東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
ひと月に一話投稿とか言っておいて、3ヶ月も投稿してませんでした!
本当は1月にでも投稿しようと思ってたのですが……!色々ドタバタしていて!本当に申し訳ありません!
あと、もう3ヶ月も経つのに、と思うかもしれませんが、やはり言っておきます。
あけましておめでとうございます!今年も東方理想郷〜east of Utopiaをよろしくお願い致します!
「スペルカードルール…………」
「そう。依姫ちゃんには、前にも話したかな?美しい方の勝ちとなる、知的で優雅な決闘方法―――――と、言えば聞こえはいいが。要は、弱いものにも等しく勝ち目が与えられるゲームだ」
「力によるごり押しではなく、美しい弾幕での戦い。基本は、自分の大技を相手に披露し、かわされるか技と体力が尽きるまで戦う。負けたら大人しく引き下がり」
「…………あぁ、前に聞いたことがありますね」
依姫ちゃんは頷いて理解してくれた。やはり、彼女は根本的に頭がいい方なのだろう。そうでなければ月の使者のリーダーは務まらないのかもしれないが。
「みんなも。それで良いかな?はっきり言って、スペルカード戦以外で、依姫ちゃんに勝てる可能性はゼロ。零ですらないよ」
そう言って、みんなに確認する。俺にそう言わせるほど、依姫ちゃんは強いという事を―――大体理解してくれたみたいで。
ひとまずみんな、了承の意を示してくれた。
ありがたい。
「ってー事で、依姫ちゃん。こいつらが負けたら、大人しく引き下がろう。こいつらが勝ったら……………ま、月の都でも案内してやってよ。穢れも落としてあげるし、なんなら戦闘能力をなくしてもいいからさ」
そこまでやれば、依姫ちゃんに断る理由はなくなる。負けたからには、ある程度言う事を聞くのが勝負の鉄則で、それはスペルカード戦でも変わらないのである。多分聞いてくれるだろう。
「…………まぁ、分かりました。凜さんがそこまで仰るのなら」
案の定。やっぱり、依姫ちゃんはいい人である。なんだかんだ最初に月に行った時も案内してくれたし。殺されかけたけど、まぁ特に気にしてもない。そんな彼女にこうしてまた会えたことは、素直に嬉しいと、そう思うのだ。
出来ることなら、雑談の一つでも挟みたいところでもあるけど…………。ま、仕方ないか。こちとら侵略者だもんね。
「と、ゆーことで!この決闘は俺が仕切らせてもらうぜ!依姫ちゃんは連戦になるけど、ま、なんとかなるでしょ!」
「さ、まずは誰から行く?誰でもいいぜ?」
俺がそう問うと、レミリアが少し悩んだ素振りをしてから言った。
「咲夜。あなたが行きなさい」
「はい」
どうやら、咲夜が一番手らしいな。咲夜のチートスキルを全力で振るわれては、スペルカード戦なら俺ですら危うい。遠距離なら、まだ対応するスキもあるからマシだが、それが近接となると割とマジで危ない。四人の中でもトップクラスの実力だ。
因みに、俺が対応しやすい順を簡単に述べておくと、霊夢、レミリア、魔理沙、咲夜の順である。
あくまで対応しやすい順なので、強さがどうこうとかではない。霊夢は百回は戦ったから楽で、レミリアは力によるごり押し(さっき言ったことと矛盾するようだけど、『美しい』弾幕によるごり押しだからいいんだ)なのでリフレクターと相性がいいから楽。魔理沙は弾が細かく、避けてる最中の大技による奇襲も得意なのであまり好きじゃなく、咲夜もナイフの方向変換とその量には参るので好きじゃない。
そんな感じのメンツだが…………はてさて。
等と、長いこと思っていたら、依姫ちゃんがクスクスと口に手を当てて笑い始めた。
「くすくす…………」
「怖気づいたのかしら?」
随分と好戦的だな。さしものレミリアも、そこまで稚拙な挑発には乗ってこないはず。
「先にあなたの能力を見て、少しでも勝率を上げるためよ。でも咲夜は強いから、私の出番がないかもね」
「…………意外に冷静ね」
と、字面通り意外そうに依姫ちゃんが洩らす。まぁ、自分の実力を理解もせず、傲慢にも月を自分の物だと言うような奴は、無鉄砲に見えるのも当然だ。実際にはレミリアはそこまでバカじゃないし『あいつ』に良いように踊らされてる事くらい、多分理解してるだろう。それでもやる辺り、レミリアの我儘さが窺えるけどな……。それもまた運命って事なのかねぇ?
