東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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遅れて申し訳ありません。受験が本格的に始まるので、終わるまで更新ペースは大分遅くなると思います。ご理解下さい。


33話『山のお祭り』

 

戦闘で受けたダメージより、霊夢から受けたダメージの方が多いんじゃないかってくらいボコられた、その明後日。俺は、筋肉痛の肉体を引きずりながら、玄武の沢で行われている河童のバザーに参加していた。周囲には天狗や八百万の神、仙人などがひしめき合っており、各個それぞれ談笑している。辺りには河童のセールス文句、値切りの交渉等も飛び交っていて、正に祭りといった様相を作り上げている。

 

「しかし、それでも人間は居ないんだな」

 

種族はかなり国際色が強く、多種多様だが、人間の姿は見当たらない。この山に住んでいる者だけが、参加しているのだ。それ以外の者は、やはり哨戒天狗に行き来を禁じられているのだろう。まぁ、俺みたく存在感を消せる奴なら何の滞りもなく入り込めるのだが。今回は能力を全く解いてないので、見つかる心配もない。

 

適当にぶらついて、商品を見て回る事にした。ついでに、霊力を妖力に変えておく。これなら、よっぽどのことがない限り人間とはバレないだろう。

まずは、近くのスペースに立ち寄る。どうやら、カメラを取り扱っているみたいだ。

 

「少し、触らせてもらっても?」

「えぇえぇ、どうぞどうぞ!新しい半導体を利用してメモリーの縮小化、ボディのサイズも抑えた、自慢のカメラだよ――――って。ありゃ、あんたはこないだの」

「うん?」

 

半ば定型文と化してそうな売り向上を述べた店員の河童は、先日会った河城にとりだった。げ、鉢会わせたか…………。あんまり会いたくなかったんだが。

 

「先日ぶりだねぇ、元気にしてたかい?」

 

そう笑いながら、気さくに話しかけてきた。うぅん、あんまり気にしてなかったのかな………?

 

「おう、こんにちは、河城。奇遇だな」

「そうだねー。来てくれたんだ」

「面白そうだったからね。見ていってもいいかい?」

「もちろん!」

 

物色していたカメラを手に取って、電源を入れた。するとチャラン、という音とともに、目の前の風景が映り出した。見てみたところ、普通のデジカメと遜色ない機能が備え付けられている。ビデオカメラ機能はついていない様だが、それでも久しぶりに電子機器に触れたので、少し楽しい。

現像はやっぱり、液でやるのかな?昔ながらの手法だが、それも面白いかもしれない。

 

「お、ポラロイドカメラも有るんだ………」

「なぁ、人間」

「?なに?」

「そういや、あんたの名前を聞いてないと思ってね。教えてくれるかい?」

「あぁ、そんな事か。高橋 凜だ」

「リン、だね。まぁ知ってるみたいだけど、河城にとりだ。今後ともよしなに。で、どうする?買ってくかい?」

「そうだねぇ。何となく懐かしいし、ポラロイドカメラを買っていこうかなぁ。勿論、値段にもよるけど」

「そうだねぇ、現像がすぐ出来るとはいえ、古い型だし。後は友人価格って事で、百貫文ってとこかな?」

 

ふむ、一応持ち合わせはあるが。

 

「なら、買っていこうかな?御祝儀代わりってことで」

「はは、物好きなんだね。わざわざこんなカメラを買っていくなんて」

「あは、新しい物も良いけど、古い物には相応の風情が宿るからね」

そう言って、河城に百貫文を渡す。すると河城は、いたずらっぽい笑みを浮かべさせながら言った。

 

「まっいどっありー」

「あはは。ま、精々頑張りな、河城。商魂たくましいのは良い事だー」

「うん、またねー」ブンブン

 

河城のスペースから離れ、再度散策に戻る。さぁてさて、お宝は無いかなぁ………。と、俺が勇みながら歩いていると、ふと呼び止められた。

 

