東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
「……………………あは♪なんのつもりかな?」
「…………なっ………!?」
「止める気無かったよね?この刀」
自分の手で止めている刀を動かして問う。
「な………なぜ、止められるんですか………!?」
「聞いてんのこっちなんだけどねぇ………。まぁいいや。言葉を出した時に君の位置を把握、その刀を止めた。それだけだけど?」
実にそのまんまである。
「あ、ありえません!確実に必殺の速度で振り下ろした筈!あなたの速度では、反応できるはずがない!」
「はぁ?あの程度で何をほざいてんのさ?」
あれくらいなら、射命丸やレミリアの方が数段速い。
「ふざけないで下さい!先程までのあなたの速度なら、対応は不可能な筈です!」
「きゃんきゃん喚くなよ………。ああ、何か萎えてきたなぁ………。ああ、アレは能力を使わない場合の速度だよ。君も長いこと生きてんならさ、解るでしょ?そりゃ能力使えば強くなるさ」
「………………そ、それは………」
「それより、俺も問いたいね。俺を殺そうとしたのは………」
「………っ!」ビクッ
「まぁ、そこで見ている豊姫ちゃんが関係してるんだろうけど。そんなのはどうでもいいんだよねぇ」
「…………え?」
「うんうん、月の都が危ないー、とか、危険分子は排除ー、とか、そんなんはどうでもいい。気になるのは………君の気持ちの方だ」
「私の―――気持ち?」
「ここからは俺の推測だけど。君も、俺の能力という不確定要素の存在は分かってたはずだろう?なのに、自分の位置を明かした。言葉を出すことで。それは君が―――俺を殺したくなかったからじゃないの?」
「…………っ!?あ、ありえないっ!そんな訳がある筈がない!私は――――ここのリーダーなんですよ!?」
「そうだねぇ、私情をはさむのは良くないよねぇ。でも、君が本気で殺す気なら、刀何てちゃちなもんじゃなくて、神の力でもなんでも使えばいいじゃないか。そっちの方がよっぽど確実に俺を殺せた。そう思うだろう?ねぇ、豊姫ちゃん?」
「……………そうね。確かに、この子には迷いがあったわ」
「…………っ!?お姉様まで!」
「依姫。私は貴方が生まれてからずっと、貴方のお姉ちゃんなのよ?それくらい判るわよ。認めなさい」
「……………………………。た、確かに、少しの迷いがあった事は、その、認めます………」
「あは、嬉しいことだねぇ。わざわざ月にまで来て、敵を作るのは面倒だし」
「………………う」
「うーん、殺りたくないなら、殺らなきゃ良いじゃん。ダメなの?豊姫ちゃん」
「……………えー、ここで私に回すの?」
「だって、殺りたくないんだって。出来る限り、友人の望みは叶えてあげたいじゃん?」
「自分のためじゃないの?」
「いやまぁ、そりゃ死にたくないけど。つーか死んでやる気もないけど。殺る本人が乗り気じゃないと抵抗しがいがないって言うか。そうだ、君が殺れば良いんじゃね?」
「………………何で私達、こんなに軽く会話してるのかしらねぇ…………。さっきまで私達、険悪じゃなかった?」
「まぁいいじゃんいいじゃん。楽しく会話しよう。おーい、依姫ちゃんも混ざろうぜ。両手に花的な状態になろうぜ」
「…………………この子、意味わからないわねぇ……………」
「えーと、これより、俺を殺そうぜ会議を始めるぜ。司会進行を務めますは私、高橋 凜です。はい拍手ー」パチパチパチ
「えぇと、色々突っ込みたいことはあるんですが…………」
「……………とりあえずこの子に従っときましょう」
「はぁ……………」
「おいおい、テンション低いぜ。君たちの為にやっているんだよ?もっと有り難くしてくんなきゃね」
「はぁ…………」
「そりじゃあ、まずは豊姫ちゃん!」
「……………何?」
「とりま、君が俺を殺したい理由をあげてちょ!」
「……………えー、それを凜くんに話すの………?」
「グダるな、働け。じゃなかった、グダってないでさっさと話せ」
「何で本人に話す流れになってるのかしら……………」
「わかりません」
「でしょうね……………」
「えーと、理由はいくつかあるのだけど、比較的大きな理由としては、あなたの事が良く分からないから、があるわね。未知の存在ほど、怖い物はない」
「ほうほう。つまり、自己紹介が必要だと。おっけー、高橋 凜18歳。職業は幻想郷のガーディアン。保有している能力は事象を理想的にする能力。17まで幻想郷のある世界とは違う世界からゆかりんに連れてこられて、今日まで幻想郷で過ごした。今日月に来た理由は暇つぶし。これでいいかい?」
一気にまくし立てる。
「………………あなたの能力で、ここを潰すことは?」
「もち、可能だね。というか、多分月ぶっ壊せるよ」
結構規格外な事しても少し精神疲弊するくらいなら、こんなちっちゃな衛星位壊せんじゃない?こう、一日くらい倒れるかも知れんけど。
