東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
…………………………青年少女調査中……………………………
「ダメね……………。妖気は感じるのに、どこから出てるかが分からない……………」
そりゃそうだ、この妖気は全体に広がってるんだから。
だが、それを教えるのもな………。せめて、ゆかりんの許可をもらうまでは。
「あら?何してるのかしら?」ニュッ
「紫…………」
「体調は良いのか?」
「ええ、もうすっかり元気よ~♪それより二人とも、宴会に戻りましょ?大丈夫、何も起きやしないわよ」
「……………紫戦は霊夢に任せる。かっこいいとこ、見せてくれよ?」コソコソ
「…………当然!」コクリ
「そうかしら?もう何か起こってると思うんだけど………」
「大丈夫、貴方達が喜びそうなお酒もあるわ。度数90度。直角ね」
「というか紫、あんた居たの?」
「ガーン………。霊夢、ひどぉい」シクシク
「で、紫。なんでこんなことしてんのよ。この妖霧、あんたの仕業でしょ?」
「あらあら、存在を忘れられてるのにそんな暇なことしないわよ」
「怪しい。怪しすぎるわ。大体いつも怪しいのよ。呼ばれてないのに出てくる。呼んでも出て来ないし…………」
「あらあら、私を呼んだことなんてあるの?」
「あるわけがない!」
「ふふ、でしょうねぇ。私を呼びたいんなら凜に頼むんでしょ?」
「呼びたいと思ったことないもん」
「ガーン………!……ふふっ」
「………?なに笑ってんのよ?」
「いいえ?ただ、成長したなぁ、って思っただけよ?」
「??」
「まぁいいわ。そろそろ夜も明けるでしょう。みんながひどいもんだから、昼と夜を同時に楽しめるように境界を弄っておいたわ。今のまま朝が来れば、空は夜になるでしょう。日光と月光の境界も私のもの、このままずっと、夜宴を続けましょうか?」
「さすがに、だるすぎるでしょ!」
「なら、止めてみなさい!」
「皆がスペルカード戦を、『弾幕ごっこ』だなんて言うもんだから、遠距離から弾幕を打ち合う物みたいになっているけど………。たまには、近距離戦もやりましょうか!」
「さぁ、行くわよ!」
ゆかりんが近づいて傘を振るう。霊夢は後方にバックステップしてそれを躱す。
「はぁっ!」
霊夢は足に霊力を込め、高スピードで霊力を纏わせたお祓い棒を振るう。
「甘いわ!」
ゆかりんは下方への攻撃を見切り、霊夢の一閃よりも先に、傘の一撃を霊夢の顔面にぶち当てる。
「うわー、痛そう………いや」
かなりのダメージかと思ったが、霊夢は寸前で顔にも霊力を纏わせ、防御にあてたらしい。大ダメージではなさそうだ。こういうとっさの判断が出来る勘が、霊夢の強みであり、自慢でもある。
「こっちからも行くわよ!」
ゆかりんは回転し、空中から霊夢に傘を当てようとする。
「ぅあぁっ!」
「きゃっ!」
それに対し霊夢は、下がって回転の弱まった所を狙い、先ほど同様に、霊力を纏わせたお祓い棒で打ち返す。
冷静な判断だ。だが、欲を言えばもうちょっと女の子らしい声で叫んで欲しいもんだぜ。その点ゆかりんは可愛い。きゃっ!