「ちょい、そこのあなた」

「………………ん?俺のことか?」

「そう、そこのあなたです。あなた、人間ですね?」

 

なぜバレたし。

 

「……………えぇと。まぁ、相違ないが」

 

振り返り、声の聞こえた所に目を向けると、そこにはやや赤みがかったピンク色の髪をした、中華風の道士服を来た女性が居た。っと、どっかで見たような………。

 

「ふむ、やはりですか。人間っぽくないと思いました」

「…………まぁ、人間で間違いはないのですが。1つ内密にお願いします。いらぬ混乱は避けたいので」

「えぇ」

「……………えぇと。それだけ、ですか?」

「はい。それだけです」

 

そう、ピンク髪の女性はしれっと頷く。えぇー……………別に良いけどさ………。

 

「うぅん。じゃあ、ここで会えたのも一つの縁ですし。自己紹介でもしますか。俺の名前は高橋 凜です。博麗神社に住んでます。あなたは?」

「茨木華扇。仙人をしています」

「仙人?」

 

目の前の女性を見てみる。……………『内』の力がぼやかされていて、読み取れないが……………。どうにも、気が高められているようには見えないというか…………それこそ、『それっぽくない』。それに、茨木、という苗字……………。もしかして。

 

「……………茨木童子?」ボソッ

「……………!?」ビクッ

 

俺が小さく呟いた瞬間、茨木が小さく眉を動かした。すぐに普通の顔に戻ったが…………。

 

「…………なにか?」

 

見られていることに気がついたのか、茨木がこちらに問うた。その格好は仙人そのものだし、教養もありそうな言葉遣いだ。仙人だと言われれば、納得はすぐできるだろう。しかし、なんとも怪しいな…………。茨木童子の名を出したら反応したし。ふぅむ。

 

「あは、まぁどーでもいいがね。茨木華扇さん、ですね。華扇さん、とお呼びしても結構でしょうか?」

「はい、構いませんよ」

「あは、敬語は良いですよ、こっちが年下なんですから。気軽になさって下さいな」

「はぁ。そう?」

「えぇえぇ。所で、華扇さんはなぜバザーに?仙人様なら、河童の作るような俗物には興味がないんじゃないですか?」

「いや、少し覗いただけよ。すぐ帰るわ」

「へぇ、すぐ帰る」

 

その割には、その両手は袋でふさがっているようですが。

という言葉が喉に出かかったが、胸の内に留めておいた。わざわざ詮索することでもないだろうしね。

 

「ま、そういう事ならお気を付けてお帰りください。仙人様と言えど、ここは危ないですからねぇ」

「それを言うなら貴方もでしょう。人間なのにこんな所に来るなんて」

「あは、物好きも居るってことですよ。それでは、後ろを刺されない様に気をつけて。……………ま、貴方が本当にただの仙人ならですが」ニコッ

「(…………………)ええ、お気遣いありがとう。それじゃあね」

 

そう言って、華扇さんは去っていった。うぅん、動じたのは最初だけか…………。しかし、ここまで怪しいなら、ただの仙人な訳はないだろう。茨木という名字、頭を隠すような帽子。まぁ、茨木童子とは限らないけど。

 

「茨木童子ってなぁ、鬼の名前だ」

 

鬼が仙人のフリなんてまどろっこしいこと、する理由もなければしたくもないだろう。

鬼は嘘を嫌う。偽物を嫌う。その鬼が、嘘をつく訳が無い。俺はそこら辺は信用していた。経験則上ね。

 

「まぁなんでもいいさ、次に行こう」

 

…………………青年物色中…………………

 

「(うーん。なんつーか、娯楽用品が全くないなぁ………。まぁ、ゲーム機とかソフトとかって、実は高度な技術が必要だし)」

 

とかなんとか思ったが、結局の所妖怪である河童には、長期的な行動が取れないんだと結論づけた。

妖怪は人間より長く生きる故、必死に物事を行う事をしようとしない。人間が刹那的に生き急ぐのは命の危険があるからであり(原初的にはだが)、寿命が短いからでもある。寿命が長くて体も丈夫ともなれば、そりゃ呑気にもなる。

