東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

29 / 65


なんと20日近く更新しませんでした。やばい。煮詰まってました。ともあれ、ここから花映塚編です。異変には関わらず、花映塚の新キャラに絡む感じですねー。


27話『優しい人が良いです………』

色々有った秋が終わり、冬になり、冬も終わり、春になった。因みにもうタチは紅魔館ですっかり馴染んでいる。執事服を着て、存分に仕事をしている。そして咲夜に狙われている(多分)

 

「そ、れ、に、し、て、も……。暇だなぁ………。やっぱり付いていきゃ良かったか?」

 

説明が遅れたが、現在絶賛異変中である。四季折々の花が咲いていて、どこでも花を見ることができる。霊夢は例によって例のごとく、解決しに行った。異変っちゃぁ異変だが、そこまで大した異変でもないかなぁと思ったので付いていかなかったのだが………。でも三十分くらいたって、暇すぎることに気づいた。

 

そうだ。ここで俺の『原作知識』についてまとめておくのはどうだろう。少しの暇つぶしにはなるだろう。

 

原作の弾幕シューティングに関しては、東方紅魔郷、東方妖々夢、東方永夜抄の知識はある。が、それ以降やそれ以前の知識はない。この三作品に出てくるキャラに関しては、そこそこの知識があるが、それ以外の作品のキャラは、名前と能力名くらいしか知らなかったりする。ちょこちょこ知ってる所も有るけど、大体そんな感じだ。んで、書籍作品に関しては、Wikipediaでちょろっと見たくらいである。

とまぁ、俺の原作への知識は若干乏しい。だって、そこまで興味が有ったわけじゃないし。二次で生きていれば、必ず東方がチラつくほどに有名だったから調べただけで、正直言って別に好きでもなかったしね。

 

「終わってしまった」

 

つまり、俺はこれから起こる異変に関しては『全くの知識が無い』という事だ。これが原作の異変なのか、そうでないのかも分からない。

 

「こんな事なら、もっと勉強すれば良かったなぁ」

 

今言っても仕方ないが。

 

「あやや、巫女はどうしたんですか?」バサッ

「おっと、文じゃん。霊夢なら居ないよ、異変解決しに行った」

「あや、それはそれは。どのような内容で?」

「さぁね、本人に聞けば?」

「それもそうですね。じゃ、行ってきまーす!」バサッ

「ここはお前の家じゃないぜ」

 

文が飛んで消えた。

 

「うーん、俺も動くか。転符「霊夢のちか――――おっと。楽するのは控えなきゃね」

 

素直に足を使うとしよう。

 

………………………青年探索中…………………………

 

あっは、居ねぇ。もう帰っちゃったかな?流石に終わってないと思うが。

 

「うーん、面倒だなぁ。普段行かない所に行ってみようか?」

 

普段は人里、博麗神社、魔法の森、迷いの竹林、冥界くらいしか行かないからな。幻想郷は広いんだし、少しは巡ってみるのもいいかも知れない。

 

「うーん…………じゃあ、あそこにしようか。いつ見ても綺麗な花がたくさん咲いていて、少し気になってたんだよね」

 

太陽の畑。行ったことはないし、少しは見聞を広めるのもいいかもね。

 

「じゃ、行きますか」

 

能力で天狗化し、超速で向かう。

 

「よいしょ、着いた着いた。…………!へぇ、近くで見てみると一層壮大だな……!」

 

上から見下ろしてみると、太陽の光を受けたひまわりが、キラキラと輝きを放っていた。

 

「あは、ひまわりってのも春の季節感がないけど。一旦降りてみるか」

 

ひまわりを傷つけないよう、ゆっくりと降りる。

 

「んー…………はー、夏の匂いがするぜ…………」

 

春だけれど。しばし時間を忘れ、ひまわりを眺めていたら。

 

「あなた、何してるの?」

「え?」

 

