるつもりらしい。まあ、あちらから負けてくれるなら………。
「いえ、それじゃリベンジにならないわね………」
「ん、何か言った?」
「凜、本気を出してちょうだい?」
「本気、だと?それは、スペルカードルールに則った上でのか?」
「ええ、あなたに手加減されて勝っても、何も得られないと思うのよ」
「あー、言っておくが、俺はそんなに強くはないぞ?どうやらお前は俺に期待してるようだが、スペルカード戦だと、あんまり、な」
「嘘。お嬢様に勝っておいて、その言い分は通らないわよ?」
「ふうむ。ま、別にいいけど……がっかりしないでよね」
「化人「速きこと風の如く」」
前にも見た、スピードアップスペルカード。その挙動を見逃さぬ為、能力を使用………。
「えっ!?わわっ!?」
彼がスペルカードの宣言をしてから、一瞬の間もなく私の周りに多量の弾幕が置かれていた。
「(は、速すぎる!ここまで速いだなんて、想像していなかった……!)」
このままじゃ能力を使うために集中できない……!能力を使わず、よけ続けるしかない…。
「理想霊符「夢想封印」」
さらに、虹色の霊力弾が、超高速で向かって来た。だが、霊力弾を出すのに時間がかかって、それ以外の弾が一時的に少なくなっている。これなら…………!
「時符「パーフェクトスクウェア」………!」
時を止め、まずは周りの弾幕を一掃。特に強力そうな霊力弾には、大量のナイフを投げ、小さく切り刻むようにしておき、時を止めるのを辞める。
「良し………!あれ、凜の姿がない……?」
「詰めが甘いねぇ、咲夜。時を遅めるなら、ずっと続けなきゃね」
「しまっ!」
いきなり後ろから声をかけられ、振り向いたその時には、凜はスペルカードを使用していた。
「重力「アイディアル・グラヴィティ・改良版」
私の周りを風が覆い、重力が重くなった。く、やはりか………!
「いやー、ちょっと改良してみたんだよね。どうやら風の特性が有ったらしいから、今回は風だよん」
時を遅めても、この結界はナイフでは破れないだろう。時を止めてももちろんダメだし、速めたら、自分の寿命を縮めるだけ、か………。
「じゃーねぇ、咲夜。大丈夫、死なないくらいにはしてあげるからさ」
「ええ……私には、これ以上の抵抗は無理みたいだしね…………。はあ、今回も負けたかぁ。悔しいなぁ」
「あは、でも、スペルカードはもう3つしかないし、咲夜がもっと気をつけてたら、勝ててたかもね?」
「そうだと、いいわね………。じゃ、ちゃっちゃとやっちゃってよ」
「おーけー」
「理想恋符「マスタースパーク」!」
結界で見えないが、凜がマスタースパークを放ったみたい。その光は、私を飲み込み、私の意識は、そこで途切れた………。
sakuya fadeout………。
side.rin
「まったく、本当なら、ここで負けて、他の所に咲夜が行けば、勝てるようになる………ってつもりだったんだけど。仕方ないね、真剣勝負だったんだし。この際だし、観戦でも行くかな?」