「まだ行くわよ、紫!」
足に霊力を込めた高速ダッシュで吹き飛ばした方向に飛び、攻撃を与える。それはもうボコボコと。容赦など一切なかった。
「もう、容赦ないわねぇ。ちょっとは手加減してちょうだいよ~」
「知らないわよ、そんなの」
「符の壱「四重結界-lunatic」」
ゆかりんが1枚目のスペルを宣言すると、四枚の結界が、ゆかりんの前に1枚、背後に3枚展開された。
ゆかりんが飛び上がると、後ろの3枚の結界からある程度整列している弾幕を発射する。
霊夢は、ゆかりんに肉薄する。だが、大きな結界のどこから出てくるか分からない上、弾幕の範囲も広い。ゆえに。
「………くぅっ……!はぁ!」
例え霊夢でも、全く攻撃を受けないことはできないようだ。
しかし攻撃を受けつつも、ゆかりんに攻撃を与える。
「そんなの効かないわよ!」
ここで、前方の結界が邪魔をしてくる。明らかに強度は低いようだが、ゆかりんへと与えるダメージを激減させている。
「くっ………!まだよ!」
諦めずに結界へダメージを与えていく。攻撃を最小限の被害に抑えながら、だ。本当に霊夢は腕をあげた。春の時とは大違いだ。
「………くっ、きゃぁっ!」パリン!
前方の結界が破壊され、お祓い棒の直撃を受ける。
「うう~。いったーい~!もう!」
ゆかりんさぁ、君ももうちょい威厳のある立ち居振る舞いを出来ないもんかなぁ?ガキじゃないんだからさ。
とかなんだの俺が思っている間に、ゆかりんは二枚目のスペルを宣言。
「符の弐「八雲卍傘」
傘に強い妖力を纏わせ、回転しながら霊夢に襲いかかる。
「こんなもの!」
霊夢が札で簡易的な結界を作り、防御する。
………キンッ!
傘と結界がぶつかり合い、しのぎを削る。どちらも、勢いは同程度と言ったところか。
「なら!」
ごうを煮やしたのか、ゆかりんが上に飛び上がり、上空から結界を超えて衝撃波を飛ばす。
「甘いわよ、紫!」
高速ダッシュで前へ跳んで衝撃波を躱す。そして、あれほどの衝撃波を撃った以上、ゆかりんの体は上空に浮いている。
「宝符「陰陽宝玉」!」
「きゃぁぁっ!」
ゆかりんを丸い霊力で覆い、それを狭めて押しつぶす。
「げはっ………。本当に、痛い………」シクシク
「ふん、いい気味ね……」ニヤニヤ
うわー、痛そう……。そして、鬼だな、鬼。鬼巫女霊夢。なんか流行りそうなネーミングだな。後で人里にでも流しておこう。
「仕方ないわねー」
ゆかりんが傘を振るい、弾幕を発射する。連続の攻撃に、霊夢も若干手間取ってるようだ。
「………くっ、面倒ね……!」
結界を作り、ゆかりんの攻撃を耐える。
「今よ!」
「符の参「八雲藍-lunatic」!」
後ろかららんちーが現れ、レーザーを放つ。
「!!?」シュッ
驚いて、とっさに上へよけてしまった霊夢。
「そこよッ!」ドカ-ン!
「きゃっ!」
傘に妖力を纏わせ、飛び上がり、傘を腹にぶち当てる。実に痛そうだ。モロに入ったっぽいしな。
「今よ、藍!」
「分かっていますとも!」
地面に接触する瞬間、らんちーがレーザーを当てる。すごいな、あの速度で落ちる物体に合わせて攻撃するなんて。流石は九尾の狐、強い。でも、らんちーからはそんなに威厳を感じないんだよなぁ………。九尾の狐感があんまりないんだよな。いや、見た目からは分かり易いけど。九本尻尾があるし。でも、敬語使ってくるからなぁ…………って、んなことはどうでもいい。
「………くぅっ、流石にやるわね、紫………」
「やられっぱなしは性に合いませんから」
「ふん、次のスペルカードを使いなさいよ。流石にもう引っかからないわよ?」
「ええ、分かっているわ」
「外力「無限の超高速飛行物体-lunatic」」
超高速で飛び回るナニカを投げる。だが、ご丁寧にも道を示してから飛んでくれるため、そんなに難しくはない。知覚できない位には速いが、どこを飛ぶか分かるなら効果は低い。こういう楽しませてくれるスペカは素晴らしいと思うんだ。
「そろそろ終わらせるわよ、紫!」
「神霊「夢想封印」!」
己の霊力を高め、印を結ぶ。あとは言霊を入れこめば発動できる。
だが………。
「…………ただ夢想封印を撃っても効果は薄いはず。封印の力があるとはいえ、ダメージを抑えられては威力は発揮しない」
さあ、どう出るだろう?
