東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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お待たせしました、投下します………。これにて月編は終了になります。うーん、最近は本当に文が下手になってる気がします……。やっぱり、三部作は二次創作を良く見かけるからですかね………?だからマシだったのか。次は花映塚………。


24話『謎めいた男と、交わらぬ思い』

「えーと…………どう意味?かな、豊姫ちゃん」

「…………………」メラメラ

「はっ!わ、私、何言って……ち、違うの、凜くん、私は……その………か、買い物に付き合ってって意味で言ったの!」

「へ。でも、君『と』って言ったでしょ?その表現なら『に』でしょ」

「そ、それは………い、言い間違えたって言うか、その……こ、言葉って難しいね!?」

 

………………客観的に見れば、確実に誤魔化しだよね。これが俺の知り合いの話なら確実に照れ隠しだと言えるけど…………。豊姫ちゃんが、俺を………なら、まぁ、ありえなくもない、か………?まず、好かれる要因がないしな………。よし。

 

「あは、天然も程々にした方がいいよ、豊姫ちゃん。勘違いしたら大変だからね」

 

ま、あんな修造的ノリで迫られたら、取り乱すこともあるだろう。熱血じゃない人も熱血になるからね、修造的ノリは。なんせテレビで見てるだけでも熱くなるくらいだし。何を言いたいかというと、シューゾーはネ申。

 

「………………よ、良かったぁ………」ボソッ

「あらあらあらあら…………。んもう、意気地のない子ねぇ。まぁ、さっきはああ言ったけど、それが本人の意志なら、認めるつもりでは有るのよねぇ……」ボソッ

 

ぼそぼそと独り言を口にする2人。やっぱり、小声で喋る奴多いなぁ、俺の周り。もう気にしないことにしたけど。

 

「んー、取り敢えず帰っていいかい?もう用件は済んだんだろ?」

「んー、そうねぇ。用事は済んだわねぇ」

「よし、じゃーバイバイ。これからも不干渉で居てくれよ?ヨミちゃん、テラちゃん。幻想郷に手を出したら、俺は守護者としての任を果たさなきゃいけないからさ」

 

俺の能力が、最高神に通じるほどの絶対力を持ってるのか分かんないけど。

 

「ま、肝に銘じておくわー」

「分かってんのかなぁ、この人は。じゃ、豊姫ちゃん、案内ヨロシク」

「あ、うん………」

「なにどんよりしてんのさ。さっさとしてくれるかい?」

「うん………。それでは、失礼します……」

「はーい。またねー、豊姫ちゃん、リン君ー」

「いってらっしゃい、豊姫、凜」

 

side 豊姫

私と凜くんは立ち上がり、部屋を出る。はぁ………なんであんな事、言っちゃったんだろ……?好き、なのかな………。天照様が仰った通り?分かんないな……。随分と長く生きてきたけれど、男の人を好きになったことは無かった。だから、好きという感情が、どういう風な気持ちなのか、分からない。

というか、私には男性と接する機会というのは少なかった。せいぜい挨拶を交わしたり、少し喋ったりする位の事しかない。強いて言えば父だが、父は享楽的な人間の多い月人としては珍しく、真面目なタイプだった。仕事人間なのだ。接する機会は少ない。長くなったけど、私は長く接した男性がいなかった、ってだけだ。凜くんは、今の私にとって対等に接してくれる、唯一の人、だ。

って、私は何年甲斐も無く、恋愛の事で悩んでるのよ……。まぁつまり、今の私の心境は、告白しといて訂正するなんて言う、普通に失礼な行為をしてしまって、どんよりしている。まぁ、後は気持ちに悩んでいると。

 

「あは、豊姫ちゃん、手ぇ出してみ」

 

凜くんから声をかけられる。手?

