東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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最近リアルの方が滞っていて、執筆が遅れました。
申し訳ありません!少しずつでもアップしていけたらと思うので、気ままに待って下さると幸いです。


38話『秘密調査員あーる!』

やぁどうもこんにちは。

最近この始め方で始めていない気もする、高橋 凜だ。やはりこの始め方で始めるのが俺な気もするぜ。

それに今日も今日とて暇だなぁ………って繋がるのも定番だが、今回は違う。

年末―――――日本の暦(日本のカレンダーを持ち込んでるので、幻想郷の暦の言い方は知らない)で十二月を迎えた頃、突然ゆかりんが現れ、俺に依頼をしていった。

 

曰く、間欠泉が神社の裏の方に湧き出したこと。

曰く、そこから『怨霊』が出ていること。

曰く、本来怨霊の管理は、地底の役目であること。

曰く、それを調査しにいけ、ただし戦闘するしないは問わない。

とまぁ、そんな感じの依頼だった―――――

 

「って。事でいいんだよね、紫?」

 

件の地底への道を歩きながら、手首へと話しかける。手首には、黒色のブレスレットがつけられている。

すると、ブレスレットから声が鳴り響く。

 

「えぇ、相違ないわよ」

 

このブレスレットは、紫が俺につけさせたものだ。なにやら小規模なスキマを内蔵しているらしく、そこから紫と会話できるというシロモノらしい。

 

「ふーん、まぁいいんだけどさ……。なんか、企んでない?紫。それだけなら、霊夢でもいいわけでしょ?」

 

今この場に、本来あるべき博麗の巫女の姿はない。1人(紫は声だけ居るが)も寂しいかなと思い、呼ぼうとしたのだが、紫に止められたのだ。

 

「わざわざ俺にやらせるって言うのが……ねぇ。まぁ紫さぁ、俺は君に全幅の信頼を置いてるけどもー。少しは君も俺を信頼して欲しいもんだねぇ」

 

俺がそう言うと、紫は少し無言になった。

少し時間が経って、ブレスレットからクスクスとおかしそうな笑い声が漏れてくる。

 

「………うふふ。相変わらず、凜は嬉しいことばかり言ってくれるわねぇ。私、狙われてる?」クスクス

「あっはは、ただの事実だけど。これでもお前にゃ感謝してるんだぜ?手段は無理矢理だったが、幻想郷に招き入れてくれたからな」

「………別にあなたの為にあなたを招き入れた訳じゃあないんだけどねぇ」

「それでも、だぜ。だから君の頼みは出来る限り叶えたい。それが一応、君への恩返しになると思ってるからね」

「………………もう。本当に、相変わらずなんだから」

 

紫の声音が優しい。なんとなく、ブレスレットの向こう側で、紫が頬を赤く染めてるのを想像した。

 

「あっはははは、そんな訳だからさ。少しは信頼してくれてもいいんじゃない?」

「…………あのねぇ。言わせてもらうけど、私だってあなたのこと、信用してないわけじゃないわよ。もう何年友人やってると思ってるのよ、信頼するしないだの、そんな段階とうに越えてるわ」

「へぇ?」

「ただ。私が全部が全部あなたに話すことが、あなたの妨げとなってしまう事もあるでしょう。あなたは私の部下じゃない、だから私はあなたには、なるべく自由でいて欲しいの」

 

今度は俺の驚く番だった。

思うより声音が真剣であり、紫が本気でそう思ってることがわかったからだ。

 

「……………うーん、そう。なんだか照れるね、管理人」

「あなたは守護者であるけど、私の友人でもあるのよ。というより、守護者としての仕事なんて、本当はないのだし。よっぽどの危機でない限り、あなたが仕事で動く必要、なかったりするのよ?」

「あはっ、そんな事言うなよ。大好きな皆の為に、色々手伝わせてくれって」

「…………あなたも物好きよねえ」

「まぁそれにしたって、紫。信用してるからいいけどね、もう少し事情を説明してから放り込んで欲しいぜ」

「あら、説明したでしょう?怨霊の調査に行ってくれ、ってね」

「霊夢に頼めない理由、のほうだよ。まぁあの子に任せるより、俺に任せる方が速いのは速いと思うけどさ。別に誘って問題あるわけじゃないじゃん」

 

1回誘ってから紫に止められた時の、霊夢の(´・ω・`)ションボリとした顔。凄く申し訳なくなってしまったぜ………可愛かったけど。

まぁうちの霊夢は普段から可愛いけど。

あん?戦闘中でも可愛いか?

