東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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お待たせしました、投下します。凜が月から帰ってきた翌日の話ですね。


25話『幻想郷縁起』

英雄伝

理想を表す人間 高橋 凜 Rin Takahashi

職業 幻想郷の守護者(自称)

能力 事象を理想的にする程度の能力

住んでる所 博麗神社

 

博麗神社に住んでいる、幻想郷に定住した珍しいケースの外来人。外来人らしい変わった服装で、蒼髪で蒼眼。人里や博麗神社でよく見られる。

 

《性格》

親切ではあるが、自分からお節介を焼きにいくような性格ではない。むしろ面倒ごとを引きおこそうとするタイプである。人間、妖怪問わず大体同じように接する。博麗霊夢と同様、力のある妖怪には好かれるが、力のない妖怪には恐れられる。

 

《能力》

この世に起こりうる全ての物事、全ての動きを事象という。つまり、彼の事象を理想的にする能力は、全ての物事を可変させる能力である。非常に強力で、八雲紫にも並ぶほどの神に匹敵できる能力。彼はこの能力を使って、色々な面倒ごとを引きおこそうとする。だが、全てに共通して言えることは、巻き込まれた側も、最終的には面倒ごとを楽しんでしまうという点である(※1)

 

《日常》

よく姿が見られるのは博麗神社と人里だが、割と色々な所に居る。突如現れるなど、ワープのような物を使用出来る。なのでどこにでも出没して、日々を過ごす。行った所でする事は様々だが、スペルカード戦をやっている事が多い。スペルカードを使った戦いも強い様で、異変解決の専門家である博麗霊夢ですら負ける事が多い。なんてこった(※2)

 

《幻想郷の守護者》

幻想郷の守護者と名乗っている。確たる証拠もなく、本人が名乗っているだけなので、本当かどうかは不明。というか、多分違う。異変解決に動く事が多く、確かに幻想郷の守護者と言えなくもないが。

 

《仕事》

幻想郷の守護者と本人は名乗っているが、実質的には異変解決の専門家と言える。巫女と協力して動く事が多く(※3)、彼が異変解決の鍵となる場合も多い(※4)巫女が多忙な場合、妖怪退治を彼が担う場合もある。妖怪を退治した後は、大抵部屋に戻ってなにかをしているようだが、何をやっているかは不明。

 

《彼の謎》

前述の『幻想郷の守護者』や、なぜ外来人があれほど規格外の能力を持っているのか、部屋で何をやっているかなど、非常に謎の多い人物である。交友関係も活動範囲も広く、非常に情報の手に入りやすい人物の筈だが、彼に関しては一切の情報が入ってこない。あくまで推測だが、幻想郷の実質的支配者である八雲紫が関連しているのではないだろうか。彼が守護者というのが本当であれば、彼女との繋がりもある筈である。

 

※1……すごく怖い。

※2……もう彼が異変解決してればいいんじゃないだろうか。全部。

※3……この二人のタッグ……やられる妖怪が気の毒である。

※4……もう異変解決の専門家って名乗ればいいのに。

 

 

【挿絵表示】

 

作者より………………イメージですので、凜の見た目をこれだと決められる絵ではありません。読者の数だけ、いろんな凜がいると思いますので。あくまで参考程度に捉えてくだされば幸いです。

 

 

「ふぅ………こんな感じかしらね」

 

少女、稗田阿求は筆を置く。

稗田阿求は、代々続く名家『稗田家』の現当主である。代々続けてきた『幻想郷縁起』、その一項について筆を滑らせていたのだ。

 

「はぁー………。これで良いですか…………紫さん」

 

稗田阿求は、誰もいない空間に向かって声を掛ける。すると。

 

「うーん…………」

 

空間が切り裂かれ、金髪の美女が姿を表す。八雲紫である。彼女は幻想郷縁起の、検分をするのだ。

 

「なにか問題でも?」

「そうねぇ、何と言うか……。もうちょっと、細かいところまで煮詰めた方がいい気がするわね」

「細かいところと言われましても………。会ったこともないんで、そこまで詳しいことはわかんないんですよ」

「そうよねぇ……。そうだ、実際に会ってみたら?」

「え?インタビューみたいな物ですか?」

「ええ。詳しいことも分かるんじゃない?」

「はぁ………。紫さんが会わせてくれるんですか?」

「まぁね」

「……………彼、本当にここの守護者なんですか?」

「さぁ?そうなんじゃないの?」

「ブンヤの記事では彼はあなたから情報規制を受けていると言ったみたいですけど?」

「そんなの私は知らないわよ〜。凜とは友達よ、友達」

 