「じゃ、初戦は咲夜って事だね?依姫ちゃん、ちょろーっと咲夜にアドバイスでもしていいかな?それくらいの手出しはさせてくれよ」
「別に構いませんが」
「ありがと。じゃ、咲夜、こっちに来てくれる?」
咲夜を手招きして呼ぶ。素直なもので、直ぐに来てくれた。
「あは、警戒心のない事で。さっきの、怖くなかったのかい?殺意だだ漏れだったと思うけど?」フッ
正直、依姫ちゃんに警告した時の俺はかなり怖かったはずだ。並の大人ならちびらせられるレベル。少し怖がられても仕方ないかなー、なんて思ってたんだけど…………。
「それだけ、私たちの事を大事に思ってくれている、って事でしょう?そんな貴方に、怖がる理由がないわ」
「…………………あは。それはそれは。おめでたい頭のご様子で。ま、ありがとう」
照れを誤魔化すように、言葉が少しきつくなってしまう。それでも咲夜はふふっと笑うだけだった。なんだこいつ。私は貴方のこと分かってますよ、みたいな雰囲気出しやがって………もう。
咲夜に耳打ちして、依姫ちゃんと対峙する時のコツを軽く教える。といっても、大して役に立つようなことじゃないけど―――――。
「わかった?」
「えぇ、まぁ…………」
「なら良し」
咲夜から離れる。あとはご自由にどうぞ、二人とも?
「じゃあ、始めましょうか。私の美しいナイフ捌き、残念ながら誰にも見えないかもしれないけど」
「………そう」ニッ
「それでは。私も月の使者のリーダーとして…………最大限、美しく――――」カチャッ
side other
「……………」
依姫は、目の前に現れた敵を見据えながら、考え事をしていた。
先日送られてきた、永琳の封書の事についてだ。
――――依姫は、豊かの海に現れるであろう敵を迎え撃つ。
そこに現れる敵は囮です。
しかし、その囮は貴方の潔白を証明するのに役立つでしょう―――
「どうしました?」フッ
いつまでも動かない、そんな依姫を見て、咲夜は緊張状態を保ったまま、笑いながら依姫に言う。
「あなたから掛かってこなければ無限に待ちますよ?」
「………貴方は…………。本当の神の力を、見た事があるのかしらね?」
依姫はそう言うと、手を挙げた。彼女の体に、力が溢れていく。それを神力だと見抜けたのは、凜と霊夢だけだった。
その神力が天に登っていくと、土砂降りの雨が降り注いだ。更には雷まで落ち、炎へと成り代わる。七つの柱を持つその炎は、咲夜を強く睨みつけていた。
「『炎雷神(ほのいかづちのかみ)』よ」
炎雷神。伊邪那美命から生まれた神で、雷の信仰と、雨の信仰を同時に受けている。雷は直撃したが最後、全てを一瞬にして燃やし尽くす業火でもある為、焔も操れる。
雷、焔、雨。三つの属性を司る雷神。それが炎雷神だ。
「七柱の兄弟を従え、この地に来たことを後悔させよ!」
七つの炎柱が咲夜に向かい、一瞬でその身を包み込んだ。
あわや、早くも決着がついてしまったのかと思われたが―――――。
「貴方は………。不思議な術を使うのね」
そう。炎に包まれた筈の咲夜は、依姫の後ろに立ってナイフを構えていた。その身には火傷一つついていない。
「……………さっきも見せたでしょ?瞬間移動のイリュージョン」
構えながら咲夜は、先ほど凜に伝えられたアドバイスを思い出す。
――――――いいか、咲夜。君が思ってるよりもずっと、神の力は桁外れだ。それを『全て』操れる彼女に勝てるのは、地上では俺くらいしか可能性がない。
だけど。依姫ちゃんが君の力を理解していない今なら。そしてスペルカード戦であるのなら。勝ち目は十分にある。君の能力、知られてないだろ?
うん?一度時を止めたのを見られてるって?まぁそれくらいなら、問題ないかな?