「…………ふっ、なんてな?」
あいつの考えている事ぐらいわかる。どうせ………。
「夢想封印!」
虹色の封印弾がゆかりんへと向かう。
「神技「八方鬼縛陣」」
あっはっは、やっぱりか。やると思ったよ。
敵を羽交い締めにし、封印弾を直撃させる。霊夢が良く使う手だ。もっとも、対処はもう出来るから、俺との弾幕ごっこでは使わなくなったがな。
「うふふ…………本当に成長したわよ、あなた。イイ感じね」
「はいはい、そりゃどうも。お祝いはお酒でいいからね、後お賽銭」
「あらあら、欲張りねぇ。ふふ、考えておきましょう」ピッチュ-ン!
K.O.!winner Reimu!格ゲー風に言ってみた。
「うーん…………」
「結局、何よ」
「うーん………。私はやってないわよ~。全部、あいつの遊びなのよ~。なんとなく宴会を始めるのも、なんとなく妖夢が酔って踊り出すのも」
「あいつって誰よ」
「さぁ?凜にでも聞けば良いんじゃない?あー、ひどい目にあったわ………」ニュッ
そう言ってゆかりんは去った。許可が出た、と言うことでいいのかな、ゆかりん?
「ちょっと。凜、知ってたの?」
「ん?さぁ、どうだろうねぇ。ゆかりんは時々むつかしい事をゆうからねぇ。はてさて、どんな意図が有ったのか………」
「今更、あんたのそんな小芝居で騙されたりなんかしないわよ」
「あっはっは、やっぱり?………ま、知ってたよ。だが、俺はあくまで管理側、許可もなしに行動するわけにはいかないからな」
「ふん、分かってるわよ。それより、元凶わかってるならさっさと呼び出してくれる?」
「ん、それは構わないんだが……」
どうやればいいんだ?伊吹萃香の状態を、霧状からあの姿に………。いやでも、俺の伊吹萃香のイメージは完全に二次作品の絵だぞ。ほぼそのまんまとはいえ、完璧には一緒じゃないんだ。それに鮮明に思い出せるわけでもないし。あれ、結構難関?あ、自分から出てきてもらえばいいじゃん。
「妖霧の広がる範囲の理想を、ここら一帯に変更…………おっと」
薄くて見えなかった霧も、流石にここまで活動範囲を狭めれば可視化は容易だ。
そして、変化が有れば自分から出て来るはず。
「あれぇ?拡がってたつもりだったのに、なんか狭まってる?って、あ、見つかっちゃった。もう少し遊べると思ったのになぁ」
馬鹿でかい2本の角を持った少女が姿を表した。おーおー、鬼ですなぁ。文に会って化人符のスピードアップスペカが強化されたのと同様、パワーアップスペカも強くなるかもしれない。って、新しいスペカ作らないとなぁ。
「というか、あんたら何?」
「というか、誰?」
「私は、気持ちよく遊んでただけなのに」
「あんたがこの騒動の主犯ね?何でこんなことしたのよ」
「こんなこと、って、何が起きてるか分かってるんだ。私には、あんた達が2人で騒いでるだけにしか見えないんだけどね」
「最近、宴会が多いじゃない。それに、妖霧が出ていて………。って、私達の行動を見ているって事はやっぱり………!」
「ちょっとちょっと、宴会が多いのは私のせいかい?」
「って、紫と凜が言ってた」
「まぁ、そうなんだけど」
「ほら、やっぱり私の言った通りじゃない!」
「そう言ったのは紫とそいつでしょ?まぁ、宴会が続いた方がいいでしょ?賑やかでさ。私は賑やかなのが大好きなんだ。もっと賑やかにならないのかなぁ」
