東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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30話『暇を捨て、山に出よう!前編』

「こんにちわー」

「ん?」

 

時は流れ、食べ物も美味しくなってくる秋がやってきた時。博麗神社に来訪を告げる声が響いた。誰だろうか、聞き覚えはないが。

 

「すいませーん、誰かいませんかー?」

 

再度、呼び出しの声が響く。聞こえていないのかと思ったのだろう。

 

「誰かしらね?」

 

と、霊夢が言う。

 

「さぁ。とりあえず出てみようか」

 

霊夢と一緒に、縁側の障子を開け、下駄に履き替えて来客を確認する。扉の前には、緑の髪色をした巫女のような人が立っていた。

ありゃ、東風谷早苗じゃないか。確か………奇跡を起こす程度の能力、だっけか。ふむ、また何か起こるのかな?登場人物が出てきたってことは。あと、東風谷早苗と言えば、幻想郷では常識に(ry。の人だな。

 

「むー、留守なのかな……」

「何か用?」

「うわっ。びっくりした……」

「呼んどいて、びっくりした、はないでしょう。で、何の用?」

「っと、そうだった。この神社、営業停止してくれないかしら?」

「なんでよ」

「見たところ、参拝客も居ないみたいだし。信仰も途絶えているんでしょう?それなら、山におわす神に譲渡してくれないかな、って思ったのよ」

「ふぅん。そう。ま、考えておくわ」

「ありがとう。いい返事を期待してるわ」

 

そう言うと東風谷は踵を返して、石段を降って帰っていった。それを見送って、霊夢と共に神社内に戻る。

ふむ、譲渡ねぇ…………。

 

「霊夢。さっきの話、受けるのか?」

「そうねぇ。そっちの方が信仰を集められる、って言うなら、なくはないんじゃない?」

「まぁ、うちの神社はご利益が不明で、何の神を祀ってるかも不明の神社だもんなぁ。そりゃ誰も来ませんて」

「やっぱり、問題はそこよねぇ。それに、立地もあるし」

 

博麗神社は人里から少し距離がある。もちろんここが妖怪だらけで、近寄りがたいのが大きな要因ではあるが、それも一因としてはあるだろう。

 

「なんの話だ?」

「あ、魔理沙。いつから居たの?」

「ついさっきからだぜ。で、なんの話だ?」

「さっきね、変な来客があったのよ」

「変な来客なんて、いつもどおりじゃないか」

「まぁ、妖怪も変な来客っちゃ来客だけど。今回は変な人間の来客が有ったのよ」

「へぇ、妖怪神社に人間の来客が来たのか。珍しいな」

「うるさいなぁ。それで、その人間が、神社を営業停止しろ、って言ってきたのよ」

「この神社は営業してたのか………。それで、営業停止した後はどうしろって?」

「山の神社の神に明け渡せ、ってさ」

「神社って、ここだけじゃなかったか?」

「さぁ?最近できたんしゃない?」

「で、どうするんだ?受けるのか?」

「良く考えたら、元からいる神様を追い出して、自分がその椅子に乗っかろうなんて、怪しいじゃない。絶対、神様のフリをした妖怪か、邪神かなんかの仕業よ!」

 

そう言うと霊夢は、出かける準備をした。一先ず、山にいるって言う神に会ってみるらしい。久々の新しい登場人物なので、俺もついていく事にした。魔理沙は珍しく霧雨魔法店の方に仕事があって、ついて来れないらしい。なので、俺と霊夢で山に入ることにした。博麗神社を出て、妖怪の山を目指す。

 

「なー霊夢ー、山は基本的に立ち入り禁止だぜー?見回りとかいるしさ」

「そんなもの、なぎ倒していけば済む話でしょ?」

「まぁ、そうだけどさー」

 

前に立ち入った時に顔見られてるもんなぁ。犬走以外には見られてないとはいえ。

まぁ、今回は場所がはっきりしてるから楽か。

 

「それにしても、秋だな、霊夢」

「秋は過ごしやすいし、食べ物も美味しくて、なかなか良い季節よね」

「そうだねぇ。幻想郷の物品の殆どは外の物だけど、農産物は結構作ってるもんね」

 

意外と美味しい。流石神の御加護がついているだけはある。

 

「まぁ、収穫はこれから、って感じだけどね」

「それでもまぁ、楽しみではあるよな、秋」

「そうね。何をするにも、やりやすい季節であることに間違いはないわ」

 

