東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

43 / 65
長かった儚月抄もラストです!入試明明後日です!合格いたしましたら割烹の方で連絡させていただきます!
これで心残りも無くなったので、存分に勉強に励みます!では、どうぞ!


外伝『東方儚月抄 其ノ伍』

 

 

 

 

place.???

再び、場は動き。

嵐の大洋を抜けた境界の妖怪とその従者は、新たな海へと出ている。

その海は、先程より幾分かマシだが、荒れていた。

 

「紫様。ここの海はなぜ荒れているのですか?先ほどの大洋が荒れていたのは理解できるのですが。ここの海は風も吹いていないのに」

「ふぅ。そう何でもかんでも聞こうとするんじゃないわ。少しは自分で考えようとしなさい」

「はぁ。しかし私は式神ですので。命令されなければ動けないのです」

「まぁいいけれどね。考えても分かることじゃないし………」

 

ならなぜそう言ったんだろう。

従者―――――八雲藍は素朴にそう思う。

境界の妖怪―――八雲紫は酷く退屈そうに説明を始め出した。

 

「海上の風は水面を変化させる。それは海が大気の影響を受けているから」

「では、この海は―――」

「しかし。風は海の表面を荒立てるだけで、海の底は穏やかなまま」

 

紫は突拍子もなく、いきなりその海へと潜り出した。

 

「!」

 

藍は少々驚きつつも、自らの主を追いかけるため、海の中へと潜る。紫がなにか施したのか、紫と藍の周囲の大気は海の中に入っても残されていた。

海の中は、表面のざわめきなど比べ物にならないほど、水が動いている様だ。竜巻のように渦巻いているものもいくつか見られる。

 

「この海は内部の方が活動的なの。むしろ表面の方が穏やかね」

 

空気があるから音も響くのか、声は出るらしく、紫は口々に続けた。

 

「作られた大気(オピニオン)は海の表面に影響を与える。しかし表面は慌ただしくも、海の中まで影響を与えることは少ないだろう」

「でもこの海は違う」

 

ひとしきり内部を見たかと思うと、紫は海の中を出る。藍も、無論それに続く。

 

「大気の影響を受けず、自ら変化を起こそうと。沸き立つ思考が止まらない。この海は――――――『賢者の海』」

「賢者の―――――だとすると」

「そう。ここが月の賢者の住処」

 

スッ、と、紫は指を縦に動かす。

指で線引きされた部分の空間が歪み、小さなスキマが出来上がる。

そのスキマの向こうには、月の賢者の家の中があるようだ。

 

「ちょうど留守みたい」ニコッ

 

紫は嬉しそうに笑い、そのスキマを閉じる。

 

「はぁ。でしたら帰ってくるまで待ちましょうか?千年前の雪辱なら留守では仕方がありません」

「何を言っているの?絶好の機会じゃないの」ケラケラ

「?いったい何を………」

「月の賢者の家に忍び込んで、めぼしいお宝を奪うのよ」

「空き巣ですか―――――――でも、そんな留守の家を漁るだけで良いのですか?それで満足するのでしょうか?」

「うふふ。いいのよ。どうせ地上の者は月の民に適わないもの―――――まぁ、彼なら分からないけど―――――力ではね」

 

 

更に更に場は動く。豊かの海。

 

霊夢は、ボロボロな状態で地に伏していた。

対して依姫は、余裕のある表情で霊夢の前に立っている。霊夢は神降ろしの力を使い、戦ったのだが、全て依姫には通用しなかった。

つまり。手も足も出なかったのだ。

しかしまだ余裕はあるのか、身を起こしてぶつぶつと呟く。

 

「前の神奈子を相手にした時もだけど………調子狂うなぁ」

「貴方は力の使い方を間違っている。修行が足りない」フッ

「………。大体ねぇ。私は妖怪退治の専門家なの。相手が神様だとどうにも勝手が違うのよね………。もっとこう、倒して然るべき相手が―――――」

 

横目で霊夢は、先程惨敗してしまったレミリアの方を見る。

視線に気づいた従者の咲夜が、苦笑しながら言う。

 

「もう飽きて寝ていますわ」

 

そんな咲夜の膝元には、( ˘ω˘ ) スヤスヤと寝息を立てて寝ているレミリアの姿が。

がくっ、と来た霊夢は、うがーっと唸った。

 

「あーあ!もっと妖怪らしい妖怪を退治したいねぇ!」

 

ぶんっ、と、霊夢は札を依姫に投げつける。

依姫はつまらなさそうに、その札を切りつけた。

しかし、切りつけたその瞬間、依姫は驚愕にその顔を歪ませた。

 

「………!」

「『大禍津日(おおまがつみ)』―――――。あんたたちの弱点は分かっているわ。汚れなきこの浄土に、穢れを持ち込まれるのを極端に嫌うこと」

「何ですって?」

 

依姫は警戒心を抱いた。

先ほどの札からは、強い穢れを感じた。という事は―――――。

 

「じゃあさっき投げた物は」

「大禍津日神(おおまがつみのかみ)がその身に溜めた厄災よ」

 

遮るようにそう言うと、霊夢はニヤリと笑いながら話し始めた。奇しくも、その笑みは凜と酷似している。

 