「あんたみたいなの、宴会に居たっけ?」
「霊夢、そいつが妖霧の正体だぞ。だから宴会には居た筈だぜ」
「ありゃ、知ってたんだね。楽しかったよ?妖怪、巫女、吸血鬼、幽霊。まるで百鬼夜行のように」
「ああ、なるほどね。妖霧自体が犯人だったのか、よかった」
「何が良かったのさ?」
「私の勘が鈍った訳じゃなくて」
「ふぅん。所で、そこのお兄さん」
「もしかしなくても俺か?」
「そうそう、そこの人。もしかしなくても戦うんでしょ?だったら………あんたとやりたいと思ってね」ニヤ
ゾクッ。好戦的だなぁ………。こわいこわい。
「残念だが、お前の相手は間違いなく霊夢だぜ」
「えー」
「大丈夫大丈夫。スペルカード戦なら俺と霊夢に差はないし。それに面倒だからな」
「ふぅん、逃げるんだね?」
「安い挑発だなぁ………。そこまでガキじゃないもんでねぇ」
「私は知ってるよ、ずっと見てきたから。宴会ではいろんな所にいたね。あんたは誰とでも仲良かったし、誰とでも楽しく過ごせるもんね」
…………?いきなりなんだ?
「でも、私は知ってる。そんなの只の外面だろう?あんたはあんな奴じゃないだろう。優しくて、面白くて、かっこいい。それはあんたの外面だろう?」
「??凜、あいつが何て言ってるか、聞こえてる?私には何も聞こえないんだけど………」
「うん?ま、聞こえてるよ。………わりぃ、ちょっとどっか行っててくれるか?」
「え?なんでよ」
「あっはっは、ちょっとイラついたからさ。地獄絵図を見る事になるぜ?そんなん、見たくねぇだろ?」ニィ
「っ………。ふん、その程度の事で気分が悪くなるほど繊細じゃないわよ。でも………。『お願い』するなら、考えてあげてもいいわよ。パートナー、だものね」
「あはー、別にお前を遠ざける位、やろうと思えばやれるがなぁ。まぁ、お願いしてやってもいいぜ?」
「お願いする側にしては、上から目線ねぇ。ま、何にせよ早くしてちょうだいよ。何をしたいのか知らないけど、ね」
「……………ありがと」
「それじゃあね」ザッザッ
霊夢は神社の方に戻っていった。ふぅ、危なかったねぇ。ありもしないことを話されて誤解されちゃ面倒だし。
「あんたの能力かい?あの子、聞こえてなかったみたいじゃないか」
「変なこと聞かせて、印象悪くするのは嫌だからね」
「ふふ、やっぱりあの子が大事なの?」
「ふん、大事じゃないわけないだろ。というか、知り合い全て大事」
「嘘だろう?全部どうでもいい、面倒、うっとおしい………そう思ってる」
「あっは、冗談はやめろよ。なんか誤解してないか?」
「嘘、嘘、嘘………。鬼は嘘が嫌いだよ。そんなに自分偽って楽しい?ま、楽しいんでしょうね。周りの女の子があんたを好いてくれてるのを、心の中で嘲笑するのが好きなんだ」
「……………やめろって、言ったよな?」
「周りなんてどうでもいい、うっとおしい。それがあんたの本心だ。そうだろう?」
「…………………………あはっ☆」
ああ、もう、無理だ。自制が、効かない。せめて、うまくやってくれよ、俺……。
「あはっ!あははははは!よーく分かってんじゃんかぁ!その通りだねぇ!?でも、そんな事はひっじょーにどーでもいい!やるんだろう?伊吹萃香。悪いがイラついてんだ、手加減なんてしてやんないぜ!」
ああ、よく知りもせず人の事をグチグチと言いやがって!
