東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
天狗の集落。
山の妖怪は特殊な文化を築いていて、その中の二大妖怪として河童と天狗が居る。天狗と河童の内、河童はその技術を使って作ったものを公開しているが、天狗は違う。
ひどく排他的な種族なのである。他者を排して、自己で完結する。故に、天狗の技術品は山の者以外には公開されていない。
まぁその技術自体は秘されているものの、内容自体は秘されていない。河童が電気器具や機械的な技術を持っていて、天狗は写真や印刷や出版、つまり新聞に関するタイプの技術を持っている。
と、多少話はずれたけれど、山という非常に排他的な環境において、天狗の集落は更に排他的な場所であるということだ。それが何を意味するかというと――――。
「止まれ!そこの人間!」
九天の滝(集落の前にある滝。ここを登ると集落に辿り着く)に辿りついた瞬間、俺達は声をかけられた。
言わずと知れた、犬走椛である。
「ちょっと。気付かれてるじゃないの」コソコソ
「いや知らねぇよ、やっぱりお前の霊力が漏れてんじゃねぇの?」コソコソ
「あんただって漏れてるかもしれないじゃない」コソコソ
「聞こえなかったのか!止まれと言っている!」
居丈高に、犬走は再度警告する。何だろうなぁ、弱い奴に限って偉そうなのは何とかならないのかなぁ……………。ま、弱いから偉そうなんだろうけどー。ホントに強い奴ってなぁ、もっと普通に振舞うものだからね。
「やれやれ、仕方ないなぁ………」
胸のピンを取り、ボタンを押す。すると、光学迷彩が解け、姿が見えるようになった。同時に霊夢も、光学迷彩を解く。
「ようやく姿を現したか………。ここから先は立ち入り禁止だ。さっさと里に戻るんだな」
お、犬走は俺の事を覚えていないようだ。まぁそれもそうか。かなり前の話だし――――。
「悪いけど、下がる訳には行かないんだよなぁ…………。そこ通してくれないか?」
「ふん、人間風情の頼みを聞く訳がないだろう。下がらぬというなら、力づくで帰す」
そう言うと犬走は、懐に携えていた日本刀を取り出す。あっはっはっは。野蛮だなぁ。
「なるほどねぇ。なら、力づくで押し通る」
ちらりと霊夢を見る。霊夢はこっちに目線を送ると、小さく頷いた。早く終わらせなさいよ、って所かな。
「……………ふむ」
相手が武器を持ってるなら、こっちも武器を持たないとね。
霊力を具現化、圧縮して硬化。持ち手を作って………よし。簡易版ビームサーベルって感じかな?
「準備は出来たか?では………行くぞ―――!」
犬走が上段に剣を構え、それを振りかぶる。軌道はありありと分かるのでかわし、適当に突きを放とうとしたが、上段切りを止めて横薙ぎに剣を振るおうとしているのが見えたので、咄嗟にしゃがみこんでよける。すると、今度はその薙ぎ払いすら止め、俺に向かって剣を振り下ろす犬走。ビームサーベルを掲げて止める。
「…………っと!参ったな………」
予想よりずっと速い。威力はそのまま、柔軟性のある剣さばきだ。こんな風に剣の方向を柔らかく変えられちゃ、たまったもんではない。
どこまでも追いかけられてジリ貧になるのがオチだ。
「だけど――――まだ甘い!」
ビームサーベルに霊力を上乗せし、先端を伸ばして犬走の手を狙う。霊力の刀が突き刺さり、犬走の力が緩む。そのスキに剣を押し返し、弾き飛ばす。
「きゃっ!…………く……!」
犬走が盾をこちらに投げ、そのスキに剣を拾いに行こうとする。ちっ、面倒な…………。
「ぅらっ!」
盾を切りつけ、左に吹き飛ばすが、既に犬走は刀を回収していた。やっぱり速い。
「だけど……………主導権は貰う!」
ビームサーベルを点として使い、高速で突きを連発する。犬走は器用にも刀で全て受けているが、流石に厳しいのか、対応がどんどん遅れている。
点の攻撃は躱しにくい。近距離で銃撃を放たれているようなものだからな。
突きを止め、足払いを放つ。
「せやっ!」ズバン!
