東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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気分転換の番外編。月火ちゃんは可愛い。


完全番外『ファンタジー×ファンタジー』

やぁどうも、久しぶり。高橋 凜だ。まぁ気軽に、どんな言い方でも構わないから呼んでくれ。

もしあれなら、鬼畜野郎とか、たらしとかでも構わない。

いや、流石に構うが。構いまくりだが。

 

それでも、画面の向こうで、俺の事を軽く覚えてくれるならいいんだがな。

 

ということで、今回は番外だ。理由?まぁ作者が、久しぶりに偽物語を読書感想文の為に読んで、やりたくなったからだ。

 

影縫余弦と斧乃木余接。この二人のツーマンセルの代わりに、俺を加えたらどうなるだろう、だとさ。悪役になってしまうだろうから、あんまり気は進まないが、仕方ない。まぁ突っぱねてやってもいいのだが、皆も知ってのとおり、俺は優しいので、作者のわがままを受け入れてやる。ということで、前と同じく、本編以外に用はない、という方は、気を落とさないで本編を待ってくれると幸いだ。

 

さぁ――――また違う、無意味な物語。始めようじゃないか―――。

 

 

 

「……………暇だなー」

 

最近はずっと暇暇言ってるような気もする。

若者の仕事は勉強だ、とは良く言った物で、毎日が夏休みみたいな生活は、なかなかだらけてしまう物である。今月はいいゲームもラノベも無かったので、正直暇なのである。そもそも俺はオタとしてはそんなに深くはない。一部だけなのである。

 

興味無いだろうけど一応挙げると、ゲームならke○作品とか、GOD E○TERとか、モ○ハンとか、AKIBA’S TR○Pとか、ペル○ナ系列とか、ダンガ○ロンパとか、グリザ○アとか。ラノベは多すぎて挙げづらいが、最近はいいものないような気がするね。

 

「うーん。そだ、また他世界行こうか」

 

前は読んだ俺○イルの世界だったが。今回はテキトーな種類から、どれにしようかなで決めようかな。そう思い、自室の本棚に向かい、選び始めた。

 

「ど、れ、に、し、よ、う、か、な、て、ん、の、か、み、さ、ま、の、い、う、と、お、り、か、き、の、た、ね。1234567891011121314151617181920………っと」

 

長ったらしい呪文を唱え、選ばれた戦士(ラノベ)は…………。

 

「化物語、か。へぇ、これはこれは。なかなか面白いセレクトになったな?」

 

なら、行くとしますか。世界旅行に、ね。

 

「転符「物語シリーズの世界」」

 

 

 

 

side koyomi

高橋 凜。彼の事を語る為には、相当な努力が必要だと、僕は思う。何故なら、彼という個人を表すのは、非常に難しいことだからだ。

というのも、何と言うか掴めない性格をしているのだ。人間誰でも、個性というのを有しており、それを言葉にすることで、その人を表すものなのだ。

しかし、それを掴むのが難しいのが高橋 凜だ。これから話すのは、温厚なのに残忍で、無邪気なのに腹黒で、短気なのに冷静で、楽しそうなのにつまらなさそうで。

そしておかしな。

僕の友人兼、妖怪変化のオーソリティ。高橋 凜の話だ。

 

 

 

 

僕が受験勉強のため、羽川に教えてもらった参考書を買いに行ったその帰路。彼はいきなり道路の真ん中に現れた。

 

「おろ?あは、着いた着いた。さーて、何か面白いことでも探そうか―――――って」

 

彼はそう言うと、こちらを認識した。その視線は驚きを交えたものなので、相手方は何か僕の事を知っているのかもしれない。

 

しかし、ここでわざわざ声を掛けるのもなんだと思ったので、普通に帰ろうとした。別に、初対面の同年代に話しかけるのが怖いからじゃないが。

ちょっとキョドりそうだけど。

しかし、彼の方から声をかけてきた。

 