相変わらず、読めない人ですね……。稗田阿求は、目の前の女の胡散臭さを再確認した。

 

「まぁいいです。それで、会わせてもらえるのはいつですか?明日ですか?」

「うーん、凜は戻ってるみたいだし………。今からにしましょう」

「はい?」

「守護者「高橋 凜」」

 

紫がスペルを掲げると、術式が展開されて転移陣が現れ、そこから蒼髪の男が出てくる。

 

「あー?ったく、やっと月から帰ってきたと思ったらコレか……。全く、面倒ごとばっかりあるなぁ、ここには…………。面倒過ぎて、面白いぜ」ケラケラ

 

ブツブツと呟く凜。

 

「久しぶり、凜」

「おー、ゆかりん。ほら、君にお土産。酒でいいんだろ?」

「ええ、ありがとう」

 

紫は酒瓶をスキマにしまい込むと、即座に、

 

「いでっ!?~~~!?」

 

全力で凜の頭をぶん殴った。というか、凜がとっさに霊力を纏わせてなかったら、普通に死んでた。

 

「な、何すんだよぅ………!俺が何をやったって言うんだよぅ……!」

「あら、よくそんな口がきけたわね………?私をあんな体にしておいて………」

「か、からだっ!?は、ハレンチです………!」

 

そういう意味ではない。

 

「あー、そう言えばそんな事もあったっけ」

「藍が術式と魂の接続部分を破壊すれば良いと言ってくれるまで、私がどれだけ辛かったか……!凜!責任とって貰うわよ!」

「せ、責任………。ポッ」

「おいおいゆかりん、紛らわしい発言すんなだぜ。それだと情事のあとのカップルみたいだろうが」

「じょ、じょーじ………は、ハレンチですぅぅ……!」

「わざとよ!」

「あはっ、あっそー?とりあえず、殴ったのはもうどうでもいいから、用件はなんだよ?そこに居る娘が関係してんだろ?」

「まぁね。ちょっと、幻想郷縁起の編纂に協力をしてもらおうと思って」

「幻想郷縁起に?…………ああ、そう言うこと。そう言えば、ちょっと頼みたいことがあるんだ」

「なに?」

「幻想郷縁起に、付録をつけたいんだよ」

「付録?」

「幻想郷縁起ってさ、怖いところばっかり載せるでしょ?だからさ、逆に可愛いところを載せてみようかと思って」

「…………………………うーん、どうしようかしら………?」

 

悩む紫。それもその筈、幻想郷縁起は、阿一の頃から続けている、幻想郷にとって大事な歴史ある書物なのである。それに、幻想郷に人間と妖怪の関係を示すものでもある。

 

「いいんじゃないですか?」

「阿求…………。あなた、意味がわかっていってるのかしら?」

「勿論です。私は御阿礼の子ですよ?」

「ならどうして?」

「紫さんも知ってのとおり、今の幻想郷は、この幻想郷縁起が、必ずしも必要だとは言えない程に平和で、満たされています。だから、これからの幻想郷縁起を『変えていく』。その必要があるんじゃないでしょうか?」

「………………そうかしらね」

「よし。凜、許可します」

「まぁ、まだ全然作り終わってないけどね。一応話を通しておこうと思って」

「まぁ、まだ刊行までは時間があるし、それまでに作れば良いんじゃない?」

「おー。んで、編纂の手助けって何すればいいの?」

「この子の質問に答えてくれれば、それでいいわ」

「まぁ、良いけど。そんなんでいいの?」

「ええ」

「じゃ、分かった」

「よろしくね、凜」

「ああ。あなたの意のままに」

「じゃあね~」ヒュン

 

紫が去り、凜と阿求だけになる。

 

「さぁて………。改めまして、高橋 凜だ。凜と呼んでくれ」

「稗田阿求です。よろしくお願いします、凜さん」

「おー、よろしく、稗田」

「ああ、出来れば私の事は、阿求、と呼んで頂けますか?」

「え?なんで?」

「だって、どうせなら、仲良く行きたいじゃないですか。仲良くなくちゃ楽しくないですし。私は短命ですから、その分他の人の三倍は楽しく行かなきゃ損でしょう?」ニコッ

「…………強い子だねぇ、君」

「そうですか?ありがとうございます。でも、女の子にする褒め言葉じゃないですよ?」

「あはっ。よろしく、阿求ちゃん」

「はい」ニコッ

 

side 凜

「さぁて………質問に答えればいいんだっけ?」

「はい、そうですね」

「じゃ、始めて?」

「分かりました。まずは、そうですね………やはり、気になるのは『守護者』の件ですかね。どういう意図が有って、そのように名乗っているのか。明確にしておきたい所です」

「あ~………。なるほど、それについてか………」

 