いきなり背中から声を掛けられ、少し驚きながらも振り返ると、そこには緑髪の美人がいた。

綺麗な人だな………………って、この人、風見幽香じゃないか?確か、花を操る程度の能力を持ってる人。

 

「いえ、少し、ひまわりを眺めていただけです」

「…………そう」

「貴方は…………風見、幽香さん、ですよね?」

「そうね」

「そうですか。僕は高橋 凜です。以後お見知りおきを、風見さん」

「そうね、考えておくわ」

 

うーん、受け答えもさらっとしてて、大人って感じでいい人そう。花を操る、なんて位だから、優しいんだろうなぁ………。

 

「所であなた…………」

「なんでしょう?」

「ここらは、凄く怖い妖怪が出てくるから、近づかない方がいいわ。あなた、人間みたいだし、すぐ殺されちゃうわよ?」

「………あは。忠告はありがたいですが。その忠告は守れそうにありません」

「なぜ?」

「ここにいるって事は、貴方もここの近くに住んでいるんでしょう?」

「…………まぁね」

「ここで知り合えたのも何かの縁です。出来ればこれからもお話したいですし、ここに近づかないのは、無理だと思います。それに、会わなきゃいいんでしょう?」

「…………そうね。残念だわ」

「?何が残念なんですか?」

「貴方も不幸ね、凜。その怖い妖怪に―――――」

「もう会っちゃったんだから」ビュン!!

「!?」

 

風見さんから放たれた拳を、間一髪の所で後退し、かわす。

 

「ぐっ!?」

 

拳の拳圧が風を生み、後退した勢いと合わさって、俺を吹き飛ばす。

 

「ぐがっ………。あ、あは、一体何のつもりでしょう………?」

「あら、避けられちゃった。ますます不幸ね、あなた」

「あはっ、何が……?」

「さっきので死んでたら………地獄が長引かずに済んだのに」ゴオッ

 

んな………なんて妖力だ!ゆかりんと同じか、それ以上………!

なんだか分からんが…………とりあえず、戦闘するしかないか。やりたくねぇ………。伊吹とやりあった時と同じくらいやりたくねぇ……。

 

「鬼化、天狗化、吸血鬼化」

「さぁ………死になさい!」

 

風見さん………いや、やり合う相手にさんはないだろ、幽香がこちらに向けて拳を叩き込もうとする。その速度は恐ろしく、天狗の処理速度や動体視力をもってしても、捉えるのがやっとだった。

 

「とりゃあっ!!」

「!?」

 

幽香の伸ばされた腕を高速で掴み、力を利用して投げ飛ばす。伊吹が俺にやった芸当である。俺も日々成長しているのだよ!

 

「理想神槍「スピア・ザ・グングニル」!」

 

霊力の槍を作り出し、幽香に向けて放つ。スペルカード用に手加減したものではなく、この一撃で決めるつもりで霊力を込めた槍の一撃だ。必中の呪いを掛けられた槍が幽香に向かい、その身を貫いた。

 

「よし………!逃げるが勝ちっ!!」

 

翼をはためかせ、高速で逃げ出す。アレを食らったんだ、これに対応は出来ないだろ……!

 

「あらあら………どこに行くつもりかしら?」

 

幽香がこちらを追いかけてくる。なんであれを受けてノーダメージなんだ!?その彼我の差は徐々に詰まっていく。

 

「んなっ!?」

 

バカな!いくら並とはいえ、天狗並の速度だぞ!?なんであれを食らった後で追いかけられる!?

後ろを少しだけ振り向いてみる。すると、大きく抉れた地面と、空を駆ける幽香の姿が見えた。

 

「もしかして…………」

 

地面を全力で蹴り、一気に差を詰め、空気を蹴ることによる加速を繰り返して、こっちに近づいている…………のか?