「放っておけば月に寿命をもたらすわ。弾を一つ一つ潰さないと、月は地上と変わらなくなる。これであんたは私の弾を避けるわけにはいかないでしょ?」

「…………」

 

先程までの余裕ぶった表情から一転、依姫は眉を顰め、真剣な表情で刀を構えた。

 

 

 

またまた場は動き(何回動けば気が済むのだ。終いには怒るぞ)、賢者の海の浜辺へ。

紫は大きなスキマを作り出した。

 

「さぁ、藍。命令よ!中に入って、私を満足させる素敵な物を盗んできなさい!」

 

藍は式神だ。主に命令されてしまえば、従う以外の選択肢は持たないし、持てない。

多少の不審を抱きつつも、そのスキマの中へと入った。

紫はそれを確認すると、『もう一つ大きなスキマ』を作り出し、手に付けていた手袋を掛ける。

 

「クッ……ククッ………プッ!あーはっはっはっは!」

 

ひとしきり笑った後、もう片方の手袋も脱ぎ捨て、空に放り投げる。

手袋は空中高く上がると、カラスのカタチになって飛び去っていった。

 

「ええーっ!」

 

藍のそんな悲鳴が、一つ目のスキマから聞こえてくる。

 

「?」

 

紫も一つ目のスキマの中に入る。すぐ出ればいいだろう、と思ったのか。

 

「あ!紫様!何か変なんです」

「だから。何が変なのかしら?」

 

従者の不審な行動を見て、辺りを見回す。

 

「建物らしき物が見当たらない暗い夜。穢れ多き、動物の咆哮。それに…………空には。満月………それも少し欠けた」

「ここって……。幻想郷ですよね?」

 

ハッ、と事態を理解した紫は、自分達が通ってきたスキマを見つめる。

すうっ、とそのスキマは閉じてしまった。

 

「満月が終わったみたいね。これであなたは、月に戻れない。師匠が千年以上も前に仕掛けたトラップでね」

 

そう言って、綿月豊姫とそのペット、レイセンが現れた。

紫と藍は、スキマの方を見ていた視線を、ゆっくりと豊姫達に向ける。

 

「―――――小人、愚者を囮にし、目を欺かんとす。留守に気をつけろ――――」

 

豊姫は愉快げに、くるくると回る。

 

「うふふー。お師匠様の言ったとおりね。あんな大時代なロケットは目くらましで。本物は静かに現れるとね」ニヤァ

「あの、豊姫様。ここはいったい……そして、目の前のあいつらは?」

「レイセン。ここは地上です。あなたも見覚えがあるでしょう?」

「………!とすると、こいつらは……!」

「月に侵入してきた地上の妖怪。たった今私の罠に掛かって道を失った」

 

その言葉を聞いて、パチパチパチとレイセンは手を叩く。月の都を騒がせていた人物が、ようやっと捕まったのだ。

さすが豊姫様、とレイセンは心の中で思う。

 

「『道は爾きに在り、而るにこれを遠きに求む(本当の理想というのは近いものにこそあるのに、それを遠くに求めてしまう)』この妖怪は、回りくどい事が正しいと勘違いした」

 

豊姫はバッ、と手を振り上げ、何かをしようとする。レイセンはビクッ、とそれに反応する。

 

「真正面から、勝ち目のない戦いに挑んだ純粋な妖怪と」

 

かと思えばその手を優しくレイセンの頭に乗せ、ナデナデと左右に動かした。

レイセンはホッ、と息をつく。

 

「ない頭を使って天網をかいくぐろうとした、愚かな妖怪。果たしてどちらが道であったのか―――――」

「…………」

 

豊姫は腰に差していた扇子を手に取り、紫へと向ける。

 

「浅はかな者よ。私と1戦交えるかね」

 

ずっと顔を俯かせていた紫は、見たこともないほど真剣な表情で、豊姫を見つめ返す。

藍は、紫がどう動くのかを、これもまた真剣な表情で見つめる。

4人の緊張状態は、極限まで膨れ上がっている様だ。

 

 

 

 

しかしそんな事は関係なく場は戻り。豊かの海。

 

「はぁっ!」

 

霊夢は天高く舞い上がり、大量の厄災を生み出す。

そしてそれを真下にいる依姫へと向ける。

依姫もそれをただ避ける訳にはいかない。

大量に生み出された厄災の塊を、全て切り潰す。

そんなやり取りは、既に何度となく繰り返されていた。

 

「あぁ、もう。キリがないわ。私が負けようかしら」

 

はぁ、はぁと息を荒くしながら霊夢は言う。

 

「ふん。キリがないね」

 

同じく息を荒らげながら、依姫は言う。

三戦目までと違い、霊夢と依姫は拮抗していた。

しかし。それは、彼女が能力を使っていないからだ――――。

 

「『伊豆能売(いづのめ)』よ。私に代わって穢れを祓え!」

 

依姫は手を上に掲げる。神力が空中に集まり、女神の形を成す。

シャラン、という音を響かせながら現れたのは、霊夢と同じような巫女服姿の神だった。

霊夢は驚愕する。

 

「巫女姿の神!?誰それ?聞いたことない神様だわ………」

 

その女神が手にした鈴を振るうと、黒い瘴気の様だった厄災が、どんどんと浄化され、白い光になって消えていく。

観戦していた魔理沙は、面白そうに言う。

 