今更だけど、やっぱり目立つのは良くないよね。俺の立場は、余り認知されると面倒だ。立場を持つことは、自らを縛りやすいからね。ま、そんなこと言うなら、名乗らなければ良かったんだけど。その辺はもう手遅れだからねぇ……。

 

「まぁ、そうだね。事実ではあるよ」

「そうなんですか?」

「まあね。といっても、そんなに大げさなもんじゃない。幻想郷に危機がある時、ゆかりんや霊夢に協力する。その程度のもんだ。異変解決者だとでも思ってくれればいい。分かり易いからな」

「………なるほど」

「あー、それで阿求ちゃん………1つ頼みたいんだが」

「なんですか?」

「出来れば、幻想郷縁起には、俺の立場は書かないで欲しいんだ」

「?なぜ?」

「人里で、俺の立場が知られたら、目立つでしょ?幻想郷の守護者は、英雄じゃなく、あくまでも裏方。こっそりと解決するのが、性にあってるんだ」

「………なるほど。仕方ありませんね、了承しました」

「サンキュー、阿求ちゃん。甘いものでも食べる?」

「甘いもの?」

「うん、ケーキ」

「ケーキって………あのケーキですか?でも、幻想郷にはオーブンとか無いですよね?」

「まぁそうだけどね。オーブンの理屈さえ分かってれば、別に能力で代用できる」

「はぁー………何だか、凄い能力ですね」

「まぁねー」

 

和菓子派の俺も、洋菓子が食べたくなる時があるのさ。

 

「取り敢えず、食べようぜ」

「でも、一つしか――――って」

 

能力で二つに増やす。

 

「………ふむ、やっぱり何でもありなんですね」

「あは。食べようか」

「はい。そういえば、ケーキって食べるの初めてです」

「まー、まずくはないと思うよ」

 

一時期ハマっちゃって、友人に振舞った所、あんたは女子か!と全力で貪りながら言われた。逆にツンデレか!って返してやった。やったぜ。

 

「では………いざ、実食!」

 

食戟のソ○マじゃねぇんだから。

 

「パクっ…………。!美味いぞーーーーーー!!!」

「どこの味っ子の料理を食べた審査員だ!」

「失礼。取り乱しました」

「お、おお………」

「美味しいですね、どうやったらここまで美味しいものが作れるんですか?…………紳さん」

「確かに似てるけど、二文字だから似るのは当たり前だし、俺はそんなお茶の間に笑いを届けていた名前じゃない!俺の名前は高橋 凜だ!」

「失礼、かみました」

「どこをどう噛んだらり、がし、になるんだ!わざとだろ!」

「かみまひた!」

「わざとじゃないっ!?」

「ふふん、いいリアクションですね!」

「………お前、化○語読んだだろ」

「バレましたか。小鈴の店に入荷されていました」

「え、何それ欲しい。ま、喜んでくれた様で何より。じゃ、インタビューの続きするか」

「ふぇふぇ、ふぁかりまふぃた」

「おう」

「ごくん。では、次の質問です!あなたの能力の特性は?」

「特性?取り敢えず、持続性はないな。例を出すと、霊夢を妖怪に変えたとしよう。能力で」

「人種まで変えられるんですか………。そしてなんとも怖い例えです。霊夢さんに妖怪の力……ブルッ」

「でも、その後にゆかりんが人間と妖怪の境界でも弄れば、霊夢は元に戻る。干渉出来る能力を持ってるなら、元に戻すことは可能、という事だな」

「なるほど。規模はどれほどまでの事が可能なんですか?」

「俺の精神力が続くまで、かな。消耗はそんなにしないが、銀河破壊するとか、アホみたいな力はないな」

「あっはっは、ですよね~( ̄∀ ̄)」

「うん。多分、月くらいならこう、ドガーンといけると思うけど」

「……………あっはっは、ご冗談を………」ダラダラ

「いや多分、いけんじゃねぇかなぁ…………うん」

 

