東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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19話『永夜異変~明けない夜の異変』

永遠亭に入ると、とてつもなく長い廊下が会った。しばらく歩いてみても、何もない。

 

「ちょっと。なんで廊下がこんなに長いのよ?」

「えーと、なんだっけ、確か………そうだ、鈴仙の能力、波長を操る能力で、廊下を長くしてるんだっけ?」

「波長を操る?」

「えっと、波長を操って、廊下を引き延ばしてる、って感じじゃなかったっけ。波長の長短を操ることで、色んな事を起こす。まぁ、能力的には最高クラスだね。境界と同じで、波長も万物に存在するものだから。彼女は妖力を操って使ってるから、世界規模の事は出来ないだろうけど」

 

鈴仙に限らず、大体がなにかしらの力を使ってるからね。使えば疲労するし、限界もある。それの限界が広いのが大妖怪だ。そして俺にはそれがほぼない。その気になれば全て縮小できるからね。疲労も、傷も、痛みも。

 

「うーん、何か曖昧で意味のわからない話ねぇ………」

「ま、色んなことが出来ると思っておけばいいよ。とにかく、普通に進んでいれば大丈夫だ。結局の所有限だから、少しスピードあげて進めばいい」

 

…………青年少女達高速移動中………………

 

「……………ほら、そうこうしてるうちに、何か兎が見えてきたよ、ほら」

 

軽くウェーブがかった黒髪の兎、因幡てゐである。人を幸運にする程度の能力を持つ、人間に人気の高い妖怪である。ま、今は関係ないけどな。

 

「ちょうどいい、今はまだ気づかれていないな」

「何をするつもりなの?」

「まあ、たまにはスマートに解決する異変もありでしょ?」

「まぁ、出来るならそうした方が良いけど………」

「なら決まり。2人はここで待ってて?」

「別にいいけど」

「……………まぁ、あなたなら大事には至らないでしょう。任せます」

 

気付かれないよう、こっそりとてゐに近づく。

抜き足差し足忍び足っと。

 

「お師匠は人使いあらいなぁ~。これでもそこそこ偉いのにさー」

「とりゃっ!」

 

霊力で威力を高めた拳で殴りつけようとする。

 

「ぅえっ!?な、なになに、何事!?」ピョン

 

ちっ、流石にすばしっこいな。というか、廊下を殴ってもびくりともしない。むしろ衝撃が全て伝わらないせいで俺の拳に衝撃が集まってくる。廊下が永遠になってるのか?

 

「おー、いてぇ………」

「ま、まさか敵襲!?と、とにかく、逃げるが勝ちっ!」

「おっと因幡てゐよ、逃がすわけにはいかんな」

 

かなりの素早さでてゐが走り去ろうするが、身体強化で捕まえる。

 

「は、はーなーせー!私は兎だよ!?愛玩動物だよ!?虐待はいけないんだよ!?」

「あーもう、エクスクラメーションマークとハテナマークばっかり使ってないで、話を聞きやがれ。いいか、八意永琳にこう伝えろ、『月人から逃げるために地上を騒がせる月の民よ。こちらとしては貴方達のやっている事は非常に迷惑だ。月を正常にしつつ、貴方達の要望を叶える手段があるため、一度話がしたい。こちらから赴くので、あなたはただ、待っていればいい。幻想郷の守護者 高橋 凜』」

「え、ええとぉ………つまり、迷惑なことやらないでも解決できるから、一度話したいってこと?」

「もうそれでいいけどね。出来ればせっかくカッコつけて言ったんだから、そのまま伝えてくれないかなぁ」

「んー、いいよ!伝えてあげる!(ふふん、誰がいきなり襲ってきた奴の頼みなんて聞いてやるもんか!)」

「あ、因みに…………伝えてなかったら、異変終わったあとで、ブ・チ・コ・ロ・シ、ね?因みに逃げられないからね♪」ニタァ

「や、やだなー、そんなことするわけ無いじゃーん(こいつ……怖ぇ!)」

「あはっ、よっろしくー」

 

てゐは奥へと走り去った。すぐに伝えてくれるだろう。あれでも妖怪兎なんだから。足の速さには定評があるよ。

 

「さて、そろそろ行くよ、二人とも」

「あ、終わったの?」

「それじゃあ、いきましようか」

 

……………………青年少女達高速移動中………………………

 

