東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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34話『歓迎会か、これ?』

はい、どうもこんにちは。高橋 凜です。こっから先は俺は基本的に敬語を使います。地の文でも使います。大丈夫、この話のみです。童話風です。

前回のあらすじ&解説。歓迎会を開くことにした俺は、パーティー会場である街のご飯屋さん、『安楽庵』に行くことにしました。安楽庵は初出の単語なので、わからない方が多いと思います。俺の友人、姫来ちゃんの事は覚えているでしょうか。彼女の実家です。お父さんの名前を来輝さん。お母さんの名前を姫華さんと言います。

さ、ひとまずあらすじ&解説が終わった所で、本編に入りましょうか。それでは、はじまりはじまり。

 

 

 

「よっと、到着」

 

山を出て、人里の安楽庵の前に降りました。他の六人もそれぞれ降ります。ちなみに、存在感を人並みにぼかしてますので、神様三名が人里に飛んで降りようが、関係ありません。というか、思ったより敬語は尺を取りそうですね、厄介です。

 

「皆、入るよー?」

 

皆に声をかけると、それぞれ返事をして頷きました。それを確認した俺は、安楽庵の中に入りました。byではなくinです。frontでもなくinです。

 

「こんにちはー」

「いらっしゃいませー。こちらのお席にどうぞ…………って、ありゃ。凜くんじゃないか」

「あれ、来輝さん?珍しいですね、貴方がウェイターをしてるなんて。事務仕事はどうしたのです?」

「いやぁ、ははは。いやねぇ、ちょっと、姫の奴がね……。まぁ、席は用意して置いたから。見ての通り、閑古鳥が鳴いてるけどね」

 

そう言うと、来輝さんはそそくさと厨房へと引き帰って行きました。なんでしょう、姫華さんに頼まれごとをされていたみたいですが…………。

 

「よっと。さぁ、神様方。奥の方へどうぞ」

 

まずは四人がけのテーブルをくっつけ、八人がけの即席テーブルを作ります。そして神様方を奥に座らせ、俺とらんちーが一番端に座る。俺の隣には霊夢、東風谷、諏訪子様。らんちーの隣にはゆかりん、神奈子様が座る形です。

 

「さて………取り敢えず、注文しましょうか。オーダー表があるので、何でも注文してくださって結構ですよ、神奈子様、諏訪子様。もちろん、その他の皆もね」

「………………意外と丁寧ね、あなた」

「うん、もっと慇懃無礼な奴かと思ってたのに」

 

そう神奈子様と諏訪子様がおっしゃいました。流石に初対面の印象ミスは痛かったようです。しまりましたね。

 

「まぁ、普段はこんなもんですよ。流石にね。突発的にあんな事繰り返してたら、頭おかしいでしょう?」

「やる事があるってだけでもおかしいと思うけどね………クスクス」

「ゆかりん、うるさい」

 

皆がメニューを手に色々と思案している中、俺は一人で考え事をしていました。思案していたことは、来輝さんが姫華さんに頼まれたことです。会話で出たとおり、来輝さんは事務職。採算を取ったり、仕入れ先を決めたり、そんな感じの事をするのです。そんな来輝さんが、ウェイターをしていた。しかもその上、俺の来店を見た瞬間、そそくさと厨房へと引き返した。……………もしかして。

と、そんな風に思考を巡らせていた内に、皆は注文を決めたようでした。

 

「凜くん。貴方は何を食べるのかしら?」

「へ?あー、そうですね………。まぁ、テキトーに決めますので、呼んじゃいましょうか。すいま――――――」

「はいはいただいまーっ!」

 

ぎゅおん、と。そんな何をしているのかわからない擬音を響かせながら、厨房からナニカが飛んできました―――――。そしてその怪人物は、そのまま俺に向かって突進してきて、顔に思い切り口付けをしようとして―――――

 

「させるかぁぁぁぁぁぁっ!」

 