結構規模のでかい事やっても消耗そんなにしないしな。前なんか異世界旅行したくらいだし。元気にしてっかねぇ、あいつら。ものすごく暇を持て余したら、また会いにいくか?いやまぁ、そこらへんは読者が見たいかどうかかな。見たくないだろうけど。

 

「……………もはや、最高神の領域じゃないですか、それ………」

 

最高神という言葉から、先日月に行った際に会った二人を思い出した。それを口に出す。

 

「最高神ねぇ。天照大御神とか、月読命とか?」

「会った事あるんですか!?」ズズッ

「うん」

「どんな方でした!?」

「どんなって………こう、何と言うか……………」

「ゴクリ」

「…………変人と、堅物?」

「変人と堅物!?」

「うーん、でも、堅物って程でも無かったな、ヨミちゃんは。テラちゃんは変人で間違いないと思うけど」

「ヨミちゃん!?テラちゃん!?」

 

阿求ちゃんの頭がパンクしている。うーん、言って良かったのかなぁ………。まぁ、一人や二人、知ってても問題ないでしょ。

 

「ど、どうして最高神と知り合いに…………」

「あっはっは。呼び出されたからね。直々に。いやー、あんときは流石にヒビったわー」

「よ、呼び出し………。ど、どんな気に障ることをしたんですか?」

「いやー、別に何もしてないんだけどなぁ。まぁ、いろいろあるのさ、いろいろ」

「は、はぁ………」

「というか、幻想郷縁起にこんな事載せないでよ?」

「わ、分かってますよ………。こんな事載せたら、大混乱は必死です」

「そうだねぇ…………俺も随分と大きな事やったもんだ」

 

ただ暇だったから行っただけだったのにな。俺の行動力は恐ろしい。

 

「というか、阿求ちゃん。全く幻想郷縁起に使えそうな情報が無いんだが、こんなんで良いのか?」

「まぁ、良いんじゃないですか?紫さんに言われたからやってるだけですし」

「うーん。でもなぁ………」

 

使えそうな事、ねぇ。俺がやってきた事って言うと………。

紅霧異変。別名、カレー配布異変。カレーを配布した。

春雪異変。別名、ボコボコ異変。取り敢えず咲夜をボコって、ゆゆちゃんをボコった。

永夜異変。別名、原作知識バンザイ異変。話し合いで解決した。

萃香とのバトル。二度とやりたくない。筋肉痛がやばかった。

プール。プールで遊んだ。着せ替え人形を手に入れた気分だった。

月旅行。月で驚きに満ちた観光をした。あと、告られた。

うん、見事なまでに向いてねぇな、幻想郷縁起に。

 

「うーん…………無駄じゃねぇか?」

「え、何がですか?」

「だって、君三十くらいでおっ死ぬんだろ?」

「まぁそうですけど、もう少し遠慮っていうのはないんですかね?」

「俺が時間を無駄にするのはまぁ良いんだけど。君の場合俺の三倍の時間を無駄にする訳じゃん」

「ん、まぁ…………そうかもしれないですね」

「だったら、答えは1つだけだな」

「?」

 

阿求ちゃんの手を取り、宣言する。

 

「どっか行こうぜ!今から!」

「……………………………」

「……………え?」

 

 

 

「あら、いらっしゃいませ。って、なんだ、阿求か。どうしたの?こんな朝から」

「ちょっとね」

「?ま、ゆっくり見ていきなさいな」

協議した結果、鈴奈庵に行くことになった。

「…………というか凜さん、紫さんに言われてるのに、こんな事してて良いんですか?」コショコショ

「別に俺はゆかりんの操り人形でもなんでもないぜ?職場の上司だって、家で遊ぶなとか言わねぇだろ?」コショコショ

「いやまぁ…………そうかもしれませんけど」コショコショ

「さっきから何こそこそ話してんのさ。というか、その人誰?」

「どうもー、高橋 凜でーす。凜って呼んでね」

「あら、あの有名人の。私は本居小鈴です。よろしければ、小鈴って呼んでください」

「おっけー。小鈴ちゃん、でいいかな?」

「はい。よろしくおねがいします、凜さん」

「おう」

 

「それで、今日は何をしに来たの?」

「まぁ、特に何もないんだけど。新しく入荷してないかな、と」

「そうねぇ、新しくって言うと………ああ、前に阿求が気に入った本の続きみたいなの有ったわよ」

「え、それ本当?見せて見せて!」

「あんたも、良くあんな分かんないもの見たがるわねぇ」

「私は分かるもん」

「まぁ、良いんだけどね」クスクス

 