そんな話をしていると、山の麓にまで来ていた。後少し先に進めば、山の中に入れるだろう。

 

「さて、進みましょうか。んー、なんだかいい匂いがするわね………」

 

霊夢の言う通り、なんだか甘い匂いが漂ってきた。ふむ。

 

「巫女の癖に神を喰べようなんて………」

 

ふと、オレンジの髪色をした二人組が姿を現した。

 

「笑止千万、不届き千万!」

「だよ~!」

「いやまぁ、誰も食べるなんて言ってないが」

「でも、美味しそうな匂いはあなたの匂い?」

「神様たるもの、身にまとう香りも気を付けないと。ちなみに私は豊穣の神ね」

「私は紅葉の神だよ~」

 

豊穣の神の方が妹の秋穣子、紅葉の神の方が姉の秋静葉である。

 

「うーん、生焼き芋の香り」

確かに芳しい香りである。焼き芋食いてぇ…………。家に帰ったら、焚き火で焼き芋しようかな。近代的な遊びも良いけど、外では味わえないアウトドア的な遊びも悪くない気がした。皆と一緒に、焼き芋を口にする。うん、悪くない。

 

「収穫したてのお芋は私の香水。巫女に喰べられてたまるもんですか!」

俺がしみじみと遊びを考えている時、穣子は大量に連結された自機狙い弾を、霊夢に放ち出した。その射程内に俺はいない。ありゃ、スルーされてる。霊夢しか見えてないのかな?まぁいいけど。

 

「じゃ、霊夢。あの子には君しか見えてないみたいだし、頑張って撃退してくれ」

「分かったわ。とは言っても、大した敵じゃ無さそうだけどね」

 

霊夢はそう言うと、自らの完全追尾弾幕(ホーミングアミュレット)を出し、穣子にぶち当てていく。ちなみにあれは弾幕扱いじゃない。しかし、相手の注意を引くくらいは出来るので、なかなか使いやすい。らしい。

 

「穣子ちゃーん、頑張れ~」

 

と、静葉が応援する。君は参加しないのかよ。

 

「っと、おーい」

 

とりあえず、静葉に声を掛けてみることにした。まぁせっかく会ったし、自己紹介位しておくべきだと思ったからである。

 

「え?なぁに~?」

 

緩やかにこちらを振り返り、間延びした声で返答をする。ええっと、なんか、癒される声だね、うん。

 

「どうも、初めまして。俺は高橋 凜だ」

「あら、これはご丁寧に。私は秋静葉。今戦ってるあの子は妹の秋穣子ね」

 

ふむ。まぁ知っているけれども。いつもなら苗字で入る所だけど、どっちも秋だし、下で呼ぶしかないか。まぁどうせ苗字で呼んだ所でだ。

 

「よろしく、静葉ちゃん」

「えぇ、よろしくね、凜くん」

閑話休題。

「それで、何で凜くん達はここに来たの?」

「ちょっとね。少し、山の上に居る神様に用があるんだ。静葉ちゃんは知らない?」

「うーん、山にいる神様なんて一杯居るしね~。あ、でも、最近外から神様がやってきたって話だよ?」

「へぇ、外からか。まだ外にも神なんて居たんだね」

 

まぁ、時期的に見て、その神が怪しいか。そもそも神社は一つだけの筈だからな。神社ごとお引越し、って感じなのだろう。

 

「その神様、どこにいるか知ってるかい?」

「…………うーん、ごめんね、あんまり分かんない」

「そう?ならいいや」

 

どうせ情報なんて後から流れてくる。そう、ご都合主義ならね。

ちらりと見てみたが、戦いはまだ続いていた。穣子が、レーザーと米粒弾の複合された攻撃を放っている。

 

「でもさ、静葉ちゃんもこれから大変だよね。一つ一つ赤に塗ってるんでしょう?」

「まぁねー。でも、秋だもん。みんなのために、頑張らなきゃ!」

「確かに、紅葉は美しくて雅な感じするよね。華やかな光景も多くなって、秋はやっぱり、いい季節だよねー」

「うんうん、だよねだよね!秋最高だよね!」

「あぁ、最っ高だよな!秋バンザイ!」

「秋バンザーイっ!いえーっ!」

「ふっ、静葉ちゃん。君とはいい酒が飲めそうだ………」

 

俺、酒飲まねぇけど。

 

「ふっふっふ、私もだよ………凜くん」キラン

「あんたら何してんのよ………」

「あ、終わった?」

「まぁ。終わったけど」

 