 

「いやいやいやいや………脚力だけで天狗に併走するなんて、そんなバカげた事ある訳無いじゃないか、はっはっは…………」

「よそ見してちゃいやよ!」

「!?」

 

幽香から放たれた回し蹴りを、右に動く事でかわそうとしたが、左手が幽香の蹴りをまともに受ける。

 

「あぽっ!?」

 

激痛の後、左肘から先の重みが消えていった。い、痛い、イタイイタイイタイイタイイタイ!

 

「ぐうぅぅぅぅぅっ!」

 

回し蹴りを放った反動で少し止まった幽香を、鬼が出せる力の限りかかと落としを放ち、距離を離す。

 

「きゃっ!」

 

吹き飛び、地面に直撃する。

い、今の内に魔力を流して再生を促そう……!つーか誰だよ!優しいんだろうな、とか言った奴!凄い怖いじゃねぇか!そいつはとんだ節穴なんだろうな!俺だよバーカ!

 

「つー…………!ルーミアにあげた時の5倍は痛いぃ……」

 

吸血鬼の力は万能ではない。再生能力は身体の負担になるし、大きな怪我は治すのに時間がかかる。魔力を流して重点的に回復して、これくらいなら………30秒、といった感じか。かなり短いと思うだろうが、コンマ数秒の間での戦いで、それがどれだけのスキであるかはお察しである。会話でもして、時間を稼がなくては……。

 

「うふ、うふふふふ………!あは、あははははは……!痛い、痛いわ………、あはっ、はははははは!」

「お前はなんでそんなにテンションが高いんだ!こっちは凄い傷負わされてテンション低いわ!」

「あら………良いじゃない、別に。久々に強い人に会えたんだから………。お遊びの戦いもいいけれど、やっぱり強い人との本気の戦いが面白いじゃない♪」

「バカヤロウ!!(  '-' )ノ)`-' )面白くねぇよ!」

「あら残念♪」

「…………っ、もーいい、もう怒ったお!!夢符「二重結界」!」

「あら?」

 

幽香の脚に結界を縫いつける。流石にこの拘束は数秒では破けない。なにせ俺の鬼力でも数秒持つんだからな。

「お前には、俺の全力で行かせてもらう!」

霊力を能力で回復。全霊力を手に集める。集めた霊力を圧縮する。再度霊力を回復。手に集める、圧縮する。それを繰り返す。エネルギーが次々と奪われたり集められたりし、気分は最悪だが。

 

「うぷ………。良し」

「全力全開×5!スピリチュアルビーム・スペシャルエディション!」

 

俺の全霊力の5倍の霊力の奔流が、幽香に向かって放たれる。拘束はまだ解けていない、直撃するはず!

 

「!これは………不味いわね」

 

そう言うと幽香は傘から、極太のレーザーを放った。これは……!?

 

「マスタースパーク!?なんで、魔理沙の技を……!?」

「あら、あの子、そんな風に呼んでるの?ふぅん、火花使い(マスタースパーク)ねぇ。言い得て妙ね。これは元々、私が使ってた物よ。あの子はそれを真似しただぁけ」

「…………魔理沙のそれよりずっと強い。だけど……それじゃ無理だ。君なら分かってるだろうけど」

「ええ、そうね」

 

こちらの霊力砲が、幽香の妖力砲を容易く飲み込む。

 

「俺はこれでも『霊夢に匹敵する』程の霊力を持ってるんだぜ?その五倍がどれ程の力を持つと思う。高々一妖怪の持てる妖力で、対抗できはしない」

 

スペシャルエディションが、幽香を大きく飲み込んだ。少し威力を削られたみたいだけど。これで終わり……………な気がしない。何故だろう。

 

「うふ、うふふふふ…………」

 

ほら、やっぱり。

 

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ………っ!」フラフラ

 

ゆらりと立ち上がり、こちらに向かってくる幽香。なにこれこわい。

 

「おい、やめとけよ、相当ふらついてるぜ?如何に君が化物な身体能力を持っていても、ここまでの傷を与えられて無事では済まない。これは弾幕ごっこじゃないんだ、これ以上続けたら死ぬぞ?」

 