 

そりゃあもちろん。普段表れないだけで、あの子は我が親友だぜ?自慢じゃないが(他人慢?)、俺の親友はいつだって可愛い。なんなら世界一可愛い。ただし2次元は除くけど。

 

因みに俺は、ライトノベルと漫画、ゲームはゆかりんに頼んで持ってきてもらっているが、アニメに関してはテレビも再生機器もないもんで、見てなかったりする。

ただし情報とかは知ってるから、ハンカチを噛みながら悔し涙を飲んでいる。

くっそ、俺だってダンガン〇ンパとかre〇riteとかリ〇ロとか見てえよ!チックショーーっ!

こうなったら紫を脅しつけて、無理矢理にでも外に出てやろうか……。

 

「とかなんだの考えてるのは、ゆかりんには秘密だ」

「筒抜けだけどね」

「な……なにっ!貴様まさか心を……っ!」

「全部口に出てたけどね」

「だって俺だってアニメ見てぇもん……見てぇもん……」

 

心の中で、砂浜にのの字を書いた。しょぼん。

 

「まぁ、それも後で聞くとして。そろそろ本筋に戻らないとダメでしょ?いつ質問に答えたらいいかわかんないでしょうが」

「あぁ、それもそうだね」

 

仕切り直し。

 

「なんで霊夢に頼んじゃダメなのさ?」

「ダメ、とは言わないわ。でも、危険だ、って言いたいの」

「危険?怨霊がうようよ湧いてくるからか?」

「そうではない―――――確かに、怨霊は危険な存在だけれど。霊夢は巫女よ?その身体は神聖で、乗り移ることは不可能に近い」

「ならなんでだよ」

「………地底というのは、元々地獄だったの。知ってるかしら?」

「いやまぁ、大体は。死者の人口拡大で、今の地獄に移らせたって話だろ」

「そう、その通り。そしていつしか、嫌われ者の妖怪達がその地獄跡に住み着いた」

「そうだね。鬼もその内の1人だ」

 

人間と鬼の間には、勝負を通した一種の絆めいたつながりが有った。幻想郷もまだない、そんな昔のことだ。

鬼は人を攫い、人は鬼を退治する。

見事鬼を退治できれば、人は鬼の持つ秘宝を手に入れることができる。

人と妖怪の関係として、この上なく正しい関係だ。この対立こそがあるべき姿であり、元来の形なのだ。

 

しかし、いつしか人は変わってしまった。

 

闇討ち騙し討ち、果てには盗みまで―――――手段を選ばなくなった。そんな人の姿に、どんどんと、鬼は人から離れていった。そしてついには、鬼は表の社会から姿を完全に消した。

そんな鬼は、今は地底に住んでいるとの話だ。情報源は伊吹である。

 

「まぁ、地底に関してはある程度の知識はあるけれど――――それが?」

「地底を使わせる条件として、私はある契約を交わしたの―――――これは知ってる?」

「?いや、寡聞にして知らないが――――」

「勉強不足ね」クスクス

 

してやったり、という風な紫の声がする。む、なんだその反応は。俺だって何でも知ってるわけじゃないぞ。主人公だからって!

 

「で、その契約ってなんだよ」

「最初にも言ったけど、地底に住む条件として、地獄跡に残った、多くの怨霊たちの管理を命じたの。地上の妖怪が、地底にやってこないこと、なんて条件ものまされたけどね」

「はぁー………なるほどねー。んな条件があるから、君自身で調査にいかないわけか」

「察しのいいのね、その通りよ」

 

ふぅん、なるほど。いくらものぐさな紫とは言え、わざわざ俺を使う理由があるのだろうかと思っていたのだが―――――これで腑に落ちた。

しかし、依然霊夢と一緒に行かない方がいい理由は不明のままである。

 

「で、そこからどう霊夢と一緒に行けない理由に繋がるのかな」

「わからない?地底は私の管理から、外れた場所であるのよ」

「無法地帯ってヤツだね」

「私の管理外ということは、幻想郷でありながら幻想郷の法が適用されない確率があるということ――――――ここまで言えば、分かるわよね」

「……………ははーん。なるほど、スペルカードルールか」

 