「そりゃあ奇遇だね。私もだよ、高橋 凜!」
「うらぁ!」
「うおっ………!あはっ!おいおい、俺は人間だぜ?鬼の力でなんか殴ったら……ほら、こんなんなっちゃったじゃねえかぁ……………」プラプラ
「…………あんた、気でも狂ってんじゃないの?人間は脆い。だから普通は、痛みを回避しようとするもんだと思ってたんだけど?」
「あはっ、そうだね、その通りだ……。じゃあ、俺はおかしいのかもな」
射命丸並みの速度、鬼並みの力、吸血鬼並みの再生速度、天狗並みの思考速度………。
「ただ、そのほうが都合がいいって、こー、と!」
距離を一気に離し、射命丸速度で拳を振るう。
「!?はぁぁぁぁ!」
伊吹が、周りの地面を萃めて強固な岩の盾を作り出す。
「その程度で、この拳、止められると思うな!」
何重にも施された盾を、速度を出し続ける事で勢いを緩めず突破する。
「………ぅああああ!」
「!?」
デタラメな俺の特攻を伊吹が対処する。速度を利用し、腕の側面を掴んで投げ飛ばしたのだ。
「…………げぇっ!!」
今からスピードを緩めても間に合わない!仕方ねえ!
「俺の速度の理想を、最小に!」
投げの勢いが弱まる。能力解除。よし、おっけ。しかし……。
「ちっ、上手くいなしたねぇ……。あの速度で突っ込んで来といて、よく止まれるもんだ。ちょっとおかしいよ」ケラケラ
「おいおい、あの攻撃を投げられる奴が、そんなこと言うなよ」
「?ただ投げただけでしょ」
いやいや、あの速度で突っ込んで来る物を掴むとか。近接で使えるように、多少は速度も抑えてはいるけど…………。それを見切る動体視力。おぞましい。
「さぁ、行こうか!」
伊吹が殴りかかってくる。くっ………。
しばらく殴り合う。すると。
「うらぁ!」
「ちぃっ!くそ、だりい………」
こっちにも並の鬼の力はあるはずなのに、伊吹には傷が入らず、俺の体には傷が入っていく。まぁ、すぐ治るが。有効打が与えられないのは問題だ。
「………ちっ、面倒な奴だな……。なら、これでどう!?」
伊吹が周りの地面を萃め、俺を閉じ込めてくる。圧縮された地面は熱を発し、体を焦がしていく。
「(やべぇ、このままじゃ素っ裸になる………!)」
誰もが持っている羞恥心を利用するとは、流石だな、伊吹萃香……!
「だが甘い!」
服が燃え尽きる前に脱出する!翼の力を利用して要塞を破壊する。
「こっちからも行くぜ?」
先ほどと同じく、距離をとって鬼パンチを放つ。もちろん、このままだとまた投げられるが………。
「事象を理想的にする程度の能力!」
「うわ!?何これ!?」
掴まれる前に、伊吹萃香の前髪の量を、ちょっとしたカツラができるレベルにまで増やす。如何に鬼と言えど、視界が無ければ対処はできまい!
「鬼を…………なめるな!」
そんな俺の予想を伊吹は覆す。
俺の拳に合わせて、殴ろうとしているのだ。
「うぅらぁぁあ!」ガキン!
「なんだと!?」
そんなバカな!如何に力に差があるとはいえ、あの速度で繰り出したんだぞ!?力がなくたって大きな力を出せる位のスピードに、鬼の腕力。この二つの組み合わせを打ち破ると言うのか!?技もなにもなく、ただ力のみで!?