「おお、本物の巫女だ。こいつはやばいぜ。偽物は必ず負けるんだ」

 

言葉とは裏腹に、その顔はとても嬉しそうだ。

納得がいかないようで、どうにも腑に落ちない顔を霊夢はした。

 

「巫女は神様をその身に降ろす者。その神様が巫女の姿っておかしくない?」

 

そんな質問に、依姫はふっと笑って言い返した。

 

「勉強不足ね」

 

ヒュッ。

依姫は手にした刀を、霊夢の首筋へとあてがう。勝負は決まった様なものだった。

 

「と、投了よ、投了」

 

その言葉と共に、第四試合の幕が閉じた。

勝者は依姫――――――つまり。

レミリア達の月侵略は――――――失敗に終わったのだった。

 

「さぁ、これで満足ですか、凜さん――――――え」

 

勝負が終わったことで、凜に確認を取ろうとする。

何だかんだ凜が1番の危険分子である事に変わりはないのだ。その行動は当然だった。

しかし――――――。

 

「いない………?」

 

 

 

 

 

場はまたもや変わり、再度幻想郷では。

豊姫は扇子を開き、対峙している紫と藍に向ける。

 

「この扇子は、森を一瞬で素粒子レベルで浄化する風を起こす。そんな月の最終兵器相手に貴方は何が出来る?」

「………………あーはっはっ!」

 

先程までの真剣な表情を、いきなり歪ませた紫を見て、藍とレイセンはギョッとする。

豊姫は不審げに眉を顰めた。

 

「もう降参降参!戦う気なんてないわ。最初からまともに戦ったら勝ち目がないんだから」

「紫様………」

「囮作戦がバレた時点で、私たちに勝ち目は無かったのよ」

「………いやに聞き分けがいいわね」

「………敗れた側がこんな事を言うのもおこがましいかも知れないが………」

 

紫はストン、と両膝をつく。

主である紫に、絶対の信頼を抱いている藍は、紫が地に足をつく姿に強い衝撃を受けた。

 

「全ては愚かな一妖怪の所行。地上に住む全ての生き物には罪はない。どうかその扇子で無に返すのは勘弁願えないだろうか」

 

豊姫はそんな彼女に、冷ややかな視線を向ける。

 

「ここに住む生き物に罪がないはずがありません。地上に住む、生きる、死ぬ。それだけで罪なのです」

「地上の生き物への罰は………」

 

一瞬、緊張が走る。豊姫の裁量ひとつで、全てが決まるのだ。

数刻口を閉ざしてから、豊姫は言った。

 

「一生地上に這い蹲って生き、死ぬこと」

 

それが、豊姫にとって―――いや、月の民にとって最もの罰なのだった。

 

「レイセンよ、この者達を捕らえなさい!」

「はい!」

 

ぴょんぴょんと飛び跳ね、肩を落として落胆している紫達の方へと喜びながらレイセンは向かう。

そしてギュッ、と縄を手首に巻き付け、縛った。何だか楽しそうなのが癪に触ったのか、紫は先程までの殊勝な態度を感じさせない気の強さで言う。

 

「そんなにきつく縛って。跡が残ったらどうするのよ」

 

それに気づいた豊姫が、目ざとくも反応する。

 

「良かったわね。月まで来た手土産になるじゃない」

「ちなみにその紐を切ろうったって無理だからね、なんたってそれは―――――」

 

豊姫がニンマリと得意げに話そうとした、その瞬間。

 

「フェムトファイバー―――――永遠にちぎれることの無き不穢の縄だからねぇ」

「「「!?」」」

「?」

 

突如、何も無かったはずの所から声がした。

紫、藍、豊姫にとって、酷く聞き覚えのある声だった。レイセンも、どこかで聞いたような、と思う。

そこに居たのは―――――凜だった。

 

「はろはろー、豊姫ちゃん、ゆかりん、らんちー。そっちの兎ちゃんは、前に霊夢が保護してた子かな?」

「り、凜くん!?なんでこんな所に………!」

「はっはー、こんな所とは失礼だなぁ、豊姫ちゃん。ここは幻想郷だよ?俺が居ても全く不思議ではないなぁ」

「つ、月に行っていたはずじゃ……!」

「らんちー、やっほー。ははっ、なんとも面白いカッコしてるねぇ」

 

ニヤニヤしながら、凜は軽快に返していく。

何も言わなかった紫が、口を開いた。

 

「……………ふふ、何しに来たのかしら?」

「うん?ははっ、そうだねー。タネ明かし、って所かなぁ?」ニヤニヤ

 

 

 

 

side rin

「改めましてこんばんは、そして久しぶりだね、豊姫ちゃん。あは、君もそれ付けてくれてたの?嬉しいなぁ」

 

豊姫ちゃんの首に、緑色のチョーカーが巻かれているのが見える。ふふっ、あれから結構経つけどなぁ。嬉しいもんだね。

 

「………………まぁね〜。貴方から貰った、大事なものだもの」

「ふふっ、そいつは重畳。久しぶりに会うけど、うん。前より可愛くなったね。なんというか、大人っぽい感じになってさ」

「う………………へ、平常心平常心………」ボソッ

「ん?」

「あ、ありがとう凜くん」

「あ、うん。……………ま、感動の再会はこの辺でいっか」

 

豊姫ちゃんに向けていた笑顔をくるりと返し、ゆかりんとらんちーの方に向ける。

 

「全くさぁ。ちまちまちまちまと、細かい動きしてんじゃねぇよー。やることなす事分かりにくいんだよ。読者様おいてけぼりになんかするから、俺がこうやってフォローに回んなきゃいけなくなるんだぞ?そこら辺分かってんの?うん?」

「凜くん、それ以上いけない」

「おっとごめん。まぁともかく、タネ明かしタイムに入ろうじゃないか」

 

俺は大仰に手を広げる。

さぁ―――――解決編といこうか?