いい?依姫ちゃんが攻撃してきたら『直ぐに時を止めて、絶対に安全な場所に逃げろ』――――――
そう。そう凜に言われていたからこそ、咲夜は素早く、傷一つつけることなく回避していたのだ。それともう一つ、咲夜は凜の忠告を思い出す。
―――――――スキが見当たったら、大量の弾幕で押し切れ。スペルカードなら『当たれば勝ち』だ――――――
「あと、おまけ」
「ルミナスリコシェ」
数多のナイフが、上空に一瞬で現れる。違う角度からも同じような数の弾幕が現れ、全方位から依姫へと向かう。一定量進んだら角度が変わるようになってるのか、弾道を見切るのも難しいだろう。
先ほどと同じく、積みと思われるその状態に、玉兎達が声にならない悲鳴を上げる。
しかし。その程度の事態に対処できないほど、依姫は甘くなかった。
「『金山彦命(かなやまびこのみこと)』よ」
依姫は新しい神力を体に下ろす。ありとあらゆる金属を生み出し、操ることができる金属の神、金山彦命の神力が依姫の体に宿った。
「私の周りを飛ぶ五月蝿い蝿を砂に返せ!」
そう依姫が口にしたその瞬間。依姫に向かっていた夥しい数のナイフが、一瞬でさらさらとした砂のような粒子に変えられた。金属を産めるのだから、崩壊するのもお手の物。ナイフという金属の武器を得意とする咲夜にとっては、金山彦命の神力は、天敵のような力だ。
しかし、依姫はそれだけでは終わらない。
「そして。持ち主の元へと戻りなさい」
そう言って彼女が剣を咲夜に向けると、空気中に霧散した砂が集まっていき、元のナイフの形に戻った。そのナイフが、次々と咲夜の方へと向かっていく。
「…………ふっ!」キィン
凜のアドバイスに従い、咲夜は素早く時を止める。
「流石に私も、自分の弾幕を避ける羽目になるとは思わなかったわ」クスクス
自分の弾幕は、自分が良く分かっている。高密度なその弾幕を避けるのは、時を止めていても簡単によけられるものではない。
ここから先は地味なもので、そーっとナイフとナイフの隙間をくぐるだけである。咲夜の能力によるイリュージョンは、見るものにとっては派手だが、やってる本人にとってはただの地味な作業である。ならなぜやるのか?それはもちろん、お客様(みんな)の笑顔の為だ。
「便利な力ね、それ」
「!?」
地味な作業を超え、再度咲夜は依姫の後ろに立つ。反撃に出た瞬間に安全圏まで動かれたのだ。これではどうしようもないではないかと、依姫は心の中でごちる。
そして咲夜は、飛び道具は武器がナイフである以上無理だと判断し、依姫に近接戦闘を仕掛け始めた。
「…………くっ!?」
意外に思うかもしれないが、依姫は押されていた。咲夜は巧みに時を止めて角度を軽く変えたり、防戦の時には時を遅めて依姫の間合いから外れたりして躱したりと、巧みな戦い方をして、依姫を追い込んでいた。
依姫は並外れた反射神経で、致命傷…………というか、スペルカードにおける『一本』を躱してはいるが、近接戦闘において、咲夜の優位性は計り知れないものがあった。
だが……………。
「…………んー、そろそろ霊力が切れかけてるなぁ……」
と、観戦していた凜がポツリと漏らす。そう、咲夜の時を操る程度の能力は強力だが、その分コストもかかるのだ。もちろん、少しの間休む事が出来れば霊力を回復させることは可能だが、そんなスキを依姫相手に見せる訳にも行かないだろう。
「(んー、回復させてあげよーかな……………。いや、そういう訳にもいかないか。依姫ちゃんにあぁ言っちゃったし)」
心の内でそう決めて、凜は黙って観戦する。
咲夜もこのままではまずいと理解しているのだろう。能力が使えない状態では、依姫に勝てる道理もない。
「(仕方ないわね…………。こうなったら―――霊力が切れる前に仕留める!)」
「傷魂「ソウルスカルプチュア」!」
そう咲夜が宣言すると、咲夜の目の色が赤くなった。彼女は能力を使って自分の時間を速める時、その副作用として目が赤くなるのだ。
その理由は定かではない。凜は一度、「なんで目が赤くなるのか」と聞いた事があるのだが、咲夜にいたずらっぽい笑みで「女の子の秘密よ」と言ってはぐらかされてしまった。彼女ともう少し仲が良ければ、教えてくれたのやもしれないが。
スペルを宣言した後、咲夜はミニスカートを翻し、数々のナイフを抜き取った。そして腰を低くしながら依姫に高速で突進する。
「はぁぁぁぁっ!」
叫びを上げながら、咲夜は数々の斬撃を繰り出す。時が速まっている状態で繰り出されるそれは、正に神速と呼べるレベルのもので、処理速度を高めた凜でも見切れはしなかっただろう。
しかし―――――。
「建御雷神(たけみかづちのかみ)よ」
「数多の剣を受け止め、己が権威を証明せよ!」
依姫がそう宣言すると、古い装束をまとった男の形をした神霊が現れた。雷を操る武の神、建御雷神だ。そして手にしていた大太刀で咲夜のナイフを受け流していく。小回りのきく武器ではない筈の大太刀が、ナイフを全て受け流していく様は、まさしく神業だ。