ちらりと主戦場になっていた辺りを見てみると、穣子が見事に仰向けで吹き飛ばされていた。おお、こわいこわい。こんなんだから異変解決してる時の巫女は凶暴だ、なんて言われるのである。

 

「あっちゃー、穣子ちゃん負けちゃったのかー。そっかー。それじゃ凜くん、私穣子ちゃん連れて帰るから。また会えたらいいねー」

「ああ、またね」

 

静葉ちゃんが穣子の所に戻る。

 

「さて、俺達も行こうか」

「相変わらず、誰とでも仲良くなるのね………」

「まぁ、せっかく会ったんだしね」

「ま、慣れたけど。とりあえず、先に進みましょ」

「ああ」

 

先に進んでいくと、どうにも気の滅入る雰囲気が辺りに漂っていた。なんとも暗い雰囲気で、正直長居はしたくない。しかし我慢して進んでいくと、その気配が一層濃くなった。疫病神、鍵山 雛である。なるほど、ここの空気が重いのは、そういうことか。厄が既に可視できる領域に達している。ここまであれば、そりゃ空気も重くなるだろう。

 

「あら?こんな所に人間が……。どうしたのかしら?私は迷い込んだ人間を帰しているのだけど…………」

「いやまぁ、迷い込んではないな。俺達は山に用があるんでね」

 

俺の方はただの付き添いで、本当に用があるのは霊夢なのだが。

 

「人間が山に入ってどうするのよ。危ないわよ?」

「邪魔をするなら敵と見なすわよ?」

 

霊夢がそんな事を言う。なんで君はそんなに喧嘩腰なのかなー。そんなんだから異変解決中の(ry

 

「私は人間の味方。人間の厄を受けて、それを神々に渡しているの」

「なんなら、貴方達の厄災も引き受けてあげましょうか?…………特にそこの子は、厄の気配が強いみたいだしね」

 

鍵山が、こちらに目線を向けて言う。うむ、美少女に見つめられるのはとても気分が良いですな。

 

「俺が?」

「ええ。貴方…………今とっても、厄い☆」

「や、厄いのか………」

「近い内、何か厄い出来事が起こるかもしれないわ。そうなる前に、あなたの厄災、全て引き受けましょうか?」

「んー、そうだねぇ………。遠慮しとくよ、自分の厄くらい、自分で何とかするさ」

「あら、そう?」

「霊夢は?せっかくだから、引き取ってもらうかい?」

「私は巫女で、あんたは妖怪」

 

霊夢は、そう短く言い放った。どうやら、それが答えらしい。

 

「あっ、そう!」

 

「悲運「大鐘婆の火」」

 

大量の赤光弾が、無造作にばらまかれる。弾道はランダムで、上下左右問わず広範囲。その代わり密度はそう高くなく、隙間は多く存在している。なかなか厄介な弾幕だな、厄だけに。……………キラッ。

 

っと、ボケてる場合じゃないな、集中して行くか。

 

「化人「動かざること山の如く」」

 

思考速度をブーストして、反応を素早く行う。視界情報を処理し、考えて反応する。

そもそもこのスペルは、俺の身体に、人間の思考力がついていけない事を解消するためのものだ。いかに俺が霊力を駆使して、人間のものとは思えない程の速度を出せようが、思考はそうは行かない。

 

例えば、俺の霊力を使ったくらいの速度の弾幕を出された場合。それに対応して躱すには、それ相応の思考速度がいる。見て、状況を認識、そこから対応という人の反応。その『状況の認識』に、そこそこ早めの思考速度が必要だからだ。

 

まぁ長くなったけれども。このスペルは、弾の速い強い敵を相手にした時に重宝する、それだけである。これで化人符も三枚目だし、後は林だけかな?

 

「よっ、はっ、ほいっ、っと」

 

思考速度が速くなれば、考える速さが上がる。考える速さが上がれば、二手三手先を考える余裕も出てくる。そうなれば、非常に楽に物事を始められる。

あまり変わったりしないが。少し躱しやすくなるといった程度だ。まぁそりゃそうだ。頭が回るだけで全てかわせるのなら、弾幕ごっこは天狗が最強になってしまう。しかし実際の所、そうではない。だからただ、有利には働く。それだけの話だ。

 

「うーん、いい加減飽きたな。霊夢は………うん、まだ余裕はありそうだけれど。流石に高威力な印を組む事は無理そうだな」

 

なら、俺がやるしかあるまい。テキトーな符を使うことにする。

 