 

 

 

 

「まずは事の発端から。ゆかりんは何らかの目的を持ったわけだ。

「その目的を果たすために、様々な仕掛けを打った。

「霊夢が神の力を使えるように修行させ、レミリアに月侵略を持ちかけた。

「ゆかりんはレミリアにそう誘えば、自分の力だけで月に行きたがるであろう事を知っていた。らんちーを使って、ゆゆちゃんに吸血鬼達の監視を依頼したりもしてたねぇ。あんまり関係無いけど?

「つまり、この事から、ゆかりんはレミリアが月に行く事を望んでた。これは分かるよね。

「つまり、レミリア達を利用し、そちらに引き付けられている間に留守を狙う『囮作戦』。これが主にゆかりんの動きだ。

「そんなゆかりんの行動を感じ取った永琳…………月の頭脳『八意××』は、自らの故郷である月の都にその思惑を伝えようと思った。まぁ永琳は頭がきれる。すぐに見抜けたわけだ。

「しかし、どうにも伝える方法がない。ここをどうクリアしたのか、ちょっと俺には分からなかったんだが、そこの兎ちゃんを見て確信したぜ。

「そう。君だ。ねぇ豊姫ちゃん。この子、なんて言うのかな?…………

「うん?あは、レイセン、って言うの?ふふ、実はレイちゃんが逃げたの、根に持ってるのかなぁ?

「まぁいいや。霊夢がなんぞ変な兎を保護したって言ってたからねぇ。タイミングが合わなかったから、実際にはレイセンちゃんとは喋ってないけど、神社には居たから身元不明の兎が居る事は知ってたよ。

「実際見てはいないんだけど―――――何だか綺麗な布切れを持ってたって、霊夢が言ってたんだ。そん時は、何か貴重品でも持ち歩いてたのかね、って思ってたけど。その布切れってのが月の羽衣だとしたら、もろもろの辻褄があう。

「地上に逃げてきたレイセンちゃんを、永琳は利用した。はっはー、地上に逃げてくるなんて、まさにレイちゃんと同じ状況だねぇ?

「レイセンちゃんは月の羽衣で再度月に帰り、永琳の助言を、豊姫ちゃんと依姫ちゃんは得ることが出来たわけだ」

 

「はっはー、大体の動きはこれで理解出来たかな?後は、本筋通り進んだら豊姫ちゃんと依姫ちゃんの家にいるはずのゆかりんとらんちーが、なぜこうして幻想郷にいるのか。

「まぁあれだよ、これも想像はつくよ。

「表側―――――レミリア達の方は、依姫ちゃんを向かわせれば話は済む。依姫ちゃんは強いからねぇ、絶対に問題は無い。もしかしたら殺すかも知れないけど、まぁ月の都的には問題ないし。まぁ俺としては、殺されたらガチ切れするけどねぇ。

「問題は裏側だ。俺の予想では、ゆかりんはいつでも月に行けるわけじゃないと思ってる。

「ゆかりんが月に行くには、妖怪の力が最も強くなり、地上と月が最も近くなる日――――――満月でなければいけない。

「ここで考え方のキーになるのは、第一次月面戦争の事だ。

「そう、一つ目の月面侵略。月の兵力になす術もなく敗北したアレだ。戦力差を見て、すぐに撤退を選んでもおかしくなかった。でも、その時の事を書いた資料には、持ち込んだ妖怪をほぼ全滅にされた、って書いてあるんだよねぇ。

「つまり、『撤退できなかった』って事なんだね。何故そんな事になったのか。話長くなるけどちゃんと聞いてねぇ?」

 

「月ってのは地球の衛星だ。

地球が太陽の周りをするように、公転する。

けれど、公転周期って言うのはキリの悪いもんでねぇ、27日と3分の一日で周期するんだ。満ち欠けはそれと地球の公転を計算に入れて、大体29日と半日くらいなんだよ。

「でもおかしいよね?昔は新月を1日、満月を十五夜、つまり15日にしてたんだよ?満ち欠けの周期は『30日であるべき』なんだ。

「まぁ、科学的な見解はあるんだけどね。けど、それは後からつけられた考え―――――古き良き魑魅魍魎の夜である千年以上前にも通じる理論ではない。

「ははっ、まぁ、どっちを信じるかは、って感じだけどね。卵が先か鶏が先か。今外の世界が信じている科学的な歴史が真実なのか、俺達の信じている非科学的な歴史が真実なのか。あにはからんや、だぜ。