「……………!…………ごめんなさい、凜くん。私も早まったことは認めるわ。もう殺すなどとは言わない。けれど…………月の都に来ないでくれるかしら」
「わー、いきなり散々な言われようだなぁ。……………うーん、俺ってば毎日を自由に生きてるからねぇ。それに制限がつくのは勘弁願いたい」
要するに毎日をお気楽に過ごしたいんだ。だからやれない事が出来ちゃうのは面倒だ。
「頼みを聞いて欲しいのなら、対価を出さなきゃねぇ。君はその要望を叶えるために、何をしてくれるのさ?」
「逆に聞かせてもらうけれど、何をして欲しいの?私に出来る事なら、してあげるから………」
「うーん、そうだね………。こんなのはどう?」クイッ
「…………え?」
あごを持ち上げ、豊姫ちゃんの目を見ながら顔を近づける。
「豊姫ちゃん………。君が欲しい。一日でいい、君が俺のモノになってくれるなら、その希望、呑んでもいい」
「…………~!?」カァッ
「あはっ、赤くなった。うん、やっぱり人はこうじゃなきゃいけないよね」
やっぱり人間、感情が動くほうが魅力的だ。
「…………う。そ、それじゃなきゃ…………ダメ?」
「君が欲しいものって言ったんでしょ?なら俺は君が欲しい。君じゃなきゃダメだ」
「……………う、うう…………」
「月の都、守りたくないのかい?」
「…………わ、分かった、分かったわよぅ…………」
「いい子だ」ナデナデ
「??」
依姫ちゃんが不思議そうな顔をしている。因みに彼女からは、俺の頭しか見えていなかったりする。位置の関係で。どんな位置だよって?そういう位置だ。
「あの、お姉様。どうなったのです?」
「……………や、やっぱり、殺すのは、そのぅ…………やりすぎかな、と思うし…………、だから、ここに来ないように言っておいたわ。今から帰るって」
「…………うん、観光が出来ないのは残念だけどさ、しょうがないよね?」ニヤニヤ
「そ、そうですか………良かった」
「俺としては君たちに会えなくなるのは残念だけどねぇ。豊姫ちゃんに言われちゃあ仕方ない」ニヤニヤ
「う、うう…………」
「す、すいません、こちらの事情で」
「いいよ、気にしてないからさ。じゃ、そろそろ行くわ」
「じゃ、静かの海でね?」ボソッ
豊姫ちゃんに密かに告げて、静かの海へと転移した。
「んー、さてさて、成り行きで豊姫ちゃんを1日好きにできる券を手にしちゃった訳だけど。どうしようかなぁ」
彼女が期待しているような、エロ同人みたいにっ!、な行為はしないけれど。
しばし待つ。すると、
「お、お待たせ…………」
「うんにゃ、そんなに待っちゃ居ないさ。依姫ちゃんには言ったのかい?」
「え、ええ…………」
「そうかい?………………あっ!?」
「?どうしたの?」
「依姫ちゃんに渡す物有ったんだ!ごめん、豊姫ちゃん。少し待ってて!転移!」
綿月家の裏庭へと転移。
「依姫ちゃん!居る!?」
「はいっ!?ど、どうかしました?」
「忘れ物。君に渡すものが有るんだよね」
「渡す物?」
「やごっちゃんの手紙」
「や、やごっちゃん?誰ですか、それ………」
「それ読めば分かると思うぜ。じゃ、ちょっと急ぎの用件が出来たんでね。今度こそ、じゃあねー。転移!」
依姫ちゃんに手紙を手渡し、静かの海にワープする。
「ふぃー、まだ居て良かった」
「何を渡しに行ったの?」
「んー?あはっ、君には関係ないんじゃない?アレよりもっと嬉しい物を貰えると思うしね」
「?………………あ」カァ
「…………?………あ、豊姫ちゃん、君って中々妄想たくましいねぇ。女の子がそういうことを自分から期待しちゃダメなんじゃないか?」
「…………き、期待してないもん」
「そう?というか、残念ながら君の期待してるような事はしないよ?ただ、俺は君の恥ずかしがる姿が見たかっただけだよ。思ったとおり、すっごく可愛かったよ?」
「………え………そうなの……?わ、私の覚悟は一体………ああ………」
「あっはっは、君が望むなら、してあげなくも、無いけどね……?」
「……………(*ノωノ)ポッ……あう」
「じゃ、そろそろ行こうぜ?」
「…………ど、どこに……?」
「ホテル」
「………………あ、あう………」
「あは、冗談だよ。一々可愛い反応しないでよ、俺を萌え死にさせる気か?」
「…………あ、貴方が私を困らせるからでしょ?」
「あはっ、確かに。そんじゃま、行こうじゃない」
「だから、何処によ?」
「デ・エ・トに、だ。さぁ!人間から忘れられた者達の楽園!幻想郷に招待いたしましょう!転符「博麗神社」!」
スペカ風に言ってみた。なんか、相手と位置を入れ替えるスペルカードも作ってみようか?相手の弾幕を相手にぶつける事が出来るんじゃね?まぁ、いいや。
博麗神社に転移成功。霊夢に見つかると何となく面倒な気がしたので、博麗神社の裏に転移した。
「おや、いきなり誰かが現れたわ」
「………?誰ですか?………!?」
なんだこの、溢れ出る邪気は!?
こいつは危険だ。これ程までの怨念を放つ怨霊は初めてだ。近づくだけでも精神が蝕まれる!