あっちからふっかけて来たとは言え、流石に死なせるのは……。

 

「あらあら、何を言ってるのかしら、こんなに楽しいんですもの、もっと………もっともっともっともっともっと!私と遊びましょう……っ!?」

「だからこれ以上やったら死ぬかもしれないんだってば。君だって死にたくないでしょ」

「なんで生きるために、今の愉しみを投げ出さなきゃいけないのよ?最後まで愉しく生きられれば、それでいいのに!」

「……………はぁ。仕方ない、君を完膚無きまでに………叩きのめしてあげようっ!」

「そうじゃないと、面白くないわ!」

 

翼を後方に出力し、幽香の胴に蹴りを放つ。それに幽香は自分の傘を立てることで対応した。脚に鈍痛、強度が相当高いことが窺える。俺が脚の痛みで一瞬ひるんだ隙に、幽香は傘から伝わった衝撃で乱れた体勢を整え、蹴りを腹に叩き込もうとした。逆に霊力を集中させた肘を膝に振りおろす。

 

「………っ……!」

 

まずは左足、と。立つくらいは出来る。次だ。コンマ数秒の怯みを逃さず足払いし浮かせ、掌底を上に振り上げて空中に打ち上げる。

 

「うぐ………っ!」

 

空中に打ち上げるときに放った掌底が、幽香に更なる怯みを与える。そしてその隙を逃すわけもない。能力を使用、『風見幽香の保持する能力の理想』を『関節を伸ばし続ける程度の能力』に。

 

「よっとっ!」

 

後は幽香を抱き上げ、そのまま下に急降下。脚は曲がらないため衝撃を直接受け止め、その関節を破壊する。両方ともだ。

 

「…………………がはっ……!」

 

衝撃が強すぎて肺の中の空気が漏れたのか、強く呻く幽香。

 

「…………君が万全だったら、こうはならなかっただろうけどね」

 

後頭部を叩き、思考中枢に刺激を与える。ゆかりん曰く、思考するための機能は頭部にあるらしい。強過ぎる刺激を受けると、意識が無くなるのは人間と同じだと。これで………。

 

「…………う………あ……っ……」バタン

 

よし、制圧完了。万全なら、あれくらいの隙、埋められただろうにね。

 

「………っ、ふー………終わったかぁ…………」

 

あれ当たってたら死んでたよね、最初の不意打ちとか。怖かった。

 

「あは、初対面と印象違いすぎだろ……。これも原作知識の少なさの弊害だよねぇ………はぁ」

 

さて、そのままにする訳にもいかないな。とりあえず、能力は元に戻しといてっと。能力にまで干渉しちゃ、戦闘の前提が崩れるような気もするが、相手が同じ事をしようとするか、能力を全く使用しない相手にだけ使う、なんてルールが俺の中には有ったりする。あとキレた時。

 

「……………っ、おっと。流石に、疲れてるなぁ………」フラフラ

 

結果的にはほぼ幽香の攻撃を受けず、完封した訳だが。それをするのに多大な労力を支払った事は言うまでもないことだろう。明日からは筋肉痛ハンパないだろうなぁ…………。ああ、幽香の怪我、治さないと………。幽香の家何処だろう、分からないからその辺の幹にでも寝かせておこうか…………。

 

「………よいしょっと………」

 

幽香を持ち上げ、その辺の木の幹まで運ぶ。あぁ、いい匂いだな、花の香りは…………。

 

「………あ……やばい、意識が……持た……なく……」

 

幹の下に着いた瞬間、俺の意識は闇に閉ざされた………。

 

………………………青年お昼寝中…………………………

 

side yuuka

「………う………んん………。あら、なんでこんな所で寝て…………。あ」

 

目の前に、眠っている凜を見つける。随分とうなされている様だ。

 

「そう…………負けたのね……いや、寝ているのは凜の方なのだから、私が勝ったのかしら……?いやいや、負けたわよね、私が。うん」

 