「ちょいとそこの二ィちゃん、少し道を聞いてもいいかい?」

「…………道………ですか?」

「あは、同年代なんだし、敬語なんて使わなくていいよ」

「………………ああ」

「俺は高橋 凜って言うんだが、知らないかな?」

「高橋 凜、か。悪いけど、知らないな」

 

有名人なのだろうか。正直、芸能界にも子役界にも、そこまで詳しい訳ではないので、その名に聞き覚えはない。

 

「あは。だろうねー」

 

今時、道を尋ねるくらいで名を名乗る人間も珍しい。とはいえ、相手が名乗ってきたのなら、こちらも名乗るのが礼儀という物だろう。

 

「僕の名前は、阿良々木 暦だ」

「阿良々木くん、ね」

「それで、聞きたい道って?」

「うん?あぁ、そだっけ。そうだね、この辺に、ホテルみたいなのある?」

 

ホテル。ホテルか。この田舎町には、そんなゴージャス感溢れる施設は存在していない。しかし彼は未成年の様に見えるが、ホテル住まいをする様なお金持ちなのだろうか。

 

「生憎だけど、隣町にでも行かないとないな」

「そ?ふーむ。まぁ、とっとと関わっていきましょうかね」

 

などと。

彼は意味不明の供述を繰り返した――――。僕には理解できないだけで、彼には彼の事情が有るのだろうが。

 

「ふーむ。じゃあさ、阿良々木くんのお友達とか、紹介してくれない?」

 

と。

彼はまた、意味不明の供述を繰り返した――――。

いや。

意味はわかる。が。理解は出来ない。

 

「えーと…………なんで?」

「なんでかって?そりゃまぁ、暇だからだけれど」

「暇なのは分かった。けど、だからって見ず知らずの他人の知り合いを、普通紹介してもらおうと思うか?」

「あはっ。確かにね。しかし、君が普通を説くなんて、なんともいい難いものだ」

 

?なんとも理解し難い発言ばかり繰り返すな、と、この時の僕は思った。今思えば、これは1つの伏線だったのだが。しかし、今しがたあったばかりの、言い方は悪いが他人なんかに、流石に時間を費やすのもどうかと思ったので、理由を言って断ることにした。

 

「………………僕はこれから受験勉強があるんだ。だから、悪いけど付き合えないな」

「あは、まあまぁ。そう言わずにさー。なら、少しここで、俺に付き合ってくれない?そこまで時間をとらせるきもないからさ」

「………………」

 

うーむ。それで納得してくれるのなら、ここは彼のお願いを聞いた方がいいか?見ず知らずの人に付き合うなんて、僕も大概、甘い人間である。

 

「………………わかった、いいよ」

「ありがと」

 

とは言っても、何を話せばいいものか。やはりそこは見知った友人とは勝手が違うところだ。最悪の場合、話に詰まってしまうかもしれない―――――――。

 

 

 

「やっぱり、ひぐらしは名作だよな」

「ああ。特にPS2版が出た時の、あの興奮はすごかったな」

「そうそう。原作のイメージを壊すことのない声優のセレクトだったしなー。やっぱりK1はかっこよかったし」

「ボイスがつくと、臨場感が段違いだもんな。それに、音楽も良かった」

「澪尽し編に入った時の、コンプレックス・イマージュのかっこよさ、半端なかったなー」

「そう、そうなんだよ!今までの陰鬱なエンドから、最終決戦、って感じで!」

「あはー、分かってるなぁ。あとは、罪滅し編のあのエフェクト!あれ最高に燃えた」

「あー!あれな、斬撃が走って、カインッ、カインッ!って奴」

「なんかねー、最高に圭一がかっこよかったのは、やっぱり罪滅し編だと思うよ?」

「僕もそれには同意だな。澪尽し編は、あくまで全員がかっこよかったからな」

 