「消えてくれ!理想恋符「マスタースパーク」!」
霊力の奔流が、緑髪の怨霊へと向かう。
「おやおや、これはあの子の………ふむ」
「ルーチストアレント」
強大な魔力を内包した怨霊のビームが、理想マスタースパークをいとも簡単に消し去り、こちらに向かってくる。
「……っ!豊姫っ、危ない!」
「え?………きゃああああっ!!」
転移にタイムラグが有ったせいで、俺より少し遅れてきた豊姫ちゃんに、怨霊の魔法が向かっていく。このままじゃ………!
「あら、やり過ぎてしまったようね。戻ってらっしゃい」
豊姫ちゃんに当たりかけていた怨霊の魔法が、怨霊自身へと戻り、彼女の体に魔法が吸収されていった。
「え?………………豊姫ちゃんっ!」
豊姫ちゃんの無事を確認する。ショックで気絶しているようだが、目立った外傷は見受けられない。
「よ、良かった………」
「1つ聞いてもいいかしら?」
怨霊が俺に話しかけてくる。先ほどの規格外な魔法、そしてこれ程の邪気。ここは非礼を詫びておくべきだろう。
「ええ。なんの質問でしょうか?」
「さっき、貴方が使ってた魔法なんだけど、あれって魔理沙のよね?」
「ん、魔理沙の事、知っているんですか?」
「あの子が1人、霧雨の家を飛び出してから、あの子の親代わりとして、面倒を見てたのよ」
「……………すいません、魔理沙の親代わりともしらず、無礼を働きました、お詫びします」
「あー、いいのよいいのよ。私の外見もアレだしね」
「ありがとうございます」
「………………魔理沙、元気にしてるかしら?」
「はい、それはもう。お名前、聞かせていただけますか?」
「魅魔よ。貴方は?」
「凜です」
魅魔、かぁ。そういや、旧作にそんな人物いたような。俺の知識って、原作の内容は三部作の内容だけなんだよなぁ。他は、大まかなキャラ名と能力名だけなんだよね。それも旧作キャラは全くだし。確か、Win版キャラじゃ霊夢とアリスと風見幽香が旧作に居たんだっけ?
「それにしても、お見逸れしました。先ほどの魔法、素晴らしかったです。強力さ、速度、柔軟性。どれも高水準で」
「ふふ…………大したものではないわ」
「いえ、凄いですよ」
「…………ありがとう」
「では、魅魔さん、そろそろ失礼させていただきます」
「ええ、これからも魔理沙と仲良くしてやってね。ひねくれて見えるけど、あの子はどこまでも真っ直ぐで、強い子だから」
「ええ、分かっていますよ。アイツのカッコ良いところは。これからも、仲良くしますよ。それでは」
魅魔さんと別れ、しばらく林の中を歩く。
「豊姫ちゃん、起きて」
「………………………う。何があったの………?」
「ごめん、豊姫ちゃん。怖い思いさせて。俺のせいだ………」
迂闊に手を出すべきでは無かった。あれほどまでの嫌悪感を感じたのが初めてだったからって、いきなり攻撃するなんて。ないだろう、常識的に考えて。何処へ行く、俺の常識…………。幻想郷では、常識に囚われてはいけないのですね!じゃないよ、東風谷早苗さん………。常識さん大活躍だよ、ないと困るよ………。
「……………いいのよ。訳も分からないまま攻撃されたのは、そりゃあまぁ怖かったけど」
「うぐ…………悪い」
「ふふっ、だからいいって言ってるでしょう?それに………私は今日一日、あ、あなたのモノなんだから………」
「……………あっは、それもそうだね」
「うん、許す♪」
満面の笑みでそう告げる豊姫ちゃん。でも、この子の顔を見られるのも今日だけなんだよな………。
「あは、ありがと、豊姫ちゃん」
「いえいえ、どういたしまして」
「それじゃ、デート行こうかデート。ま、幻想郷だから普通のデートスポットなんていけないけどね。そうだな…………まず、君の行きたいであろう場所、行くか。転符「永遠亭」」
永遠亭へと転移する。
「えーと、凜くん、ここは?」
「そうだねぇ、君が確実に喜ぶ場所かな?ま、とりあえず、中に入ろうよ」
「ええ、分かったわ」
永遠亭の戸を引き、中に入る。
あ、サプライズしよう。豊姫ちゃんには俺以外の人物を感じ取れないようにし、ここにいる全員には豊姫ちゃんを感じ取れないようにしておこう。あはっ、リアクションが楽しみだねぇ………。
「お、まずはばてっちゃん発見」
うさ耳の黒髪少女を発見。近づき、話しかける。
「おーい、ばてっちゃんー」
「ばてっちゃんて誰のことウサか………。って。凜じゃん、どうしたの?」
「んー?ちょっとレイちゃんとやごっちゃんとかぐっちゃんに用があってね。ちょっと居間に集めてくれない?」
「えー、面倒だよ。鈴仙にでもやらせれば良いじゃない」
「まぁまぁ、そう言わずに。君も面白いもの見れるんじゃないか?ちょっとしたイタズラなんだけど。ま、君が嫌なら仕方がないけれどね」
「…………………ふーん、まぁいっか。やってあげるよ。兎にでも任せればいいしね」
そう言うとばてっちゃんは、廊下を走り去っていった。
「ねぇ、凜くん。さっきからなんで独り言をぶつぶつしてるの?」
「あはっ、それは分かってからのお楽しみ」
「??」
2人で他愛もない話をしながら、居間へと向かうと、そこにはかぐっちゃん、やごっちゃん、レイちゃん、ばてっちゃんが居た。
「いやー、速いなぁ。流石だぜ」
「りっちゃん、あなた月に行ったんじゃ無かったの?」
「あは、追い返された」
「ああ、やっぱりね」
「その代わり…………戦利品を持ってきた」
「戦利品?見たところ、何も持ってないように見えるけど」