「兆弾「リフレクター」!」

 

流石に全体を覆うほどの霊力鏡はすぐには出せないので、適度な量を出して、能力で『全ての弾幕を覆うほど』の大きさに変化させる。弾幕が鏡に触れると、全弾幕が跳ね返され、鍵山の元へと降り注ぐ。

 

「!?くっ………!」

 

鍵山が弾幕を出すのを止め、避けに専念する。さすがは自分のスペルカード、特性は理解しているようで、その避けは見事なものだ。しかし、それを待ってやる理由は俺にはない。

 

「空弾「アイディアル・エアガン」」

 

物量で来られたのだから、こちらも物量で。大量の弾幕を作り出し、それも追加する。自分の弾幕だけならまだしも、それに不規則な俺の弾幕が混じれば、正直避けられたもんじゃない。もちろん、俺の弾幕にも一定の隙間は空いているが、それを避けながら見つけるのは至難の業である。現に、鍵山も避けられず、普通に被弾していた。

 

「あたた………うーん、強いのねぇ」

「別に大したことはしてないがな」

 

大量に出しただけだ。うん。それにしてもリフレクターは強い。弾を出さない以外対処法がないし、出してからやってるから反射された弾幕の対応もしなくちゃいけない。その間に攻撃を加えて、力押しをしてしまうのが俺の黄金パターンである。

 

「立てるか?」

 

とりあえず、鍵山に手を差し延べる。すると、鍵山はキョトンとした顔で言った。

 

「私に触ったら厄がついちゃうわよ?」

「へ?まぁ、確かにそうだね。でも、それが何か関係ある?」

「……………変な人ね、あなた」

「?それで、立てるの?」

「ええ、大丈夫よ」

 

そう言うと、スクっと立ち上がる。

 

「えーとー。いきなり自己紹介もなく戦闘になったし。一応自己紹介しとこうか。俺は高橋 凜だ。まぁ気軽に呼んでくれ」

「博麗 霊夢。巫女よ」

「あら、ご丁寧にどうも。私は鍵山雛。さっきも言ったけど、人間の厄を引き受けて、神々に渡している者よ」

「うーんと、鍵山、でいい?」

「あら、自分は気軽に呼んで、って言ってるのに、随分と他人行儀な呼び方をするのね?私のことは、雛でいいわ」

「……………あはー、やっぱり?」

 

今の所苗字で呼んでんのって、魂魄と上白沢さん、四季くらいのもんじゃないか?他は名前か、あだ名かだもんな。やっぱり、フレンドシップに富んだ所だよね、幻想郷…………。あれ?フレンドシップで良かったっけ?

 

「じゃ、雛ちゃんね、雛ちゃん。俺の事も凜でいいよ」

「ちゃ、ちゃん付けかぁ。あんまり呼ばれたことないなぁ………」

「ん、嫌?」

「………いや、そんな事も無いわよ?それじゃ、宜しくね、凜」

「うんー、こちらこそ」

「それで凜。ホントに、山に立ち入るのはやめた方がいいわ。ここから先は神々の住まう世界。人の身で立ち入るべき場所じゃない」

「いやー、俺としてはそれでも構わないのだけど。うちの相方がそうはいかないのでね」

「当たり前じゃない。これは神社の危機なのよ?」

「とまぁ、そんな具合でして。じゃあ行ってくるぜ。また会えたらいいねー、雛ちゃん」

「………………まぁ、敗者が口を出すことでもないか。ええ、そうね」

「はぁー、やっと妖怪の山に入れるのね」

「全くだな」

 

遂に妖怪の山に立ち入ることが出来た。穏やかな細流が、広く流れている。ここはおそらく、河童達が広く生息している『玄武の沢』だろう。その証拠に、先程から河童の姿がちらほらと見える。何故かこちらを認識すると、慌てて退散していくが。

弾幕でからかってくる妖精を適度に驚かして帰しつつ進んでいくと、ある河童がこちらに気づいた。

 

「げげっ、人間!?」

 

と言って、どこかに消えていった。おお?