と、叫びながら、俺はその怪人物の額を押さえました。ポキッと、小気味いい音が鳴り響きました。あ、折れましたか、そうですか。

 

「んー、んーんーんー」

 

目の前の怪人物は、口を窄めながら目を閉じています。あの速度で突っ込んだら、確実にこの人も無事では済まなかったと思いつつ、話しかけられます。

 

「んー♪んもー、凜くんったらー。照れなくても良いのよー?ほーらぁ、お姉さんとチュー、しましょうよー」

「…………………あのぉ。どちら様で…………」

 

東風谷がおずおずとそう問います。当然の疑問です。いきなり時速五十キロ(!)を超える速度で突っ込んで、熱烈なベーゼを堂々とかわそうと言う女性が、気にならない奴がいるならば、ぜひともその胆力を俺に譲って欲しいものです。毎度毎度、この人には驚かされてばっかりなんでね。

 

「あら?あらあら?うー?ありゃ、凜くん以外にもお客様が。うふふ、失礼しました♪」

「ちょっと、凜………。誰?その人…………?」

「ですってよ、自己紹介くらいしたらどうですか―――姫華さん」

「うふふ、そうねぇ。初見の皆様も居るようだしねぇ」

 

そう言うと、彼女はくるりと席の方を向き、割烹着の前に手を重ねながらお辞儀をしました。

 

「お客様、初めてお目にかかります。ご飯所『安楽庵』のオーナー&メインシェフ。双菱 姫華でございます」

「「「「「お………オーナー?」」」」」

 

六人が六人、そう声を揃えて言います――――いや、一人だけ、声を上げていない者がいます。八雲紫だけ、声を上げていない。

 

「ゆかりんは、知ってたのかな――姫華さんを」

「当たり前でしょう?」

「流石だね、君は――――あはは…………はぁ」

 

俺がそう落胆し、ゆかりんは同情の目線を向けてくれ、その他の皆は意味がわからず、俺と姫華さんを交互に見ます。

そんな再度来訪したカオスを、うまく取りまとめてくれる人が、遅まきながら、ホンットーに遅まきながら到着しました。

 

「あっははははは………間に合わなかったかな?」

「来輝さん…………ええ、本当に」

「ほら、姫。皆が驚いちゃってるじゃないか。君にも伝えたろ?凜くんの他にも、お客様が来るってさ――――」

「ごめんなさいね、あなた。もう、凜くんしか見えてなくて」

「ほら、謝るなら凜くんの方にしなよ」

「ごめんねー、りーんくん♪」ギュッ

「抱きしめながら言われても、困るんですけどね…………。えぇと、来輝さん。ちょっと、皆に説明してもらえますかね…………。多分、この人離れないんで………」

「すまない、凜くん。えぇと、皆さん、聞いてもらえるかな」

 

来輝さんの言ったことは、主に3つでした。一つ目。姫華さんは非常に自己の欲求に正直な人で、しかも惚れっぽいという、厄介なキャラだと言うこと。二つ目。いつもは惚れやすいが飽きやすく、すぐに違う人をモノにしようとする事。三つ目。今のターゲットが、俺だってこと………。

その三つを告げると、皆は若干納得したようでした。

 

「まぁ、大体は理解したけど………。すぐ飽きるんでしょ?じゃ、ほっとけばいいんじゃないの?」

 

そう霊夢が発言しました。なるほどなるほど、確かに論理的な帰結です。もちろん、この話を初めて聞いた時は俺もそう思いました。

 

「それが、かれこれ四ヶ月は、こんな感じだったり…………」

「そうよね、私びっくりよ!こんなに長い間可愛く見えるんだもの!」

「うわ、頭撫でないで下さいよ!!」

 

いつまでも抱かれているのはきつい(性的な意味で。この人、百七十五はある俺の身長と同じくらいの身長なので、胸が肩に当たるのです。そして甘ったるい匂いが鼻をくすぐるのです。殺す気でしょうか、この人は)ので、いい加減に引き離すことにしました。能力を使い、姫華さんの位置の理想を来輝さんの隣に変更します。

