東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
…………………青年探索中………………………
うーん、いないなぁ。これでかれこれ2時間くらいになるんだけど…………。やっぱり、帰っちゃったのか………?
「悩んでもしゃーねぇや。ちょっと高度が高すぎるのかな?あんまり見えないや。雲は突き抜けてないんだけどなぁ」
仕方ない。高橋凜の幻想郷探訪その2。再思の道に行ってみようじゃないの。
再思の道。この道には毒的な何かがあり、気分を悪くするのだが、逆にそれが生きたいという欲望を生み、やっぱり生きたいな、と思い直す道である。だから『再』び『思』い直す『道』で再思の道。まぁ再思の道自体には基本的に誰もいない。俺が目指すのはその先、『無縁塚』だ。
無縁塚は幻想郷でも端の端に存在する。というか、ほぼ外も同然らしい。外との境界が揺らいでいるため、外の物や人が大量に流れ込む場所であり、よく霖之助なんかは無縁塚から持ち帰った戦利品を売りつけようとしてくる。パソコンなんかはスタンドアローンで出来ることは少ないから買わないけど、稀にいいものを拾ってくるので、結構買う。調子に乗って霖之助が更に売りつけてくる。まぁ、あんなもの俺くらいだろうしね、使えるの………。
外のものは、使い方が分からんとどうしようもない。言うなれば、幻想郷の住民は一部を除いて、機械音痴なのだ。ゆかりんなんかは使えるらしいけどね。
「と、話が心の中でずれたところで。何か面白そうなものないかな、と見に来たわけだ。さ、行こうかな」
しばらく再思の道を歩いていると(テキトーに霊力を張り巡らせとけば毒は弾ける)、そこには人影が。
「うーん…………四季様も行ってくれたし、もう少し寝とこうかな~」
「死神?なんでこんなところに?」
「おっと、またお客様かい?こんな辺鄙な所通ろうとするやつが二人もいるなんてねぇ」
「はぁ、もう一人居たのか?もしかして………それって巫女かな?」
「その通り!よくわかったもんだ」
「ま、今その子探してるんでねぇ。どこに行ったのか分かる?」
「あっはっは、どうしてあたいがそんなこと教えなきゃいけないのか、教えて欲しいもんだねぇ?」スチャッ
「あっはっは、そんなことも分からないのかい?仕方ない、体にでも教えるとしよう」
…………………青年弾幕遊戯中……………………
「うーん、また負けた…………」
「ま、俺もある程度慣れたもんだからねぇ」
いくら体が鈍くなっているとはいえ、死神程度に負けるようじゃ守護者は名乗れない。
「ま、いいさね。それで、巫女が行った場所、だっけ?無縁塚だけど………もうかなり時間経ってるから、もう居ないんじゃない?」
「うーん、まぁ取り敢えず行ってくる。ありがとね、死神」
「死神死神って、そんなに役職名で呼ばないでおくれよ。あたいには小野塚小町って言う名前があるのさ」
「ふーん、俺にも名前くらいはあるよ。高橋凜だ。幻想郷(ここ)で生きてるなら、少しくらい耳にしたことがあるかもね?」
「うんにゃ、ないね」
「……………あはっ、カッコつかないなぁ。そこは聞いたことが有ってくれよ、頼むからさ?」
「ふふ、あたいはそうゆうのに疎いからね。生憎、聞いたこともない」
「あは、あっそー?まぁいいや、小野塚、だっけ?宜しく」
「おっと、もっとフレンドリーに呼んでくれたっていいのに」
「はいはい、じゃ、こまっちゃんね、こまっちゃん」
「それでいいよ。宜しく、凜」
「うん。じゃーね、こまっちゃん。機会があったらまた会おうじゃない」
「まぁ、機会があったら、ね」
こまっちゃんと別れ、無縁塚へと歩き出した。
いやー、それにしても、幻想郷って名前で呼ばれたがるよなぁ。コミュ力の低いオタク男子にはなかなかどぎついものがあるぜ。まぁ、実際には女子と話す機会もバスケ部のおかげで有ったし、そこまででもないけどさ。
あの頃の俺に比べて…………ひゅー、モテモテだねぇ。まさか下の名前やあだ名で呼ぶ奴がこんなに大量に出来るとは思わなかったぜ。びっくりだあね。うんまぁ、夢にまで見た二次元in自分だけど、それが東方とはなぁ………恐れ入りましたとさ。どうせなら、もっと興味のある世界にインしたかったもんだぜ。雑食気味だったから、そこまでこれが好きって作品はなかったけれども。
とまぁ、今更ながらそんなことを思ってると、無縁塚へとたどり着いた。
「さーて、元気にやってるかな?」
やはり無縁塚にも大量の花が咲き乱れていた。しかし、この花々の中で最も目立つのは、鮮やかに咲いている紫の桜だ。
「ほへー、ここって花見スポットだったんだねぇ。綺麗なもんだ。ちょっと毒々しいけれど」
しばらく花に見蕩れていると、花畑の中に異物がまぎれているのを見つけた。
「ん?……………………あ!?霊夢!?」
なんと、倒れていたのは霊夢だった!