「あうっ!?」
犬走は突きにのみ意識を集中させていたせいで、いとも簡単にそれを喰らい、宙に浮く。その肩を引っ掴み、地面に押し倒すと同時に、ビームサーベルを犬走の首筋の近くの地面に刺す。
「チェックメイト………俺の勝ちだ」
「く…………ふん、どうやらその様だ」
「あら、潔いね。善哉善哉」
「私だって、命は惜しいからな。それに、強者には一定の礼儀を払うものだ」
「いい心がけだ。それで、通してもらえるかな?」
「私としては通すわけにはいかない………だから、そこをどけ!」
「!?」
突如風が巻き起こり、砂や礫の混じった風が、目に吹き付ける。
俺が犬走から注意を逸らしたのは一瞬、ほんの一瞬だったが、犬走はその一瞬で、俺の拘束から抜け出し、集落の方へと戻っていった。
「ぐ…………くっそ、抜け目ない奴だ………」
「ちょっと。大丈夫なの?」
霊夢が心配して声を掛けてくれる。
「あぁ、少し砂が目に入っただけだ。問題はない」
問題はない――――んだが。
恐らく、犬走は報告に行ったのだろう。
天狗といえど光学迷彩を見通せる訳ではない。犬走が俺達を見つけられたのは恐らく、千里眼で、俺と霊夢が山に入ろうとしていたのを見てたからだと思う。白狼天狗は哨戒用の下っ端だからね。
だから、仮に報告されようが、別に問題はない―――――はず。
「まぁ、気にしてもしゃーないか」
再度光学迷彩をオンにして、集落の方へと向かう事にする。
……………………青年達飛行中……………………
九天の滝を越えて、天狗の集落に到着する。ここに来るのは2度目だ。ここの住居の特色としては、大抵の家が、木の上にあるということだろう。空中都市、もしくはツリーハウスか。立体的な造りをしている所だ。
さて、中に入ろう――――とした瞬間。
「ちょっと待ちなさい」
声を掛けられた――――そう、文に。なぜ、光学迷彩を見通せるのか良く分からないが。一度解いた時に、千里眼で見張られたとかか?ま、バレてしまったものは仕様がない。光学迷彩を解く。
「はぁ…………。よう、文。元気にしてるかい?」ヒュン
「ええ、もちろん。元気よ」
「そう。で、何の用かしら?」ヒュン
「ふー、やっぱり貴方たちだったのね。人間の二人組って聞いてから、そうじゃないかって思ってたわ」
「…………話を聞くに、君は犬走の侵入者の報告を受けて来た―――とか、そういう感じなのかな?」
「大筋としては間違ってないわ。私はただの新聞記者なのにね」
そこで文は、一拍置いて、言葉を続けた。
「貴方たちと一番親しいのが私だから――――私なら、貴方たちの相談にも乗れるかもしれないって言う、上司の粋なはからいね」
まぁ、博麗の巫女に逆らう事は、あまりしたくないだけだろうけど――――とも、文は付け加える。
「ふぅん。じゃ、文、最近越してきたっていう神様に、心当たりない?」
「最近越してきた神様。ははーん、あの神様に用があるのね」
「知ってるのね?」
「そりゃあもう。知っているわよ。山をどんどん侵略してってるんですもの」
侵略だと?まぁ、妖怪の山って言う位だから、もとより人には縁のない、妖怪に侵略された場所ではあるけど。そんな言葉は初めて聞いたな。
「ふぅむ。なるほどね―――なら文。お前なら、その人達の居場所くらい把握してるんだろ?」
「ええ、もちろんよ」
つぅか、こいつ敬語じゃないな。良く口調の変わる奴である。敬語の方が慣れてるって言ってたのはどうした。
「案内してくれるか――――って聞いたら、はいって答えてくれるかな?」
「そ、う、ねぇ。もちろん、他ならぬ凜と霊夢さんの頼みなら―――――って。言って欲しいのかしら?」
「勿論。言って欲しいぜ――?」
言葉とは裏腹に、戦闘態勢を整えている俺。失った霊力だけ回復させる。
「あら、それは大変ね」
「そっちこそ。大変だな。組織って奴は。尤も、天狗の封権社会ほど、面倒な組織もないが」
「本当に、凜は理解が速いわね。羨ましい限りだわ」