「くっ!」
咲夜が手を弾かれ、体勢を崩される。能力を使う暇もなく、建御雷神と依姫の刀が、左右から首筋に当てられた。
「さぁ――――――これでもまだ、逃げられるかしら?」
咲夜は首元を見る。首の後ろにまで刀が回っており、前にも後ろにも、左にも右にも、上にも下にもいけそうにない。
「こ、降参よー」パタパタ
咲夜はどこから出したのかも分からない白旗をパタパタと振りながらそう宣言した。
第一試合、依姫の勝ち。
side rin
あっちゃあ、負けちゃったかぁ―――――。まぁ、依姫ちゃんは、きっついよなぁ…………。そもそも、依姫ちゃんの力を見るのは初めてだったけど、あんな風に戦うんだねー…………。
面白そうで結構な事だ。あは、流石依姫ちゃん。
半目で横を見てみると、レミリアと咲夜が何か話しているようだった。無視して依姫ちゃんの元へ。
「お疲れ、依姫ちゃん」
「ありがとうございます」
「どう?俺の仲間は。予想よりかは、強かったでしょ?」
「…………えぇ、まぁ予想よりはできましたね。それでも、負ける気はありませんけれど」
「あはははは。そうかもしれないねぇ。どうやら勝てそうにない。俺としては、久々にテラちゃんやヨミちゃんに会ってみたいんだけれどねぇ?」ケラケラ
「……………なら、やはり貴方が私と剣を交えますか?貴方が相手でも、私は構いませんよ?」
微笑みながら、依姫ちゃんはそう言った。随分と余裕のある表情だ。自己に絶対の自信がある事が見て取れる。まぁもちろん、全力の彼女であるなら勝てるとは言いきれないけど、俺の力はそんなちゃちな力じゃないってのに。あは、ここいらで1つ、チートには上のチートがいるってこと、教えてあげよっかな?
「ははっ。そう何でもかんでも噛み付こうとするなよ。君は俺の能力の絶対さを知らないんだから、自分の首を絞めるような事はよしたほうがいーよ?」
完全に嘗めきった俺の言葉に、流石の依姫ちゃんと言えども気分を害したのだろう。眉間にしわが寄っている。害した気分を隠すことなく、依姫ちゃんは発言した。
「…………凜さんこそ、私を甘く見てはいませんか?私の――――神の力を」
「…………あのね、依姫ちゃん―――」
くるっと、依姫ちゃんに背を向けながら、皆に合流する為に足を動かしながら、依姫ちゃんに発言する。
「どんなに強力な能力でも、『使えなきゃ』意味無いんだぜ?」パチン
能力を使う。流石依姫ちゃんと言うか、自分の変化に鋭いらしい。
『自分の能力が使えないこと』に、すぐ気が付いたみたいで。驚愕の声を上げていた。
そんな事を確認して、すぐ能力を使う。
「な?規格外だろ?」
顔だけ後ろに向けて、俺は快活そうに笑った。
「……………えぇ…………本当に」
依姫ちゃんはそう言って、自信満々そうだった表情を苦笑に変えた。
こんな事ができる限り、俺に奇襲なしで勝てる奴は、まぁいない。寧ろ本人を縛る能力にすら出来る。俺の力は不可侵な上に相手の能力にまで干渉できるなんつー、ルールを根幹から覆すみたいな、そんな絶対性を持っているのだ。どこのどいつなんだ、こんな小学生が考えたみたいな力を俺に与えたのは。早く会いたいもんだ。ゆかりんの奴、約束忘れてたりしてないよな…………?
なんだか、残り20話くらい経たないと会えない気がした。
やけに具体的な所が怖い。
「お疲れ、咲夜。残念だったね」
「ありがとう。ごめんなさいね、アドバイスを活かせないで」
「あは、そう気にすんな。むしろ、依姫ちゃんを相手に頑張った方だと思うぜ?」ケラケラ
そう言って、咲夜の頭をポンポンと撫でる。
咲夜は顔を赤くして、俺の手を受け入れていた。あぁもう、可愛いなぁ…………。確か、咲夜って年上だった筈だけど。
「あは、じゃあ早速だけど、次は誰かな?」
レミリアにそう問うと、彼女は顎に手を当てながら周囲を見渡した。妖精メイドはキャッキャと騒いでおり、霊夢は退屈になって来たのか、胡座をかいて舟をこいでいた。
レミリアは魔理沙で視線を止めると、二ヤーっとした顔をした。魔理沙は嫌そうに視線を逸らした。
「じゃ、次、あんたね。せいぜい派手に散ってきなさい?」フフッ
「あー、もう。ひでぇなぁ…………」ワシャワシャ
魔理沙は諦めた様にそう言い、依姫ちゃんの元へ歩く。魔法で帽子を頭に出現させ、箒の柄を掴む。そして不敵に笑いながら言った。
「ま。相手が誰であろうと、スペルカード戦なら負ける気はしないがな」ニヤッ
side other
そして再びsideはotherになる。
因みにこの作品の第三者視点は、作者であるオレの視点で語っています。
作者視点なので、若干冗談とか入る時がありますが、個人視点なので勘弁してくれると非常に助かります。
まぁダメと言われてもやるんですけどね!!