「あら、この巫女の知り合いですか?」
「え?」
目の前を見てみると、そこには緑の髪のちびっ子が居た。見たとこ、10歳前後くらいだ。でもこの人ももっと生きてんだろうけど。
「あー…………もしかして霊夢、負けたのか?」
「ええ、ついさっき」
「なんで戦ってたの?」
「さぁ、少し分かりませんが。弾幕ごっこ、でしたか?それで決闘を挑まれたものですから、相手をしただけです」
「ははー…………。あっは、だっせぇな、霊夢。勝手に仕掛けておいて負けるなんてな?」
でも、今の霊夢が負けるのか………。只者じゃねぇよな?
「それで、どうするんですか?その巫女の知り合いなのでしょう?敵を取る、というのなら、お相手しますが」
「え、そんなことしないけど?」
「え?」
「だって、霊夢が仕掛けて負けたんなら、霊夢が悪いんだし。勝てば正義、負ければ悪。それがスペルカードルールなんだから」
「…………まぁ、言ってることのつじつまはあっていますね」
「あは、だよねぇ。所で、君の名前は?」
「四季映姫です。幻想郷を担当している閻魔です」
「!閻魔…………。へぇ、初めて見た。やっぱり、有罪無罪を決めたりするの?」
「まぁ、そうですね」
「ふぅん。俺は―――――」
「ああ、自己紹介は不要です、高橋凜さん。八雲紫からは話を聞いていますので」
「ゆかりん…………悪い、紫から?」
「別に普段通り呼んでくださっても結構ですよ?」
「まぁ、そういう訳にはね。それで?」
「そうですね…………。八雲紫からは、『幻想郷に引き入れたい人物がいる』と言われたので、あなたの事はある程度聞いています。幻想郷に害のある人物なのかそうでないのか。失礼ながら、この『浄玻璃の鏡』であなたのことを見させてもらいました」
「浄玻璃の鏡?」
「映した相手の行い………つまりは過去を見ることが出来る鏡です」
「過去を……………」
「まぁ、あなたが触れたくない事について語るつもりはありません。あなたの世界で起きたことなど、ここで生きるあなたには関係のないことです。貴方の生き方を断罪することにしましょう。幻想郷担当の閻魔としてね」
「……………あは、構わないよ?」
「それは重畳」
「あなたは、ずっと自分を偽ってきた。嫌われたくないが為に、さわりのいい性格を演じ続けてきた」
「伊吹にも言った。作ったキャラクターであろうがそれは自分、本当の自分など存在しないものなのさ」
「そう、その通り。それをあなたは知っている。だけれど、そうだと信じてはいない」
「…………………」
「そういうものだと分かっているのに、信じられない。奥底のあなたはそんな真実を受け入れられない自分が嫌いなんです。だから、自分が理想だと感じる性格を作った。真実をきちんと語れる、そんな性格を。あなたにはそれが出来た。あなたは受け入れていないだけで、知っているのですから」
「………………………」
「確かに、違う性格があるのは当然の事。人によってキャラクターを変えるのは至極真っ当なことです」
「だけれど………………最初に出来た自分を、否定し、塗り替える為に作った性格(キャラクター)。これを偽りと呼ばずして、何を偽りと呼べと言うのでしょう」
「………………………あは、今更、そんなことを言うのか?俺はずっと。人に合わせることを、人に嫌われないことを最優先にする生き方を遂げてきた。俺はもうこんな事を。10年以上続けてきた。今更それを変えろって、そう言うのか?」
「どんな事情にせよ、悪行は悪行、善行は善行。白黒はっきりつけるのが私の仕事(ちから)です。それは『ずっとやってきたから』という理由では、変えられないもの」