 

「じゃ、じゃあ………なんで、凜くんだけはそんなに持ってるのかな?」

 

諏訪子様の問いも、まぁ至極真っ当でしょう。そしてその答えには、ある仮説が俺と来輝さんの中で有力だったりします。その仮説とは。

 

「まぁ、自慢じゃないが、姫は綺麗だからね。一度惚れたら、速攻で相手はほだされるんだ。これは仮説だが、姫の好意に答えてしまうと、一気に冷めるんじゃないかと思ってる。相手が動揺したり、照れたり恥ずかしがったり、そういった反応が好きなのであって、その人の性格が好きだとか、容姿が好きだとか、そういうことじゃないんだろう、きっと」

 

話だけを聞くと、とんだ悪女もあったもんだと思いますね。実際、何人もいるらしいです………姫華さんのファンは。

 

「んもぅ、自分の嫁をそんな分析しちゃやーよ」

「嫌ならやめることだね」

「もっとやーよー」

 

というか、話を聞いてれば分かるが、この人達は、いわゆるバカップルです。なのに姫華さんは俺にアプローチをかけまくりますし、来輝さんもそれを笑って見ています。というか、いまそんな性格な姫華さんは何回キスをしたんでしょうね。

 

「来輝さんは、嫌じゃないんですか?嫁ですよ?自分の」

「んん、凜くん…………………………。下手したら一日で人を好きになって、一日ですぐ別の人を追いかけるような人に、嫉妬の情なんて抱くかい?」ニカッ

「…………………ゴメンナサイ」

 

姫華さんの闇は深いようでした。

姫華さんに対して性的な恐怖を抱いていると、姫華さんは思い立ったようにしゃべり始めました。

 

「あらら、そういえば注文取りに来たんだった。ご注文は何になさいますか?」

 

どうやら注文をとるようです。この話だけ読んでると、突飛な姫華さんですが、別に人格破綻者ではないのです。普通な時は普通のいいお姉さんです。それをもっと俺の前でも発揮して欲しいです。切に願います。

他の六人の注文をとると、俺にも姫華さんは注文を聞いてきました。

 

「凜くんは?」

「えー、そうですねぇ………。お昼は食べたので、おやつでも頂きますか。どら焼きと饅頭、団子と緑茶で」

「おっけー。お団子は時間がかかりますので、少々お待ちいただきたく存じまーす」ニコニコ

「はいはい。あ、そういえば、姫来ちゃんはどうしたんですか?」

「んー、奥で勉強中。語学に興味があるんですって。いんぐりっしゅだとか言うのを勉強してるらしいわ」

「はぁ、英語をねぇ。行っていいですよ、姫華さん」

「はーい♪あ、凜くん。私を食べてみるのも、オススメよー?」クスクス

「あっはははは…………。それはもう、甘美な味がしそうですね……………はぁ」

 

そのまま、姫華さんは奥に消えます。人間ですら、あのレベルで濃いキャラがいるのですから、幻想郷は本当に凄いところです。双菱姫華なんて名前、東方キャラではいないはずなので、相当に幻想郷はヤヴァイです。皆さん、えっちなおねぇさんは、すきですか?俺は嫌いじゃ全くないですけど、程度によります。吸血鬼モードでも撒くのに2分かかるような人は、なるべく遠慮したいものです。

 

「はぁー……………疲れる」

「あっはっはっは、ごめんね、凜くん。諦めてくれ」

「善処します…………」

 

来輝さんも厨房に戻りました。姫華さんの手伝いでしょう。

 

「大丈夫?凜」

「流石に私も、あれは凜くんが大変そうに見えるよ………」

「ありがとうございます、ゆかりん、諏訪子様。まぁ大丈夫です、慣れてますし、これでも。前は二日は寝込んだものですから」

「……………笑えないわね、その冗談は………」

 