 

「え?……………なんで?」

「まぁまぁ、いーからいーから」

「………?こうかしら?」スッ

 

訳のわからぬまま、片手を凜くんの目の前に突き出す。

 

「そーそー、よっと」

 

すると凜くんは、私の手を握り出した。あったかくて、大きい。って、

 

「!?あ、あの、凜くん、なんで手を握ってるの………?」

「ん?君が君じゃないから、かな?」

「え?」

「君は一人しかいないんだから、君は、『君』を大事にしてあげなきゃいけない。それを貶める事は自分だけじゃなく、君を好いてくれる人を怒らせる」

 

そう言うと凜くんは、私と繋いでいる方の手を掲げる。

 

「これは、君という人を、俺が信頼していて、好きだという俺なりの証………。俺を怒らせちゃ、危ないぜ?それこそ月ぶっ壊しちゃうかもな?」ケラケラ

 

…………。それって……。もしかして、気にするな、って言ってくれてるの………?

 

「凜、くん………」

「いつまでも辛気臭い顔してないで、もっと俺の好きな豊姫ちゃんでいなよ。分かったかい?」

 

ずるい。ずるいよ、凜くん。なんでそんなに優しいの?悪いのは私なんだから、放っておけばいいのに……。甘えたくなっちゃうじゃない、もう……。

 

「……………………凜くん」

「なにさ?」

「……………ありがと」

「……………。あは。他人を気にするには、まず自分を気にしなきゃね」

 

普段のおちゃらけている凜くんからは想像できないような目。でも、月読様の部屋でみた、無の目じゃなくて………、もっと真剣な…………。

 

「さて、準備はいいかい?」ニヤ

「もちろん!」

「あはっ♪オッケー、行きますか!」

 

私達は歩き出し、外へと向かった。豊姫 fadeout…………。

 

side 凜

おkおk、うまく行ったみたい。人と居る時は、暗い顔しちゃいけないからね。こっちまでテンション低くなるし?

 

「あ、そうだ、豊姫ちゃん、依姫ちゃんの所に行こうぜ。せっかく来たんだし、挨拶くらいしないとね」

「んー、それは良いんだけど。あの子、何処にいるのか分からないのよね」

「そっかー。あ、なら能力使えば良いじゃん」

「え、でも凜くん、もしかしたら――――」

「転符「依姫ちゃん前」」

 

転移をすると、白いもやが広がった空間に出た。なにこれ?

 

「な、なな、ななななななっ……!?」

「ん?」ヒュン

 

依姫ちゃんの声が聞こえたので、そっちを見てみる。すると……。

 

「お!?」

 

着替えに体を通している依姫ちゃんが居た。

 

「あー、なんかもわーってしてると思ったら、脱衣所だったのね。うん、納得納得。おっ、意外と依姫ちゃん、胸あるんだねー、いい感じの美乳じゃない?」

 

いやー、眼福眼福。女体の神秘って奴?

 

「し、し、し、」

「し?」キョトン

「死ねーーーー!!!!」ズドォン!

「げはーーー!!!!」ドゴ-ン!!

 

俺の意識は途絶え、気絶した。BADEND。んなわけない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

「………あー………やっぱりこうなっちゃってたかー………あはは」ヒュン

「お姉様……ですか?今、痴漢が飛んできまして………はぁ、はぁ………」

「あっはははは…………。さぁ、凜くんがダウンしましたので、ここからは私が務めさせていただきますよー?あと、ギャグ入りますよー?シリアスはおさらばです!ま、後で帰ってくるんですけどね!主にこの話の最後で!」