「……………………善と悪。多面性を持つ人間を、その二元論で語ることは出来ない」
「違いますよ。どの顔であろうと、それらは全て自分。あなたの言った通りです。だからこそ人は、ひとつひとつの顔の善と悪に、責任を持たなければならない。言うなれば、多くの顔を持つ人間は……………いや、意思を持つものは。多くの罪を負いやすいのです」
「………………………」
「否定できないでしょう?なぜならあなたは、私に言われるような事だって知っているんですから」
「…………………………あは。さっきから人をなんでも知っているみたいに言うんだね。羽川さんだとでも思ってるのかい?」
「茶化さないように。それが今あなたの積める善行ですよ」
「あは、ごめんね」
…………茶化している気はなかったんだけどなぁ。
「事実ですよね。私はあなたの行いを見ましたから、分かっているのですよ」
「………………まぁ、否定はしない、とだけ。これでも色々と経験を積んだ身ではある、つもりだ。ある程度は現実というものを知ってはいる」
「なら、あなたの罪が深いことも、理解しているのでしょう?」
「ああ。君の言っていることは全て正しい。君が言ったことは全て事実だろうし、それは確かに悪いことなんだろうけど………」
「悪いからなんだって言うの?」
「………………それは、どういう………」
「受け入れられなくて、そんな自分が嫌いだから偽った。偽れば、嫌われないようなキャラクターを作り出せば。全て上手くいくと思った。この偽りの自分だけは受け入れてくれる。偽りだって自分なんだから、俺は受け入れられている、きちんと世界を受け入れられているって。そんな自己満足に醜く浸った。それは確かに悪行で、偽りから始まった嬉しさで。そんなことで嬉しさを感じる俺は、人間として終わっているんだろう」
「それでも」
『僕は悪くない』
『自分が悪くないと思えば、悪くない。自分が悪いと思ったら悪い、良いと思ったら良い』
『四季。善と悪について、君は君の限りなく真実に近いモノサシで正確に人を測るだろうけど』
『僕からしてみたら、善悪はこんなに単純で、分かり易いものなんだよ』
『だから、僕は悪くない。だって、僕は悪いと思ってないんだから』
「それが、俺の答えだ」
「……………それが正しくないって事は、分かってての発言でしょうか?」
「ええ、もちろん。でも、そんなもの受け入れられない、受け入れたくない。そう思ってる最初の俺の本音だよ」
「……………良い答えです。偽らざるあなたの本音、確かに聞き届けました。罰を与えるのは、あなたが生をまっとうした時です。それまで、善行を積む努力をすること。それが今のあなたに積める善行です」
「へぇ、努力すること自体も善行をなの?」
「もちろんです。ひたむきに頑張る事は、とても良い事ですからね」
「いい言葉だ。いい言葉過ぎて力がない、薄っぺらだ」
ケラケラ
「……………………まぁ、聞かなかったことにしておきましょう」
「あはっ♪これでお仕事は終了かな?」
「仕事というより、説教、ですかね。私が自発的にやっていることですから」
ちょっとお説教って感じじゃなかったけど……。
「ふぅん?酔狂な趣味持ってるね、君。まぁいいけど。じゃ、こっちもお仕事を済ませましょうかね」
こほんと咳払いをして、話を切る。
「四季 映姫さん。この花の異変について、二三、質問がある。答えてくれるかな?」
「ええ、構いませんよ」
「そもそもなぜ幽霊の数が増えたの?彼岸に導いてやればいいじゃないか」
「こちらの不手際も一因としてありますが………。花に乗り移ってしまった為、幽霊として彼岸に移すことが無理だったのが主な要因です。自らが死んだことに気づかなければ、彼岸に移ることは叶わないのです」