ずーん、と。暗い空気が漂います。うわぁ、こんな空気やですねぇ…………。なんとかしましょうか。

 

「ま、まぁまぁ。来輝さんの人当たりも良いし、ご飯は絶品だし。いいお店だから、時間があったら寄ってみてよ。姫華さんも、別に悪い人じゃないしね」

 

そんな風に姫華さんのキャラクター性によるこの店の風評被害を防ぎつつ、どーにか釈明を続けます。というか、童話風と言っても、流石に俺の性格でですます口調なのは、無茶苦茶気持ちが悪いです。うん、やめましょう。童話路線は永久封印です。人類は○退しましたの様にはいかないのです。先人は偉大なのです。

 

とゆーことで、いつもの口調に戻ることにした。いらない試みをして、その度にないなと思うのが作者の悪癖なのである。

そのまま皆と話をしていると、厨房の方から姫華さんと来輝さんが現れた。姫華さんは流石に熱烈なハグはしてこなかった。

 

「はぁーい、お待たせしましたー」

「お待たせしました」

 

来輝さんと姫華さんが、お料理をテーブルに並べていく。昼食をとっていないらしい守矢の皆と、八雲家のふたりはチャーハンセットと和食。既に頂いた俺と霊夢はお茶菓子だ。あと、並べ終わった瞬間に姫華さんがチューをしようとしてきた。来輝さんが抑えてくれた。なんてスキのないえっちなおねぇさんだ…………。

 

「あーん、りーんーくーんー………」ジタバタ

「はいはい、大人しくしようか、姫」

「もう、あなたったら。そんなに私を自分のものだけにしたいの?うふふふふ………ホントに、可愛いんだからぁ♪」

「はいはい。だから僕の嫁らしくしてくれると嬉しいかな」

 

寒気がするほどのバカップル度合いである。こんな性格の姫華さんと、良く長い間夫婦で居られるよなぁ…………。来輝さんの人徳のなせる技なのか。それとも、姫華さんが来輝さんにだけ、特別な感情を抱いているのか。両方だろうけど。

 

「おっと、あんまり部外者が長居してもダメかな。ほら、姫。行くよ」ズルズル

「凜くーん。まーたーねー。他のお客様も、ごゆっくりどうぞーー」

「次には飽きてると良いなぁ…………。はい、また」

 

姫華さんと来輝さんが去ったことで、ひとまずの脅威は去った。姫華さんの胸囲による脅威は去ったのだ。まじであの人の胸囲は脅威だ。えっちなおねぇさん最強説。VS男子においては。

 

「えっと、まぁ、ご飯も来たところで、適当に乾杯でもしますか。皆様、グラスをお持ちいただきまして――――守矢神社のー、幻想郷定住を祝して―――――かんぱーい!」

「「「「「「かんぱーい!!!!!!」」」」」」

 

ある人は酒瓶を、ある人は緑茶を、ある人は珈琲を掲げて、乾杯をする。まぁ俺と霊夢が緑茶で、らんちーと東風谷が珈琲で、それ以外は酒だ。

各人がそれぞれ、自分の目の前のものを食べ始める。誰の目から見ても美味しそうな料理は、実際に美味しいので、皆が目を見開いて驚いていた。聞いてみる。

 

「美味しい?霊夢」

「えぇ。あんたの作るのよりも美味しいわねー」

「俺に姫華さんレベルの料理スキルを求めないでくれると嬉しいんだけどな。ゆかりんとらんちーはどう?」

「えぇ。美味しいわよ。炊き込みご飯が特に好みかしら」

「旬の筍と外から輸入された秋刀魚の威力は、やはり格別ですね」

「来輝さん、どっから秋刀魚なんて仕入れてきたんだろうねぇ……………。神奈子様と諏訪子様は?」

「美味しいわよ、もちろん。秋刀魚の青臭さも消えてるし、大葉の清涼感が舌に突きつけてくる」

「塩、胡椒、醤油の濃さも、大葉と合わせることを考えて濃いめに作られてるね。秋刀魚の下処理もバッチリ」

「なるほどー…………。奥が深いですねぇ、料理も………。まだまだ研鑽の余地があるようです。東風谷は?」

「そうねぇ………。出汁をかけて、おじや風にすると美味しいかもしれないわね。秋刀魚の旨味を逃さず出汁にとかせば、もう不味いわけないわよね」

「うーん、どっかで見た発想だ………」

 