十数分後。ひぐらしの話で盛り上がっていた。

なんというか。

この男、高橋 凜。非常に話がわかる奴だった。やっぱり、僕も少しそういった物に手を出していた人間であるので、こういった話ができる事は嬉しい。

 

そう言った話ができる奴は、僕の友達内ではいないのである。

強いて言えば八九寺くらいだろうか。そういった事がわかり易そうな奴は。今度会ったら聞いてみよう。

 

「さてさて。まぁ一通り話をした所で。俺住むところないんだよね。と言うことで、阿良々木くんの家にでも泊めてくれない?」

「は?僕の家にか?」

「まぁ野宿でもなんでも良いんだけどね。でもどうせなら、あったかい所で寝たいもんだし」

「…………………うーん。別に僕は構わないのだけど………」

 

ファイアーシスターズ。あいつらがどう言うかだよなぁ。僕としては、友人が泊まりに来る、というのは初めての体験であって、少しワクワクしないでもなかったが。

ちなみに、両親は帰ってこない。うちの親は警察官で、今日は夏休みと言うことが手伝って、若者の犯罪も急増しているらしく、それの後始末に追われているらしい。

等と、少し考えた僕だったが、

 

「うーん、助けると思って、泊めてくれないかな?」

 

と、そんな風に言われてしまえば僕も断れない。高橋と一緒に、自分の家に戻った。珍しく火憐が家に居る様で、火憐の声が聞こえる。

 

貝木に一泡吹かされた事も、火憐の正義の味方ごっこを止める要因にはなりえなかったようで、今日も正義の味方ごっこに精を出していた。その火憐が、戻ってきている。ちょうどいい。早いとこ説明してしまおう。

 

「ただいま」

「あー、お兄ちゃん」

「お、兄ちゃん。お帰り」

「…………?ねぇお兄ちゃん。その人誰?」

「あー、こいつは僕の友達の高橋だ」

「ひゃは、バカなこと言うなよ、兄ちゃん。兄ちゃんに友達がいるわけ無いじゃん」

「いるわ!」

「じゃあお兄ちゃん、友達何人くらいいる?」

 

友達が何人か?そうだなぁ、羽川は友達だろ?神原は………まぁ後輩だけど、友達だ。千石も友達って言えるだろうし…………。いや、もしかしたらあっちは、友達と思っていないのかもしれないけど。八九寺は文句なし友達だし、戦場ヶ原は彼女だけど、今回のニュアンス的には含んでいいだろう。そして、さっき会ったばかりだけど、高橋とも多分友達。だから…………。

 

「6人!」

「うわっ、少ねっ」

「うん、少ないね」

「少ないな」

「なっ、バカなっ!」

「数えられるもんじゃないでしょ、友達なんて」

「そうそう。だから友『達』って言うんだよ、お兄ちゃん?」

「そんな事、知りたくなかったよ…………」

 

この僕が、まさか友達少ない奴だったなんて…………。

いやまぁ。

知っていたけれども。

 

「それで兄ちゃん。その自称友達の高橋さんがどうかしたのか?」

「家がないらしくて、泊まらせてくれって言われたんだ」

「ふーん?あたしは阿良々木火憐。んで、こっちは妹の月火ちゃん」

「どうもー初めましてー。お兄ちゃんの妹の阿良々木月火だよ」

「お前ら、年上にくらい敬語使えよ………」

 

羽川の時もそうだったが、こいつらファイヤーシスターズには、年上を敬う気が無いのだろうか。

 

「あは、いいよ、別に。正直、敬語を完璧に使いこなす女子中学生とか、気持ち悪いだろ?」

「………………まぁ」

 

それは確かに。火憐や月火、千石がいきなりきちんと尊敬語と謙譲語を分けて、きっかりした敬語を使い始めたら、こいつらは頭がおかしくなったのかと思うに違いない。

いや。

千石は違うけど。

 

「寛大な人だねー、お兄ちゃん。お兄ちゃんも見習わないと」

「そうだぞ兄ちゃん」

「うるせぇよ。お前らこそ見習ったらどうなんだ?」

 