「お姉様、いきなり何変な事言い出してるんですか……?」シュッ

「何って…………メタだけど」

「メタですか……。好きですね、あの人も」シュッ

「あは、そうねー」

「あは………。凜さんの、うつっちゃったんですか?」キガエオワリ

「あー、よく使うよね……凜くん」

「なんで言うんでしょうね?」

「ぅあー、酷い目に有った……。うわ、変な体勢で突っ込んだせいで関節が外れてる…………よいしょっと」ゴキッ

「あら凜くん、起きたの?」

「おー、起きたぜ?つうか豊姫ちゃん、勝手に人から一人称権を奪うんじゃねぇよ」

「あら、凜くんが悪いんじゃない。私の忠告を聞かずに突っ込むから」

「あはっ、ごもっともごもっとも。ExactlyExactly」

「そう言えば、今その話をしていたんですが、なぜ、あは、とかあはっ、って言うんですか?」

「あー、俺の口癖のこと?あれはねー、語るも涙、聞くも涙な深ーい事情があるんだよ………」

「嘘おっしゃいな。どうせどうでもいい事でしょ?」

「ちょ、おま、なめんなよ!?良いだろう、教えてやる!あれはだなぁ………!」

「うん」

「なんなんですか?」

「作者がさー、なんかあはっ以外の文だけだと、なんか俺の性格とか分かりにくいなー、と思ってつけたとかなんとか言ってたけど、多分最初に使ってからしっくり来ただけ」

「あら、軽いわね、理由」

「それにメタりすぎですよ、凜さん。またロリコンに落とされたいんですか?」

「ちょ、おまえら!軽くねぇし!メタくもねぇし!いや、メタくはあるけど、軽くはねぇし!」

「あ〜はいはい、わー、すごいなー」

「憧れちゃうなー」

「く、くそぅ………みんなしてあはをバカにしやがってぇ……」グスグス

「あら、違うわよ凜くん、あはをバカにしてるんじゃなくて」

「凜さんをバカにしてるだけです」

「う、( ^o^)<うわぁぁあん!そ、そんな生徒会の○存で見たようなネタをそのまま使いやがってぇぇ!やってる奴らはいいけど、やられてる方は傷つくんだぞぅ……?」

「あー、イジメ、ダメ、絶対。的な?」

「ほら、あれですよ凜さん」

「やられる方が悪い?」

「そうそう、それですよ」

「そ…そんなぁ(±ω±`)」クスン

 

項垂れる凜くん。うーん、さすがにいじめすぎたかしら?凜くんも可愛いところあるなぁ♪

 

「ま、そりゃそうだ。やられる方が悪い、事実だね」

 

と言うと、すぐ立ち直った。うーん、切り替えが早いタイプなのねぇ。

 

「というかスルーしてましたけど、なんで凜さんがここにいるんですか?しかも私の着替えまで見て」ジト-

「いいおっぱいだったぜ?」

「ぶふっ!?」

 

流石にそれはないんじゃない、凜くん………?これは依姫も……。

 

「そういう問題じゃないんですけど………。ありがとうございます」

「おう、これからも研鑽しろよ?」

「流石に千年以上生きてるんで、大きくはなんないですよ」

「おかしくない!?礼を言うところじゃないと思うんだけど!」

「え?…………バカだなぁ豊姫ちゃんは。知らないのかな?依姫ちゃん」

「全く、無知ですねお姉様は。いいですか?」

「「ギャグならなんでも許される」」

「……………………」

「そーなのかー」エクステンド!!

 

side 凜

「で、なんでいるんですか?」

「んー…………。なんだろ、校長先生と教頭先生に呼び出しくらったみたいな?」

「呼び出しですか?呼び出しは悪いことをした時に付き物ですけど。なにかしたんですか?」

「それがさー、何もしてないんだよ、これが。理不尽な話でしょ?」

「いやいや、何もしてないのに呼び出されませんから」

「強いて言えば、やごっちゃんの手紙をヨミちゃんに渡してあげたくらいのことしかしてないよ」

「いや、それ結構重要じゃないですかね……。そう言えば、手紙、ありがとうございました」

「やごっちゃんからのやつ?」

「やごっちゃんって、八意様の事だったんですね」

「普通にわかるっしょ?」

「わかるわけないでしょう?あの人ほどの方を、あろう事かやごっちゃんなどと………」

「やごっちゃんはやごっちゃん。八意××さんがどんな奴か知らないし、知る必要もない。地上で八意永琳が、彼女らしくあればいい。そうだろ?」

「………………まぁ。いいですけど。でも、なぜその名を口に出来るかは、議論の余地があると思いますが?」

「俺にできないことはない」

「…………それで冗談にならないから、貴方は困ります………」

「( ^∀^)ゲラッゲラゲラゲラ」

「さて、そろそろ本題に戻ろう。良く考えたら、依姫ちゃんのおっぱいなんてどうでもいいじゃん」

「………着替え見られたのに、なんでそんなこと言われなきゃいけないんですか?むしろ謝って欲しいくらいなんですけど」

「お前なぁ、事故なんだし仕方ないじゃん?」

「謝ってください」スッ

「ゴメンナサイ、モウシマセン」

 

何この子、キチガイなの?なんですっごい自然に刃を首に当てるの?バカなの?死ぬの?