でも、皆美味しそうに食べている。もちろん、ご飯だけでなく、お茶菓子も美味しいのがここだ。よもぎの団子を1つ口に含む。やっぱり美味しい。

 

「そういえばさ。なんであんたら、外から幻想郷に来たの?話を聞くに、外の方が色々便利みたいじゃない」

 

霊夢がそう聞くと、神奈子様がそれに答えた。

 

「まぁ、技術はそうなんだけど。心の方はどうにもそうはいかなくてねぇ………」

「心の方?精神面かしら」

「別に、貧しいという訳でもないのだけれどね。信仰の対象が、神々から離れていってしまってね………」

「ふぅん?そうなの?凜」

「ん?あぁ、信仰の対象ね。そうだね、だぁれも神なんか信じちゃいない。昔の人の妄想の産物だとでも思ってるだろうね」

「はぁ、世知辛い世の中ねぇ」

「人間には信仰が絶対に必要だけど、それが神である必要は、もう無いんだよね」

 

心の拠り所というのは絶対に必要だけど、それが神である必要はなく、なんでもいいのである。この場合、今の世の中は科学を信仰してるって所かな。

 

「そういえば、高橋くんは外出身って言ってたわよね?」

「あー、まぁ、間違ってはいないね」

 

正確に言えば、幻想郷と隣接してる外の世界じゃなくて、違う世界からやって来たんだけど………。ま、似たようなもんか。

 

「で、それがどうしたの?」

「いや、そんな人がどうして、こんな所に居るのかなって」

「あー…………。」

 

どうしようか、どうせバレる可能性高いし、言っても良いかな………。

 

「まぁざっくり言うと、俺の能力が目当てでそこにいるゆかりんが呼び出したんだよ」

「そうなの?」

 

と言って、霊夢がそう返してきた。聞いてたらしい。

 

「そだよー。自慢だけど、俺強いからね!」キラッ

「自分で言うか。守護者だのなんだの言ってるのは?」

「それは俺が有事の時、幻想郷を守る役割を持ってるからだ。もちろん、それが起こってないかチェックする役割もある。皆の手伝いしたりね」

「ふぅん…………」

「良くわからないわ…………」

 

東風谷がそう漏らす。まぁ、そこまで幻想郷に詳しい訳ではないだろうしね…………そうだ。

 

「じゃあ、幻想郷に詳しくない東風谷達の為に、簡単にレクチャーしてあげようか?少しは調べてきたみたいだけど、それでもあまり詳しくはないだろ?」

「……………是非とも、と言いたい所だけど………いいの?」

「まぁまぁ、そこまで大袈裟なもんでもないし、食べながら聞き流してくれていいよ。神奈子様、諏訪子様。宜しいでしょうか?」

「えぇ」

「うん」

「良し。ではまず、幻想郷の基本から学んでいきましょうか」

 

 

 

 

 

「幻想郷。主な住民は妖怪、人間、八百万の神。幻想郷とは、大きな結界で覆われた内側の土地を指します。この結界の名を博麗大結界といって、そこの八雲紫と数名が作り上げた結界です。主にゆかりんの力を利用して作り上げたらしいですね。合ってる?ゆかりん」

 

「えぇ」

 

「博麗大結界は、外と幻想郷の行き来を制限する結界ですね。どちらの常識を持っているかで判断して、外の常識を持っているなら幻想郷には行けませんし、逆に幻想郷の常識を持つならば、外に行くことはかないません。ならなぜ守矢の皆様は、こちらに来ることが出来たのでしょう?」