仲いいなぁ。それにしても、東方鈴奈庵、だっけか?一冊も買った事がないけど、Wikiは見た気もする。確か………妖魔本、だっけか?それがここには有るんだよな。確か結構危ないんだよな、妖魔本。放っておいても解決するだろうけど…………原作通り進むとは限らないからね。一応確認しておくか。

 

バタフライ・エフェクト。蝶の羽ばたきの様な小さな動きが、後を大きく変化させる事。いい変化なら構わない。些細な変化も構わない。けど、俺が居るせいで、幻想郷を傷付ける変化が起こるなら、俺がなんとかしないとね。自分の責任なんだし。幸い、俺には便利にも程がある能力(コレ)がある。真の意味で俺になんとかできない事象はないだろう。いやまぁ、銀河ぶっ潰すとか、宇宙ぶっ壊すとか、そんなアホパワーはないけどさ(笑)……………ない、よな?

 

「小鈴ちゃん、1つ聞いていいか?」

「?何ですか?」

「ここだけど………妖魔本……ってある―――――」

「…………っ!ええ!ございますとも!!!」ガバッ

「…………お、おお……。悪いんだけどさ、ちょっと見せてくれない?」キ-ン

「もちろんですっ!」

 

 

 

「こちらが付喪本、本が付喪神化した本でしょ、それから幻想郷には珍しい海の怪異が記された本。そっちは大魔法使いが弟子のために記したグリモワール!更にオススメなのは、『私家版百鬼夜行絵巻』!」

「幻想郷にも居ないようなマイナーな妖怪ばかり揃っています!」

 

うわお、すっごいあるなぁ。取り敢えず、ノリノリで語り出した場合は、話を合わすのが吉か。

 

「へぇ、百鬼夜行絵巻なんてもんまであんのか。しかも、詞書まである。そうか、詞書のある百鬼夜行絵巻はかなり珍しいものだ、幻想入りしてもおかしくないのか」

「ええ、ええ!凄いでしょう!?」キラキラ

「おう。普通にすごいな。というか、妖魔本は珍しいんじゃなかったか?阿求ちゃん」

「ええ、そうですね。でも、小鈴は蒐集家(コレクター)なんです」

「あ、内緒にしておいて下さいね、店の売り上げとか使っちゃってるんで」

「うん、それ自体は構わないよ。ただ、少し確認してもいいかい?仕事上、危険なものは確認しておかないといけないんでね」

「ええ、別に構いませんが………仕事上?」

「あ」

 

しまった、つい…………まぁいっか。

 

「えーと、ここを守る仕事してるんだ。妖魔本は危ない物もあるからね。ここの守護者としては見過ごせないのさ」

「…………は、はぁ………。そうなの?」

「らしいわね」

「…………そ、そうなんですか………」

「じゃ、確認するんで。ちょいと待ってね」

 

……………………青年妖魔本確認中………………………

 

うん、確かに妖怪は封印されてるけど、そこまでのものはないな………。俺が対処できないようなもんもないし、これなら……。

 

「ん、これは………何の本だ?」

 

装丁も何もなく、ただまっさらな巻物。これは………?

 

「…………あれ………。そんなものあったっけ………?」

「小鈴ちゃんにも覚えがないのか?」

「え、ええ………私が確認してないものはあんまりない筈なんだけど………」

「……………ふむ」

 

巻物を解き、中を見たその瞬間、異変が起きた。

 

「…………え!?な、なんでいきなり………旋風(つむじかぜ)が!?」

 

そう、屋内なのに、何故か旋風が現れたのだ。

 

「………っ、この風の風力の理想を、0に………!」

 

能力を使って、旋風を止めた。が。

 

「………っ、なんで……!確かに止まったのに!」

 

一時的に風がやみ、再度旋風が吹き出す。なんで!?