 

そんな彼ら妖怪では有るが、何故かひっじょーーーーーーに飽きやすい。さっき言った通りであるなら、のんびり行動をする事は得意そうなのだが、こと『快楽』に関しては一概には言えないようだった。だから、集団的かつ長期的なゲームハードやソフトの開発には向かないのかも知れない。

 

「うーん、適度に使えそうなのはあるけれど」

 

炊飯器やら、洗濯機やら。幾ばくか古く見えるが、使えそうではある。

 

「けど、だからといって買うのもどうかなぁ」

 

それらにはかなり高価な値がついているが、別に買えない事はない。買ったら便利にはなるだろうが……………。そんなにポンポン金を使うのもどうかと思うので買わない。そんな金遣いで大丈夫か?大丈夫じゃない、問題だ。

 

「あら?あなたは…………凜?」

「うん?あぁ、雛ちゃんじゃないか。久しぶり」

 

目の前に出てきて声を掛けてきたのは、厄神鍵山雛だった。誤解されがちだが、彼女自体は神様ではなく、妖怪だ。人の厄を受け取って、それを神様に献上し、浄化してもらう。厄の橋渡し役と言った所か。

 

「ええ、久しぶり」ニコッ

「雛ちゃん、今日はどったの?」

「あまり興味はないのだけれど、少し冷やかしにね。凜もそんな感じかしら?」

「そだね、基本的にはそんな感じかな?」

 

だいたい見たから、もう何も買う気は無いし。

 

「そう。お仲間ね」フフッ

「そうだねー。じゃ、一応休憩所も有るみたいだし、何か飲む?奢るよ?」

「いえ、そこまでしてもらう訳にはいかないわよ」

「まぁまぁ。お仲間記念って事でさ。勿論、嫌なら辞めておくけれど」

「別に嫌ってわけじゃないけど…………」

「なら決まり!さぁさぁ雛ちゃん、こっちこっち」

 

雛ちゃんと休憩所へと歩く。休憩所には、簡単な軽食、お茶等が売られていた。

カフェラテと紅茶を買って、席につく。

 

「はい、どうぞ。砂糖とミルクも持ってきたから、使うなら言ってね」

 

そう言って、雛ちゃんに紅茶を渡す。のだが、何故か雛ちゃんはそれを受け取らず、テーブルに置いてと言ってきた。

 

「ありがとう、凜」

「あ、うん、それは構わないのだけれど…………」

 

なーんか接触を避けられてる気がするなぁ……………。まぁ、普通の女の子はそんなもんか。皆がおかしな程フレンドリーなだけで。

納得した所で、ラテを啜る。雛ちゃんも紅茶を啜る。

 

「「不ッ味…………」」

 

別に期待してなかったが、思ったより不味かった。なんつーか、百均のパックみたいな、旨味の量より雑味の方が多いという奇跡の味だった。

雛ちゃんも同様の様で、なんとも微妙な顔をしている。

 

「ずず……………。そいやさ、雛ちゃんはなんで、厄の橋渡しなんてやってんの?」

「ずず…………そうねぇ。私自身が流し雛だったから………。厄を受け取ることを義務だと感じてるのかもね」

「流し雛ねぇ」

 

流し雛ってのは、ひな壇に飾ったひなを下ろす時、体の穢れを引き取ってもらい、そのひなを川に流すことを言う。自然ってのは信仰の対象だから、川を『渡らせる』事で、穢れを神に渡してもらう、という意味がある、らしい。まぁ、正にひなは、橋渡し役って訳だ。人からひなに、ひなから神にって感じにね。

 

「しかし、人型を取れるくらいなんだから、意思が生まれてるんだろ?相当大事にされたって事で」

「まぁ、そうなんだけど。ま、意思が生まれようが、結局生き方は変えられないのよ」

「あは、かっくいー事言うなぁ。ま、何でも良いがね…………ズズ………不味……」

 