「ねぇ、また独り言…………」
「さてさて、戦利品をお見せしよう。さぁ、張り切って、どうぞ!」
豊姫ちゃんには永遠亭の皆を、永遠亭の皆には豊姫ちゃんを知覚できるように、元の感覚へと戻す。
「え?」
「と、豊姫?」
「や……………八意、様………?」
「ちょ……………ど、どういうこと何ですかー!?」
「わ、私に聞かないでちょうだい!凜、どういうこと!?な、なんで豊姫がここに…………」
「あはははは、動揺しすぎ。言ったでしょう?『戦利品』だって」
「わ、訳がわからないんだけど……………」
「つーまーりー、貰ってきちゃった☆てへ☆」
「ちょ……………はぁー!?」
…………………………青年事情説明中…………………………
「という事なんだよ。理解できた?」
月に来てから起きたことを、魅魔さんの事を除いて説明した。関係ないしね。
「………………ひとまず。理解はしたわ。本当に…………よくもまぁ、貴方は…………」
「ねぇねぇ、私の事覚えてる?豊姫」
「はい、覚えていますよ、姫様」
「あんまり会ったことは無かったけどね。まぁ、ゆっくりしていきなさいな」
「ありがとうございます」
「やごっちゃん、かぐっちゃんを見習えよ。もう順応しているだろう」
「アレは何も考えてないだけでしょ………。はぁ」
まぁ、同感である。
「八意様、お久しぶりです。こうしてまた、お会い出来る日を待っておりました」
「……………ええ………そうね」
「はい」
豊姫ちゃんの目からは、やごっちゃん………いや、『八意 ××』に対する、絶対的な信頼と敬意が感じられた。
「おいおいやごっちゃん、せっかく会えた弟子だぜー?もっと何か無いのかよ?」
「なんで貴方がそれを…………いいか、もう。あなたに何を突っ込んでも無駄って分かったし」
「え…………や、やごっちゃん、俺に何をつっこむの……?いやんっ!どぉ、どうしてもって言うならぁ………そのぉ、良いよぉ?」
「気持ち悪いっ!」
「あは。おお、こわいこわい。あ、やごっちゃん、君の手紙、一応届けたからね」
「………そう」
「凜くん、手紙って?」
「えー?あぁ、依姫ちゃんに渡すものが有るって言ったじゃない?それだよ、それ。帰ったら見たらどう?」
「………そうしようかなー。それにしても、凜くん。会わせてくれるなら言ってよー。私にも心の準備ってものが………」
「俺のモノの癖に口答えするんじゃないぜ」
「う、それは…………そうだけど」
「あは」
「レイちゃんー、君も知ってるでしょー?君の元ご主人様だぜ」
「レイちゃんって何ですか……。まぁ、良いですけど………。お久しぶりです、豊姫さま。お元気そうで何よりです」
「レイセン。貴方っていきなり消えたもんねー。依姫と少し探したっけ……………」
「そ、それは………すいません」
「ううん、いいのよ。あなたにはあなたの意思が有るのだから」
「…………ありがとうございます」
頭を下げるレイちゃん。月で仕えていた豊姫ちゃんと依姫ちゃんへの罪悪感が、有ったのかも、知れない。憶測だけれど。
「どうだったよ、ばてっちゃん?」
「ウサウサ、お師匠さまがあんなに驚いたのを見るのは久しぶりだったね。私が永遠亭に行った時以来じゃないかな」
「そう言えば、なんでお前は永遠を拒めるんだよ?歴史が動かない筈の永遠亭に、なぜお前という変化が起きた?」
「………………知りたい?」
「まぁね」
「……………ま、アンタなら別にいっか。ついてきな」
「おう。悪い、ちょっとトイレ行ってくる。豊姫ちゃん、楽しめよ?」
「ええ、分かったわ、いってらっしゃい」
ばてっちゃんについて行くと、やがて彼女は、廊下の隅で止まった。
「ばてっちゃん。俺の推測を聞いてくれるか?」
「……言ってみなよ」
「君の正体は、神話の因幡の素菟(いなばのしろうさぎ)……だろ?」
「なんでそう思う?」
「話では、君は迷いの竹林が高草郡だった時から生きていて、兎達のリーダーだったらしいじゃないか。それほど迄に昔から生きているならば、安易に有名な兎である因幡の素菟を思い浮かべても、仕方ないだろう?」
本当はその可能性が高い、という事を元の世界でニコニコ大百科で見たから、である。てゐ、という変な名前に興味を感じ、俺が珍しく東方キャラで調べたキャラなのだ、てゐは。
「……………………ま、いいけど。その通りだよ、私は因幡の素菟」
「そうか。俺は、それが永遠を拒める理由に繋がると思ったが、違うか?」
因幡の素菟は縁結びの神だったはずだが、この世界でもそうであるとは限らない。
「間違っていないね。………ねぇ、凜は因幡の素菟の神話について、どれくらい知ってる?」
「…………あー、簡単に言うと、ワニを騙して、失敗して、剥がされて、今度は君が大穴牟遅の兄弟に騙されて傷を悪化、それを大穴牟遅に助けてもらった、って言う話でしょ?」
「あはは、随分とざっくり言うわねぇ。…………そう。その後私はヤガミヒメはダイコク様の兄弟より、ダイコク様を夫に選ぶと予言した。結果その通り、ヤガミヒメはダイコク様を妻に選んだ」
うん、ここ迄は神話通り。その事から因幡の素菟は、縁を結ぶ神として信仰された筈だ。
「あんたも分かってるだろうけど、因幡の素菟は縁結びの神。私は崇められ神になった。でも……ワニを騙した経験から、私は人を騙し国を騙し、崩壊させる祟り神としての側面が出来た。人の反応は千差万別、縁結びの神として崇める人もいれば。祟り神として恐れる人も居るだろうさ」