 

「ま、まぁ、それはともかくとして」

「なんで凜さんは、ここに居るんですか?もう用が終わったのなら、帰ればいいじゃないですか」

「これから豊姫ちゃんに突き合う事になってさー。どうせなら依姫ちゃんもどうかと思って」

「はぁ、そうですか。とりあえず、字がおかしい」

「おっとわりい。で、どう?」

「私としては遠慮したいですが…………」

「え?そんなこと言うなよ、幻想郷には、月さえあればいいんだよ?都なくてもいいんだよ?」

「ああ、やっぱりですか。仕方ありません、危険人物の監視も、勤めのうちです」

「あは、ありがと。豊姫ちゃんもそれでいい?嫌ならやめるけど♪」

「いや、誘ってから言うことじゃないでしょう………」

「ええ、別に構わないわよー。なんだかんだ言って、依姫と一緒ってのも久しぶりだし♪」ギュッ

「………もう、お姉様ったら……」

 

おー、仲いいなぁ……。レズ?

いつの時代も、仲良きことは美しきことかな。

 

「さて、行きましょか!」

 

 

「わー、これ可愛いー!ねぇねぇ依姫ー、私に似合うかなー?」キラキラ

「さぁ、どうでしょうね?」

「えー、何か言ってくれたって良いじゃなーい」ブ-

 

うん、こいつらガチでレズじゃねぇのか?どこのカップルですか?

 

「ねぇ、凜くんはどう思う?似合うかな?」

「んー、そういうのってさ、見てるだけじゃ分かんないでしょ。試着してみれば?」

「あ、凜くん分かってないわねえ。それじゃウィンドウショッピングの意味が無いじゃない!」

「あは、そう?というか、なんだこの生地?何か見たことないんですけど……!」

「え、もうかなり流通してますけど………」

「ガチか………。ん?この建築材はなんだ!?木材でもコンクリでも鉄材でもないんだけど!?というか、あの料理なんだよ、あれは……玉ねぎと、卵と、鶏肉と、ネギと………な、謎のスープ!どういう料理だよ!どういう工程してんだ!?ああもう、注視してみればツッコミ所満載だな、この街!?」

「凜くん、ステイよ!」ズビシッ

「あまり騒がないでください、ただでさえ目立つんですから、私達は」

「お、おお………。悪い………」

 

だが、仕方ないと思う。しばらく歩いてみて分かったが、謎の街なのだ、ここは。まず、木材のような物で出来ているのに、力を入れても全く、傷一つ入らない。一見卵スープのような食材が入った器に、スープが謎の油的な物を浮かべていたり、変な色してたり。なんというか、うん、

 

「面白いな、ここ!」

「でしょう?」クスクス

「ええ、本当に」フフッ

 

彼女たちは、自分の好きな物を誇る、少年の様な目をしていた。もちろん比喩だが、ここが好きな事が実に良く伝わる。いいねぇ、やっぱり………。おっと、爺みたいな事思うな、俺………、あはっ。

 

「ふぇっふぇっフェ、婆さんや、メシはまだかのう………」

「おやおやお爺さん、さっき食べたばかりですよ………」

「おお、そうだったの……………。うん、誰か突っ込みが居ないと話にならないな」

「うん、そうだね」

 

依姫ちゃんはもう慣れたみたいだし。むぅ。

 

「まぁいいや」

 

あ、そうだ、こんなのあるかな?

 

「ねぇねぇ依姫ちゃん、美術の透視図法で、消失点を4つとること、出来る?」

 

これは確か、ノーベル賞ものの問題だったはずだ。流石に解くのは無理かな?

 

「はい?………ああ………。懐かしいですね、それ。今日日中学生でも解けますよ」

「あ!?嘘ん!」

 

ここは発展しすぎなんですか?なら。

 

「じゃ、P対NP問題、ポアンカレ予想、ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題、ナビエ・ストークス方程式の解の存在とその滑らかさ、ホッジ予想、って聞いたことある?」

 

数学の七大難問。ポアンカレ予想は解かれている。5つしか覚えていないけど。しかも名前だけ。まー高校生にはあまり馴染みのない奴だし。いわゆるミレニアム懸賞問題って奴だな。

 

「ああ、やりましたやりました。本当に懐かしいですね………。結構苦労しましたよ、あれは」

え、解かれてんの?いやまあ予想はしてたけど。待てよ、元の世界に帰った時、1000000ドルもらえるんじゃ?