まるで敵対しているかの様に言葉を交わす俺と文を不審に思ったのだろう。霊夢が発言する。
「ちょ、ちょっと。なんでそんなにギスギスしてんのよ。文が見つかったのなら、さっさと案内してもらいましょう?」
「あは。残念ながら理解が遅い子が居たようだな?」
「うふふ、その様ね」
「??」
明らかに分かっていない霊夢に向けて説明する。
「もちろん、『文』に頼み事をしたのなら、なんだかんだで手伝ってくれるだろう。案内だってしてくれると思うぜ。でも」
「私にも面子がある。体面がある。私としては、案内してあげたいところだけど―――――」
「残念ながら、ここで貴方たちを何もせず見逃せば、哨戒天狗達も納得行かないから。通すわけにはいけないわ」
「……………面倒な種族ね、天狗って」
本当にそう思ってるのか、すごく嫌そうな顔をする霊夢。ま、こいつには無縁なものだもんね、組織とか、体面とか。そんな事を気にする奴ではないのである。気にするというか、縛られるというか。まあどっちでも変わらないのだけど。
「一応聞くけど、天狗に迷惑をかける気はないからさ。見逃してくんないかな?」
「ふふ、凜。組織に属するってことは、自分の意思より組織の意思を優先させなきゃいけないって事。それくらい、あなたならわかっているでしょう?」
「もちろん。分かっちゃいるさ。聞いてみただけだよ―――――」
文に不満が行こうがなんだろうが、俺としては全く関係ないけれど。1つ、文に理由をやるのも一興だろう。
「さぁ、手加減してあげるから、本気でかかってきなさい!」
「手加減は有り難いけど………だったら通してくれたらいいのに」「本気ぃ?本気を出していいのは、本気を出される覚悟のある奴だけだぜ?けど、俺はそんなもん持ち合わせちゃいない!」
バトル………スタート!
「風神「風神木の葉隠れ」」
緑米粒弾の塊が、決まった軌道で動き、離れるように、時には挟み込むようにやって来る。離れるように放たれたとしても、こっちにやって来るタイミングでは真ん中に居たとしても弾幕が来る。後ろになればなるほど、弾幕がまとまっていないからだ。挟み込むようにやって来る弾幕も同じ。左右の両方に注意をして、それをかわす。ふむふむ。一度によけるのではなく、一枚一枚、層としてよけていくのがいいだろう。
しかし、理論上はそうだとしても。それを実際行うのは、やはり面倒だ。
「霊夢。張れるか?」
「まぁ」
「んじゃ、頼むわ」
短い会話だったが、それだけで霊夢は分かったようで。スペルカード名を宣言した。
「結界「衝撃陣」」
馬鹿でかい円柱状の結界を作り、それを弾幕に向かって投げる。次々と弾幕を破壊しながら、文に向かっていく。
「へぇ…………」
文は気にせず、弾幕を放ち続ける。そうしていく内に、結界がどんどん壊れていき、その勢いを止められた。
「まぁ、分かってたけどね」
「大旋風「アイディアル・ウェアウィンド」!」
地表付近の大気を暖め、混合層上に対流を生む。それに回転を加えて、規模も弄れば。大型旋風(複数)の出来上がりー。
「ふむふむ。凜。風も作れたのね」
「俺に不可能はない」
「うふふ、なるほど?」
弾幕が風に巻き込まれ、爆発。爆発がさらなる爆発を呼び、弾幕を根絶やしにする。文が次々と弾幕を出しても、出した順から壊していく。これなら大丈夫だろう。
「うーん。それなら」
「旋風「鳥居つむじ風」」
文が葉団扇を軽く振るうと、俺の旋風と同じものが、文の側から現れた。その規模は凄まじく、まるで嵐のような荒々しさを誇っている。
旋風同士がぶつかり合い、混ざり合い、しのぎを削る。なんというか、壮大な争いだな…………まるで神々の戦いみたいだ。言っちゃなんだが、楔弾やら炎弾やらの、普通の弾幕って、こじんまりとしてるからな。雅ではあるけど、かっこよくはない。そもそもが美しさを大事にする以上、当たり前なのだけど。こう、ガキとしては、パーっと派手にかっけー戦いもしてみたいよね?