「………驚いた。私が全力で殴ることになるなんてね。すごいじゃん」
「ふん、遠まわしに自慢してないか?こっちこそ、驚いたぜ。まさか射命丸と同じ速度で、鬼の力を振るったというのに、止められるとは思わなかった」
「射命丸………ああ、天狗のか。元気にしてる?」
「まぁな。今日も今日とて、新聞作りに精を出してると思うぜ」
「ふーん………ならいいや。さぁ、続きを始めよう」
「……………なぁ。もうやめにしないか?やっぱり、お前と争う理由は、ないように思うんだ」
さすが俺、大分冷静になってきた。よかった。
「何言ってんのさ。せっかく楽しくなってきた所だろう?もっと楽しもうよ!」
「…………はぁ、それもそうだな。流石にあそこまでの暴言を吐かれちゃ、見過ごせはしない。嘘ついてごめんなさいって、謝らせてやるぜ!」
「ふふ、良いだろう。鬼が正直者って事を、見せつけてやる!」
「ミッシング………パワー!」
伊吹が巨大化する。でかくなっても力は同じだが、攻撃の範囲が拡がる。面倒だ。
「サン・フィスト!」
サン=太陽。ここまで言えば、分かるよね、みんな?
「くっ……眩しっ………」
「今のうち!」
伊吹萃香の大きさの理想を、通常サイズに!
「………!?」シュゥゥ
「…………これが俺の、全力全開………!スピリチュアル・ビーーーーーム!!!」
俺の満タンの霊力を、空っぽになるほどの霊力ビームを伊吹に放つ。どっかで聞いたようなセリフなのは気にしない。
さぁ、伊吹。どう出る………!?
「………あんまり、なめるんじゃないよ!」
伊吹は能力を使い、スピビを圧縮する。…………大丈夫だよ、な?さっきのパンチよりも強い力を込められてるんだ。いくらなんでも、これは対処できないはず………。
「…………ハァ!」ガイン!
伊吹がビームの下の方を思いっきりぶん殴り、ビームを真上に飛ばす。遠い空で爆発が起こったのが見えた。…………スペースデブリにでもぶつかったのかな………。
「ま、なんとなくそんな気はしてた、よっ!」ブゥン!
伊吹に突っ込んで回し蹴りを脇腹に放つ。
「うわっと!あぶない、なぁ!」シュッ
回し蹴りをしゃがんで躱し、俺の着地点を刈り取りに来る。
それを俺は能力を使用し、足場になる空気の理想を固体に変動、それを足場にして跳び、かかと落としをお見舞いして対処する。
「ぐがっ!このぉ!」
既に足払いのフォームに入っていた伊吹はかかと落としをモロに貰い、顔を地面に押し付けられる。だが、それを利用して足を上に持っていき、俺の頭を蹴った。
「……うがぁ!」
一旦下がり、体制を立て直す。
「…………ペッ!やるじゃ、ないか………」
「………かはっ………それは、ありがとう………」
「ほんと、分かんないよ………。今のあんたは最高にいい奴なのに、自分を偽ってさ……。そっちの方が、良いじゃないか……」
「………誤解しないでくれるか?別に俺は、自分偽ってるわけじゃねぇよ。ただ、どっちも俺ってだけだ」
「………私にはわかんないや。相反する物を、一緒に一まとめになんて出来るわけない、いや、しちゃいけないんじゃないの……?どっちかが偽りで、どっちかが正しい。そうじゃないの…………!?」
「…………そんな訳があるか……!今の俺も、普段の俺も。どれも全部俺だ………!暗いとこも、明るいとこも。全部高橋 凜だ!てめぇなんかに、俺の事を否定させるかよ……!」
「…………やっぱり分かんないや」
「ケッ、そうかよ……。なら、決着を付けようか、伊吹。勝った方が正義………。たまには、そんな無粋な結論も悪くねぇ、そう思わないか?」
「……………ふっ、そうだね。私が勝ったら、あんたには素で居てもらうからね」
「はっ、良いけどな。俺が勝ったら、生意気言ってごめんなさいでした~って謝ってもらうからな?」
「ふっ、ありえないけどね」
「あ、あともう一つ」
「なんだなんだ、二つ目かい?ずるいなぁ」
「これが終わったら、改めて友達になろう。後腐れなく行こうぜ?」
「…………悪くない」ニヤリ
「……………俺の腕力の理想を、伊吹萃香並に!」
これで力は同じ。スピードで勝る以上、俺が圧倒的有利。
「一撃で決める!………はぁぁぁぁ………!」
霊力は切れたので、代わりに魔力を翼に流す。ついでに加速魔法、対ダメージ結界を施す。これで終わらせる…………!