凜はオレの性格ほぼまんまなんで、むしろオレも凜だと思って下さっていいですよ?
まぁ地の文に、私情は基本的に挟みませんけども。
「先手必勝!『スターダストレヴァリエ』」
魔理沙がそう叫んで、周囲に複数の魔法陣を配置し、大量の星型弾幕を撃たせる。
そして周囲に、星型弾幕が飛来する。妖精メイド達や玉兎は、ギャーギャーと騒いで星型の弾幕を避けていた。
高密度、高スピード。かなり難しい弾幕だったが―――しかし。
依姫の周りでは、魔理沙の弾幕は『止まっていた』
「月の都で見える星は、瞬いていないらしいな」
魔理沙が呆れ気味にそう言うと。
「星が瞬いて見えるのは、大気の揺らぎなのです」
と依姫が言い、一呼吸おいて説明しだす。
「月の都には殆ど大気がありませんから。星は殆ど瞬きません」
ゆらゆらと止まっている星型弾幕を避けていき、依姫は続ける。
「瞬かない星の軌道は、完全な直線です。等速度の攻撃は、加速度系において止まっているに等しい。止まっている弾幕なら、誰だって避けられるでしょう?」
「なんだか知らんが、確かにお前の周りは止まっているな」ケラケラ
魔理沙はおかしそうに笑い、じゃあ、と前置きする。
「これならどうだ?」
「『イベントホライズン』」
先ほどのスペル、スターダストレヴァリエの強化版スペル『イベントホライズン』を魔理沙は放つ。使い魔を大量に使用した前者と違い、ほぼ魔理沙本人から放たれている。
使い魔に弾をばらまいてもらうより、全て計算づくで大量の弾を操るのは、至難の技だ。
一見非効率なようだが、使い魔に弾幕をばら撒く事を依存する事は即ち、壊されたら終いになるという事を表す。故に強い者ほど、使い魔を扱った弾幕を使わないものだ。
因みに凜は、使い魔を扱ったスペルカードを持っていない。
何でかと聞いてみた事があるのだが、
「いやだって、使い魔ってどうやって作んのか分かんないじゃん?いやマジでイミフじゃん、どーゆー理屈で動いてんのさ!」
最終的にキレた。解せぬ。
「つーか作者、どーやってこっち来てんのさ。特別な力も無いくせにさぁ」
「うふふ、俺にも特別な力の一つや二つありますわよ?」
「あっは、きめぇなぁ…………って、マジで?」
「ははっ、どうかなぁ?」
要らないことまで描写してしまった。
ともかく、凜は使い魔を使えない。というかそもそも、彼の使うスペルはパクリか近接か派手か補助か、どれかなのだ。アイディアル・エアガンは例外だが。
…………少し話がそれた。
「………」キンキンキンキンッ!!
依姫は自分を囲うように放たれたその弾幕を、手にした刀で弾き始める。なんの神力も使ってはいなかったが、それでも全てが弾かれてしまう。月人と地上人の、基礎のスペックの差は歴然だった。
「………………(ただ遊ばれてる様にしか感じない。どうにもこうにも。勝てる気がしない………ぜ)」
魔理沙がそう心の中でごちる。
全ての弾幕を素早く弾いた依姫が、少し呆れたように息を吐いて、魔理沙の前に立つ。
「あなたのプラネタリウムは密度が薄いのです。地上から見る星空はそんなに寂しいものなのかしら」
刀を上に掲げ、依姫は新たな神の力をその身におろす。
「―――――『天津甕星』よ。大気に遮られない本来の星の輝きを。この者たちに見せつけよ!」
依姫の刀が輝き出し、その刀身に神力が宿り始める。その輝きが最高潮に達した瞬間、光は質量を持った光線と化し、高速で魔理沙へと向かった。
「(おおっと………やばいかな?)」
吹き飛ばされた魔理沙を、唯一試合をまともに観戦していた(他のみんなはおしゃべりしている)凜は能力を使い、魔理沙の速度を緩めた上で受け止める。
「あは―――――余計なお世話だったか」
凜はおどけるようにそう言って、依姫に苦笑を向けた。
「依姫ちゃん。ちゃんと、手加減してくれてるんだねぇ。少し焦っちゃったよ」
天津甕星(あまつみかほし)とは、金星を神格化した神である。当然だが、金星は惑星であるので、太陽の光を反射しているだけで、自ら光り輝いている訳では無い。熱などを持ってるわけじゃない訳だ。その点では凜は心配していなかった。
しかし………質量のある物体が、光の速度でこちらにぶつかったら?