「…………………なるほど。だが、ならなんでお前は今、妖怪なんだよ?」
「祟り神と妖怪って、実は似てるよね?どっちも人間に害を与える存在。なのに、なんで神と妖怪で別けられている?」
「そりゃ、信仰を受けているからだろ?祟りを受けないよう、敬っておく訳だから…………」
「そうだね。祟り神と妖怪の違いはそこだ。恐れて敬うか、恐れて排除するかの違いだよ」
「実際に私は沢山の人を騙して来たからね、相当な信仰があったと思うよ。縁結びの神としての信仰も合わせれば、相当な神だったはず」
「まぁ話を戻すけど、数百年前、私はある退魔業の人間に攻撃された。あんたも知っての通り、私は弱いから、すぐに逃げた。信仰はその神の元々の能力を強める物であって、武力とかに転じられるものではないからね」
「その時だ、人間は私を敬う対象から、迫害する対象へと切り替えた。私を祟り神として崇めていた地域では、私の縁結びの神としての側面を見ていなかった。その地域では、因幡の素菟は神ではなく、妖怪として扱われるようになったわけさ。私ゃもう嫌になって、その地域を抜け出した。そして、隔絶された地域で、『因幡てゐ』と名乗り、人を騙し、因幡てゐという妖怪が生まれたわけだ。その隔絶された地域ってのが、高草郡、今の迷いの竹林、って訳だよ。理解できた?」
「…………………アゼン」
理解はした、理解はしたが………脳がそれに追いつかない。スケールデカすぎだろ、マジで。俺もう頭痛いよ………壮絶すぎる。たかが人間の一個人が聞く話じゃない。
「ばてっちゃん…………君、実は凄い奴だったんだね………」
「えっへん、どうよ」
「自慢できる凄いことじゃねえよ……」
だが…………。
「ばてっちゃん、君が妖怪である理由は分かった。本題に移ろう」
「本題?」
「なぜ永遠を拒めるのか、だ」
「あぁ、そう言えばそういう話だっけ。さっきも言ったけど、私は騙しの悪神としての力があったわけ。それは妖怪になろうと変わりはない。恐れようが敬おうが、どっちにしろ力は変わらないからね。私には人間を幸運にする能力とは別の能力を持っていたんだ」
「それは?」
「察しはついてるんじゃない?『騙す程度の能力』だよ」
「…………えらくざっくりしてるな」
「私は永遠亭の人間を騙しただけ。歴史は変わってなど居ないのに。変わったと思い込む。つまり私は永遠亭の人間を『そういう』事にしただけ。永遠なのには変わりはない、だから私は永遠亭には入れない。けれども皆にとっては私は既に永遠亭の一部。永遠の一部なのに永遠の外に居る、という矛盾が生まれる。ゆえに、世界が能力を解かせてしまう。私が作った矛盾をなくす為に。解いたあと私ごと永遠にしてしまえば、後は終わり」
世界?
「世界には…………そんな強制力が有るのか?」
「……………人は空を飛べない。なのに、あんたはなぜ空を飛べる?」
「…………霊力があるからだ」
「そうだね。例えば、あんたが非常識の力が失ったのに、空を飛んでいたとしよう。その矛盾を解決するために、世界はあんたに空を飛べる理由を齎そうとする。仲間の想いが、彼に力を取り戻させたのだ!にみたいな感じにね」
………………にわかには信じがたいが、世界の強制力、か…… 。
「ま、そんなのはどうでもいいよね。目の前の子はただのいたずら好きの美少女じゃないって事だよ。敬うがいい!」
「へー、分かりましたー、ばてっちゃん様ー。でもー、自分で言うことじゃないと思うー」
「ウサウサ、分かったなら帰るよ」
ためになる事を聞いた気がする。一種の世界論…………。世界は、結果に過程を求め、矛盾を起こさないよう調整している。だが…………それを行うのは誰なんだ?世界が結果に過程を求めるという『結果』にも、『過程』が存在すると思うのは、間違いなのだろうか……?あるとすれば、紫が言っていた『神』。それが関連するのではないのだろうか。そう言えば、まだなのかな?会わせてくれるって言うの。
「ああ、この事は秘密にしといてね」
「え?…………知られたくないのか?」
「ここにいるのは、因幡てゐだからね。因幡の素菟じゃないのさ」
「ふぅん…………まぁ、いいよ?」ニイッ
中々かっこいい事を言うじゃないか。
「でも、それなら何で、俺に話してくれたんだ?」
「……………ウサウサ、気まぐれだよ、気まぐれ。なんとなくさ」
「………………嘘だね」
「嘘じゃないよ。大部分はそれだ。ただ……………過去の私を知る者が、私だけというのは…………少し悲しいかなって、思ったのも確かかな」
「あは、あっそー」
「軽いねぇ。もっとなんかないの?」
「君はそれを求めていない。そうだろう?」
「…………見透かしたこと言うなぁ」
「知ってるからね」
「…………あんたは、何でも知ってるんだね」
「なんでもは、知らない。知ってることだけさ」
「…………ふぅん」
まさかこのタイミングでその質問とはな。達成感がすごいぜ。実際色んなことを知っているけど。
「っと、ついたみたいだね」
居間へと戻ってきた。中に入る。
「あら、随分と長いトイレね」
「デリカシーがないぜ、やごっちゃん?」
「……………何か、聞いたんでしょう?」
時間差で戻ってきたばてっちゃんを見ながらそう言う。
「………………さすが賢者様。お見通しって訳?」
「あら、本当にそうだったのね?」
「……………あは、カマかけられちゃった。やれやれだぜ」
大げさに頭を振る。Oh My Got Together!