「ふふ、互角って所かしらね?」
文の言う通り。二つの旋風はお互いに動かないままだった。旋風には指向性を持たせてあるから、互いを傷つけながら、すったもんだのせめぎあいをしているのだろう。
しばらくすると、竜巻の様だった二つの旋風の勢いがしぼんでいき、やがて消えていった。
「ふむ。これで終わりか。あっけないもんだ」
「さすが凜ねー。風の力で互角だなんて」
「能力を使ってるからねぇ。ちょっと余裕を作ってくれれば、大した事じゃあない」
少しイメージを築く余裕さえできれば、あれくらいのことはいつでも出来る。
「サンキュー、霊夢。さっきのスペル、初めて見たな」
「思いつきよ」
「あはっ、そうかよ」
霊夢に礼を言い終わり、文を見つめてみる。今回のボスはこいつなので、文の出方次第で色々と決めるからだ。動かない文を不審に思ったので、からかい気味の口調で問う。
「なんだ、もう終わりか?」
「いやいや、そうじゃないけど」
「ならどうしたんだよ」
「相変わらず、デタラメな子だと思ってねー」
「別に、大したことやってないだろうに。というか、子供みたいな扱いするなよ」
子って。まぁガキだけどさー、学生なんだし。因みに時系列は守るけど、時間経過はサザエさん時空なので、歳は変わらない。つまり俺は、永遠の18歳だと言う事だ。(。 ・`ω・´) キラン☆それなら最初の17歳で良いだろ、なんて俺は思うのだが、作者的には18歳の方が都合がいいらしい。なんでや。
「実際子供じゃないの」
「文…………まぁ、お前も相当な老耄だもんな」
「老耄言うな。こーんな美少女捕まえといて、老耄はないでしょ老耄は」ジト-
「実際そうじゃないか( ˆωˆ )。なぁ、霊夢」
「文の年齢なんか知らないわよ」
「ありゃりや。俺も詳しくは知らないけども」
千は超えているはず。確か。
しかし、東方でも長寿なキャラなのに、この子はBBA弄りを見たことないよなぁ…………よし、弄ろう。
「というか、早くしてくんないかしら?私達は先を急いでるのよ」
うーん、別に俺は急いでないが。まぁ、霊夢が急ぐなら、俺も急ぐんだけども。運命共同体だとか、一蓮托生だとか、比翼の鳥だとか、連理の枝だとか言うつもりは無いけど、付いていくことは決めたし。
「そうだねぇ。BBA…………じゃなかった文。早く次のスペカを用意してくれよ」
「ば………っ!?失礼な!」
「あーもう、そんな無理するなって。勤労感謝の日にでも労ってやるから、後は若い俺達に任せて、華々しく散れよ、な?もう年なんだからさぁ?」ニヤニヤ
「く……………りぃん~?流石の私も傷ついたわよ~~?もういいわ、貴方たちの不様な姿を、帰って次の記事のネタにでもしてあげる!」
「「幻想風靡」」
このスペルの造りは至極単純だ。文の天狗としての力を総動員した、圧倒的な………そう、『超速』とでも言うべき速度で動き、弾幕をばら撒く。もちろん、相当の量の弾をばら撒くし、文自身も高速で動き回る中、出した弾幕なんて殆ど分からないのだろう。全てランダム弾だ。文の圧倒的な強さを垣間見れるスペルカード。なるほどねぇ……………。弾幕が来る前に、霊夢に声をかける。
「霊夢。結界、張れるか?封魔陣か、二重結界でいいんだけど」
「私を誰だと思ってるのかしら?」
「あは、そうだねぇ、現時点では、巫女だと思ってるよ……っと!来るぜ!?」
目の前に迫る弾幕に、意識を集中させる。目にも止まらぬスピードで動き回って放たれるランダム弾を、ただただセンスのみで避ける。
しかし、天性の勘を持つ霊夢ならともかく。センスだけでよけられるほど、このスペルは甘くない。センス避けが出来れば苦労はしないけど、弾幕が迫る速さが、その弾幕量が。それだけでは無理だと言ってくるのである。
「夢符「封魔陣」!」
実際、霊夢が避けながら結界の印を結び終わってくれるまで、俺はしょーじき、疲労困憊のボロボロだった。着ている制服は所々が裂け、体には生傷が大量につけられている。
しかし、封魔陣が発動されると、弾幕は一時とはいえ、消去される。残念ながら攻撃性能はない封魔陣だが、弾を消す範囲はかなりのものだ。目の前に映る弾幕は上下左右全て消える。まぁそれを待っていたんだ。全ての弾が消えて、自由に動き回れるようになるこの時をね。