やっぱり不味いラテを啜りながら、雛ちゃんと話を続けた。飲み終わり、一息つき終わる。

 

「ありがとう、凜。美味し………くは無かったけど」

「あは、そうだねぇ…………。やっぱ、飲食物は人間の里の方が美味しいかな」

「そうね」

「じゃ、また会ったら一緒に行こうか。あんまりいい思い出にはならなかったし」

「………………えぇ、そうね。ご馳走になるわ」ニコッ

「奢るとはまだ言ってなかった気もするけど…………」

「あら、奢ってくれないの?」フフッ

「ふふ、別にいーけどね」

「それじゃあ、またね」

「あぁ、じゃあね、雛ちゃん」

 

雛ちゃんとの会話が終わり、彼女と別れた。再度、その辺を彷徨く。

 

「さぁて………。大体見終わったからなぁ…………」

 

割とする事がないので、どうしようかと悩む。まだ日も高いし、ご飯を作るために戻るにしては早すぎる。かといって早く帰ってもすることは無いのだ。せっかく外に出たので、もう少し時間を潰せると嬉しいんだが………。

 

「んー……………、そーだ、あいつらがどうしてるか、ちょっと見てみるか。山まで来てるんだしなー」

 

この場合のあいつらとは、守矢神社の連中の事である。先日はちょーっとおイタをした彼女達は、今何をしているのか。彼女達の方針くらいは聞いておいた方が良いだろう。

まーそんなのは建前で、仲良くやりたいというのが本音なのだけれど。

 

「まーいいや。えーっと、確か神社は、山の頂上付近にあったよな………」

 

……………………青年移動中……………………

 

「よっと、到着ー」

「あら、参拝客の方ですか――――っと。高橋くん?」

「おっと、東風谷か…………。元気にしてた?」

「まぁ、お陰様で」

「そうかい。そりゃ良かった。ま、何度も釘を刺すつもりは無いが、いらん事をする様なら容赦はしないからよろしく」

「分かってるって。それで、何の用なのかしら」

「別に、特に用はない。強いて言うなら視察だが…………ま、それも問題無さそうだしな」

 

パッと見た感じ、参拝客も居ない。だから東風谷も所在なさげに佇んでいるだけだった。

 

「うーん…………。そうだ。東風谷、今から時間、取れないかな?」

「?えぇと、まだ皆ここに神社がある事も知らないから、時間はあるけど……………」

 

どうやら、時間はあるようだった。ま、こんだけ人が居なきゃそりゃそうだろうが。なら、と、俺は提案をする事にした。

 

「それなら、1つ宴会でもしないかい?歓迎会、って事でさ」

「歓迎会…………?」

「勿論、神社の祭神も呼んで。さっきはあぁ言ったけど、仲良く出来るならそれに越したことはないんだから。どうかな?」

 

と、俺は東風谷に尋ねた。なるべく朗らかな感じで。あんまり緊張されても困るからなぁ………。東風谷は少し驚いた顔をし、少々の逡巡を見せてから「八坂様に聞いてみるわ」と小走りで本殿に戻って行った。

しばらく待っていると、東風谷は戻ってきた。再度、小走りで。

 

「もちろん行かせてもらう、との事よ」

「ベネ!じゃ、ちょい待ってね、今準備するから………」

 

ケータイを取り出す。前香霖堂で手に入った物だ。トランシーバーとしての機能が生きており、持っている者同士なら連絡が取れる。飲食店の所には、一応置かせてもらっている。それによって物資の不足等の対処法として、連絡網で借りるという選択が取れたりもするので、便利らしい。

トランシーバー機能を使い、連絡を繋ぐ。

 

「おーい!おーーーい!返事してくれー」

「うん?誰だ?また酒が足りなくなったのか………?」

「お、繋がった。えーっと、この声は姫来ちゃんかな?」

「お、凜。何か用なのか?」

「ちょろーっと、姫華さんか来輝さんに代わって貰えないかな?少し店の事で頼みたいことが有るんだよ」

「うーん、今母さんは仕事してるからー、父さーん、凜が用だってよー!」

 