「話それたね、悪い悪い。何が言いたいかってーと、太陰暦が使われていた時代には、はっきり満ち欠けの周期は30日だったのさ。なら何故今、満ち欠けの周期はズレているのか。

「今更だけどこの結論は俺の個人的見解というか、月面戦争関連の資料を読み漁って得た情報を元にした推測なんだけどね。

「その時の月の都の権力者が、月の公転周期を狂わせたのさ。

「公転を弄る方法は、今は置いとこう。極めて科学的な話だしね。

「月の公転周期がズレたらどうなるかな?分かるかな、レイセンちゃん?……………

「その通り。十五夜が完全な満月でなくなるんだ。後でお菓子でも月の都に送ってあげよう。

「ズレていれば、満月にしか月への道を繋げられないゆかりんを罠にはめることが出来る。だから撤退することが出来なくなったんだ。

「主犯に逃げられちゃまた同じことをやるからね。相当キツイ光景を見せられたんじゃないかな?虐殺ってやつ?

「さて、これを踏まえて、第二次月面戦争に焦点を当ててみよう。当初の予定ではゆかりんは1度、賢者の海にたどり着いてから、そこからスキマを辿って依姫ちゃん達の家に行くはずだった。しかし、そこで豊姫ちゃんの出番だ。

「豊姫ちゃんの能力『海と山を繋ぐ程度の能力』が、初お披露目って訳だ。

わかりやすく言うと、月と地上を一瞬で移動する能力なんだよね。

その能力を使って、スキマの移動ルートを塗り替えたのさ。月から地上に行くようにね。

「後はさっき言った話ね。大昔の罠に、またしても引っかかった、っていう訳だ。月へと繋がるスキマは閉じてしまい、ゆかりんは月に行けなくなりましたとさ。これにておしまいおしまい」

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ。こんな所かな?どうかな、当たってるかい?」

「お見事。流石ね、凜。なんとも恥ずかしい限りだわ。こんな失態を犯すだなんてね」

「ははっ、まぁいいんじゃね?どーでも、さ」

 

ニヤリと笑いながら、俺は言う。

あぁ、嫌なんだけどなぁ………。

自分でも分かる。

今の俺は、相当悪役のような顔をしているのだろう。

あは――――――悪役も苦手だが、どうやら探偵役も、俺には合わないらしい。

 

「はーい、茶番はここまでー」

「凜くん……………?」

 

不審げに豊姫ちゃんが言う。あは、これ以上何かあるのか、と言いたいのかな?あはっ、さぁ、どうだろうね?無視して続ける。

 

「俺は基本、幻想郷の味方のつもりだけど。こうして探偵役を仰せつかった事だし、豊姫ちゃんや依姫ちゃんの役に立ちたいと思う気持ちもある」

 

それに。

 

「今回ゆかりんが誘ってくれなかったの、実はちょっと………いやかなり寂しかったんだよねぇ。あは、自由に動け、だっけ?本当に『自由にして』良いのかな?」

 

なんとも不穏な空気を前に、らんちーと豊姫ちゃん、レイセンちゃんは非常にオロオロしていた。うんうん、可愛い。けど、それはまぁ今関係ないんだよねぇ。

しかし――――――――八雲紫。

彼女だけは、楽しげな表情を浮かべている。

 

「うふふ……………凜?上司に牙を剥く気ですか?」

「あはっ!どうだろうねぇ?今からでも『ごめんなさい、やっぱり凜を引き入れたいです』って言うなら、矛を収めるのも吝かじゃないよ?」

「くす………くすくす!こんなにも無様な姿を晒してるのですよ?そんな可哀想な私に、貴方くらい優しくしてもいいと思いません?」

「あはっ、確かにねぇ。フェムトファイバー、外してあげようか?まぁ、ちゃんと無様に懇願するならだけど?」

 

フェムトファイバーを外す事を、簡単に言ってのけた事で、豊姫ちゃんのあたふた度合いがさらに増す。

 

「あら!これが噂の、ドSって奴ですわね?くすくすくす!」

「あは、さっきから妙に芝居がかってるねぇ、今日はそういう趣向なの?」

「さぁ、どうでしょうね?」

「あは――――――」

「うふ――――――」

「「あはははははっ!」」

 

2人で笑い転げる。

 

「いやはや、楽しいなぁ……。やっぱり君とは気が合うみたいだ」

「うふふ、それは良かったですわ」

「んで――――――どうする?」

 

そっとゆかりんの耳に口を寄せ、そう言う。

何でもいいけれど―――――そろそろ、ね。

 

「君は今回の月面戦争―――――勝つのか、負けるのか。どうするのかな?」

「…………………くっ……くくっ………あーっはっは!」

 

ゆかりんは笑う。いい加減他の連中の猜疑の視線が痛い。ちょろーっと待っててくれると助かる。

ゆかりんは楽しそうな笑みを浮かべている。

 

「まさか、そこまで辿り着くとは思わなかったわ」クスクス

「あは、真実とは限らないけどね。もしかしたら間違ってるかも知れないぜ?」

「――――――いいわ。好きにしなさいな、凜」

「―――――オーケー、好きにしよう」

 

さぁ――――――解決編、第2部だ。

 

 

 

 

「あははっ、待たせてごめんねー。ちょっと手間取ってさぁ。

「まぁもう分かってると思うけど、これで終わりじゃないんだよねぇ。

「結論から言わせてもらうと、ゆかりんはもっと頭が良かったって事だ。

「豊姫ちゃん、依姫ちゃん。それに永琳も含めて、完全に出し抜かれた形だ。いやはや、どうにもだね。

「さぁ何故出し抜かれているのか。説明を今から始めるよ。といっても、推測が交じることは否定出来ないから。異論があるなら言ってもいいよ?