「化人「速きこと風の如く」!」
スピードアップスペル『化人「速きこと風の如く」』を発動。背中に真っ黒な鴉の翼が生えた。不吉な色だ、と、変身する度に思う。
「さぁ、スピード勝負と逝こうか、文………!」
そのまま文の目の前まで瞬間で行く。文が構わず、高速で動き回るのに併走して、彼女の弾幕と相殺させる。もちろん、きっちり全部、全てが全て相殺される訳ではない。相手の弾幕に合わせて撃つなんて、そんな余裕は、文にも俺にも存在しないだろう。しかしどうだ、既にヒトの動体視力で捉えられない程の速度で、弾が当たるか?そんな事は起きない。俺達に近づいたその瞬間、弾幕は全て、風圧で吹き飛ばされて行く。
「あはっ、あははは!」
「ふふっ、うふふふふ!」
笑う。笑いながら弾を放つ。笑いながら空を翔る。あぁ、なんて優雅な事だろう。
しかし、このままでは永遠に決着が着かない。互いの弾幕が全て、相手には当たらないのだから。と言うか、下にいる霊夢には、文の弾幕が今も降り注いでいるのだけど。しかし、相殺分があるから、さっきのを避けられた霊夢なら避けられる筈。
まぁ、このままで終わらせる訳も無い。きちんと、決着は用意してある。
「速きこと風の如く、トップスピード………!」
残していた余力を出し切り、文の近くの弾幕を吹き飛ばしながら文に肉薄する。横に併走するような形で、斜め移動してだ。そもそも、文の速度より、俺の速度の方が幾分速い。その事はかなり前に分かっている。なら、それを利用して勝つだけだ。
「つ、か、ま、え、た、ぜ―――?文!」
文の腕を高速で掴み(風圧はそれ以上の速さで割り込めば問題ない)、後ろにいる霊夢に向かってぶん投げる。
「きゃぁぁぁぁっ!」
もちろん、高速で向かってくる文は、霊夢の目には見えないだろうが。霊夢が、こんなにゆるい弾幕をよけるだけで、なんの準備もしない訳が無い。その時点では、もう発動するだけだったのだろう――――彼女は、スペルを宣言した。
「神霊「夢想封印」!」
十つのホーミング封印弾は、向かってくる文に向かってかなりの速度で向かい――――空中で、さながら花火の様に、閃光を放った。もちろん、閃光の元から文が墜落したのは、言うまでもない。落ちる前に拾ったけどね。
と言うことで勝利。抱きかかえた文の体を下ろすと、霊夢に声を掛ける。
「やったな、霊夢」
正直言って、霊夢無しでも勝てないとは言わない。しかし、相当形振り構わずスペルを使わなければ勝てなかっただろう。それではゲームとしての魅力が余りにも無さすぎる。それくらい文の実力は高いし、俺にゲームメイクの才能はない。
「まぁ、当然ね。二対一で負けちゃ、博麗の巫女の名折れってものよ」
「ま、そりゃそうだ」
霊夢に向けて手を挙げる。今までだったら、頭でも撫でていた所だけど―――――ま、ハイタッチ(こっち)の方が、今の霊夢にはお似合いだろう。
「「ヽ(*・ᗜ・)ノヽ(・ᗜ・* )ノ 」」パチィン!!
「「…………~~っ!」」ジンジン
つぅー、手痛ぇなぁ…………あはっ!
「うーん。また負けた………少しは速くなった気でいたんだけど」
文が体を起こす。少しは封印弾も効いてる筈なんだが。まあ妖怪の体なら、多少の無理は出来るのだろう。余り気にしないことにするべきだ。
「あはっ。まぁまぁ、理想を操る俺に、勝とうってのは無理な話だ。精進すればする程、俺も速くなれるしね」
実際、一つ目の弱点はカバーできるんだ。俺の知らない範囲で、俺の理想を上回るものがあっても、俺はそれを再現出来ないって言う奴な。まぁ何度もやってる様に、理想を○○倍にって奴だ。そうすれば、一つ目の弱点はないも同然になる。ホントに、拡大解釈すればするだけ、底のない力だ…………ふざけているにも程がある。
「分かってはいるんだけどね………それでも、悔しいことに変わりはないって感じ」
「わははは、悪い悪い。さ、負けたお前には、俺達を案内する義務がある。誰にも文句は言わせないぜ?」
「もう、仕方ないですねぇ。負けたからには、私は貴方たちの願いを聞かなきゃいけないものね」
「そうそう、仕方ない仕方ない」
クスクスと笑いながら言葉を交わしながら、文は立ち上がる。
「分かったわ。さぁさぁ二人とも、こっちよ」