そう姫来ちゃんが叫ぶと、ドタバタと音がなって、男の人の声に切り替わった。

 

「凜くん。なんの用だい?」

「あ、いつもお世話になっております、来輝さん。今からお店の方でちょっとした歓迎会をやるんで、四人がけのテーブル2つ、確保してくれませんか?」

「うん?わざわざそんな事を聞くために連絡したのかい?あはは、大丈夫だよ、今は空いてるからさ。多少はいるけどもね」

「また、ご謙遜を。いつも通り繁盛してるんでしょう?」

「うーん、そうでもないんだけどなぁ」

「ともかく、よろしくお願いしますね?」

「はいよ、四人がけ二つね。今からだよね?」

「はい」

「オッケーオッケー。じゃ、またね凜くん」プツッ

 

と言って、来輝さんはトランシーバーの通話を切った。相変わらず気のいい人である。

 

「じゃ、三十分後くらいに、里の安楽庵集合って事で。いいかな?」

「…………ごめんなさい、私達、里には詳しくなくて………」

「あ、場所がわかんないか。じゃあ、後で迎えに来るから、その時対応してくれよ」

 

そう言って、東風谷に背を向けて去ろうとする。すると、背中から声が掛かってきた。

 

「ごめんなさい、迷惑かけて」

「あは、何をおっしゃる。歓迎される側なんだから、こうドドンと構えてくんなきゃ」

 

そうとだけ告げて、俺は八雲家へと転移した。転符「八雲家前」。

 

「おっす、おっすおっす!ゆかりーん、居るー!?」

 

そう叫ぶと、目の前の空間が歪み、中からゆかりんが現れた。そして言う。

 

「そりゃま、居るけどさ。何か用?」

「お前も、幻想郷に新しい人が来たのは知ってるだろ?」

「まぁ、そりゃあねぇ」

「しかも新しい神社まで作るって言うじゃないか。だから、歓迎会でも開こうかと思ってさー。君とらんちーも来てよ」

「……………。うーん、どうせ暇だし、了承」

「おー。そう言ってくれると思ったぜ。じゃ、後で迎えに来るんで支度しといて」

「えぇ」

 

ゆかりんの家から、博麗神社へと転移。ちなみに、さっきから転移を使ってるのはゆかりんの家が内緒だからで、決して俺が物ぐさだからではない。断じて。

 

「れーむーちゃーん!」

「……………よくその呼び方覚えてたわね…………なに?」

「今から守矢神社の歓迎会という名の親睦会をするからー、君もきてくんなーい?」

「……………また変な事やってるのね…………。良いけど」

「よしよし。後はどうしようかな…………。管理側って言ったし、この辺で良いかー。良し、レムちゃん。手を取って!」

「はい」ギュッ

「転符「八雲家前――――っと!しまった、ゆかりんの家内緒じゃん!」

 

しかし、時既に遅し。霊夢の手を取った俺は、ゆかりんの家の前に立っていた。あっちゃー、やらかしたぁ…………。

 

「ちょっと。どこよ、ここ」

「えーと、まぁ、そのー………」

「?何よ、歯切れ悪いわね」

「あ、あはは…………。えっと、どうしよ。取りあえず、管理人「八雲紫」」

 

管理人のカードを使い、ゆかりんを呼び出す。すると、ゆかりんが現れた。

 

「あら、本当に速いのね……って。霊夢じゃないの」

「紫?なんだ、ここってあんたの家だったの?」

「んー、そうねぇ。まぁ、そのようなもんね」

「ふぅん。結構いい家に住んでんのね」

「まぁねー」チラッ

 

ゆかりんがこちらをちらりと見てくる。その視線には、こちらを責める意思が見て取れた。

 

「(わ、悪ぃ、ちょっとボンヤリしてて…………)」ペコペコ

 