 

「私から補足するとね、凜。博麗大結界とは別に、幻想郷には幻と実体の境界ってものがあるのよ。その結界の効力で、外の世界で廃れたものは、幻想郷では数を増す様になっている。外で神というものは既に廃れているのだから、神が外から幻想郷に来る事は、そこまで難しい事ではないわ」

 

「はぁ、なるほどね。そんなのあったっけかなぁ…………。ありがと、ゆかりん。まぁ1つ疑問がなくなった所で。主に食料の供給源は外だね。農産物、お米やら野菜なんかの自給率は、豊穣神達の協力なども有って100%を超える。それらを利用して、その他の食材と交換を行うような形だ。そこら辺は、これまたゆかりんが外とのパイプを作って成り立たせているよ」

 

「うーん……………」

 

「…………外から来た東風谷達にわかりやすく言うと。技術に乏しい幻想郷にとっては、大事になるのは食料だ。つまり、日本で言うと、自動車とかを輸出して、石油や生活必需品を輸入するのと同じ。この場合、自動車が農産物、石油や生活必需品が食料だってわけ。もちろん、それだけじゃないけどね」

 

「あぁ、なるほど…………」

「未知の単語だらけね………」

 

「まぁ、外の世界の事だから仕方ないぜ、霊夢。こんなふうにして、幻想郷は主に成り立っている。まぁこれは人里の話で、妖怪の山とかの独自の文化を持ってる場所は一括りに出来ないけど。外っぽく言うと日本の中でも沖縄は、琉球王国の名残でかなり独特な文化を持ってるだろ?それより極端なんだけど同じさ」

 

「で、幻想郷には色々な種族が存在している。天狗、河童、閻魔、死神、亡霊、悪霊、八百万の神、仙人。その他マイナーな妖怪も多数居る。この中で山の奴らの種族は天狗、河童、八百万の神、仙人だね。昔は鬼も居たらしいけど、地下に引きこもっちゃった」

 

「元々妖怪の山の社会は、鬼を絶対的トップとする、絶対王政のようなものだった。実際の統治は天狗がやっていたんだけどね。鬼が居なくなってからは、しめしめとでも言うような感じで天狗がトップについた。あと、天狗にも種族があってね。神奈子様はご存知でしょうか?」

 

「ええ、大体ね。大天狗、鴉天狗、白狼天狗、鼻高天狗、山伏天狗」

 

「えぇ、That's all rightです。それに加えて、天魔、という天狗が天狗の中でのトップで居ます。大天狗が幹部、鴉天狗が報道部隊、白狼天狗が哨戒等の雑事、鼻高天狗が事務仕事、山伏天狗が印刷職です」

 

「随分、詳しいんだね。山は独自の文化を築いているって話だったけど?」

 

「まぁ、資料はあるのですよ、諏訪子様。幻想郷縁起と言いまして…………。まぁ、それは今は置いときましょうか。特に関連するわけでもないので」

 

「うん」

 

「主に天狗は、天魔をトップにした封権社会ですね。大天狗は幹部なので、そこそこの発言力があります。外風に言うと、天魔が総理、大天狗が衆議院の議員みたいなものですね。天魔がワンマンで天狗社会を動かしているわけではありません。んで、基本的に山に人を入れない方針が取られています。だからこそ天狗については分からないことが多いわけですが。そこら辺は守矢の皆さんには厳しいところでしょう。人間は山には入れないので、人間の信仰を得ることは難しい。それを理解していたから、あなたがたは博麗神社を利用しようとした―――そうでしょう?」

 

「………その通りよ。良く分かったわね」

 

「キーポイントは分かってたので、それくらいは。まぁ博麗神社には博麗神社の役割があるので、ご遠慮願いますがね。さて、どうやら妖怪の山についてはある程度わかっているようなので、あとは重要な人物を挙げていこうか」