ただでは済まないだろう。その事を凜は危惧していた。
しかし杞憂だった。依姫は神力の解放を抑え、最小限に攻撃を緩めていたのだ。
「先ほどの所業で、私は知りましたから。あなただけは、絶対に敵に回してはいけないと」
「あはっ、あははは!酷い言い草だなぁ。まぁまぁ、否定することはしないけどね」ケラケラ
「これは友人としての言葉じゃありませんよ。敵として、敵に回したくないのです」
「…………はぁん、そうかそうか。俺はあくまで友人として、君とは敵対したくないけれどねぇ」
凜は真意の読めない相変わらずの笑みで、依姫の言葉に応じる。
空気を読んで黙っていた魔理沙が、凜に抱き抱えられた状態で問うた。
「な、なぁ―――――離してくれないか?」
「おっと。悪い、魔理沙」
凜が魔理沙を離す。
そして帰っていったが、その時去り際に彼は魔理沙に、ぼそっと呟いていた。
「つまんねー事やってないでさ。どうせ負けるんだし、やるならやりたい事やった方がいいよ?」
と。
「………ま、言われなくても!本気を出すぜ」
魔理沙は勢いよく帽子を外す。中から魔力を圧縮する魔具、ミニ八卦路が顔を出した。
「この世に、光の速さより速いものは存在しない。どのような加速度を持とうと、究極的には直線になるんだよ!」
ミニ八卦路を魔力で空中に固定し、魔力をその八卦路に注ぎ込む。どんどんと魔力を吸い込んでいくミニ八卦路は、眩い白光を放ち、その輝きを増していた。
「いでよ!」
「『ファイナルスパーク』!」
魔理沙が叫ぶ。その瞬間、煌々と輝いていたミニ八卦路が魔法陣を作り出し、轟音を放ちながら、魔力の凝縮された光線を依姫に向かわせる。
衝撃波が木々を揺らし、妖精メイド達や玉兎達は目を閉じさせられる。その光に、依姫は一瞬で呑み込まれた。衝撃波が生み出した土煙が場の状況を読めなくしている。
「(終わんねーよなぁ………)」
凜は心の中でぼやき。土煙が晴れ、その中から依姫が姿を現した。刀を縦に構え、逆刃を左手で押さえた状態で。
「これだけじゃ勝てないとは思っていたがな」
「光を斬るのは、水を斬るよりもずっと容易いこと」
「でもな。私の光は一つとは限らないぜ!
これなら斬りようがあるまい」
またしても魔理沙はファイナルスパークを放つ。しかし先ほどとは違い、そこから上に飛び上がり、同じものを依姫に向ける。
「『ダブルスパーク』!」
魔理沙の『マスタースパーク』の物量発展型スペル『ダブルスパーク』。確かに、1人で対処する事は難しいスペルだ。威力もけして低くない上、速度も速く、撃たれてから躱す事も難しい。だが、凜は堪らず声を上げてしまった。
「おーい、魔理沙やーい…………。前も言わなかったかなぁ?人間には手が二つある、やれる事が二つあるってさぁ。そんな手が通じるわけないじゃん?」
本気で可笑しそうに、ケラケラと観戦していた凜は独り言を呟く。そのつぶやきを聞いて、魔理沙は驚愕してしまう。
依姫は不敵に笑い、宣言する。
「『伊斯許理度売命(いしこりどめのみこと)』よ。三種の神器の一つ………」
「八咫鏡の霊威を今再び見せよ!」
古装束を纏った美女が依姫の上に現れる。手にした鏡を裏返し、鏡の鏡面を向けた。
依姫はまたしても刀を縦に構え、閃光を斬る。
伊斯許理度売命が鏡を閃光に向け、その閉じていた目を開眼する。そうするとその鏡は魔理沙の閃光を受け止め、跳ね返してしまった。そのまま空中へと消えていってしまう。
三種の神器の一つである八咫鏡は、魔を祓う力に長け、何もかもを跳ね返す力を持つともされているのだ。
「………。あっちゃー。今頃、あっちは大騒ぎだな」
「月からのレーザーくらいなんとも思わないでしょう。表の月には人間が置いていった大きな鏡があります。月との距離を測るために、地上からレーザーを飛ばしていますからね」
「あー、降参だ降参。もう煙も出ねぇぜ」
「あら。私の番が回ってこなかったじゃない、あなた1人で暴れただけで」
魔理沙は苦笑する。
第二試合は、またも依姫の勝ちだった。
「………で。次は」