伝わるかどうかは分かんないが、視線と顔で謝罪の意を示してみた。すると、流石管理者というべきなのか、意図は見て取れた様で、貸イチと言わんばかりの視線を向けてきた。というか、なぜ俺は視線だけで意図を感じ取れているんだ………。これも世界の意思か………(厨二くさい)。

 

「それで、ゆかりん。準備は出来てる?」

「えぇ、抜かりないわよ?」

「らんちーは?」

「もちろん、居るわよ。藍」

「ここに」

「きゃっ。どっから出てきたのよ………」

「久しぶりです、凜。相変わらずで何よりです。霊夢も、相変わらずみたいだな」

「あ、うん。久しぶり、らんちー」

「ま、久しぶり」

 

らんちーも出てきた事で、メンツが揃った。なので、次なる目的地に向かうことにした。

 

「ゆかりん。守矢神社までスキマで繋いでくれる?」

「別にいいけれど、スキマはあんまり多くの人を運べないわよ?」

「あー、そういやそうだっけね」

 

かなり前に聞いた話なのだが、ゆかりんのスキマは空間と空間を繋ぐもので、そこに物体を通すと、多少負荷がかかるらしい。ゆかりんに、ではなく、スキマに。まぁつまり、どんどん人や物を通すとスキマが瓦解すると思えばいい。もちろん、壊れるのはそのスキマだけなので、新しいのを作ればいいのだが、あんまり連続で使うと疲れるらしい。俺と戦った時も、相当無理をしてたと言っていた。

まぁ、ゆかりんに無理を言うのもダメだろ。俺がどうにかしよう。ワープは封印中だけど。

 

「じゃ、霊夢は俺が送ってくから、ゆかりんはらんちーを送ってよ。二人くらいなら持つでしょ?」

「えぇ、もちろん。藍、行くわよ」ニュッ

「はい、紫様」ニュッ

 

二人がスキマに入り、スキマが閉じる。

 

「良し、霊夢。念のため『浮い』とけ」

「へ?なんで?」

「だから、念のためだって――――よっと」

 

霊夢を抱き上げ、お姫様抱っこをする。一見メルヘーンだが、意外とこれは安定する体勢だと気付いた。しかしま、恥ずい格好ではあるので、霊夢からは当然、声が上がる――――。

 

「え―――――ちょ、ちょっと!?///」

「しー。あんまり騒いでると、舌噛むぜ―――――なぁに。一瞬で終わるから、我慢してなさい」

「化人「速きこと風の如く」――――最大風速(トップスピード)」

 

漆黒の羽を生やし、翼をはためかせたその瞬間―――――景色は一変した。

 

「き――――――きゃぁぁぁぁぁ――――!?」

 

霊夢が横で叫びを上げる。しかし、そんなものは関係なく、トップスピードを維持し続けた。つーか、霊夢が叫び終わるより先に、目的地を発見した。

 

「必殺――――ぅライダーーーーーーー!キィーーーーーーーーーーーーック!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ―――――っ!!?」

 

守矢神社の姿を見つけたので、その境内に向かってライダーキックを繰り出した。当然、マッハを超える速度で繰り出されたそれは、守矢神社の境内を、見る影もないレベルで吹っ飛ばす。霊夢の女の子とは思えないレベルの叫びも聞こえる。

 

「え、なになに何の音――――って!きゃぁぁぁぁっ!なにこれぇ!?」

「あ、東風谷」

「…………くすくす。こりゃまた、派手な登場ねぇ」

「あ、ゆかりん」

「…………なんというか、相変わらずって事をとても痛感しました」

「あ、らんちー」

「……………凄い子ね、あなた……………」

「あ、誰だろ」

「わ、私の神社がぁ…………」

「あ、誰だろ。ていうか、カオスだなぁ」

 

 

 

混乱の最中だが、ひとまず自己紹介を始めることにした。まずはこちら側から。

 