「……………………やめとこう、うん。戻る気もないし」

「でもやばいなー、人類の知の限界がもう解かれてるのかー」

「外では、そうなってるの?」

「まぁねぇ。解いたらマネーがもらえる問題になってるよ?」

「へぇー、それはいいねぇ」

「と、買い物は良いのか?」

「うん、別に買いたいものはないしね」

「ふぅん?というか君、お金くらいあるんだろ?可愛かったんなら買えばいいじゃない」

「んー、見てればわかるかなぁ」

 

そう言うと豊姫ちゃんは、ショーケースを指さして、お店の人に話しかける。

 

「すいません、これいくらー?」

「はい、それはですね………って、豊姫様じゃないですか!それがお気になるのなら、差し上げますよ!」

「……………ほら、こうなっちゃうのよ」

「ふーん、くれるなら貰えばいいじゃん」

「まぁそうなんだけど………。ああ、やっぱりいいわ。もっと見てからにします」

「はい、了承しました。ゆっくりなさってください」

「…………」ギロッ

 

お?なんか睨まれた。あー、彼女とでも思ったのかな?ふっ、店員さんよ、DSを誇れ!童貞(D)少年(S)である。男はいつまでも少年なのだ。しばらく店にいたが、豊姫ちゃんが外に出たので、それに付いて行く。

 

「もったいないなぁ。くれるってんだから、貰えばいいのに」

「だって、タダで貰うのも悪いし………、何と言うか、自分で買わないと意味が無い、っていうか………」

「物に対する執着がないから、すぐ物を無くすか、散乱させるんですよね………」

「し、仕方ないじゃない………。欲しかったらくれるんだもん…………」

「はー、そんなもんかねぇ……。俺も金は有ったけど、目立たないためにあんまり使わなかったからなぁ………。っと、そういやここの一番高い金ってどんなの?」

「はぁ、こういうのですけど………」

 

そう言うと依姫ちゃんは、1万円札を取り出した。へぇー、そこは同じなんだ………。ちょうどいい。

 

「ほー…………ちょっと貸してくれる?」ヒョイ

「え?」

「俺が手で掴んでいる札の枚数の理想を、10枚に………っと」

 

掴んでいた札が、10枚になった事を確認。良し。一枚取り出して、

 

「ほい、依姫ちゃん。返す」

「何をする気なんですか?」

「んー、やっぱり、お金が使える方がいいし」

「はぁ、そうですか………」

 

何か使いそうな小物は、あるかな、っと。んー、携帯とか………。電波ないか。そんなことを思いながら街を歩いて行くと、

 

「お…………。時計屋か。あった方が便利かな?幻想郷には流通してないし………。二人とも、ちょっと見てっていい?」

「いいわよー」

「構いませんよ」

「サンキュー」

 

店の中に入る。

へぇ、随分ときらびやかな装飾だなぁ。しかも安い。

 

「なんでこんなに安いの?」

「ここには穢が有りませんから、食事の必要も無いんです。だから、生活が成り立つんですよ」

「へぇ。なるほどね……。なら、働く必要もないんじゃ?」

「まぁ………そうなんだけど。仕事をする。それが、人間の生きがいにもなるのよ。それに、物資は大量に有るからね」

「便利だねぇ。じゃ、どんなのがいいかな?」

「うーん、なんでもいいんじゃない?どんなのがいいの?」

「んー、分かり易いのでいいなぁ。デジタル腕時計みたいなの」

「なら………これなんかどう?」

 

銀色で、金の装飾が付いた、とびきりキラキラしてる腕時計。

 

「あは、どんだけだよ?きれいだけどさ」

 

ま、豊姫ちゃんが勧めるなら、それでいいかな?これが一万弱ってのは、おかしすぎるが。ロレ○クス製品並に高そうなのにな。

 

「おっけ、これでいいや。ちょっと買ってくるぜ」

「うん!」

「分かりました」

 

時計をカウンターに持っていき、精算する。

 