「次は私が相手してやるよ」
レミリアはそう言って、依姫に笑いかけた。
「…………」
豊かの海で戦いが繰り広げられている中、一方、地上では。1組の主従が歩いていた。
place.Kirinomizuumi
「あれ?」
魂魄妖夢は、そう声を上げた。
「いま、月が光りませんでした?」
「月はいつだって光ってますよ」ニコニコ
「いやまぁ。所で、私たちはどこに向かってるのです?」
その妖夢の問いにはまるで答えず、幽々子は。
「吸血鬼はお手製ロケットで。紫は予定通り幻の月と本物の月の境界から月へ行ってしまった。としたら、私たちがやることは一つしかないでしょ?」
「家探しですかね?紅魔館の」
「くすくす、あら、空き巣?」
place.Tukinoumi
既に月の海に着いていた、もう1組の主従は。
「―――――晴れの海を越え」
晴れていた海を彼女達―――――八雲紫と八雲藍が越えると、突然雨が降り出した。
「―――――雨の海を越え」
雨足が強くなり、どんどんと波が強くなり始める。
終いには大きな波が、紫を飲み込んでしまった。
「……っ!!」
藍が慌てて、紫を海から引き上げる。
「―――――嵐の大洋を越え」
彼女は最後にそう言うと、荒れた海を抜け、森の方へと抜けた。
「さぁ。これで賢者の住む海への入り口が開くはずです。満月が閉じる前に急ぎましょ」
場は戻り。
「用事って、紅魔館の家探しじゃなければ、いったい……」
「家探しするなら、もっと魅力的な物がありそうな家がいいわね。例えば、こことか」
幽々子は愉快そうに笑いながら、湖に映っている月を扇子で差した。
「え?湖の主の家ですか?」
「湖に映った満月を、よく見なさい」
そう言われて妖夢は月を注視した。
半分に別れるようにして、真ん中に影が映っている。
「………あの満月は変ですね。なぜ二つに割れているのでしょう」
幽々子はその映されている不完全な満月にむかって、湖の上を歩き始めた。
実際には霊力で体を少し浮かせているが。
妖夢は慌てて、それを追いかける。
「紫が幻の月と本物の月の境界を失わせたのです。………紫が閉じ忘れたか。それとも………」
幽々子はその開いた幻月の境界の中に入ってしまう。
「あ!ちょ、ちょっと待って下さいよー!?」
妖夢も慌てて、その境界の中へと入っていく。
そうしてたどり着いた場所は、海だった。
「ここは………?」
「ここは月の海」
「海ですって?」
「幻想郷には海がないから。ここで海水浴でも楽しんじゃいますか」
「まぁ。いいですけど。…………あれ?」
妖夢は足元に、傘が落ちていることに気づいた。紫色の傘だった。
「この傘って…………紫様の………?」
元は相当優美だったであろうその傘は、グニャグニャにねじ曲がっていた。
「…」
幽々子は顎に手を当て、何かを考える仕草をする。
「どうかしました?これって紫様の傘ですよね?何でこんなにグニャグニャな状態で海に落ちてたんでしょう…………ってまさか!」
妖夢は紫の身に何かあったのではないだろうかという考えに至り、焦る。
「やれやれ。海水浴は延期ね。友人からのお願い事じゃあ仕方ない」
「?」
「その傘は宝の地図よ。その傘どおりに進めと言っているのよ。紫(あいつ)は」
「へぇ…………って。何で幽々子様が来るってわかってたんですか?」
「さぁねぇ。1度負けてるからじゃない?」
再度、豊かの海では。
「どうした?何も仕掛けられないのかい?」
レミリアは威圧するように、そう言う。
依姫は不敵に笑いながら言う。
「私が攻撃すれば、あなたは必ず一撃で負けるでしょう。だからあなたの技をすべて見てからでも遅くはない」
依姫はふぁさっ、と髪を靡かせる。
「あなたもスペルカードを使ったらどう?美しいスペルカードを、ね」
そう依姫が挑発する。
頭が悪い訳では無いが、根が幼いレミリアはカチンと来たようだだった。
「ふん!『クイーン・オブ・ミッドナイト』」