答えは無かったが、肯定の意だけは伝わった。

無法と言ってはみたものの、幻想郷にまともな法など、一つしかない。

人と妖怪が対立し、お互いに牽制し合う。そんな関係を築くための法、スペルカードルール―――――それが適用されていない可能性があるということだ。

 

「なるほど―――けど、霊夢はスペルカード以外でも強いでしょ?そんなどこぞの馬の骨に、やられるような事はないと思うけどなぁ」

「絶対――――とは限らないでしょう?博麗の巫女に万が一があってしまったら、あなたも私も困るはずよ」

「うーん………まぁ、それもそうだけど」

 

紫は幻想郷の管理者として。

そして俺は、あの子の親友として。

ともに博麗霊夢という存在が必要であるのは確かな話だが――――――あの子が生半可な暴漢(幻想郷基準の暴漢です)に、殺されるなんてことはないと思うけれど―――――それに、1人で行くならまだしも、俺と一緒に行くなら問題ないと思うのだけれど。

 

「紫は慎重だね………まぁいいや。というか、ちょっと明るくなってきたね」

 

紫と話してるうちに、少し周囲が明るくなってきた。

地底の街も近いのかなと思いつつ、いつも通りからかい半分で弾幕を放つ妖精たちを弾幕で驚かしながら進む。

 

こんな所でも、妖精たちは変わらないもんだ。

 

大した量ではないけれど、毎度毎度面倒ではある。チルノや大ちゃんほどの大妖精ならば、妖精も少しは遊び甲斐もあるのだけれどね。

 

「ちょいとそこのお兄さん、待ってくれない?」

「とりゃー」

「って、うわわ!?」

「あ、やべ、ミスった」

 

茶髪の女の子に声をかけられたが、妖精にやるノリで弾幕をぶっぱなしてしまった。

つい……やっちゃうんDA☆

 

「なんだい、やる気か!?そっちがその気ならこっちだって……!」

 

茶髪の子(正直知識がうろ覚えかつ長い年月のせいで、キャラの名前が思い出せなくなってきてる)が弾幕をぶっぱして来てる。

首を低くして躱す。弾幕から、微量の風を感じ取る。

 

ふむ―――――いい機会か。

 

ビュンビュン飛んでくる弾幕の中の、一つを手刀で潰す。多少の衝撃はあったが、手に対するダメージは特に感じない。

確信する―――――この弾幕は、充分にスペルカードルールの基準を満たしている。

 

「どうやら紫の懸念は杞憂だったみたいだね――――――なら、もういいかな」

「何をごちゃごちゃ言ってんだ!くそ、こうなったら取っておきのスペルカードで――――」

「化人「速きこと風の如く・最大風速」」

 

宣言したその瞬間、俺は茶髪ちゃんの後ろに回り込んでいた。

 

「へ――――――」

「ていっ」

 

素早さに身を任せて、首筋に手刀で一当て。

右にぐらついた茶髪ちゃんの上半身に合わせるように、右足で足払い。体が浮く。

そのまま腰に提げた鉄扇を手に取って、上に吹き飛ばそうかなとした所で、声が響く。

 

「凜……多分その子、もうのびてるわよ」

「へ?」

 

鉄扇を止めようと思ったが間に合わず、そのまま振り上げてしまう。

茶髪ちゃんの横っ腹に突き刺さり、そのまま上空へと吹っ飛んだ。

しばらく天井に張り付いた後、ぼとっ、と天井から落ちてきた。

 

「きゅう〜」

 

ピク、ピク。

ピクピクとしか動かない。やーらかいほっぺをぷにぷにつついても全く起きない。

やっべ、本気出しすぎた…………。

 

「相変わらず鬼畜ねぇ」

「いやぁ、んなつもりは特にはなかったんだけど…。うぅん」

 

別にほっといてもいい気がするけれど。

ボコボコにした後放置ってのも、確かにまぁ、鬼畜だね。いやはや手段は選ぶべきだなぁ。

 

「まぁ、スキルでどうにかしてもいいしするべきなんだけど。流石に治したからってしたことが帳消しになるわけでもないかぁ」

 

仕方ない、連れてくか。

茶髪ちゃんを脇に抱えて、のっそのっそと先に進むことにした。こいつ……重いぞ!