「遅かったわね」

「全ての扉は封印したわ。もう、姫は連れ出せないでしょう?」

 

永遠亭の住人で、月から逃げてきた玉兎、鈴仙・優曇華院・イナバである。

こいつさえ居なけりゃ、永夜異変は起きないんだけどなぁ。

 

「犯人はコイツかしら?」

「さぁねぇ。取り敢えず倒してみたら?ここにいる筈だし」

「何だ、妖怪か。そうよね、ここまでこれる筈ないし。心配して損したわ」

「俺と霊夢は人間なんだけどねぇ」

「人間ならなおさらだわ」

「一体、何を心配してたのかしら?こんな悪さしておいて」

「悪さ?んー、地上の密室のこと?」

「なの?良く分からないけど」

「満月のことよ。良く分からないけど」

「ああ月のこと?それはね、私の師匠、永琳のとっておきの秘術。この地上を密室化する秘術なの。分かるかしら?」

「わかるわけがないわ」

 

二人は完全に訳わかめらしい。ふぅむ、ゆかりんなら気づくかな、とも思ってたんだが………。流石に、ヒントが少なすぎるか。

 

「俺はわかるけど?満月はちじょーと月を結ぶ唯一のルート。ニセモンの月でそれを絶ち、月人を地上に来させない。それを密室と呼んだ、という事でしょ?」

「!?なぜ分かるの!?」

「自分で聞いといてそれは無くないか、鈴仙・優曇華院・イナバ」

「!私の名前も何で………!」

「あっは、どうでもいいどうでもいい」

 

完全にテンパってる鈴仙の後ろから、赤と青の色をした服を着た、銀髪の女性が現れた。

八意永琳。月の頭脳と呼ばれた、月の天才科学者。

 

「…………あなたが、てゐに言付けした人間かしら?」

「お師匠様!」

「やぁ、てゐはきちんと伝えてくれたみたいだね。それで、どうするの?交渉に乗るか、乗らないのか。乗ってくれれば最善を約束しよう」

 

正直言って、ここが分水嶺だろう。何をするにせよ、話を聞いてもらわなきゃどうしようもない。

 

「……………やはり、信用は出来ないわね」

「あっそ。はぁ、それならそれで良いよ」

 

場合によっては強制的に乗らせる。正直、そこまで俺はスペルカード戦は好きじゃない。争わなくていいなら、それでもいいのだ。

 

「…………うどんげ、後は任せたわ」

「承知しました、師匠」

 

八意永琳が去る。

綺麗な人だよね、やっぱり。まぁ、まずは鈴仙から懐柔しようと思ってたし、彼女の事は後回しで良いだろう。

 

「ふふん、最近戦える相手がいなかったから丁度いいわ。あなたたちにすべて見せるわ、月の狂気を!」

「つまんねーもん見せる気?」

 

狂気って…………。絶対面白くないよな………。鈴仙はこめかみをぴくぴく動かしている。ありゃ、怒ったかな…………。

 

「ふぅ、言ってくれるわね、まぁいいわ。月は人を狂わすの。そう、月の兎である私の目を見て、狂わずにいられるかしら」

 

明らかな決め台詞。当然、戦闘が始まると、みんな思ってるだろう。しかし、俺にそんなつもりなどない。

 

「え?戦う気なんてないけど?」

「へ?」

「まず鈴仙に説明するか。えー、ここの主の蓬莱山輝夜は、いわゆるかぐや姫って奴で、月から逃げてきた。そして、満月の日、こっちに月人が迎えに来ることになった。君の戦力としての価値を求めてだけど。これはやばい、って事で、お前らはさっき言った密室を作り出した………って事、だよね、鈴仙?」

「…………………」アゼン

「沈黙は是なり。それで、密室をやめる訳にはいかない訳でしょ?」

「……………そうよ。だから、月が沈むまで、術をやめる訳にはいかない」

「そう言う事なら、問題ないんだよ。そうでしょう、ゆかりん?」

「…………話は聞いたわ、確かにそう言う事なら、平和的に解決することも可能ね、はぁ……」

「ちょ、あんたも訳わかんない話に参加するの?私に説明は?」

「霊夢…………ちょっと黙れ」

「はぁ!?勝手においてけぼりにしておいて!」

 

霊夢はしばらくぎゃーすか言っていたが、しばらくすると静かになった。

 