しかし。呼んだはいいが、これから何をすればいいのだろう。友達を家に呼んだことなんてないから分からん。僕が1人悶々としていると、火憐が高橋に声を掛けていた。

 

「なーなー、高橋さん。あたしと腕相撲しない?」

「腕相撲?まぁ別に構わないけど、なんで?」

「いやー、勘で悪いけど、高橋さん、結構やるだろ?」

「………………へぇ。まぁ、やれない事はないけどね」

「だから、やってみようぜ!」

「あはっ。まぁ良いけどー」

「何何火憐ちゃん。何の勝負?」

「腕相撲で勝負だ」

「へぇ、火憐ちゃんと腕相撲で。高橋さん、やめといた方がいいと思うけどなー」

 

確かに。

今回は月火の意見に全面的に賛成だった。火憐のデタラメな戦闘能力は、つい最近味わったばかりである。その力はあくまでテクニック面で発揮されたものであり、実質的な腕力は僕とあまり変わりない筈だけど、それでも火憐の効率のいい力の使い方には及ばないだろうことが容易に想像できる。

 

「あは♪そんなにか?ま、一度やってみれば分かることだよね」

 

高橋はそう言うと、この辺りのものではない制服の袖を捲り、準備を整えた。火憐もそれを見てニヤリと笑い、居間に置かれている大きなテーブルの椅子に陣取り、腕を構えた。高橋もその腕を掴む。

始めの合図は僕が担当することになったので、組まれている腕を抑える。

 

「じゃあ始めるけど………火憐ちゃん、手加減くらいしろよ?」

「わーってるって、兄ちゃん」

 

下手したら、うちのテーブルが壊れる可能性もある。

いやマジで。

テーブルが壊れるくらいならまだいいが(よくないだろうけど)、高橋に怪我をさせては申し訳がない。

 

「それじゃ…………始め!」

 

僕の始めの合図を聞くと、二人は一斉に力を掛け始める。腕相撲は最初のやり合いを制して、いい位置を確保することが大事と聞く。

さて、最初はやはり、火憐が優勢だった。どんどんと高橋の手が押されていき、地面(テーブル)へと近づいていっている。

 

「…………っ………。あは。やるなぁ、火憐ちゃん。俺も一応、鍛えてるんだがな」

「へっ、そいつはありがと。じゃあ………そろそろ終わらせようか!」

 

火憐が更に力を込めていく。ぐんぐん進んでいき、テーブルに着くかと思った瞬間。

 

「あは。流石に女子中学生に負けるのはやだなぁ。………はぁっ!」

 

と。彼が言うと、一気に形勢が逆転し、火憐の手がテーブルに近づいた。

 

「………ぐっ!?………高橋さん、手、抜いてたの?」

「さぁねぇ」

 

火憐の手がどんどんとテーブルに近づく。

 

「すげぇ…………」

「火憐ちゃんが、あそこまで押されてるなんて………」

 

僕と月火も、その光景に驚いていた。火憐の強さは、僕は身を持って体験してるし、月火も、その強さは理解しているだろう。

その火憐が、押されている――?

いや。

別にそんな、大事ではないのに、なんで僕はこんなに説明役のような事を思っているのだろうか。

ベジータ様のモノローグみたいだ。

 

「うぎぎ…………!ぅあぁっ!」

「!おっと」

 

火憐が力を振り絞り、高橋の手を押し返す。恐らく、本気になったのだろう。高橋の手と火憐の手は、ほぼ初期位置で拮抗している。

 

「いい勝負だね、お兄ちゃん」

「ああ。まさか、火憐とやり合えるとは思わなかった」

 

「あは。まさか、霊力まで使って拮抗されるなんてね…………仕方ないなぁ。魔力も使うか」ボソッ

「正真正銘、これが本気だ、火憐ちゃん。まぁ悪く思わないでよ?」

「え―――?」

「えいっ」

 

ビタンッ!