 

「まずは、博麗の巫女――――幻想郷のバランサー。妖怪は人間の敵であり、人間は妖怪を退治するべき。それを体現する存在だな。今代の博麗の巫女は言うまでもなく、そこにいる霊夢だ」

「私ね」モグモグ

「はしたないわよ。もっと上品に食べなさいな」フキフキ

 

霊夢に視線をやると、ぜんざいが口元に付いてたのを、ゆかりんに拭かれていた。おいおい。

 

「…………まぁ、霊夢はかなり特殊で、妖怪と仲が悪いわけでもなかったりするけど。才能は物凄いよ。博麗の巫女特有の霊力量の多さ、天性のセンス。弾幕ごっこも実戦も両方強く、まぁ本気になったら幻想郷の中でも五指に入る強さだ」

「…………手放しに褒められるのって、意外と照れるわね///」

 

ご満悦の様だった。事実だから言うけど、少し言わなきゃ良かったかなと思った。

 

「まぁ巫女はかなり重要なポジションなので、彼女に手を出さない方が懸命だよ。次。管理者。幻想郷の創設者の1人。境界を操る神出鬼没の妖怪。別名、スキマ妖怪。まぁ、そこにいる八雲紫なわけだが」

「はぁーい、私でーす」ニュッ

 

便宜上席を立ち、皆の目の前に立っていた俺の横から、ゆかりんが現れる。ナイス演出。

 

「とまぁ、こんな事も出来ると。実質的な幻想郷の支配者で、幻想郷フェチな女の子だ。幻想郷に危機を与える存在が現れた場合、彼女が出てくると思ったらいい。ちなみに、境界の能力には対策が持てないため、敵に回したら絶対に負ける。故に、ゆかりんだけは敵に回してはいけない」

 

「あなたなら、対処できるじゃないのー。私に勝ったの、忘れたのかしら?」

 

「忘れるわけないだろうが。でも、あれはゆかりんが嘗めてたからだろうに。…………………不意打ちなしなら、負ける気はしないけど」

 

「ふふ、言うじゃないの。なら、凜の事については私から言おうかしら?守護者。私と同じく、幻想郷フェチな男の子。全ての物事を理想的にする、事象を理想的にする程度の能力を持つ。それが幻想郷の守護者、高橋 凜よ。……………あぁは言ってたけど、実際に本気で戦って、凜に勝てる気はしないわね」

 

「……………まぁ、凜はねぇ」

「凜の場合は、仕方ないでしょうねぇ…………」

 

そう霊夢とらんちーがしみじみと呟いているのを見て、東風谷が生唾を呑んで聞いてくる。

 

「そ、そんなに?私から見たら、どう強いのかが分からないのだけれど…………」

「……………そうだねぇ。例えば『俺のいる位置』の理想を『神奈子様の横』だとして能力を使えば」ヒュン

「え!?」

「俺の位置が、神奈子様の横に変更される…………とかね」ヒュン

 

神奈子様の隣に一瞬で移動してから、更に元の位置へと瞬間移動した。演出としてはこんなもんで充分だろう。

 

「ま、この力を見込んで、ゆかりんは俺を幻想郷に招待してくれたって訳さ。幻想郷をいざって時に、磐石の体制で守れるようにね。危険な時は俺とゆかりんで対処するから、安心して幻想郷ライフを送ればいいよ」

「……………あんたらの場合、敵が哀れに思えてくるわよね」

「霊夢、それは思っても言っちゃダメだぜ」

 

俺の話を終えると、ゆかりんの式神であるらんちー、冥界の管理役であるゆゆちゃんの事についても話した。適度に、当たり障りのないあたりを。話し終えて一息ついていると、諏訪子様がなにやら神妙な顔をしていたのが気になった。

 