「それで。話す気はないんでしょう?」
「もちろん。パーソナルデータを本人の許可なく教えちゃダメなんだぜ?」
「………………良いけどね。かなり重要な事みたいだけれど、てゐに話す気がないなら、無理に聞き出す事はしないわ」
「あは、それがいい。さすが賢者様、かっくいー」パチパチ
「本当に掴めない性格ね、あなた」
「あはー、嘘言わないでよ、あなたなら、ある程度掴めているんじゃないの?」
「………………本当に、嫌な性格ね」
「あははっ、嫌われちゃったか。まぁいいや」
「八意永琳。俺の事を理解しようとしちゃいけない。分かった気になっても、それは本当に俺を理解してはいない。その勘違いは必ず君を追い込む。それなら理解しない方が、まだマシというものだ」
「俺は化物(オレ)。それは変わりないのさ、幼少期の頃からな」
何も変わりはしない。どれほど優しく見えても、どれほどいいやつで有っても、それは俺の化物(オレ)性を無くすものではない。
「…………………あなたは…………本当に………」
「理解できない」
永琳の目から観察性が消え、ワケのわからない物を見る目に変わる。
「あは、それでいいよ、それでいい。八意永琳。君も俺の表面だけを見ればいい」
「それが人間ってもんだろ?見たいものだけ見ればいい。見たくないものは見なくていい。理解できるものだけ理解すればいい」
「理解できないものは、理解しなくていいのさ」
じゃあね、と―――。そう告げて、やごっちゃんに背を向けた。そして。
「あっはー!とっよひっめちゃーんっ!」ダッキ--!
「ギャアァァァァ━━━━━!!!」
「あはぁ、あっはーー!ダメだぞぉ、女の子がギャアァァァァ━━━━━━(|||゜Д゜)━━━━━━!!!!!!なんて言っちゃあ!全くぅ、全くぅ!」
「は、離れなさいーー!」ズドォン!
「げはぁ!」
豊姫ちゃんに抱きついたら、思いっきり突き飛ばされました。因みに、俺にシリアスとギャグの境界はない( ・`ω・´)キリッ
「全く、俺がいくら強いからって、月人の人外じみた腕力でどつくなよぅ、骨折れるよ?」プランプラン
「折れてるわよ、骨」
「ははっ、確かにっ!あっはっはー!」
「笑い事じゃないと思うけど!?」
「じゃあ八意くん、君の能力で治してくれたまえ」
「偉そうに言う事でもないと思うわよ!?」
「なんだよ、可愛いなぁ」
「その文脈はつながっていない!」
「あははは、ごめんごめん、やごっちゃんに手間はとらせないって。骨の状態の理想を、折れていない状態に…………っと」
便利だよね、能力。
「豊姫ちゃん?俺のモノの癖に、俺に暴力を振るうとはねぇ……オシオキが必要だね」
「な、何をする気………?」
「敬語」
「へ?」
「敬語使えよ、敬語。主人には敬語、当たり前でしょ?」
「……………分かり、ました……」
「ねぇねぇりっちゃん、豊姫があなたのモノって?」
「貰っちゃった☆」
「ふぅー………」
「ひゃんっ!な、何をするんですかぁ………」
「ぺろ………すぅー………」
「んぅ……そ、そんなとこ、舐めちゃ、ダメぇ………」
「おー、エロい、エロいうさ」
「な、なにやってるんですか……!」
「本当に理解出来ない………んぅ、初めての感覚ね……」
「豊姫、顔あっかーい」
「み、見てないで………と、止めて………あうぅ………」
「ダメだよ豊姫、オシオキなんだから、甘んじて受け入れなきゃ………」
………………青年、エロすぎ…………中………………
「ふぅ、スッキリしたー」ツヤツヤ
「お、終わり、です、かぁ………?」ゼェゼェ
「豊姫ちゃん、久しぶりに師匠に会えて、嬉しかった?」
「…………い、いきなりね………ま、まぁ」
「そう?なら良かった。でも、そろそろ帰る時間だぜ」
もう夕方だ、そろそろ帰そう。
「そ、そう…………」
「送ってあげるから、皆にお別れでも言いな?」
「…………うん、分かった」
「それでは。また会える時を楽しみにしております、師匠」
「ええ」
「………………月に帰る気は、ないのですか?」
「ないわね」
「……………月詠様も、貴方が月から居なくなってしまったことを悲しんで居られます。そして、帰りを望んでいる。私や、依姫も。それを望んでおります。それでも、でしょうか?」
「…………ええ」
「そうですか。貴方様がそう仰るのなら、私も止めることはしません」
「……………凜、1つ頼んでもいいかしら」
「………聞こうか」
「これを、渡してくれる?」
そう言うと永琳は、手紙を渡してきた。裏面を見てみると「月読命様へ」の文字が。
「え………永琳、これを渡せと………?」ヒクヒク
「お願い」
「さ、さすがに畏れ多いような………。まぁ、良いけど」
「ありがとう、凜」
まぁ、いっか……。