 

「………………………あれ、止んだ………」

 

しばらく旋風が吹いたら、旋風が止みだした。

 

「………………な、何が起きたの…………?」

「悪い阿求ちゃん、俺にもさっぱりだ」

「わ、私も………」

 

「さて。まずはさっきの事をまとめてみよう」

「1。巻物を開けたら、旋風が吹き出した。

2。旋風を止めたのに、再度吹き出した。

3。巻物を見てみたら、白紙だった」

「まとめてみても、何がなんだか分かりませんね………」

「というか小鈴ちゃん、君の巻物だろ?なんでわかんないんだ」

「………あ、あはは、もう小さい頃から集めてるんで………ちょっとそこまで把握していないというか…………」

「…………まぁ、いい。問題は、あの旋風がなんなのか、だ」

「普通に考えたら、妖魔本に封じられていた妖怪なんでしょうけど…………」

「そうだね、その可能性が高い。となると、なんの妖怪なんだ?」

「………うーん、旋風を起こす妖怪………ですか」

「そんなのいるか?」

「…………ごめんなさい、心当たりは…………」

「俺も聞いたことねぇなぁ……。旋風、旋風か………要は風のことだろ?やっぱり、専門家にでも聞くのがいいんじゃねぇかな」

「風の専門家って………天狗のことですか?」

「まぁね」

「今から聞きに行くんですか?」

「いや、山には基本的に入れないから………仕方ない、あっちから来てもらおう」

「どうやってですか?」

「ああ、そういう………」

 

あは、阿求ちゃんは分かってるようだね。

 

「文の位置の理想を、俺の前に………っと」

「………………え?」

「………………っ!?いったー!?な、何が起きたんですか!って………凜!?」

「はろはろー、文。ちょっと協力を頼みたくてね」

「きょ、協力……?」

「そうそう。聞きたいことがあんだよね」

「は、はぁ………なんと言いますか、一言ないんですか?こう、痛みに打ち震えてる美少女に対して、慰めの言葉とか………」

「さっさと立ってよ、話進まないでしょ?」

「ひどいっ!」

 

そう言うと文はスタッと立つ。

 

「で、話ってなんですか?」

「ん、旋風を起こす妖怪に心当たりはないかなって」

「旋風を起こす妖怪………ですか。さぁ、聞いたこともないですけど。私も長く生きてますし、私が知らないってことは、多分いませんよ?」

「ふむ、そうだね………」

 

確かに文は1000歳を超えてるし、その知識量は膨大な物だ。その中にないってことは、確かなんだろう。

 

「うん、ありがと、もう帰っていいよ」

「今度はどんな面白いことに首突っ込んでるんですか?教えてくださいよー」ワクワク

「お前にだけは絶対教えない」

「えー!なんでですかー!」ブ-ブ-

「お前に話したら、確実に広まる」

 

そう、小学校で、「絶対誰にも教えるなよ?」とか言って一人だけに教えて、一週間後のクラス全員に知れ渡る確率と同じくらい確実に広まる。ソースは知り合い。面白いくらい広まったそうな。

 

「大丈夫ですよ!そこまでひどい記事にはしません!」

「記事になる時点でお断りです」

「そんなこと言わないで!さっさと吐いて、楽になっちゃいましょう!」

「誰が吐くか。さっさと帰ってちょうだいよ」

「そんな御無体な!凜、私のこと嫌いなんですか!?」

「いんや、好きだけど。それとこれとは話が別だよねぇ」

「………ふっ、聞く耳は持たないという事ですか。そっちがその気なら、こっちにもやりようはあります!」ポッ

「うん?」

「残念でしたね、凜!あなたは私の記者魂を侮っていた!私が記事の為ならどんな非道な事さえやってのける事を忘れていた!それがあなたの敗因です!」

「さぁ!今こそお見せしましょう――――!」

「なんだか良くわかんないけど転符「文ん家前」」

 

文の姿が消える。因みに文の家の前では、

 

「どうですかこの写真の数々!このデレデレした表情の数々を見れば、あなたが相当の女好きである事は明白!この写真を掲載すれば、前作ったあのコラムの効果は最大に!さぁ!これを掲載されたくなかったら、大人しく取材に協力を――――っていないーー!?あァァァんまりだァァアァ!!!」

 

一人コントを繰り広げていた。

 

「さて、なんだか面白いものを見逃した気がする」

「………良かったんですか?文さん放っておいて」

「文だから問題ない。それより、分かったことは一つだけだな」

「そうですね。かなりの確率で、旋風を起こす妖怪は『存在しない』」

「と、なると…………説明が出来ないな」

「そう、ですね…………」

 

考えても分からん。妖怪じゃないのか?