「まず俺は、疑問に思ってたんだ。

何故わざわざゆゆちゃんに、レミリア達を監視するようらんちーを通じてお願いしたのか。

「うん?それは吸血鬼達を騙すためのものじゃないのか?どこから情報が漏れるか分からないしって?あは、らんちーは素直だねぇ。

「レミリアは幼稚ではあっても馬鹿じゃない。ゆかりんが行かせたがってる事くらい、彼女も分かってるよ。それでも今、彼女は月に居る。つまり、騙そうが何だろうが、彼女は月に行くんだ。

「なら依頼なんて要らないのさ。

「別の意味があったからこそ、ゆかりんは依頼をしたんだ。その意味とは?なんだか分かるかなぁ?……………

「あは、やっぱ分かんないよねぇ。しょうがない、ヒントが少なすぎるもんね。

「ゆゆちゃんは第一次月面戦争を知っている。つまり、ゆかりんが月侵略を望んでる訳じゃないと知ってるんだ。ゆかりんには何か別の目的がある。それを知ってもらい、間接的な協力を取り付ける。それがらんちーの依頼の真の意図なのさ。

「ここで、新しい目撃証言。ここに来るまでに、月の都の海を見てきたんだけど…………。

「賢者の海に。『大きなスキマ』が開いていたんだ。それを覗いてみたら、案の定。依姫ちゃん達の家に繋がっていた。

「あは、そんなに慌てるなよ、豊姫ちゃん。推理はちゃんと最後まで聞くべきだぜ?

「つまり、ゆかりんの取った行動は、恐らくこうだ。

「月に行く際、移動に使うスキマをわざと残しておく。ゆゆちゃんなら恐らく、それを見つけて、入り込んでくれるはずだと踏んでね。

「そして、依姫ちゃん達の家が近い賢者の海まで行けるよう、何らかの方法で道順を示しておく。まぁ、地図でも書いたか、印でも付けたか。もしかしたら傘をベキベキ折って、曲がる順にしておくとかかもね。そこら辺はどうでもいいけれど。

「そして賢者の海にたどり着いたら、大きなスキマを開ける。これは豊姫ちゃんに感知されて、上書きされる方のスキマだね。

「それにらんちーが入っている隙に、もう一つ、大きなスキマを開けた。最初のスキマが豊姫ちゃんの気を引いているうちに、ね。

「これで、豊姫ちゃんに感知されないスキマの出来上がりって訳だ。賢者の海にたどり着いたゆゆちゃんは、まず間違いなくそれを見つけて、入るだろう。中からテキトーにかっぱらって、しばらく月の都で隠れていればいい。一ヶ月経てば、ゆかりんに迎えに来てもらえるって寸法さ。これが一連の事件の、本筋ってわけ」

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ…………私たちの家は」

「今頃漁られてんじゃねぇかな?」

「そ、そんな…………」

「あは、可哀想にねぇ」

 

ニヤニヤ笑って、思っても無いような事を口にする。あは、月の都の連中が、地上の連中に一本取られたってんだ。面白いったらありゃしないぜ、くすくす!

おっと、ガラじゃない笑い方しちゃったねぇ。いけないいけない!

 

「ゆかりん?合ってるかなぁ?」

「うふふ……。びっくりするくらい、ピッタリね。惚れ惚れするわ」

「あは、苦労したからねぇ。阿求ちゃんの蔵書とか記憶とか。鈴奈庵も、ないだろうと思ったけどあたってみたしなぁ。まさか上白沢さんの知り合いのツテで全容が分かるとは思わなかったね」

 

まぁ、こんな地道な聞き込みなんて、わざわざ描写することでもねーし、分からないだろうけどさ………。あは、一人称なら行動が何でも描かれると思ったら大間違いだぜ?

 

「うなだれてるとこ悪いけどさぁ、豊姫ちゃん。戻らなくて良いの?」

「……………そうね、今はその時ではないわね」

 

顔を伏せて明らかにショックを受けていた豊姫ちゃんは、真面目な顔になって顔を上げた。

豊姫ちゃんに、レイセンちゃんが声を掛ける。

 

「あ、あの、豊姫様。手紙はどうしましょう?」

 

手にした手紙を、豊姫ちゃんに見せた。

 

「………………そうね………今の事実を考えれば、持っていかない方がいいかもしれない」

「うん?その手紙には何が書かれているの?」

「凜くん………まぁ、勝利報告と言うか、現状報告と言うか」

「あはっ、なんだそれ。面白いじゃない、送っちゃえば?」

 

レイセンちゃんの持っている手紙にそっと触れる。それだけで手紙は消失した。

まぁ触れなくても移動は出来るけど、一応触れた方がスムーズではある。

 

「え、ええっ!?」

「……………………もう、凜くんが何をやっても驚かないわ……………」

 

あはっ、そいつは可愛げのない。

 

「あは、せっかくだし、送ってあげようか?一瞬で送ってあげるぜ?」

「いや、そんな……悪いわ」

「あは、そんなに遠慮しなくていいんだぜ?どうせレミリア達の所に戻るつもりだしな。1回も2回も同じだよ」

「別に、帰れるから大丈夫よ―――――」

 

それでも遠慮しようとした豊姫ちゃんが、口を閉ざす。ん?