「そもそもこの幻想郷には、幻想と現実を隔てる博麗大結界があるから、侵入は非常に厳しいのよ。ここの責任者として保証しましょう」

「そ、そうなの?」

 

ゆかりんの言葉を継ぐ形で割り込む。

 

「そう。知らなかったなら仕方ないかもだけど、何か一言あってもいいんじゃない?」

「……………ご、ごめんなさい………」

 

まぁ、鈴仙に非はないけどね。結局の所は、八意永琳の判断ミスなんだから。そもそもの原因はこの子なんだけど。

 

「ならいいよ。じゃ、さっさと八意永琳の所に行ってこようかな」

「わ、私も行くわ………」

「そう?じゃあゆかりん、さっきの人、追えるかい?」

「もちろん」

 

ゆかりんに連れてきてくれるよう、口を開こうとしたら、霊夢がある襖を指差して言った。

 

「ねぇ………なんかこっちからなんか妙な気配するんだけど」

「あ、ああ、封印が間に合ってなかったのね…………」

 

封印?あぁ、そう言う事。

 

「蓬莱山の居場所か。ちょうどいい、彼女にも話をしよう。ゆかりん、ちょっと無理をしてでもすぐ八意永琳を連れてきてくれ」

「ええ、いいけど?」ニュッ

 

ゆかりんがスキマで八意永琳の所へ向かう。そして速攻で戻ってきた。

 

「戻ってきたわ」

「んー!んー、んー!」

 

口を塞がれてる八意永琳。

っ、まじかぁ………そこまでは頼んでなかったぜ、ゆかりん?完全に趣味だろうなぁ…………あははっ。

 

「お、お師匠様!?」

「~~~!~~~~~!あはははは!なかなか素晴らしいジョークだねぇ…………さ、入ろうか、皆。八意永琳も、そんなに悪い話じゃないから暴れないでよ」

「んー…………ん」

 

扉を開けて、中に入る。

 

「……………満月?」

 

中に入ると、上に満月があった。偽物ではない。

 

「そう、地上から見た、本物の満月よ…………って、あら?うふふ、何だか面白い状況ね?侵入者に永琳が捕らえられ、だと言うのにイナバは何もしていない」クスクス

「い、いやぁ……ちょっと事情が有りまして。えと………説明を」

「おっけぇ。えーとだね、実は…………」

 

………………………青年説明中…………………………

 

「と、いう訳で。まぁ簡単に言うと、オマエラは全く意味のない事をしてたって訳だよ。全く笑っちゃうよね、うぷぷぷ~!」

「「「「(うぜぇ…………)」」」」

「あははははっ、何だ、取り越し苦労だったのね~」

「おお、かぐっちゃん、君はいい奴だなぁ。他の連中はこいつうぜぇって顔してるもん」ケラケラ

「あら、そう?大丈夫、これでも皆安心してるわ。ねぇ、永琳。そう言う事なら、地上の密室を解いても良いんじゃない?」

 

かぐっちゃんが問う。すると、

 

「…………いえ、姫様。まだ疑問か残ります」

「疑問?」

「彼はなぜ、わたし達の事情を知っているのでしょう?確かに、間違ってはいないですが」

「んー、そう言えばそうね。高橋さん、どうして?」

「えー………?」

 

うーん、どう説明するべきなのか。素直に話すのは危険だよねぇ…………。どうしよう。そうだ、全て妹紅さんのせいにしよう、そうしよう。

 

「……………藤原妹紅。知ってるよね、2人とも?」

「「!?」」

「彼女とは知り合いでね。彼女なら、君達の事情や、境遇を知っていても、おかしくないでしょう?その情報を素に推測をすれば、ある程度は分かることだよ。蓬莱山輝夜という存在、月の異変、幻想郷…………。このピースがあれば、ある程度の予測は出来る。そうだろう?」

「…………なるほどね………。うん、理解したわ」

 

どうやら3人とも理解してくれたみたいだ。the 妹紅さんパワー。

持つべきものは責任を押し付けられる知り合いである。

 

「まぁ、上手くいったという事で、今日はここら辺で解散ってことで」

「いや、別にいいけど。私居る意味あったの?」

「ないな」

 

もともとは戦う気だったからね、仕方ないね。説明を終えて、ある程度納得してくれたので、鈴仙に能力を解いてもらって帰ろうとしたら、かぐっちゃんから声を掛けられた。

 