 

「え?ちょ、ちょっと。どこ行くの?」

 

戸惑いつつも前へと進むと、

 

「光学「ハイドロカモフラージュ」!」

「!?」

 

突如、何もない景色から、弾幕が湧いてでた。こちらに向かって銃弾型の弾幕と、それに付随して青光弾が襲ってくる。銃弾型の弾幕は規則型で、よけるのは容易い。だが付随する青光弾が逃げ場に迫ってくるため、それに注意してよければ簡単な弾幕だ。しかし速い。

 

「………………そこっ!」

 

霊夢が封魔針を取り出し、景色に投げつける。すると、バチバチと電気がなり、さっきの河童が姿を現した。

 

「あっちゃー、私の光学迷彩スーツが壊れちゃった」

「光学迷彩スーツぅ?そりゃまたけったいなもの持ってんなぁ」

 

光学迷彩とか、外でもまだ実用化の目処たってないのに。意外と河童の技術力は高いんだな………。高いと言っても、外には及ばないレベルと聞いたんだが。文の使っているカメラは確かデジカメだろ?アレも河童製の筈だし。そこそこ高い技術力が有るのかな…………ふむ。

 

「なぁ、そこの河城にとり」

「うん?なんだね、人間。私の事、知っているのか?」

「あぁ勿論、知っているとも。と言うことで河城、その光学迷彩スーツ…………2着譲ってくれないか」

「ほう……………我々の技術の結晶を。なるほどな」

 

河城が偉そうな顔で、なんか考え込んでいる。河童ってこんなんだったっけ…………まぁ、ここは既に河童の縄張りだし、偉そうなのも当たり前っちゃ当たり前か。

 

「ちょ、ちょっと。何するつもりよ」コソコソ

 

霊夢が、こそこそと耳打ちをしてくる。

 

「いやまぁ、アレ有ればこっからの戦闘避けられるだろ。楽になるぞぉ………?」コソコソ

「…………なるほど」コソコソ

 

あは、相変わらず霊夢は楽に弱いなぁ。実質は遊べそうだからだけど。

 

「そうだな、盟友である所の人間の頼みだ、聞いてやりたいところだが……………流石に、タダと言うわけにはいかないな?」

 

含みがある笑顔を、河城は浮かべていた。こいつ、とんでもない金額せしめるつもりだぞ………!?

 

「ふむ、言い値を言ってくれ」

「そうだねぇ、2着なら………千円は欲しいところだね」

せ、千円か。確か、35円で百万だから………三千万?うん、でもあれだな。外で買おうと思ったらもっと高いよな。そう考えれば。

 

「おっけー、払ってやろう」

「……え…………マジで?」

「ん?君が払えって言ったんだろうに」

 

財布を見てみると、五円くらい入っていた。200倍にすれば良いのかなぁ。

うん。

いけた。

 

「はい、これでいい?」

 

千円を引っ張り出し、河城に見せる。

 

「うっわぁ、金持ちだなぁ、あんた。まぁ、払ってくれるならそれに越したことはないんだけど。開発費はいくらあっても足りないしね」

 

ちょっと待って、と河城は言い、奥の方へと姿を消した。自分の研究室か何かに行ったんだろう。

 

「ねえ、いいの?あんな大金渡して」

「ん?ホントに渡すわけ無いじゃん」

「は?」

「さしもの俺といえど、個人に軽々しくあんな金渡さないさ」

「おーい、にんげーん」

 

河城が戻ってくる。その両手には何かボタンのような物が付いたピンがあった。

 

「河城、それが光学迷彩スーツ?」

「正確には、着ているものを光学迷彩スーツに変える装置だよ。このピンを付けて、スイッチを押せば…………」ヒュン

 

河城の姿が消え失せ、景色だけが残される。

 

「おお………」

 

河城が姿を現す。朗らかに、そして自慢するように話を始めた。

 

「よっと。とまぁ、こんな感じさ」

「やるなぁ。それは、見るものの認識の方を弄ってるのかい?それとも視覚?」

 

人が人を感知しないためには、見る人物の認識能力を弄って『そこには景色がある』と思わせるか、実際の視覚情報を弄って『なんでもない景色』を見させるか、の二通りある。前者なら伝達機能を、後者なら光の情報を書き換える必要があり、どちらかというと光の方を弄る方が簡単だ。

 

「視覚の方だね」

 

まぁ、予想通りだ。

 

「ふぅん。どうやってそうしてるのかは、聞いたら答えてくれるかな?」

「そいつは無理な相談だね。企業秘密、って奴だよ」

 

そう言って河城は、人差し指を唇に当てて、こちらにウィンクをしてきた。えっと、そう言う事は自分が美少女だって事を知ってからやって欲しいもんだ。みんな自覚が無いから困る。

 

「それじゃ、払うもの、払ってくれよ。ふふふふ………」

 