 

「豊姫ちゃん?」

「………い、いいえ…………何でもないわ」

「?そう?あは、何か考え事でも?」

「(少しでも長く、あなたと居られたら―――――なんて)」

「言えるわけないわよね………」ボソッ

「まぁいいけれど。それで、どうする?」

「………そうね。お願いしようかしら」

「オーケー。ゆかりん、ソレは後で外すから、少し待っててねぇ」

「えぇ。なるべく早くしてちょうだいね?」

「了承いたしました、我が主。さぁ――――転符『依姫ちゃん達の家』!」

 

ふわっ、とした感覚と共に、場が切り替わる。前にも見たことがある、居間に転移したみたいだ。

 

「それじゃあ、豊姫ちゃん。今日は会えて嬉しかったよ。また機会があったら」

「う、うん。さようなら、凜くん」

「おー。また会う日まで、元気でねー」

 

side toyohime

ヒュン、と凜くんが転移する。

……行ってしまった。

いいや、これで良かったのよね。

 

「(吹っ切ったつもりでいたのだけれど………)」

 

本人に会うと、やっぱりダメだ。

彼の微笑みを見るだけで、今でも動悸が激しくなる。首に巻いたチョーカーに手を触れれば、まだ心が暖かくなる。

何なのかしらね―――――――叶わないことを、知っているのに。

 

「って、何を感傷に浸っているのか…………早く探してみましょう。まだ少ししか時間は経ってないし、どうせ月の都からは出られないのだから」

 

まずは、倉庫から手を付けることにした。

 

 

 

 

 

「居ないわね…………」

 

確かに、軽く位置が変わっているものはあった。誰かがここに入ったのは間違いない。

というか特になくなっている物が無いのだけど………。

 

「いや………ないなら無いに越したことはないけれど」

 

もしや、凜くんの推理は外れていたのだろうか。あの妖怪が正解だと言ったのも、ただの強がりだったとか……………。

 

「いや、彼に限ってそれは無いか………」

 

ぶつぶつと独り言を呟きながら歩いていると、目の前から歩く音がした。

よもや不届き者が見つかったのかと思い目を凝らしたが、違った。

しかし意外な人物ではあったので、驚く。

 

「月読様!?」

 

そこに居たのは、月の都の実務トップ、月読命様だった。

象徴的トップの天照大御神様と違い、実務に関する全ての機関のピラミッドの1番上に立つ人物である。

 

「………やぁ、豊姫。すまない、勝手に上がってしまって」

「い、いえ、それは構わないのですが…………何故ここに?」

「思い過しかも知れないのだが――――先ほど、凜と同じ神力の動きを感じてな」

「あぁ―――――なるほど」

 

どうやら、先ほどの凜くんの移動の際に、神力を感じ取ったみたい。

 

「それなら大丈夫です。少し所用で地上に行ったので、送ってもらっただけで」

「そうか。なら良かった」

 

ほっ、と一息つく月読様。

丁度いいので、月読様に聞いてみることにした。

 

「つかぬ事をお聞きしますが、月読様」

「うん?なんだ?」

「誰か、変な人を見かけませんでしたか?」

「変な人?……………さぁ、見てないが」

「そうですか…………」

 

本当にどうしたのか。あの妖怪から撤退の合図でもあったのか?今日はもう月の都に干渉は出来ないはずだが…………。

 

「それじゃあ、豊姫。不審な者を見かけたら連絡するよ」

「はい、お願いします」

 

さて、もう一度探してみて、居なかったら適当に凜くんに写真でも貰って、指名手配しておくか……………。

 

 

 

豊姫と別れた後、月読命は考え事をしていた。

 

「うん、何事も無いようで良かった。…………しかし、何故『2回』も、神力が移動したのだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

side rin

月での1件が片付いた、その翌日。

昨日は結局、また窮屈な思いをするのは嫌だろうと思い、表の連中は能力で送ってやった。裏の連中はぶつぶつ言って居たが、フェムトファイバーを解いて帰らせた。

なんだかんだ言って楽しかったのか、レミリアは最終的に上機嫌そうだった。

なんぞ月の海に触発されでもしたのか、幻想郷にもプールを作る、とか言い出し、準備をしているらしい。

 

あぁ、因みに霊夢がバカスカ神を使役していたせいで、依姫ちゃんが上に謀反の疑いを掛けられていたらしく、月の都を連れ回される事になった。上手い飯も食えるだろうし、まぁ構わないだろう。

そして俺は今、幻想郷でも数ある人しか知らないゆかりんの家の前に立っていた。

 

「らんちー。入っていいかな?」

 

家の戸を叩いた後、そう呼びかける。

 

「凜?えぇ、構いませんよ」

 

少しくぐもった声がそう返した。

戸を開き、中に入る。

 

「おじゃましまーす」

 