「姫様、またお会いする機会が有れば………」
「ええ、また会いましょう」
「てゐ、レイセン。また会えればいいわね」
「…………そうですね、豊姫様」
「会えたなら、ね」
「じゃ、凜くん。お願い」
「オッケー。じゃ、綿月豊姫の居る位置の理想を、綿月の家の前へ……」
豊姫ちゃんの姿が消える。
「あはっ、じゃ、俺も行くかね」
月読命、という存在を知識で知ってさえ居れば、能力を使用できる。念のため俺の気配と存在感等、俺の存在を確認するための者を消失。そして俺の穢れも消失。そして、俺の位置の理想を、月読命の前へ。ヒュン。
「へぇ、ここが…………でっかい部屋だなぁ。ここが月読命の部屋かな?ま、手紙を置いていけばいいかな」
そーっと、そーっと。気づかれないようにしなくちゃね。
「…………誰だ、私の部屋に居るのは」
「!?」
「出てこい。出てこなければ、その体、潰す」
「…………これはこれは、月読命様。かの高名な貴方様にお会いすることが出来て、とても光栄です。ですが、なぜ私めのような矮小な存在を感じることが出来たのでしょうか」
「…………貴様から、神力を感じたからだ」
「はい?し、神力、ですか……?」
「ああ」
神に与えられた力だからか?
「そうですか。貴方様のお部屋を私の様な存在が踏み入った事、謝罪いたします。どうか、ご慈悲を頂きたく存じます」
「……………用件を言ってみろ」
「はっ、貴方様もご存じの方から、手紙を賜っております。どうかご覧下さい」
「誰からだ。それを告げよ」
「八意思兼神。地上では、八意永琳と名乗っております」
「………!?八意思兼………!?彼女から!?」
おー、やっぱりオモイカネだったんだねー。ニコニコ大百科知識なめちゃいかんね。というか最上敬語はやめたいなぁ。
「はい。では、疲れたんで失礼します。ここまで畏まるのも久しぶりなんで。じゃあねー、ヨミちゃん。君、意外と可愛い感じなんだね、もっとクール系かと思ってた」
「は!?ちょ、待て!」
「待たない。ばーい、ヨミちゃん」ヒュン
一応報告をしておくため、永遠亭へ転移する。
「よっと。終わったよん」
「そう。ありがとう」
「まぁ、いいよ。それじゃ、俺もそろそろ神社に帰るよ。また会おう」
凜は永遠亭を出て、博麗神社へと戻り、普段の生活に戻った。一方その頃。
「全く………何だったのだ、あ奴は………」
月読は、溜め息を漏らし、苦悶にその麗しき顔を歪ませる。
「しかし…………あの男………一体何者だ?人の身でありながら、神力を宿す。これだけであるならば、現人神の類ととれる。だが…………仮にも始祖神伊邪那岐命から生まれた、私を凌ぐほどの神力を有している現人神など聞いた事がない」
そう、月読は先ほどの男から、自らを凌ぐほどの神力を感じ取っていたのだ。それについて思案していた所、扉がノックされ、美しく間延びした声が響いた。
「月読?入ってもいいかしらー?」
「姉上?はい、どうぞ」
声の主、月読命の姉、太陽神天照大御神が月読の私室に入る。
「それじゃ、失礼するわね。月読、さっき誰か来てなかった?」
「……………さすが姉上、お気付きですか」
「まぁね。あれほど莫大な神力持ち、わからないわけないわ。最も、巧妙に隠されていたみたいだけれど………」
「はい」
「……………何者なの?」
「分かりません。似通った性質の神力を持った神には覚えが有りません。分かることは、それが私を凌ぐほど膨大である事のみ」
「………………まぁ、いっか!」
「…………相変わらずですね、姉上………はぁ………」
月読は、自分の姉の楽天さに再度溜め息を漏らす。しかし、その判断を間違いと断ずる事は出来なかった。余りにも情報が少ないからだ。八意思兼神からの手紙にも、彼に関する情報は存在しなかった。彼女の事、彼の神力に気づいていない訳では無いのだろうが…………。
「ですが姉上、この月の都に現れた以上、彼の危険性を論じなければなりません。彼がこの月の都に、危害を加える可能性がある」
「うー、そうねぇ…………あれだけ神力持つんだもの、相当力強いんでしょう。下手したらここを潰せるかもしれないわね………」
その時、二人目の来客を、扉がノックで告げた。
「月読命様。お耳に入れたい事がございます、入らせて頂いても宜しいでしょうか?」
「豊姫?よい、入りなさい」
「ありがとうございます」
豊姫が扉を開け、中へと入る。
「あらあら豊姫ちゃん、いらっしゃい。ほら何してるの月読、お茶淹れてきなさい」
「いや姉上、ここ私の部屋なんですけど…………そして一応、ここのトップなんですけど………」
「あっ、よろしくおねがいしますー」
「君も大概だな!?」
「こら愚妹、さっさと行きなさいよ、怒るわよ?」