「こっちもだ!」
伊吹のゆかりん並の妖力が、ただただ拳のみに萃められる。まぁ、拳を避けて殴れば良いが………それじゃ面白くないよなぁ、伊吹!
「終われ、伊吹萃香ァ!」
「こっちのセリフだ、高橋 凜!」
二人の拳が交わった時、そこに立っていたのは……………。
「………………勝ったか……」
俺、だった。
「……………うわ、拳がひしゃげてる………。プラプラじゃん……」
対物結界がなかったら、負けてたのは俺だったかもな…………。
「……………負けるわけには、いかないからな」
俺は皆にとって、『イイ奴』じゃなければいけない……。だって、そうあらなければ………。
――――――――この、化物がぁッ!――――――――
「……………うぁ………」
イラナイ……!こんなモノいらない………!!アンナノはもう、たくさんだ………!
「…………大丈夫かしら?」
「ハッ……………………ゆかりん………………」
「ごめんなさいね、この子が無神経な事言って」
「……………やっぱり見てたのか…………いや、別にいい」
「……………ごめんなさい」
「だから、いいって。俺の事を知ってもらえば、分かってくれる。だから、少し待ってくれるか………?すぐ、いつもの俺になるから…………」
「…………無理、しないで良いのよ?勝手にだけど、調べさせて貰ったから、私は、貴方のことを知っている。私の前で、貴方が無理をする事は、無いのよ?」
「……………紫」
「…………ふぇ?」ギュッ
気がつけば、俺は紫を抱き締めていた。支えを、無意識に欲していたのかも、しれないな。
「…………あったかい、なぁ…………」
紫の身体。いつも尊大な紫。こんなに小さい。なのに、なんで、こんなに、安心するんだろう?
大丈夫。ここでは、俺は否定されない。なにせ、ほぼ全員が異能持ちだもんな。それに………支えてくれる人達が、いるから。
「…………悪ぃな、紫………しばらく、このままで………」
「……………し、仕方ない、わね……………」カァァ
「…………はっはー、自分も嬉しいくせにー…………ああ、あったかいなぁ……………」
こんなに自分がナイーブだとは思わなかったなー…………。
紫のぬくもりを全身で感じる。何もなくても抱きたくなりそう。
うん、大体調子は戻ってきたかな…………。
「…………………………」
「…………………………」カァ
「…………………………」
「……………………あ、あの、まだ…………ダメなの?」
「…………………うん、ダメ」ニヤニヤ
紫からは見えないようにニヤつきながら答える。
「…………………そ、そう……」
「……………………………」ニヤニヤ
「……………………………」カァ
「……………………………」ニヤニヤ
「……………………………あの、凜…………」
「…………ん、なに?」ニヤニヤ
「…………………その、やっぱり…………恥ずかしい//」
「……………~~~っ!あっはっはー!紫、顔赤っ!耳まで真っ赤なんてホントにあるもんなんだなぁ…………あはっ、あははは!」
「なぁ!?りぃん~~!?あなた、とっくに大丈夫だったわね~!?人が恥ずかしいのを我慢してたって言うのに!」
「……………あはっ、あははははは!あはー、ごめんごめんww」
「………………………まったく、笑い事じゃないわよ、この天然女たらし………」ボソッ
「…………へ、なんか言った?」
「なんでもない」
「いや、なんか気になる……」
「なんでもないって言ってるでしょ!」キシャ-!