「………………………」

「?諏訪子様?何か質問でもございますか?」

「ううん、別に何も無いよ?」

「?はぁ、そうですか…………。まぁ、大体幻想郷については話したかと思うけど…………。どっちかと言うと、歓迎会ってより勉強会みたいになっちゃったな」モグモグ

 

席について、どら焼きを口にする。

 

「いえ、参考になったわ。ありがとう、高橋くん」

「そう言ってくれると、ありがたいけどね。まぁ守矢の皆にとっての課題は、妖怪の山以外での信仰集めになるだろうね………。さっきも言ったけど、天狗がトップだからねぇ…………」モグモグ

 

幹部である大天狗は、頭が堅い事で有名である。人間の信仰を得ることは、とてつもなく難しい。神社にいるだけじゃ、多分得られないだろう。地上へ進出して、営業していくしかない。

 

「ごくん。まぁ、適度に頑張ってよ。博麗神社はアレだし、人の心の拠り所が少ないと思ってはいたんだ」

「ちょっと。それどういう意味よ」

「言葉通りの意味だよ。妖怪がたむろする神社なんか、信仰できないよねぇ」

「うるさいわねぇ………分かってるわよぉ…………」

「あは、ははははは!ま、あまり信仰がなくなると、博麗神社の神さんの力が弱まるからね。そうだとしても、それが幻想郷の存続に関係するわけじゃ無いけど」

「あー、考えたくもないなぁ…………」

 

まぁ、確かに今の状況から、博麗神社の信仰を集めるのは難しいだろうなぁ、と思ったりはするけど。それでも一応、霊夢への妖怪退治の依頼はたまにくるし、それが影響した博麗神社への信仰もないわけではないので、神様が消える事にはならないと思うけどね。

 

そんな風に考え事をしながらだらだら話していると(既に食べ終わってる。ドリンクバーで粘る学生より酷いかもしれない)、流石に席が埋まり始めた。夕飯時である。

 

「ごめんね凜くん。食べ終わったのなら、席を空けてくれないかな?」

「はいはい、分かってますとも。長時間の占領は禁止、でしょ?」

「凜くんは話が分かるから助かるよー。そうは言っても、粘る人は粘るからねぇ………」

「ま、そういう人は居ますよね。それじゃ、姫華さんや姫来ちゃんにもよろしくお伝えください」

「あぁ、伝えておくよ。皆さんも、今後とも安楽庵をご贔屓に」

「「「「「「えぇ(はい・うん)」」」」」」

 

安楽庵を出て、守矢の皆を能力でテレポートさせる事にした。自分に使うんじゃなかったらOKだよね。

 

「じゃあ東風谷、またねー。神奈子様と諏訪子様も、今後の活躍を期待しておりますので、頑張ってくださいな」

「今日はありがとう、高橋くん。またね」ヒュン

「守矢神社をよろしく、凜くん」ヒュン

「いつでも遊びに来ていいからねー」ヒュン

 

ゆかりんはスキマを開いて、らんちーと共に帰っていった。

 

「じゃあねぇ、凜、霊夢」ニュッ

「今後ともよろしくお願いしますね、凜。霊夢も」ニュッ

 

二人の姿を見送った所で、俺と霊夢も帰ることにした。

 

「今日の夜は、何にしようかなぁ…………ねぇ凜、なんかリクエストある?」

「んー?そうだねー、甘いものを食べたんだし、次は辛いものにしたらどう?」

「それもそうね。寒くなるし、キムチ鍋にしようかしら」

「さーんせー。ご相伴にあずかるぜ」

「あら、魔理沙じゃない」

「おっす、霊夢、凜。キノコ持ってきたからさ、鍋に入れて食おうぜー?」

「別にいいけど。また変なもん持ってきてないでしょうね?」

「だーいじょうぶだって」

 

魔理沙が持ってきたキノコを使って、キノコ鍋にする事にした霊夢と俺は、博麗神社への帰路を急ぐのだった………。

 

「私の出番、これだけ?」

 

これだけです。まる。

 

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