そんな不審者が自分の手首に向けてべらべら喋りながら歩いていると(半ホラーだ)、とうとう光の発生原へとたどり着いた。

街は暖色系の光源につつまれて、昼のように明るい。

 

「む、街についたようだ紫」

「そのようね」

 

街に続く道は、川を挟んで橋が架かっていた。その橋の上にポツンと、1人の女の人が立っている。

む、あれは見たことあるし覚えてるぞ。

 

水橋パルスィ。

 

元の世界では、ネタにされまくっていた人物だ。嫉妬を糧に生きる橋姫である。キャラクターが強烈なので、流石に彼女の事は覚えていた。未だに茶髪ちゃんの名前だけ浮かんでこないけど。

 

「やぁこんにちは、見目麗しきお嬢さん」

「………誰よアンタ………って、なにしてんのヤマメは」

 

小脇に抱えられた茶髪ちゃんに、水橋は話しかける。あぁ、そういやヤマメって名前だった気ィする……。黒谷ヤマメさんだ、そうだ。

 

さぁ、the・不審者なわけだけど……どうしようかなぁ、起きそうにないしなぁ……。

 

「いやぁ、ちょいと事情があってさぁ。まぁ、瑣末な事だよね」

「……いや、瑣末で済ませていいことじゃないと思うけれど……」

「まぁまぁまぁ。そこはひとまず置いといてさ。怨霊の管理してるところを知ってたりしない?」

「さぁ。知らないわ」

「そっかぁ。まぁ良いや。それじゃあ、情報提供どうも、可愛らしいおじょーさん」

「…………妬ましい」

 

ボソッ、とつぶやくように水橋が言う。

ふむ……これは、リアル妬ましいが見れるのではないのだろうか。

 

……………依然、楽しみだな!

 

「はい?」

「その明るさが妬ましい。人間の身で、こんな所に潜り込める勇気が妬ましい、恥ずかしげもなく人を褒める、その軽率さが妬ましい――――――」

「よっ、待ってました!!」

「…………はっ?」

 

おお、リアル妬ましいだ!やっべ!

思ったより妬ましそうだったぞ!緑色のオーラが滲み出てるしな!

 

「いやぁ水橋さん、あなた才能あるよー!どう?妬み系アイドルとして地上デビューしない!?」

「は、え……っ!?」

「まぁていうのは冗談なんだけどさぁ。いやでも、いいと思うぜそのギャグ!( *˙ω˙*)و グッ!」

「ぎゃ、ギャグじゃないわよ!何あなた、ふざけてんの!?」

「まぁふざけてるんだけどねぇ。そんな当たり前のことはさておこう」

 

実際妖力をダラダラ漏らしながらの凄みは、そこそこ怖かったが。

まぁ――――別に今回は、戦う必要もないのだ。

武力で押し通る――――それがいつものやり方だが(俺自身がそうしたくてしてるわけじゃないけれど。みんな血気盛んだからね)、平和に行けるなら行くべきだ。

 

「やぁどうも、水橋パルスィさん。突然だが俺は高橋凜という」

「そんなの聞いてない。……というか、なんで私の名前を………」

「あは、さて、なんでかなぁ?俺もよくは知らないね」

「………うさんくさ。ああもう……なんか、どうでも良くなってきた……」

「うさんくさいとは心外だなぁ」

 

そんなことは百も承知である。 あはっ!

 

「まぁそんなことはさておいて、水橋。ちょいと俺の頼みを聞いちゃくれねーかい?」

「………なによ。生憎、初対面の人間の頼みを聞くような、優しい性格はしてないわよ」

「うぷぷ、知ってる知ってる。俺はなーんでも知ってるから知ってるさぁ。その上で言う、この子、連れて帰ってくんない?」

 

腕で抱き抱えてる、黒谷を持ち上げながら言う。

 

「いい加減、抱えてんのも疲れるわけですよ。大体、人間なんて30キロ超えたら重いんだよ」

 

水橋はしばし考え込んだ後、すぐに口を開いた。

 

「……………まぁ、いいわ。それくらいは聞いてあげる」

「ほんと?やったぜ」

「そのかわり。金輪際、私には関わらないで。あなたみたいな人は――――――苦手よ」

 

ゆらゆら漂う、緑色の妖気――――再び向けられる。

どことなく寂しげな気がするのは、俺の思い過ごしなのだろうか。

………ダメだな。勝手に哀れんで、勝手に同情するなんざ、何様のつもりだという話だ。

 

「………………やーだね」

「…………は?」

「なんで君なんかに、俺の行動を縛られなきゃいけないのさ?たとえ君にベタベタついて回ろうが、それは俺の自由ってもんでしょ?」

「………人の迷惑、ってもんがあるでしょう」

「そんなことは知らないなぁ」

「……………やっぱり……嫌いだわ」

 

そう言ってそっぽを向く。

うーん……なんかまずいことでもしたか?