 

「うーん…………考えても分からないなら、考えても仕方ない。とりあえず、甘いものでも食べる?」

「あ、良いですね」

「まだ有るんですか?」

「もうケーキは無いけどね。チョコ位ならあるよ。待ってな、今―――いつっ………」

「え、どうかしました?」

「いや、なんか腕が痛くなって………。さっきの旋風で、なんか切れるものでも飛んできたのかな?」

 

チョコを取って二人に渡す。ついでに痛む腕も見てみる。

 

「うぇ、なんだこれ、すっごい深いじゃん。こんなに深ければ、気づきそうなもんなんだけど」

 

ん、旋風と、深い切り傷………?

 

「…………………!そうか、わぁかったぞ!(コ○ン風)」

「え、どうかひはんですか?」モグモグ

「にゃにかわかってゃんですか?」モグモグ

「あは、物を口に入れたまま喋るんじゃないよ」

「…………ごくん。失敬」

「……………ごくん。すみません」

「うん、まぁいいけど」

「で、何がわかったんですか?」

「そうです、教えて下さい」

「…………旋風と、切り傷。それ自体は有り得ないことじゃない。強い風なら、ものが飛ぶことで切るのは有り得るだろう。だが、問題は………『気付かなかった事』だ」

「気付かなかったって………傷にですか?」

「ああ、見る限りでは腕の傷は相当深い、気づかないのは有り得ないんだ。なら、どうして気付かなかったか。それは封じられていた妖怪が………カマイタチだからだ」

「カマイタチ!?」

「そう、カマイタチ。外ではこの現象は、旋風によって巻き上げられた砂などの細かい粒が皮膚をマヒさせながら傷を入れる事によって、傷に気づかないという解釈が一般的になっている。でも、本来のカマイタチは、鎌鼬………。つまり旋風に乗じて傷を付ける妖怪なんだ。だから、その本に封じられていてもおかしくない………!」

「なるほど、鎌鼬が、旋風を引き起こした、っていう事ですか!」

「『乗じて』だから、本来の鎌鼬にはそんな力は無いんだろうけど…………。常に旋風と一緒に出て来るからな、そういった力を持ったのかもしれない」

「でも、ならなんで、風が止まったんですか?」

「多分、仕事を終えたから………傷を入れ終えたからじゃないか?君たち二人も多分、傷があるはずだ」

「え、嘘っ!」

「………ほんとだ、すごい傷……」

「………やっぱりか。とりあえず、傷を見せて。治療する」

「おねがいします」

「わ、私も………」

 

二人が傷を見せてくる。痛みが来る前に気づいて良かったね。

 

「皮膚の断裂度を、極最小限に…………っと」

 

傷が消える。まぁ、目に見えない程度に断裂してるけど。

 

「さて………急がないとやばいな」

「え?」

「鎌鼬には死ぬ程の威力はないけど………。結構ひどい傷を負わせるからね。それに、旋風は物を散乱させる。ちょっとしたパニックになるかもしれない」

「な、なら、能力で呼び戻せばいいんじゃ………」

「ダメだな。まず俺はある程度のイメージを作る必要がある。確かな知識なら可能だが、ぼんやりとした断片の知識だけの今では、不可能だ」

 

イメージとはつまり、絵だ。『鎌鼬の位置の理想を、鈴奈庵に』という感じで能力を使うなら、鈴奈庵に鎌鼬がいるという絵を、頭で描けなければ、能力が使用できない。鎌鼬の外見が理解できない以上、能力で呼び戻すのは無理だ。ある程度で良いんだけどなぁ。軽く見た目が分かってれば、それでいいんだけど。

 

「じゃ、じゃあ、どうすれば……!」

「……………こういう時は、あいつに頼むか」

「あいつ………?」

「管理人「八雲 紫」」

「………んにゅぅ、何の用よぅ……私眠いんだけど…………」

「お前あの後寝てたのか?朝から爆睡しやがって。仕事だよ、仕事」

「も~、仕方ないわね~。何すればいいの~?」

「旋風の起こっている地点を調べてくれ。屋内外問わずだ」

「ふわぁ~…………それって結構大変じゃな〜い?」

「悪ぃな、紫」

「まーいいわ、一つ貸しよ、凜?」

「そいつは絶対に借りたくない奴に借りを作ったもんだ」

「あら、そんなにひどいこと頼まないわよ~っと」ヒュン

「…………サンキュー」

「さぁて………狩りの時間だぜ」ニヤッ

 

紫の報告の地点に転移して、さっさと捕まえる!