拮抗していた二人の腕が、一気にテーブルに近づいて、勝敗を決した。火憐の手が、テーブルにピタリと着いている。

つまり。

勝ったのは……………高橋だった。

 

「え…………?」

「あは。とゆことでー、俺の勝ち、だねー」

「ま、まさか…………まだ手を抜いていたの?高橋さん」

「んー?まぁそう言う事になるかなぁ」

「…………………」プルプル

 

火憐が震えている。それは負けたことへの悔しさか、手を抜かれていた事に対する怒りか。僕と月火は、生唾を呑みながら、火憐の言葉を待った。

 

「…………………す」

「すっげぇ!」

 

火憐がキラキラとした顔でそう叫ぶ。え?

 

「すっげぇよ、凜さんっ!強そーだなー、って思ってたけど、まさかここまでなんてっ!」

「……………お、おう………。あは、いきなりテンション上がったなー………呼び名まで変わってるし…………。まぁいいけどさ」

 

あまりの火憐の剣幕に、高橋の出会ってからずっと浮かべていた笑顔が、苦笑いに変わっていた。

しかし、僕も驚いた。なんだかんだ言っても、最後には火憐が勝つんだろうなと思ってたし。

 

「まぁまぁ火憐ちゃん、少し落ち着いて。高橋さんも困ってるし」

「おっと。そうだな、悪ぃ、凜さん」

「別にいいけどね」

「それにしても高橋さん、力強いんだねー。何かやってたの?」

「ん、バスケと………なんだろうなぁ、実践訓練、かな?」

「実践訓練?」

「なにそれ?」

「あー、気にしないでくれ」

「「?」」

 

そのまま月火も交えて、わーきゃーと騒がしく話をしていた。仲良くなれた様で良かった。

 

「そうだ、3人とも。まだご飯食べてないでしょ?」

「ん?あぁ」

「そうだけど………」

「あたしもまだだな」

「まぁ泊めてもらう訳だし。何か作らせて貰えないかな?」

「えっ、高橋さん、料理も出来るの?」

「まぁ、少しはね。それで、どう?作らせてもらえる?」

「うーん。高橋さんはお客さんだし。どうする?お兄ちゃん」

 

月火が少し迷い、僕に話を振った。正直、お客さんにそんな事をさせるのもどうかと思うので、月火と概ね同意見である。

 

「別にそんな、気にしないでいいんだぞ?月火の言う通り、高橋はお客さんなんだし」

「そうだぜ、凜さん!」

「いやいや、厄介になる訳だし、少しの礼はさせてくれよ」

「………………うーん」

 

どうやら、高橋の意志は固そうだ。まぁ、そこまで言うのなら、任せてみても良いだろう。

 

「まぁ、そこまで言うなら」

「サンキュー。じゃ、冷蔵庫見てもいい?」

「ああ、いいぞ。月火ちゃん、案内してやってくれ」

「はいはーい。ささ、高橋さん、こっちこっち」

 

月火が手招きをして、高橋を台所に案内する。まぁ、高橋の料理は楽しみである。それにしても、スペックの高い奴だな、高橋。コミュ能力が高くて、顔もイケメンとまではいかないかもだが整ってるし、家事まで出来る。これで頭も良かったら完璧超人ではないか。

 

「なー兄ちゃん」

「ん?なんだ、火憐ちゃん」

「あの人、ホントに何者?」

「高橋か?さぁ、僕も良く聞いてないから。ここらの人間じゃなくて、泊まる場所がない位しか………。なんでそんなことを?」

「凜さん、ホントに強いよ。腕相撲を始める前はそこまで感じなかったんだけど。さっきの腕相撲の時に一気にわかったよ。少なくとも、あたしじゃ勝てない」

 

火憐は自分の手を見つめながらそう言う。火憐を超える戦闘能力だって?にわかには信じがたい事であるが、火憐の強さを測る目は確かだ。その推測は間違ってないだろう。しかし、なら高橋の正体は――――?