覚えている。見事なまでに一方的にボコボコにされた。

 

「というか、なんで負けた私が無傷で、勝った貴方がそんなに辛そうなのよ」ムニムニ

「……………うゔー………や、優しい人がいいです…………」

「全く………」

 

でも、今の彼なら、倒せるわよね………。

 

私だって、痛いのが好きなわけではない。当然、ボコボコにされた恨みというのはある訳だが……。

 

「…………………………、ま、やめておきましょう」

 

仕返しにそんなことをしても、何の意味もない。私は負けたのだから、勝者にそんなことをするのは筋違いというものだ。それに、私から仕掛けたんだし。

 

「…………うぐぅ…………。ありゃ、落ちてたか…………あ、おはようございます、幽香」

「ええ、おはよう」ムニムニ

「あのですね、起きたんだから人の頬をむにゅるのはやめてください。それは寝てる時だけの特権みたいなもんですからね」

「あらごめんなさい」パッ

「まーいいですけど。よっと」

 

起き上がる凜。

 

「うぐ、体痛い………。すぐ終わらせたから、伊吹の時よりはマシだけど…………。寝たのはまずかったなぁ………」

「自慢かしら?」

「あは、お前なんか俺の足元にも及ばないぜ!って?結構無理したんですから、そんなこと言えませんって」

「あら、再戦を挑もうと思ったのに」

「あは、またやられたいんですか?あれが俺の全力ではないですよ?」

「言うじゃない」

「事実ですからね」

「………………ま、良いでしょう。それより、何かして欲しい事でもないの?」

「なぜ?」

「折角勝ったんだから、何かいい事有った方が良いじゃない?」

「ふぅん………じゃ、幽香をお嫁さんに――――」

「ん、いいわよ」

「………………………うわお、予想外な展開だなぁ………。冗談冗談、こんな凶暴な奥さんいりませんって…………」

「…………………あらあら、それはそれは。女の子としての尊厳をいたく傷つける発言をありがとう」

 

凜の頬を掴み、横に思いっきり引っ張る。

 

「痛い痛い痛い痛い!!頬がちぎれる!」

「痛いの痛いの~………飛んでけ~♡」バッシィ-ン!!!!!!

「ひでぶーーーーーー!!!!」

 

悲鳴をあげながら、地面で悶える凜。

あぁ………やっぱり、いいわぁ………♡何と言うか、嗜虐心をくすぐられるというか………そんな気持ちが、こみ上げてくる。

 

「う、ノω・、) ウゥ・・・と、取り敢えず、何か食べ物を貰えますか……?実は昼飯抜いてきたんで………」

「い・や♪」

「あなたがして欲しい事を言えって言ったんでしょうが!」

「あらあら、そんなに声を荒げて………。もちろん、構わないわよ」

「ゔー…………こ、この人疲れる…………」

「あらあらあらあら、そんなに疲れ果てて………そうだ、もう一回痛いの痛いの飛んでけしてあげましょうか?」スッ

「いいです!絶対に!」

「冗談よ。行きましょうか」

「…………貴方が言うと、冗談に聞こえないんですが………」

 

……………………青年疲労中………………………

 

side rin

「ほら、これでも食べなさい」

「わーい、ひまわりの種だぁ!やった――――ってアホかぁ!ハムスターだとでも思ってるんですか!?」

「冗談。ちゃんと用意してるわよ」

「最初から出してくださいよ………」

 

幽香は、目の前のひまわりの種が入った皿をどけて、台所からパンとスープを持ってきてくれた。ハンバーグも並べられ、洋風の食事が完成した。

 

「……………?珍しいですね、洋風なんて。まぁ、作り方自体は幻想郷にも一部流通してますけど、あまり一般的ではないですよね?」

「長く生きていれば、ある程度知識は勝手に増えるものよ。私はずっと日本に居たわけじゃないし、ある程度の知識はあるわ」

「へぇ、そうなんですか」

「…………そういえば、敬語に戻ってるわね」

「あは、あの時は頭に血がのぼっちゃってたんで。基本は、敬語を使うことが多いんですよ?」

 