「見かけない顔だね。あの二人、豊姫様と依姫様だろ?3人でデートかい?憎いねぇ」ニヤニヤ

「あは、羨ましいんですかぁ?」

「おー、マジで裏山だぜ?喧嘩売ってんのか、ってくらいな?」ニヤニヤ

「そんなんじゃないですけどねぇ。まぁ、男としては、いい状況だとは思いますが」

「そうだねぇ。ま、頑張りな?後ろから刺されないようにな、凜くん?」

「あは、忠告はありがたく受け取ります。って……なぜ、俺の名前を………」

 

距離が有ったから、聞こえないと思うのだが………。

 

「さぁ?聞き間違えじゃねぇか?」ケラケラ

「………いや………今確かに……」

「おっと、レディを待たせる男は嫌われるぜ?ほら、行った行った」

「ちょ、あんたは一体………」

「また会うことも有るだろう、そんな気がするよ……っと」

 

まともに取り合う気の無い男。答える気はないのだろう………。

仕方ない、行くか………。豊姫ちゃん達の元へと向かう。

 

「長かったですね?どうかしたんですか?」

 

まぁ、あんまり気にしても仕方ないか。遠くても聞こえたのかもしれないし。

 

「…………いや……。なんでもないさ、じゃ、出ようか」

「?まぁ………そうですね」

 

「ふぃー………、あんまり変わんないねぇ、凜くんは………。だいぶと面白おかしく過ごしていたみたいだが…………。本質は何も変わっちゃいない。昔はもっと面白かったんだけどなぁ、凜くんも………やっぱり『あの子』が居ないからかねぇ」

「ま、俺は何もする気はない。君にあげたそれを、どう使うかは、君の勝手、って奴だからね。しばらく、君の描く物語を、読み進めていよう。何度も読み直すような作品になるのか、ブック○フにでも売られちゃう作品になるのかは………」

「君次第だぜ、主人公くん(りんくん)♪」

 

そんな独り言をブツブツとカウンターで言った時計屋は、店を出た。それを咎めるものは、何故か、誰もいない…………。

 

 

「うーん、そろそろお開きかなぁ」

 

買い物に付き合う事計四時間。昼の一時辺りに月に来たから、幻想郷ではもう日が暮れる頃だ。

 

「そうねぇ………流石に、歩き疲れたわ」

「そりゃね。っと…………。ちょっと行ってくるわ」

「へ?何か買うの?なら付いていくけど………」

「おっと、トイレにまでついてこられると、流石に困るんだが?」

「え…………。もう!さっさと行ってきなさい!」

「あは、逆ギレ?」

 

豊姫ちゃん達を待たせ、トイレを済ませる。そして豊姫ちゃん達の所に戻る前に店に入り、

 

「んー…………。良し、これでいっか」

「すいません、これ貰えますか?」

「あら、イケメンさんね。彼女へのプレゼントにでもするの?」

「彼女じゃないですけど。ま、滅多に会えないんで。ちょっとした思い出に、と」

「ふーん?ま、頑張ってね」

 

商品を受け取り、二人の元へと向かう。

 

「お待たー」

「随分と長かったわね」

「少し寄り道してたんだよ」

「寄り道、ですか?」

「まぁね。二人に、渡したいものがあるんだ」

「え………?なんで?」

「もう会えないかもしれないじゃん?だから記念品だよ」

「………………っ。うん、そうよね………。会えないわよね」

「うんうん、会えないだろうね。だから、ほら。あげる」

「………これは?」

「見ればわかるでしょ?チョーカーだよ、チョーカー。それなら君でも、無くさないだろ?無くしやすい君でもさ」

「……………し、失礼ね、無くさないわよ………」

「あは、なくすんじゃなかったのかい?」

「……………私が物を無くすのは、それが大事じゃないから、だもん。大事なものは………無くさないわ」

「……………あは、そう?まぁ月並みだけど、それを俺だと思って、大事にしてくれればいい」

「…………うん」

「ほら、依姫ちゃんには色違い」

「…………ありがとうございます…………大事にしますね」

 

豊姫ちゃんにはライトグリーン、依姫ちゃんにはスカイブルー。イメージカラーである。

 