「…………俺の周り、小声で喋る奴多いなぁ、なんでだろ……?」
なぜ毎回モヤモヤしなければいけないのか。難問である。
「まぁいっか。ありがとねぇ、ゆかりん。いやはや、ゆかりんにはお世話になりっぱなしで恥ずいぜ。今度お礼でもさせてね」
「………ふん、別にいいわよぅ………」
「いつまでいちゃついてんのさ」
「およ?いつから起きてたんだ?」
伊吹が息を吹き返したようだ。
「そうだねぇ、凜がニヤニヤしながら紫を抱きしめてた所からかなぁ?」
「……………み、見られてたの…………?…………くらっ」
ゆかりんが倒れ出す。
「よっと。いきなりフラつくと危ないぜ?」
「……………そっとしておいてちょうだい………」
「そう?じゃ、後始末して宴会に戻ろうかなぁ。伊吹はどうする?交じるかい?」
「んー…………。やめておこうかな。流石に私も重傷なんでね、治すのにちょっと時間かかりそうだ」
「そう?じゃ、ちょちょいのちょいっと。ボロい状態から、元の自然の状態へ………」
実は気を使ってたんだぜ?音を小さくしたり、衝撃波が発生しないようにするとか。
「じゃ、ゆかりん、送って?」
「あなたがやればいいじゃない。簡単でしょう?」
「えー、結構疲れてんのに能力使いたくないんだけどー」
実はちょっと疲れるのである。他の皆みたいに、霊力やら魔力やらが減る感じはないんだけど、なんというか、精神を摩耗する感じというか………そういうのがある。
「はいはい、分かったわよー………」ニュッ
「ありがと。じゃーねぇ、二人ともー」ニュッ
地面に着地。どうやら、境内にある木の裏側っぽいな。
「ふいー、たっだいまー」
「お、凜じゃないかぁ………。霊夢に聞いたぜぇ、なんか異変解決してたんだろぉ?」
「うへっ、酒くさ………。まぁ、その通りだけど。霊夢はどこにいる?一応報告しとこうかと思ったんだが」
「霊夢ぅ?ああ、確かあっちに……、あ、こっち来てるっぽいな………」
見ると、霊夢がこっちに歩いてきてるのが見える。
「帰ってきてたのね?どうやら無事みたいで何よりだわ」
「霊夢の奴、結構心配してたんだぜ?強い妖力を感じたーとか、角が有ったから、もしかして鬼かもしれないーとか、流石に凜でも、危ないんじゃーとか、うるさかったぜ?」ニヤニヤ
「魔理沙!余計なこと言うんじゃないわよ!」
「…………へぇ、霊夢が?」
「おう」「そ、そんな訳ないでしょ!?」
「顔赤いぜ、霊夢。心配してくれてありがとう。いやー、マジで疲れたぜ………もう二度とやりたくないね」
「…………そ、そんなに?」
「勝ったけどな。でも、流石にもう騒ぐ気分じゃないわ。俺はもう寝させてもらう。良いよな?」
「………え、ええ。おやすみなさい………」
神社の中に向かって歩いて行くと、
「おや、凜くんじゃないか」
「ああ、霖之助か………。悪いが、もう寝させてもらおうかと思ってるんでな。それじゃ」
「ちょっと待ってくれるかい?」
「ん、何さ?」
「お疲れのところ悪いけど、明日………もう今日か。いつでもいいから、香霖堂に来てもらえるかな。道具の使用方法について、教えてもらいたい」
「ああ、約束のか。せっかちだねぇ………いいよ、分かった。じゃ、またね」
「ありがとう、それじゃあね」
起きたら香霖堂に行くことにするか…………。眠い、さっさと寝よう………。