赤色の大弾と中弾の複合攻撃。軌道が不規則なランダム弾幕であり、密度も高い。特筆すべきはその速度。速度の緩い中弾が押し寄せている所に、速度の速い大弾。その速度差に対応することはかなり難しいだろう。
それと同時に、周囲が闇に包まれてしまう。
吸血鬼の数ある能力の一つだ。
「永遠に開けない弾幕の夜を、悪夢の度に思い出せ!」
そんな弾幕が、依姫の方へと向かっていく。月人の高レベルなフィジカルでも、躱す事はけして容易ではない。
「大御神はお隠れになった。夜が支配する世界は、けして浄土にはなり得ない」
「『天宇受売命(あめのうずめのみこと)』よ!我が身に降り立ち夜の侵食を食い止める舞を見せよ」
依姫がそう宣言すると、踊り子の様な服装をしたショートの美女が現れる。そしてまるで何かを授けるかのように依姫に手を触れると、忽然とその姿を消した。
依姫は、うっすらとした輝きをその身に纏っている。
しかし、ただそれだけなので、レミリアは怪訝気に、そして威圧する様に言葉を投げかけた。
「なんだ?ただ光って見せるだけかい?」
「…………」
依姫は何も答えない。
レミリアも構わず、弾幕を放ち続けた。
しかしどうだ。依姫はまるで舞うかの如く、優雅に体を動かし、必要最小限の動きで避け始めた。
踊りの神、『天宇受売命』の神力だ。
天宇受売命とは、かの有名な天岩戸伝説における宴会の時、天照大御神をおびき寄せる為の賑やかしに一役買った女神の事である。
知らない者もいるかも知れないので補足すると、弟である素戔男尊(すさのおのみこと)の暴虐な行いに心を病んでしまった太陽神天照大御神が、天岩戸と呼ばれる岩の狭間に引きこもってしまい、世界が夜に包まれてしまったというのが天岩戸伝説の概要である。困った神々が岩の前で宴会をやって呼び出そうとし、結果天照は楽しげな宴に引き寄せられ、世界に光が齎される事になる。
今の天照にこの天岩戸伝説の話をすれば。
「あらあら、そんな事が伝説になってるの?恥ずかしいったらありゃしないわねー。クスクス!」
きっとそんな風に返すに違いない。
「ふん。飛び道具は効かないって訳か……」
腕を組み、ふんぞり返った状態でレミリアはそうもらす。
「やっぱり最強の体術を喰らう方が、お望みって訳ね!」
大きな風切り音を響かせながら、レミリアは依姫へと向かっていく。
それを見た依姫はピタッと舞うのを止め、目をつぶった。
「女神の舞に大御神は満足された。天岩戸は開き、夜の侵食はここで終わる」
「『天照大御神』よ!圧倒的な光で、この世から夜をなくせ」
ゴゴゴゴゴゴ………!
まるで闇に包まれた世界をこじ開けるかの様に、依姫の背後が光り始める。
その後光を纏いながら、美しい黒髪の女神が現れていく。
その強い光を見たレミリアは、驚愕にその顔を歪ませた。
「………は、ははっ、あはは!あーはっはっは!ダセェ、ダサすぎるだろレミリア!あんだけえっらそうに振舞ってたのに、一瞬で負けてんじゃねぇか!」
プスプスと音を立てながら焦げていくレミリアを見て、凜は大爆笑していた。慌てて咲夜がレミリアを日陰へ避難させる。
第三試合、依姫の圧勝。
「はー、笑った笑った。久し振りに大爆笑ですわー。さぁ、次は霊夢かい?」
「………まぁ、順番的にねぇ」
酷く憂鬱そうだ。まぁ、今までの試合を見てたら、そう思うよなぁ。
そんな思いはおくびにも出さず、相変わらずニヤニヤしたまま、凜は話す。
「あはー、そう憂鬱そうにするなって!神降ろしの練習にでも思えば良いじゃん?」
「やらないあんたは気楽でいいわねぇ。………ま、行ってくるわ」
「おう、行ってらっしゃい。君と依姫ちゃんの事だから心配してないけど、ぶっ殺されない様にと、ぶっ殺さないようにねー。ぶっ殺したらぶっ殺すからねー」
笑顔で投げかけたその言葉に、
「笑顔で何物騒なこと言ってんのよ……」
霊夢はげんなりした表情でそう返し。
「分かっていますよ」
依姫は余裕ぶった表情で、そう返した。
「あはっ、分かってるならいーけどねー(さぁて………そろそろ佳境か?………うーん、やっぱりなんか癪だねぇ………あは、そうだね………動いてみるか)」