まぁ……『合わない』ってのは、どこにでも存在するか。

水橋は黒谷を引き取ると、そのまま明かりの方へと歩いていった。

俺もついて行った。

 

「………なんでついてくるのかしら?」

「うん?いやだなぁ、そんなつもりはないよ。ただ、偶然俺もこっちに用があるだけさ」

「…………勝手ね」

 

もはや何を言う気もないのか、黒谷をズルズル引きずりながら(意外と乱暴だな)、水橋は歩く。

 

「ねぇねぇ、地底ってどんなとこ?」

「…………」

「アレだよね、思ったより明るい感じするよねぇ。ガヤガヤ騒がしそうな声も聞こえるし。良いよねぇ、君もあんな所に突っ立ってないで、混じってどんちゃん騒ぎした方がいいんじゃない?」

「……………」

「でもあれか、ああいう空気も、君にとっては妬ましかったりするのかな?妬ましいなら、君もそうなればいいと思うけどなぁ。嫉妬って、羨望から来る感情でしょ?」

「……………ねぇ。さっきから、五月蝿いんだけど………?」

 

妖力が水橋の背中から漏れる。

ととと………また怒らせちゃった。

 

「あは、怖いなぁ。しかし、俺は俺の思うまま、したいことを出来る訳で。君にとやかく言われる筋合いはない。あはは、同じことを言わせないで欲しいなぁ」

「…………あなた……いい加減に……ッ!」

 

水橋は後ろに振り返ると、大量の弾幕を展開し始めた。うわ、こりゃ本気だわ……っと!

あは、こりゃ一妖怪の出せる弾幕じゃねーな………他者からの嫉妬の念から集めたエネルギーは、一個人としての力よりも大きく上のようである。

 

「でもまぁ……こんなもんか」

「………っ!?」

「適応流守の型―――――神手(カミノテ)

 

腰に提げた鉄扇を両手で2本もち、広げて交差させる。そしてそれを強化する。

強化された風は、まるで大きな手で挟まれるかのごとく、弾幕を中央で破裂させていく。破裂は更なる破裂を呼び、豪風がみしみしと、周囲の壁を軋ませる。

 

「あは、結局こーいうことになるんだよなぁ。ったく、ワンパターンなことで」

 

爆風をスキルで消し去ると、俺はニヤニヤと笑いながら、先程までの爆音が嘘のような静けさの洞窟を歩く。

…………こんな人里近くで、こんな目立つことやって、ミスったかもな?とかなんだの考えながら。

 

「(何なの……この人間……っ!?)」

 

呆然とする水橋。後ろから足音がならなくなったので、俺は振り返って言った。

 

「おーい、なにしてるのー?早くしなくちゃ、置いてっちゃうよー?あは、君にとってはそっちの方がいいか?あはははっ!」

「…っ!ああもう……本当になんなの……っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

side other

 

ということで、急な視点変更にびっくりしているところだろう読者諸君の皆様、どうも、俺です。

誰かって?

まぁ誰でもいんじゃないかな。

 

閑話休題。

 

あんなことがあった後で、変わらずペラペラと喋りかけてくる凜に対し、パルスィはその真意を掴みかねていた。

 

「(明らかに普通の人間じゃない――――なら、こいつは何者なの?)」

「うっは、すっごいなパルスィちゃん。街中屋台みたいじゃない?こーゆう雰囲気好きだなぁ」

「(なんか、より馴れ馴れしくなってるし―――誰がパルスィちゃんよ)」

「しっかし、まずはその、怨霊を管理してるとこ?を探さなきゃいけないんだよね?」

 

凜がブレスレットに尋ねると、そこから返事が返される。それもやや、パルスィの疑念を増幅させた。

 

「まぁね。地霊殿、という名前らしいわ」

「ふぅん?ちれーでん、ちれーでんね」

「(ほんとに何なのよこいつは―――妙なマジックアイテムを持ってるし)」

 