年上に見える人には敬語を使ってはいる。例外は『濃い』メンバーだけだ。妹紅さんとか、上白沢さんとかには使ってるけど。

 

「ふぅん………。別にいらないんだけどね」

「幽香には恐怖心も煽られたから、それの影響も有りますけどね…………。まぁいいです、では早速、いただきますね」

 

パンを手にとろうとすると、

 

「…………ふっ……………」

 

幽香がすんでのところでパンの入ったバケットを引っ張り、俺の手をからぶらせた。

 

「はぁ、今度は何を思いついたんですか……?」

「ふっ、凜…………この私の手料理が、タダで食べられるなどとその気になっていたあなたの姿は、とんだお笑いだったぜぇ……………」

「ダニィ!?だ、騙したな!パラ○ス!」

「ふわぁ~はははww」

「あは、懐かしいですねぇ、それ。で、俺にどうしろと?」

「食べれば良いじゃない」

「いやまぁ食べたいですけど」

 

手を伸ばす。皿を引かれる。手を伸ばす。皿を引かれる。手を伸ばす。皿を引かれる。

 

「俺にどうしろと!」

「自分で食べられないなら、人に食べさせてもらえばいいって事よ」

 

そう言うと幽香は、スプーンでスープを掬い、

 

「はい、あ〜ん」

「え、俺にそんな羞恥プレイをしろと?」

「誰もいないじゃない」

「いやまぁそうですけど、それとこれとは話が別と言いますか」

「お腹、空いたんじゃないの?」

「……………まぁ、幽香がやりたいなら…………いただきます」

 

幽香が手を伸ばし、スプーンを口に運ぼうとした。それに合わせて口を開けて待っていると、スプーンが口に触れる直前で戻された。

 

「……………ふふっ、そんなに俺を怒らせたいんですか?」

「冗談冗談。ほら、あ〜んなさい?」

「あ〜ん…………うん、美味しいですね」

 

普通のコーンスープだけど。

 

「次は………パンかしら。あ〜ん」

 

パンをちぎり、少しスープに浸してあ〜んしてくる。というか、いつまでやる気なんですか?ここは………仕返しを。

 

「あ〜…………むっ」

「ひゃんっ!?な、何してっ……!?」

「何って………幽香の指を銜えてるんですけど」

「そ、そんな、舐めるなんて……き、汚いじゃない………」

「幽香の手についた雑菌なら、余裕で舐め取れますよ?」

「!?な、何言って………」

「あっはっは。照れてるんですか?」

「~~っ!そんなわけ無いでしょ!?」ズバッ!!

「おっと。無理しちゃいけません、まだ痛みは抜けてないはずでしょう?」ズドォン!!!

 

めっちゃ手ぇ痛い。けど、前よりかは痛くない。掴んだ手を引き、幽香にささやきかける。

 

「安静にしないと……………さっきより過激なオシオキ、しちゃいますよ………?」ボソッ

「…………~~~~~!?」

「あは、人をいじめて良いのは、いじめられる覚悟のある人だけ、ですよ?因果応報ですねぇ」ケラケラ

「なぁっ!?」

「あは、あはははは!可愛いところもあるじゃないですか。それでいいと思うんですけどねぇ」

「くっ………このぉ!」

「あはっ!だから、安静にしていて下さいって。やっぱり本調子では無いですねー。俺の腕を消し飛ばした時とは比べ物になりません」バスゥ!!