 

「話してて思ったんだけどさ、凜さんって、全くスキが無いんだよ。人なんて、日常生活でスキを消すなんて事はしないし、したとしても一時的なんだけど………」

「高橋は、それが常、だって言うんだな?」

 

コクリ、と火憐は頷いた。

………………なるほど。それは思わぬ話である。出会ったばかりの友人が、まさかそんな超人だとは。

 

「なら――――それとなく、探ってみようか」

 

 

side rin

少し遡り、凜と月火の所へ。

 

「うーん、あんまり食べ物もないなぁ………ラーメンは有るから、チャーハンと、サラダ辺りを作った方がいいか。少し買い足さないといけないなぁ。月火ちゃん、ご飯は炊いてる?」

「うん、一応ね」

「おっけー。じゃあ、少し買い出しに行かなきゃいけないねー」

「うん、そうみたいだねー」

 

月火ちゃんとの会話が途切れる。すると、月火ちゃんの方から声を掛けてきた。

 

「ねぇねぇ、高橋さん」

「ん?なに?」

「なんでお兄ちゃんと友達になろうと思ったの?」

「へ?」

 

うーん、そりゃストーリーに関わるなら、主人公と接点を持つのが早いからだけど。しかしそれを月火ちゃんに伝える訳にはいかないよねぇ………。

 

「なんとなくじゃないかな。こう、シンパシーみたいな?」

 

正直苦しすぎる言い訳だったが、月火ちゃんはそれで納得したようで、

 

「ふぅん、そうなの」

 

と言った。

 

「まぁ、仲良くしてあげてね。お兄ちゃん、男の人の友達、居ないからさ」

「あぁもちろん。月火ちゃんも、宜しくね」

 

友好の証として、手を差し出す。

 

「うん、宜しくね、高橋さん」

 

月火ちゃんも手を出して来て、握手をする……………ん?

 

「(これは…………?)」

 

手に触れた瞬間、妙な気配が、月火ちゃんの体から出ている事に気付く。俺が幻想郷で、良く見慣れた気配。

つまり。

化け物の気配………………だ。

 

目の前の少女は、人にしか見えない。肉付き、見た目、肌触り。全て人の有する類のものだ。しかし、疑って見てみると、その体にはあるべきものが無かった。

 

「(霊力が…………ない)」

 

人間なら誰しも有している筈の霊的な力、霊力が全く存在しない。それはつまり、月火ちゃんが人ではなく、化け物の類である事を表す。

 

「?高橋さん、どうかしたの?」

 

急に黙り込んだ俺を訝しんだのか、月火ちゃんが声を掛けてくる。擬態しているのか?化物語以外を見ていない俺には、これからどうなるかは知らない。まず時系列を把握できていないし。まあ、とりあえずは………。

 

「……………いや、なんでもないよ?それより月火ちゃん、一つ聞いていいか?」

「?なに?」

「いっぺん、大怪我してみない?」ニタァ

「…………………え?」

 

 

side koyomi

「それにしても、あいつら遅いな………」

「ちょっと見てこようか?」

「いや、いいよ。僕が行く」

 

炊事場に行き、高橋と月火の様子を見に行った。

 

「…………なにやってんだ……?」

「へ?見りゃ分かるでしょ?」

 

炊事場では、何故か月火が寝ていて、高橋がその体をペタペタと弄り回していた。こいつ………人の妹に何やってんだ………?