パルスィはそんなふうに考えたが、考えた結果、気にする必要も無いことに気づいた。

なし崩し的に共に進んでいたが、そもそも行動を共にする必要もなかったのだ。

 

「(なんだ―――――考えて損したわ)」

「まぁ、地底は荒くれ者が多いから、気をつけた方がいいわよ凜―――――って、あら?」

 

スキマの向こう側で、紫は困惑する。スキマを通した先で、がははと大仰に笑う声が聞こえ始めたのだ。

しかもそれは、どんどんと大きくなる。

それと同時に、凜の姿が近くにないことを、パルスィも気づく。

 

「………?」

 

不審に思い、周囲を見渡すと――――――大勢の鬼が笑い合う屋台の中に突撃する、凜の姿が。

 

「すいませーん、ちれーでん、って知ってますかー?」

 

「「…………」」

「「何をやってるのあなたは――――ッ!?」」

 

あまりの行動に、二人は驚愕する。

鬼たちがひしめく屋台の中に、突っ込む人間がどこにいると思うのか。まぁここにいたわけだが。

突然の闖入者に、鬼たちは酒を飲む手を止めずに応対する。

パルスィと紫は、その様子を固唾を飲んで見守る(聞き守る?)。

 

「あん?どこのボウズだぁ?」

「つーかこいつ、人間じゃねぇか?」

「うぉ、マジだっ!こいつ人間だぞ!」

「ガハハ、久しぶりに人間なんかみたぞ!ほれほれボウズ、ここは人間には刺激が強すぎるから帰りな〜?」

「ちげぇねぇ!がははははは!!」

 

鬼たちは凜が人間だと分かると、高らかに笑い始めた。こんな所に人間が入り込むなど、そうそうない。酔ひ飽きた鬼たちにこれほど面白いこともない。

しかし―――――それがタダの人間とは、限らないわけだが。

 

「いやぁ、そんなわけにもいかなくてですねぇ。というか、話を曲げないでいただきたいですね。ちれーでんってのがどこにあるのか、お聞きしたいわけです」

 

地霊殿、という単語を聞き、鬼たちは怪訝そうにまゆをひそめる。

 

「地霊殿ぅ?ボウズ、んなとこに何の用だ?」

「やめときなやめときな!あそこには、嫌われもんの俺らの中でも、さらに嫌われもんがうじゃうじゃいるぞ?」

「へぇ、なるほど。しかし鬼いさん方、俺は俺でどうしてもそこに行かなきゃいけなくてですねぇ。良ければその場所を教えてくれませんかね?」

 

どうにも何かあることを察したのか、鬼たちは神妙な顔つきをする。

しかしお互いを見渡すと、ニヤニヤと笑いだした。

まるで――――――面白そうなおもちゃを見る子供のように。

 

「まぁ、俺らも鬼だが鬼じゃねぇ。それくらいの人情はあらぁ」

「おお、マジですか。やりぃ」

 

どうにか穏便に済みそうで、紫とパルスィは安堵する。

 

「(って………なんで私があんな奴の心配してんだか。…………あほらしい)」

「ただし。俺と戦って勝ったら、な?」

「(―――――ッ!?)」

 

鬼の申し出に、パルスィは驚愕する。

流石にこれは断るだろう。得体の知れないヤツだが――――鬼に勝てるわけがないのだから。

 

「はぁ。そんなんでいいんです?なら構いませんけど」

 

パルスィの思惑を外し、凜はそれを受ける。

それがまたパルスィを驚愕させ、鬼たちは目を丸くした。

 

「………ぷっ!威勢のいい人間だなぁ!割とそういうのは嫌いじゃねぇ。今の世の中にも、こんな人間がいるもんだ」

 

あまりの無鉄砲さに、パルスィは我慢出来なくなり、その屋台の中に突撃する。

 

「何考えてんのあなたは!死にたいの!?」

「あら、パルスィちゃん」

「なんだボウズ、てめぇオンナ連れか?ぎゃはは、無鉄砲な彼氏持つと、女は大変だな」

 

鬼がそんな風に茶化すが、パルスィの耳には届いていなかった。

凜は突然のパルスィの闖入に驚いたが、すぐにニヤリと笑う。

 

「なんだいパルスィちゃん、心配してくれてんのかな?あは、人がいいねぇ」

「そんなんじゃない。………別にあなたが死のうがどうでもいいわ。ただ………明日の夢見が悪くなりそうでイヤなだけ」

「あは。なるほどね。そいつは大問題だねぇ。でも、夢見の心配は不要だと思うなぁ」

 