「……………………分かったわよ、安静にすればいいんでしょ?」

「あは、分かってくださったようで何よりです。じゃ、ご飯食べときますねー」

 

パンを取るため、バケットに手を伸ばすと、バケットが引っ張られ、俺の手が宙を切った。

 

「?………幽香?」

「安静にはするけど………それが私のやりたいことをやらない理由には、ならないわよね?」ニィッ

「………………………。あは。一本取られましたね。恥ずかしいのも本当なんですが…………(ちっ、ごまかせなかったか………)」

「あら、人をいじめて良いのは、いじられる覚悟のある人だけ、じゃなかったのかしら?」

「あは、違いない」

 

どうやら、まだまだこの羞恥プレイは続くようだ。

 

…………………強者イチャラブ中……………………

 

「……………………ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

「…………………うん、最後まで食べさせられる羽目になるとは思いませんでしたよ」

 

結局全て口に運ぶまでずっと羞恥プレイは続いてしまった。もうね、ありがたみがないよね、何度もやってるとさ?

 

「あら、たまに手を噛もうとしたり、逆に食べさせた人が言うセリフなのかしら?」

「やられっぱなしは流石に癪ですからね」ケラケラ

 

それにしても体が痛いなぁ。アレかな、筋肉痛って筋肉の細胞が壊れることに端を発するものだったよね?それなら、筋肉の細胞を元に戻せば、痛みも無くなるのか………?

 

「(……………………いや)」

 

あまり科学で物事を考えすぎるといけないな。例えば『力を強める』という使用例1つとったとして。筋肉の強度自体を強めているのか、腕から出る圧力を強めているのか、伝達効率を高めているのか。そんなことですら分からないのだ。

 

この能力(ちから)は確かな幻想の力。それを科学で解明することは不可能だ。それを言うなら、まず『人間が能力を持つ』という、その前提がまずおかしいのだから。科学的根拠を元に、幻想の力を振るうのは、危険な行為だ。

 

「っと、まぁ良いです。お腹も少し膨れたので、そろそろお暇させていただきますよ」

「じゃあね」

「はい、またいつか。………………そうだ。幽香は今やってる花の異変について、心当たりはありますか?」

 

まぁ一応聞いておこうよ。そろそろ解決してるかもしれないけどね。仕事の速い霊夢のことだし。

 

「あら、そんなこと知りたいの?」

「ええ、まぁ。そうですね」

「教えて欲しかったら………また、私と一緒に遊んで――――」ニタァ

「はいそこまで知りたいわけでもないので帰りますさようなら!」

 

脱兎の勢いでテーブルから立ち上がり縁側へと入り抜けようとする。

 

「まー待ちなさい」ガシッ

 

幽香(しにがみ)の鎌が、肩に掛けられた。

 

「い、いやです、俺はもう帰ります、流石にこれ以上付き合うのは嫌なんですぅー!」

「くすくす、そんなに怯えないでよ。教えてあげるわよ、別にね」

「え、本当ですか?やったー!」

「あなた切り替え早いわねぇ。なんで花がこんなに咲いてるのかって言うと………」

 

幽香の話を聞くと、今日は博麗大結界が緩む日であり、そのせいで外の霊が入り込み、花を咲かせているらしい。花とは四季の象徴である。そして四季は人の命の象徴だ。ヒトにとって、春は命、夏は活気、秋は恵み、冬は死の象徴。つまり、人が移れば、様々な花を咲かせる。花=四季=人の命だから。推測だが、多分そんな感じだろう。

 

「へぇ。でも、霊が来たってんなら、彼岸に招けばいいじゃないですか。それこそが死神の仕事でしょう?」

「そんなの私は知らないわ。60年前と同じ事があったから、そうなんじゃないかって思っただけだし」

「まあ、確実性は高いと思いますが。色々と辻褄が合うのは事実ですしね。まぁ、ほっといても霊夢が解決するとは思いますけど…………ま、面白そうだし、俺の方でもこの異変に接触してみるとしますよ」

「そう。ま、頑張りなさいな」

「ありがとうございます、幽香。じゃ、またいつか…………」

「ええ、また、いつか」

 

幽香に挨拶して家を出て、再度浮遊した。

さて、ひとまず、霊夢の様子でも見に行くとしようか。一番手っ取り早いだろうし?

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。