 

「いやまぁ、何をやっているかは分かるけれど………」

「あ、そうだ、阿良々木くん。面白いもの見せてあげるよ!」

 

高橋は僕の発言をスルーして、月火を壁に立てかけた。

 

「おいおい………何をする気だ……?」

「面白いことだって。じゃ………始めようか☆事象を理想的にする程度の能力」ニタァ

 

高橋が指を鳴らす。たった、たったそれだけ。たったそれだけの行為は、なんの変化も起こさないまま――――――。

阿良々木月火の上半身を消し飛ばした。

 

「つっ………月火ちゃんっっっっ――――!」

 

何が起きたのか、目の前の光景の理解が出来ず。しかし理解しないまま…………ただの衝動だけが、僕の身体を動かす。

無惨な月火の身体を眺めながら、何も変わらない笑顔を浮かべている高橋に向けて飛ぶ。

視界が赤に染まる。

世界が赤く染まる。

怒り狂い、暴れ出す。

阿良々木月火を。

月火ちゃんを。

世界一大切な僕の妹を、こいつは――――!

 

「まぁまぁ、落ち着きなよ、阿良々木暦。最近のキレやすい若者かぁ?怒りは視界を眩ませる。怒りを濾過して、エネルギーだけ取り出すんだよ。そうすれば、怒りは力になってくれる。まずは濾紙を手に取る努力から始めよう」

 

高橋の頭を持った所までは覚えている。しかしそこから世界は変わり。

手を広げる形で。僕は空中に縫い付けられていた。

変な表現だが、それが最も的確に、状況を現していた。頭を、胴体を、手足を。

空中に縫いつけた。

僕をそんな形にさせた張本人の高橋は、宙に浮いている僕を見上げながら。

楽しそうに。

愉しそうに、笑っている。

 

「それとも、君にはこっちの方が馴染み深いかな?元気がいいねぇ、阿良々木くん。何かいい事でも有ったのかな―――――」

 

なんで。なんでお前が、忍野の言葉を引用できる―――それも、こんな如何にもな状況で!

 

「ざけんなっ!てめぇ………てめぇは!妹を!僕の妹を………月火ちゃんを!許さねぇ!」

「あは……あはははっ!妹……妹ねぇ……?」

「何がおかしいんだ!」

「それじゃあ阿良々木くん、見てみなよ―――――妹をよ」

「え――――?」

「おっと。悪い悪い、その位置じゃ見えないか」パチン

 

高橋が再度指を鳴らすと、身体が裏返り、月火の方を強引に向かされる。そこには、無惨に破壊された阿良々木月火の下半身が――――――。

 

「………………え?」

 

実際、言われた通りに見てみれば―――それは目を疑うような光景だった。

 

「あ、あれ?」

 

一言で言うと。

月火は、傷一つ負っては居なかった。

先程まで、着る主を失って、しなっていた浴衣は、月火の上半身の復活によって、その袖を通されていた。かけられていた月火の身体は、気を失ったままではあれど…………生きている。

先程の光景が、まるで目の錯覚だったかのように――――ごく普通に。本当に、さっきまでの光景は僕の目の錯覚だったのか―――?

 

「違うだろ?」

「え―――?」

 

「お前は知っている。当たり前の様に知っている。お前はずっとああやって来たし、見てきたはずだ」

 

…………………そうだ。僕は知っている。あれは目の錯覚なんかじゃない―――再生だ。治癒であり、回復だ。そして―――不死だ。僕は春休みの時何度もそれをやってきたし、見せつけられた。だから―――消え去った上半身が、数回瞬く間に戻っているなど、そんなもの、見慣れた光景である。

不死性。

不死性―――だけど。

だけどどうしてそんな怪異じみた不死性を、よりにもよって僕の妹が有している―――!?

 

「阿良々木 暦くん。君も変な縁が有るみたいだね。とことん、不死身に好かれる体質みたいだ」

「まぁ、これで分かっただろ?」

 

いつの間にか僕の目の前に現れた高橋が、純然たる事実を口にした。

 

「阿良々木月火は、阿良々木 暦や、元キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード、現忍野忍の様に、怪異混じりの人間でも、不完全な怪異でもない。君の妹でもなく、正真正銘、純度百パーセントの」

 

「バケモノだってことが」

 

 

 

 

 

 

 

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