「はぁ…………分かりましたよ、行ってきます………」
…………………………月読パシリ中…………………………
「ほら姉上、お茶淹れてきましたよ」
「わーい♪…………ススッ……んー!やっぱりヨミちゃんの淹れる紅茶は美味しいわぁ……!」
「もう子供じゃないんですから、ヨミちゃんはやめて下さいよ。それに、日本の神なのに緑茶より紅茶の方が好きっていうのも………。まぁ、私もですけど」
「スーッ………………ふぅ」
「それで、豊姫。耳に入れたいこととは何だ?」
「…………実は、神力を持った男が、この月の都に現れました」
「………!そいつは、蒼い髪の男か?」
「!ご存知でしたか。そうです、彼の名は高橋 凜。幻想郷の住民です」
「幻想郷、だって?八雲紫とか言う妖怪が統治している、あの?」
「はい、その認識で間違い有りません」
「なら、地上人という事よね?それにしては、穢れが見当たらなかった様だけれど」
「それは、彼の能力…………『事象を理想的にする程度の能力』に端を発するもの。彼はこの能力を使えば、この月すら破壊する事も可能だと。それを大したことでもないかのように語りました」
凜は大したことではないと思っていたわけではなく、月の破壊などただただ『どうでもいい』と思っているだけなのだが。まぁ、それを彼女が知る由はない。
「それは……予想以上ね………」
「あれほどの力の持ち主、それほどは造作もない、か………」
凜の桁外れの力を認識し、深刻な表情をする2柱。
「そんなに深刻な顔をなさらないで下さい、月読命様、天照大御神様。確かに彼の力は強い。ですが………私と依姫が彼と接触した所、彼はこの月の都に害をなす気はない、と言っていました」
「それは………確かか?」
「恐らくは。折角出来た友人に迷惑をかける行為はしたくない、する理由もない、と。私の目から見ても、嘘をついているようにも見えませんでした」
「ふむ……………どう思いますか、姉上」
「そうねぇ………。豊姫ちゃんが言っているんだもの、信じていいんじゃないかしらね」
「そうですか……………。私は実際に、彼と言葉を交わした。その時に感じた印象は…………。無、でした」
「無………ですか?」
「表面上は笑みを浮かべていた。だが、その目は………私を見ていた様で、見ていない。陳腐な表現だがな。あの目には、何もなかったのだ。だからこそ、怖い」
「そ、そんな………彼が……?」
豊姫は、あの凜がそんな顔をしている姿を想像できなかった。彼女から見た凜は気だるげで、調子に乗る時もあれど、その目は常に楽しんでいる様な、そんな存在だったからだ。
「うーん…………なんだか良くわかんないわねぇ………。私だけ会っていないんだもの、わかる訳無いわ。豊姫ちゃん、その子呼び出せないの?」
天照は面倒くさくなったので、取り敢えず会って判断しようと思った。実に脳天気である。
「は、はぁ…………まぁ、呼ぼうと思えば呼べると思いますが……」
「じゃあ会えば良いじゃない。太陽の前では、人は自らの本質を表す。つまり、太陽(わたし)が会えばわかることよ」
「危険ではないでしょうか?」
「あら、私たちが居て、抑えられないとでも言いたいのかしら?」
「……………ふふっ、それもそうですね。分かりました、凜くんを呼びましょう」
「あら…………随分と仲良さげじゃない?さっきからどうも気になってたのよねぇ………。さっきから豊姫ちゃんの心が、その子の事になると浮いているって言うか。ねぇ、まさか………好きなの?」
「はっ、はい!?い、いえ、その様な事は………!」
「あー!やっぱり好きなんでしょー!キャー!好きなんだー!」
「で、ですからぁ………あ、あうぅぅ……………」
「姉上、はしたないですよ。貴方は太陽神なんですから、もっとそれに相応しい威厳をですね……」
「私に隠し事なんて出来ないんだからね?太陽(わたし)の前では、全て筒抜けなんだから!うふふ…………何だか楽しみね~豊姫ちゃんに相応しい男の子なのか、私がチェックしてあげる!」
「ち、ちが、違うんです~!た、確かに、かっこいいな、とは思いましたけど、違うんです~!」
「…………聞いてないし。はぁ………胃が痛い」
月読命は、謎の存在『高橋 凜』と会う事より、自分の姉を抑える事の方が疲れる気がするのだった………。
てゐは素直に因幡の素兎で。騙す程度の能力はなんとなく思いついたから。一応の理屈はついたかな、って………。思っていた時期が私にもありました。ただ、世界の強制力はちょっとだけ大事。あくまでちょっとだけですが。神と妖怪の扱いには悩みました。まぁ、オリ設定なんで気にしないでください、所詮は二次小説です、作者それぞれに見解、解釈が存在すると思うので。