しめしめ、上手く行きそうだぞ―――みたいな顔をしている。まぁ、幻想郷的考え方をしたらバカみたいな値段なんだろう。金に糸目は付けないので、俺個人としては払っても良かったりするが、しかし、金というのは何かの代償として払うものであるのだ。なんの代償もなしに生み出せる俺がバンバン生み出してしまって、バンバン使ってしまっては、せっかく整っているバランスを崩す事は容易に想像できる。だから俺は、基本的に大金を使う事はない。

 

「ほい、千円」

 

千円を取り出し(うっすい一円札といえど、千枚もあれば無茶苦茶極太である)、河城に差し出す。

 

「毎度あり~。ほれ、約束の品だよ」

 

河城は千円を受け取ると、こちらにピンを2つ、渡してくれた。

 

「あと、これは充電器ね。効力は3時間くらい持つけど、こまめに充電した方がいいと思うよ。うっかり覗いてる時に切れたら厄介だからね~♪」

 

にっしっし、と河城は笑って言いながら、コンセントのついた充電器らしいものを手渡してくる。誰が覗くか誰が。

 

「じとー………………」

 

何だその顔は…………。覗かないよ?霊夢。フラグじゃないよ?

 

「明後日、河童のバザーが有るから、暇だったら遊びにおいで。そいじゃ、またね」

 

河城がこっちに背を向け、去ろうとする。

 

「あ、ちょっと待ってくれ河城」

「うん?まだ何か用があるのかい?」

「ひとつだけね。俺はお前の商品を千円で買った。つまり、そこで俺たちの取引は終わってる訳だ」

「?そりゃ、そうだね」

「つまり、その後の千円は、俺の管轄外にある。だよね?」

「妙な事を聞くんだね。勿論、その通りさ」

「オッケー、それさえ聞ければ充分だ」

 

河城の所持している『俺が払った』金の理想を100円に。元手が分からんから適当だけど、十分の一くらい有れば多分十分だよね。

 

「?良くわかんない奴だ。それじゃあね」

「おう、じゃあな」

 

河城と別れ、更に妖怪の山の奥へと進む。しばらく進むと、河城の絶叫が響いた。

 

「おかしな人間と会ったもんだなぁ。でも…………ふへへ、いい商売したなぁ……………ゴソゴソ……?あれ………あれれ!?なんで!?なんか少なくなってるーーー!!!???」

 

と。俺はその絶叫を聞きながら、それはもう慈悲に満ちた顔をする。あぁ可哀想に、河城。

 

「……………」ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ

「あんた…………ホントにやる事えげつない時あるわよね………いや、全部かしら」

「失礼だな。俺だって常にやる事なす事えげつない訳じゃないぞ」

「いやまぁ。そうだけど」

「慈悲に満ち溢れた行動を取るときも、なきにしもあらずだ」

「それはない」

「あは、バレた」

「それで。これからどうする?」

「取り敢えずは先に進むのがいいと思うよ。玄武の沢を辿って上流の方に行ったら天狗の集落が有るから、天狗にそのカミサマの居場所を聞いてみよう」

「やけに詳しいのね?基本的に山は立ち入り禁止の筈なんだけど、どこかで知ったの?」

「少しと言うか、大分前に入った事があるのさ。文に入れてもらってね」

 

正確には、文が招待してくれて、それに応じる為に俺が入った、だけど。

 

「ふぅん?そうなのね。まぁ何せ神社の危機だし、早くするに越したことはないわ。急ぎましょう」

 

そう言って、霊夢はピンを付けてボタンを押す。霊夢の姿が消え、景色だけが映る。

 

「消えてるかしら?」

「おう、消えてるぜ。なら、俺も…………っと」

 

ピンを付けて、ボタンを押す。俺の目にも、俺の体が消えてるのが見える。

 

「ふむ、問題はないねぇ。まぁ光学迷彩だから、声は聞こえるわけだし。天狗の縄張りに入ったらしー、だぜ、霊夢」

「分かったわ。なら、飛んで足音も消した方がいいかしら」

「ん、そうだね。あと、霊力を隠しながら行ったほうがいいよ。お前の霊力馬鹿多いんだからさ?」

「あんたもそうでしょうが。私より大きいんじゃないかってくらいよ」

「あは、君より大きいってなぁ無いと思うけどなぁ」

 

無いはず。多分。おそらく。

 

「まぁ、行きましょうか。案内してくれる?」

「あぁ。こっちだ」

 

 

 

 

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