引き止めるパルスィを意にも介さず、凜はゆらゆらと笑っている。

 

「ということなんで、始めましょっか。まぁ―――すぐ終わるさ」

 

 

 

 

 

なにやら面白そうなことをやろうとしているぞ、と、鬼と凜を野次馬が囲う。

その種類は様々―――共通するのは、全て嫌われ者の妖怪だという点のみ。

 

「言っとくが―――――俺ァ、地上の連中がするような、なまっちょろい決闘なんざにゃぁ疎くてな。――――――まぁ、殺さない程度にはしてやるよ」

「構いませんがね。スペルカードなんか、お遊び程度のものですから――――――っと、そういや聞いてなかったな。紫、いい?」

 

凜は最後に思い出したのか、ブレスレットに向けて呟くようにそう言った。

 

「はぁ………好きになさい。加減しなさいよ?」

「あは、わかってるって。角砂糖十個投入して、練乳を牛さん1頭分流し込んだマックスコーヒーのごとく甘々にしてやんよ」

「どっかで聞いたようなセリフね。それほとんど練乳じゃない?」

「誰と話してんだ?今更怖気付いたとか、冷めることは言わねぇでくれよ?」

「うん?あぁはい、やりましょうか」

 

腰に提げた鉄扇を両手で1個ずつ持ち、ぶらんと自然体。

そして判断能力を天狗並みに。

凜は準備を完了させる。

 

「さぁ、いつでもどうぞ」

 

構えを取らない凜を訝しみつつも、鬼は下段から左ボディブローを放った。

轟、と空気が震える。十全な構えから放たれる一撃は、並大抵の速さではない。

常人なら、全く反応できずに風穴を開けられるほどの、一撃だ。

 

「よっ」

 

しかし、凜はいとも簡単にそれに応える。

当たる直前で体を横にずらし、鬼の手の甲を鉄扇で叩きつける。

同時に、かわされたことで僅かに浮き気味になった片足を蹴りつける。

想定外の衝撃に、鬼は簡単に態勢を崩した。

 

「げは………っ!?」

「あは、まぁ俺も暇じゃないんで。さっさと教えてもらいたいんだよねぇ、だから」

 

凜はニヤァ、と笑うと、自らの霊力を押さえ込むことをやめ、ダダ漏れにする。

しかし、それも一瞬のみ。一瞬だけダダ漏れにした霊力を最大限に引き出し、足に集中させ、浮いた鬼の上半身を蹴り上げる。

鬼はその屈強な体を、思い切り吹き飛ばされる。

しばらくすると、鬼の体が空から落ちてきた。体は起き上がらない。

 

「あは、あはははは!噛ませ犬ご苦労、まぁ賢明なる読者諸君は、絶対に読めていただろうけどねぇ」

 

あまりの瞬殺に、周囲がどよめきたつ。

なんだあの人間は、本当に人間か!?

あの鬼が瞬殺だぞ……ただもんじゃねぇ!

 

「あー、目立ちすぎた気が………あのぅ、さっさと教えてくださいませんかー?」

 

凜は鬼に近づき、ゆさゆさと体を振る。

起きない。

 

「ええ……まじぃ……?鬼化も天狗化も吸血鬼化もしてないのになぁ」

 

そう、アレでもかなりの手加減を加えている。凜という男は、強さの次元がどっかにぶっ飛んでいる男なのだ。

こいつが戦ってるところほど、展開のわかりやすいことは無い。

 

「スキルで起こす……ってのも、なんか因縁つけられそうだしなぁ。困った困った」

「お困り?なら、助けてあげようか」

「へ―――――って、((^ω^≡^ω<ギャアアアアアアア!?」

 

鬼の側にかがみ込んでいた凜に、突如囁くような声が響く。なんだろうかと思う暇もなく凜は抱き抱えられ、そのままどこかへと連れ去られた。

ざわざわと騒がしくなるギャラリーの中で、パルスィは思う。

 

「(アイツは――――確か、鬼の中でも最上位の――――)」

 

凜を連れ去った者の正体に察しがつき、パルスィは少し、凜の行く末が気になった。

 

「(まぁ、私には関係ない―――わよ、ね?)」

 

そう思いつつも、どこか腑に落ちない念を感じるパルスィだった。

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