「おー、そうしてくれ。んじゃ、またね、二人とも―――」

「…………待って、凜くん」

「ん?何か用?」

「………私………貴方のことが………好き」

「え?………あー、感傷的になってるのかな?大丈夫だって、またいつかは会えるさ――――」

「そうじゃないわ。感傷的なんかじゃない………。私は、貴方が好きなの」

「…………いや、違わない筈だ………。今の気持ちは、一時気の迷いさ。………だから考え直した方が――――」

「あなたの青い目が好き。いつも楽しそうな目で。あなたの笑顔が好き。私も楽しくなるくらい、楽しそうな笑顔で。私を助けてくれる時の、必死な表情も好き……」

「……………」

「信じて、くれないの………?」

「………………ふぅ。本気………なんだな?」

「………うん」

「なら、こっちも君に、返事をしなきゃね………」

 

「豊姫ちゃん。気持ちは嬉しいが、俺にそのつもりはない。君がいい奴なのは分かるし、好きだけれど。俺は幻想郷が大事だ。俺は幻想郷に害があるならどんな奴だって敵に回すし、例えば幻想郷を守る為に……………君を殺す必要が有るなら。躊躇いなく………いや、躊躇う、すっげー躊躇う。躊躇うけど、殺してみせるだろう。そんな今の俺が恋人を作るわけにはいかない」

 

だから、ごめん、と―――――。そう告げる。

 

「(はぁ、やっぱり気が滅入るな………。好意を向けてくれるのは嬉しいし、ありがたいのに、その相手を傷つけるんだもんな……。はぁ)」

 

豊姫ちゃんはどんな表情を浮かべているのだろう………。怒りか、哀しみか、落胆か、失望か…………。どれにしろいい感情ではないよな…………|ω•)チラッ。

 

「うん、そう」ニコニコ

 

笑顔?

 

「……………………豊姫ちゃん、俺が聞ける話でもないけど、なんでそんなに笑顔で居られる?俺だったら耐えられない」

 

人間は味方を求める生き物だ。だから、否定されることに弱い。誰だって否定されたくない。俺だってそうだし、豊姫ちゃんに言った事だって、突き詰めてしまえば、味方が一杯いる幻想郷と、いつまでも一緒にいたいから、幻想郷を守りたい。などと言う、弱さに過ぎないのだから。

 

「ふふ、だって。答えてくれたから」

「答えて…………くれたから?」

「わからないままじゃ、嫌だもの。もやもやするじゃない?スッキリしたわー」

「いやいや、それって当然の事じゃ………」

「良いじゃない。単純な女なの、私は。それに、初恋は実らない、って言うじゃない?」

「まぁ、君がそれでいいならそれでいいんだけど…………なんだかなぁ」

 

心配して損したって言うか、杞憂だったって言うか………ほんとに、なんだかなぁ………。

 

「ほら、帰るんじゃなかったの?」

「君が引き止めた癖に。というか、妹の目の前で告白するか、普通?割とビビったんだが」

「………仕方ないじゃない、この場を逃したら、言えそうじゃなかったんだもの…………///」

「あ、恥ずかしいことは恥ずかしいんだ………。じゃ、今度こそ、またね」

「転符「博麗神社」」

 

転移陣で、博麗神社へと向かう。

 

「豊姫ちゃんも傷ついてなかったみたいだし……。良かったな」

 

さて、戻るか、日常へ………。

 

 

「はー、便利ねぇ、あの力………」

「…………お姉様」

「なぁに?」

「………今日は、お姉様の好きな物にしましょうか」

「………………い、いきなり何よ…………。嬉しいけど………」

「無理しないで良いんですよ。ここには私しか居ません」

「………な、何よぅ………分かってるような口利いちゃってさぁ……」

「何年妹をやってると思ってるんですか。それくらい分かってますよ」

「………………よ、依姫………。う、うわぁぁぁんっ!なんで?なんでよ?まだ会ってから二日しか経っていないのにっ!」ギュッ

「なんで………、こんなに好きなのよ…………っ!?訳わかんないっ!」

「…………………」ポン

 

依姫は何も言わず、ただ自らの姉の背を撫でるのみだった。それだけが、彼女を慰められる、唯一の手段だと信じて………。

 




と思いきや、番外編を挟む予定です。
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