「いやー、申し遅れました、守矢神社の皆様。私、高橋 凜と申す者です。幻想郷の守護者なんてやっております。以後よしなに」

「管理人などをやっております、八雲紫ですわ。幻想郷へようこそ。今後ともよろしくお願い致しますわ」

「紫様の式神で、九尾の八雲藍と申します。本日はどうぞよろしくお願いします」

「博麗神社で巫女をしている、博麗霊夢よ。よろしくするかは場合によるわ」

「守矢神社の表の祭神、八坂神奈子よ。よろしくどうぞ」

「守矢神社の真の祭神、洩矢諏訪子。お前ら呪い殺してやる」

「守矢神社の風祝で、まぁ一応、神でもあります。よろしくお願いします」

 

とまぁ、そんな風に自己紹介を終えたところで、じゃあさっそくと、俺達は動き始めた――――――。

 

「おい!話をスムーズに進めようとしてんじゃないよ!」

「?なんでしょう、諏訪子様。自己紹介も済んだんですし、歩きながらでも交流は深められるでしょうに」

「違う!この境内をなんとかしろって言ってんの!」

「もちろん構いません。あらよっと」パチン

 

諏訪子様がぷんぷんだったので、境内を元通りにすることにした。するとあら不思議、あっという間に戻っていくではあーりませんか。

ひとまず境内が元通りになった事で、ある程度の溜飲は下がったのか、諏訪子様は困惑気味に聞いてきた。

 

「……………えーと、凛くん、だっけ?」

「漢字が違いますよ、諏訪子様。凛々しいの凛ではなく、元来の字である凜ですわ」

「あ、ごめん…………。それで、凜くんは結局、何がしたかったのさ。境内壊して、直してって」

「まぁ、威嚇みたいなものですよ」

「威嚇?」

「平たく申しますと、幻想郷なめんなよ、という意思表示ですねぇ」

 

そこで言葉を切り、二の句を次ぐ。

 

「どうにも東風谷から、緊張感が伝わんなかったので。あなた達の幻想郷定住は認めるつもりですが、大きな力を持つものとして、それ相応の自覚は持ってください。再三申している事ですが、いらないことをするようならば『ある程度』こちらにも考えと力があるので。さっきやったみたいにね、諏訪子様、神奈子様。東風谷も」

「「「……………………」」」

 

守矢の皆に長々と告げると、三人が三人とも黙りこくる。いつまでも続くように思えたその静寂を破ったのは、やはり自由な霊夢だった。

 

「………………それで?建前は終わりかしら?凜」

「……………あは。バレた?」

「「「へ?」」」

 

シリアスな面持ちをしていた守矢の皆が一斉にきょとんとした顔をする。

 

「おっかしーなぁ、なんでバレたの?」

「もう、最初からバレバレよ。紫と藍も分かってたでしょ」

「もっちろん。凜は分かり易いもの」

「火を見るよりって奴ですね」

「俺の演技力も落ちたもんだなぁ。別に構わないけれどー」

「ちょ……………どういう事ですか?」

 

と、東風谷が困惑しながらも聞いてくる。ま、当然の疑問だわなぁ。

 

「どうももなにも。こいつは、ただ何となく、あんたらの神社の境内を吹き飛ばした。ただそれだけ」

「え、ちょ…………。じゃあ、さっきの話は………」

「もちろん、守護者としての彼の考えでは有るでしょうね。しかし、消し飛ばす事を決めた理由では無いでしょう、恐らく」

「な、何となくって―――それだけで?」

「そういう人です、彼は」

 

何故か、三人で話し合っている。こころなしか、守矢のメンツの見る目が、かなり変わっているような気もするが…………。やっぱり、消し飛ばさなきゃ良かったなぁ……………ま、いっか。尺もやばいし(爆弾発言)、ひとまずオチをつけよう。そうだなぁ、じゃあこんな感じで。

 

「ええと…………積もる話もありそうですけれど。とりあえず行きましょうか。全く、誰のせいでこんなに時間とったんでしょうね?」

 

はい皆さんご一緒に、せーのっ、

 

「「「「「「お前だぁーーっ!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

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