「……………なるほど。そちらの不手際とは?」
「……………………身内の恥を晒すようで、少し恥ずかしいですが………。三途の川の船頭をしている、小野塚小町という死神が居るのですが………。あの子は、とてもサボりがちでして………。今日も小町が霊を運んで来なかったので、様子を見にきたら変なことに巻き込まれて……………」
「………は、はぁ、苦労してるんだね……………ん?小野塚小町?さっき会った子じゃない?」
こまっちゃんだよね、こまっちゃん。おお、意外なつながりだね。
「そうだ、小町を捕まえて説教しなきゃ…………すみません、小町がどこに行ったか分かりますか?」
「…………………うーん、どこに居るかは知ってるし、教えるのも構わないけど……………|・ω・`)あは、どうやら、そうはいかないみたいだぜ?」
「え?」
「よくもやってくれたわね………」
そんなことを言いながら、地に伏せていた霊夢がのっそりと立ち上がる。その表情を見てみると…………。うむ、修羅だ(確信)
「やられたら、やり返す………。倍返しよ!」クワッ
少し古いぜ、霊夢。
その鬼気迫った表情に、すこしびびりながら、四季が言う。
「……………よ、よく考えてください、仕掛けたのはあなたですよ?それでやり返すというのは、道理に反していることです。ここはまず落ち着きましょう。それが今のあなたに出来る善行ですよ?」
おっと。
「スペルカードルール。勝者は、敗者の再挑戦を受ける義務がある。四季、今の君に出来る善行は、なんなんだろうねぇ?」ニヤニヤ
「うっ………!そ、それは……!」
「ま、観念することだねー」
「……………なんだか良く分からないけど…………取り敢えず………行くから」ゴオッ
「い、い、いやぁぁぁぁぁ!!?」
……………………少女達弾幕中……………………
「う、うう………ひ、ひどい目にあいました…………」ゲッソリ
「ふぅ、すっきりした」ツヤツヤ
わははははは、やっぱり、まず相手を舐めて掛かるのは、霊夢の悪い癖だねぇ。最初から本気でやればいいのにさ?
「ま、今いる幽霊も、その内自分が死んだことに気づくだろうし。それまでは、この無害な花を楽しむとしようぜ、霊夢」
「……………私がサボってるみたいに扱われて、いい気がしないんだけどなぁ」
「あはっ、それは仕方ない。だってどうしようもないからねぇ。あ、そだ四季。こまっちゃんなら岩の上で寝てたよ。まだ居ると思うから、存分に叱ってあげるといい」
「……………そ、そうですか。では、失礼します………」ゲッソリ
「おう、ばいばーい」
四季の姿が再思の道へと消える。
「うん、これでこの異変の調査は終わりかな?戻ろうぜ、霊夢」
「ええ、いいけど………。なんであなたがいるの?」
「暇だったから?」
「あ、やっぱりそうなの?」
「まぁねぇ。霊夢のことだし、心配はしてなかったけど。あまりに暇がね………」
「…………そ、そう」
「ん?おいおい霊夢、照れてんのかい?」
顔が赤いよ?
「て、照れてなんかないわよ」
「あはは、嘘でしょー?大方、信じてくれて嬉しいとか、そんな感じでしょ?」
「そ、そんなことないわよっ!」
「あは、また顔赤くなったぜ?やっぱり可愛いねぇ、霊夢は」ナデナデ
「……………そんなのでごまかされたり、しないわ………」
「あはっ、そいつは残念」
そう、俺はこれでいい。ずっとずっと。このままの俺でいい。これが俺の生き方で、俺の誇りだ。変える必要など、絶対にない。そう思い、続けていることを。この時の俺は、未来の俺に望んだ……。