「……………ねぇ、高橋さん」

「なに、かぐっちゃん」

「……………ちょっと、二人で話さないかしら?」コソッ

「え?……………デートのお誘いか?」ニッ

「ふふ、まぁ似たようなものね」

「ん、いいよ。可愛い子なら大歓迎だ」

 

そう言う事なら、少し付き合おうじゃないか。

 

「おーい、ゆかりーん!ちょっと用事があるからさ、先帰っといていいよー!」

「あらそう?なら、それじゃあね、凜。役に立ったわ、褒めてつかわす」ニュッ

「ははっ、ありがたき幸せ………って、じゃあね」

 

 

「イナバ、お茶を持ってきてくれるかしら?」

「あ、はい、ただいま」

「永琳、少し席を外してくれる?」

「………………流石に、正体不明の人間と二人きりというのは……」

「あら、男女の逢引きに、他の人が口を出すのは不粋よ?」

「…………ふふっ、言っても聞かないですよね、解りました、それでは」ガラッ

「ええ」

 

永琳が去り、入れ違いに鈴仙が入ってくる。

 

「姫さま~、お茶をお持ちしました~」ガラッ

「姫さま、お茶です」コトッ

「ええ、ありがとう」

「どうぞ、粗茶ですが」コトッ

「ありがと」

「それでは、失礼しますね」ガラッ

 

「さて、かぐっちゃん、話ってなんだ?」

「……………少し、外に出ましょうか」

 

そう言うとかぐっちゃんは、お茶を持って外に出た。俺もそれを追いかける。

 

「ふふ、風が涼しいわね」

「ああ、そうだな………。あ、そだ」ギュッ

 

かぐっちゃんの手を握った。

 

「え?」

「せっかくの二人の初デートだ。少しはデートらしくなるだろ?」

「………………ふふっ、そうね、それに………あったかいし」

「夜デートの醍醐味って奴かな」

 

かぐっちゃんは俺の手を掴みながら、空を飛んで永遠亭の屋根の上に上がった。

 

「今日は月が綺麗。地上から見た月は、とても綺麗なのだけど……。私は、地上の方が楽しいわね」

「かぐや姫、だっけか………。月の都って、どんなとこなんだ?」

「地上より遥かに優れていて、とても美しいところね。でも………私は好きじゃないわ」

「へぇ、何で?」

「だって、みんながみんな私を特別に扱うでしょう?私だって人なのだから、周りが畏まっていると楽しくないじゃない、そうでしょう?」

「なるほどなぁ………」

「ええ、そういう事なのよ………あ、そう言えば、高橋さんって、妹紅とはどんな関係なの?」

「どんな関係って…………うーん、店の常連?」

「え?あの子店なんてやってるの?どんなお店?」

「え、焼き鳥屋だけど」

「えー!?か、仮にも貴族が、焼き鳥屋………ぶはっ」

 

あはははは、と、彼女は大笑いする。見た目からの儚い印象とはかけ離れているが、とても可愛い。

 

「あはっ、笑ったわー。ねぇねぇ、今度の逢い引きはそこに行きましょうよ」

「あっは、残念ながら釘を刺されてるからね。そんな事したら出禁になっちゃうぜ」

「えー、いいじゃない、行きましょうよー」

「あっはっは、別に構わないけどさ。妹紅さんに怒られても知らないよー?」

「大丈夫大丈夫。私と妹紅の仲だもの」

「そうだね、殺し愛出来るレベルの仲良しだもんねぇ、あはっ!」

「そうそう、仲良しよ?うふふっ!」

 

二人で笑う。大いに笑う。とても楽しくデートを過ごした。

そして、デートが終わり、別れる事になった。

 

「…………ねぇ、高橋さん」

「今思ったけど高橋さんはかたいよ、かぐっちゃん」

「あら、確かにそうね。うーん、あなたがあだ名だから………私もあだ名にしましょう。えーと…………りっちゃんにしましょう!いいわよね、りっちゃん!」

「別にいいけど、かぐっちゃん」

「それでりっちゃん、今日の逢い引きはとても楽しかったわ。一度言ったけど、私って気兼ねしない友人が居なかったから………。だから……………また、一緒に遊びましょう?」

「あはっ、時間が有ったら、ね」

「ええ。それじゃあ、またね」

 

かぐっちゃんと別れ、俺は博麗神社へ帰り、異変の疲労を癒すのだった…………。まる。

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