 




最初は妖怪図鑑の方で書いていたのですが、良く考えれば普通英雄伝の方じゃね?と思い、急遽差し替えました。なので、若干文に違和感があるかもしれません。あと、凜の言う付録ですが、本編で関係することは有りません。この作品が完結したら、凜が会った女の子を纏める回を作ります。因みに凜は、ある程度認めるか、下で呼んでと言われるまでは苗字で呼びます。

本編では出ませんでしたが、没バージョンも後書きで掲載させてもらいます。こっちの方が出来は良いと思います。自分は、こっちの方が好きです。



理想を表す人間 高橋 凜 Rin Takahashi
能力 事象を理想的にする程度の能力
危険度 不明
人間友好度 極高
主な活動場所 博麗神社 人里

博麗神社に居候している、外から定住した珍しいケースの外来人である。彼は人間であるが、異変を起こす側に回る事も有ったので、この妖怪図鑑に記載する。
容姿は蒼髪蒼眼。服装は外来人らしい奇抜なもの。彼が自作しているらしいので、たまにその服装に憧れて(※1)、博麗神社に学びに来るものもいる。本人は幻想郷の守護者と名乗っているが、確認は取れていない。眉唾である。
性格は非常に温和で、人間、妖怪問わず友好的。もし御札等妖怪退治の為の武具を手に入れたいのなら、彼に護衛してもらって博麗神社に行くのもいいかもしれない。良く人里に食料を買いに来るので、声を掛けよう。本人の力も強いので、あるいは彼に妖怪退治を依頼してもいいかもしれない。

《能力》
事象を理想的にする能力は、非常に万能で何事にも使える。八雲紫と並ぶほどの強大で、神々にも匹敵できる程の能力である。なぜそんな能力を人間が、しかも不思議な力が衰えて久しい外の世界から来た人間が所持しているかは不明である。理想的の基準は本人のものなので、実質物事を可変させる能力と言える。何かしらの制限がなければ、幻想郷最強の人間と言えるだろう。

《主な目撃報告例》
・妖怪に襲われてしまった所を、蒼髪の男が助けてくれた。怪我した所もたちまち瞬時に治してくれて、これが世に言うイケメンか、と思った(匿名)
前述の通り、本人は非常に温和で友好的である。そして能力の汎用性も高い。だから、人間にとっては本当に守護者のようだと言えるかもしれない(※2)
・空を飛んでいたら、彼が冥界に居たのを見た。あの人死んだの?(メルラン·プリズムリバー)
彼の活動場所は多岐にわたり、割とどこにでも出てくる。ワープを使用する姿も確認されている。八雲紫とは違い、本当に突然現れる。実に神出鬼没な人間である。
・彼はジゴロです(確信)(匿名)
知らん。でも人里での人気は高い。良く男どもが睨んでいる。ガキじゃないんだから、と思うが。
・告白したいです。でも勇気が出ません………どうすれば(匿名)
悩み相談室じゃないんだけど、ここ………。私個人としては、応援してもいい。

《日常》
基本的には博麗神社か人里にいる事が多い。博麗神社では部屋にいるか、スペルカード戦をしている。まだここに来てからそう長くはないが、友人関係は広い。大妖怪の八雲紫(前述)や、吸血鬼のフランドール・スカーレット(前述)、亡霊の姫の西行寺幽々子(前述)、鬼の伊吹萃香(前述)など、大抵の友人関係が強力な妖怪ばかりだ。彼はどのような者であっても物怖じせず、普段通り振舞う。表情は基本的に笑顔(※3)であり、その心中は分かりづらい。強力な能力を持つ人間らしく、異変の解決も行っている。

《対策》
対策もなにも、人間なので問題はないだろう。むしろ積極的に話しかけてもいいくらいだ。彼と仲良くなっておけば、いざ妖怪に襲われた時に助けてもらえるかもしれない。前述した妖怪たちへの、対策にもなるのである。しかし、万が一にも敵対してはならない。彼は何事をも変化させる。それは、身体能力や思考能力も例外ではない。その理想的の基準が、鬼だったり天狗だったりしてしまえば、何もできずに圧殺されてしまうだろう。もし敵対してしまったのなら、とりあえず平謝りしよう。彼は温厚なので、紅美鈴同様、許してくれる可能性は高い。
幻想郷の守護者と名乗っている事など、非常に謎の多い人物でもある。未だ未知数なので、彼も敵に回してはいけない。

※1……かくいう私もかっこいいと思う。綺麗な服だし。
※2……多分ただの妄言だろうけど。
※3……定説再び。
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