廊下をスタスタ歩き、居間に入る。勝手知ったる他人の家、だ。

 

「こんにちは、らんちー、ゆかりん」

「はい、こんにちは」

「……………あらあら、裏切り者が何のようなのかしら?」ニヤニヤ

「そうつっけんどんにならないで欲しいなぁ。味方にしなかった君のミスなんだぜ?」

 

ニヤニヤ笑っているので、からかっているだけだろうけど。

 

「あは、まぁちょっと、来て欲しいところがあってねぇ。付いてきてくれないかなぁ?」

「?………いいけど」

 

怪訝そうにゆかりんは返す。もちろん主がいいと言ったからにはらんちーもいいはずだ。

そんな2人を連れて、俺は転移をした(前も言ったかもしれないが、ものぐさな訳ではない)

 

「ここは―――――白玉楼?なぁに凜、主のいない内に家でも探ろうって言うの?」

「あは、そんなみすぼらしい真似、しねぇっての」

 

ケラケラ面白がりつつ、白玉楼の中に入る。

不審がる2人だったが、ちゃんと付いてきてくれていた。

バカ広い白玉楼も勝手知ったる他人の家なので、最短ルートを通って居間に行く。

コタツが有って、割とぬくぬく出来る。そんな居間だ。

 

「あら、いらっしゃい」

「!?」

 

ゆかりんは驚く。それもそのはず。

そこにいたのは――――――。

 

「ゆ、幽々子!?」

 

そう。ゆゆちゃんだった。

 

「な、何でここに………!?」

「やぁねぇ、ここは私の家よ?居ない方がおかしいわぁ」

「ちょ…………どういう事!?」

「あっ、紫様、藍さん。いらっしゃいませ」

 

なんだかてんやわんやとしてきたので、スキル、行間リセット。

 

 

 

「ひとまず落ち着いた所で。質問があればどうぞ、ゆかりん?」

「何で幽々子がここにいるのよ?まだ月の都にいるはずよ」

「はーい、お答えしましょ。昨日俺は、こんな行動を取ってたんだねぇ」

 

 

 

「!り、凜さん!?」

「しっ。騒ぐな、魂魄」

 

転移した地点は、予想よりもさっき豊姫ちゃんと別れた地点と近かった。

そう。俺はさっき豊姫ちゃんと別れた時、転移地点を表側の月ではなく、『ゆゆちゃんと魂魄の居る地点』にしていたのだ。

 

「説明は後でする。ひとまず帰すぞ。転符『白玉楼』」

 

ヒュン。

二人の姿がぶれ、消える。これで二人の安全はクリア。

 

「さぁ―――――どうしようかな?」ニヤァ

 

俺は、ニヤリと笑った。

 

 

 

「と、いう事は―――――」

「―――――ほら。何も良さげな物は無かったけどね。結構いい香りしたよ」

 

ドン、と懐からある瓶を出す。

魂魄とゆゆちゃんが居たのは、古い倉庫だった。それはもう宝剣とか、化学兵器とかもあったが―――――――。

 

「(いやまぁ、この辺パチったら洒落になんないよね)」

 

と判断し、結局。

 

「お酒―――――ふふ、なるほどね。やっぱり凜、あなたって悪い人だわ。すっかり騙されちゃった」

「はっはー、レミリア、ゆかりん――――そして、真実の提示による三重の囮――――あは、厳重だねぇ」

 

ドッキリ大成功、ってか?あは、なんだかんだ言って俺は、幻想郷の味方しか出来ないらしい。最初は探偵に徹しようかとも思ってたんだけどねぇ…………。うぷぷ、好きかどうかはともかく、悪役がお似合いなのかねぇ?

 

「うふふ、そんなのどうだって良いじゃない、紫。今は、第二次月面戦争の勝利の宴を楽しみましょう?」

 

魂魄が、大量の料理を持ち運んでくる。

やはり、俺は穢れきったこの地上の住人らしい。

穢れきった勝ち方で、穢れきった宴をする。

そんな穢れきった俺達が肴にするのが、穢れなき酒だと言うのが、少し可笑しかった。

 

 

 

 

 

後日談じゃねーけど、おまけ。

 

「あれからかなり時間が経ったのに。結局見つからなかった」

 

ぼんやりと家を探索しながら、豊姫はぼやく。あれから家の索敵が日課になっていた。

今日も見つからないか、と半ば諦めで倉庫のドアを開ける。

中には相も変わらず誰もいなかった。

 

「今日はこの辺でしまいね……………ん?」

 

前には気づかなかった、ある変化に気が付く。

数千年前から存在する、とても古い古酒が入っている壺の下になって、白い紙のようなものがはみ出ていた。

 

「何だろう、これ………………!?」

 

その手紙に書かれていたのは。

``ごめんね♪テラちゃんやヨミちゃんに、宜しくねぇ?by.バレてないとでも思った?気にしちゃダメだよ♪より´´

 

「……!」

 

急いで酒瓶のストッパーを開ける。

数千年かけて濃縮される、濃厚で芳醇な香りなどそこにはなく。

ただの、水の香りだった。

 

「り…………」

「凜くんんんんんんーーーーー!!!!!!」

 

これにて、長かった第二次月面戦争は、完全に終結したのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。