東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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大変!申し訳!ございません!!!_| ̄|○
新年、あけましておめでとうございます!新年早々、去年の話をしますがご了承下さい!
去年、全くと言っていいほど執筆しておりませんでした。しかも、なんの連絡もなく。
これも全て、自分の不貞の成すところだと思います。本当に、申し訳ありませんでした!
これからは、なるべく定期的に上げられるように精進しますので、よろしければこれからもご愛顧願います!


41話『なんか癪じゃん?』

先日の空ちゃんの1件の翌日。

紫によると、間欠泉から溢れ出ていた怨霊たちは姿を消したそうである。

一応これで、俺の守護者としての仕事はカタが付いたことにはなる―――――が。

そもそもの真相、何故神奈子様が空ちゃんにあんなけったいな力を与えたのかは謎のまま――――――紫はそこまで調べろとは言わないだろうが、気にはなる。

なんだかんだ神奈子様は軍神で、長生き勢である。なんの意味もなくこんな大事をするはずもない。

何かしらの理由はあるはず。

 

今回の一件、危険度としてはそこまで低くはない。何せ怨霊である。人妖問わずに害毒なはた迷惑な存在だ。実際は燐のせいなのだが、その原因となった人達にもある程度の責任はある。

 

ということで今現在俺は、守矢神社へと向かっている。もう何回この説明をしたのか分からないほどしたが、からかってくる妖精達を弾幕で驚かしながら進む。

神社に着くまでの道がこんなじゃあ、人間の信仰なんて得られたもんじゃないよなぁ。

まぁそれは博麗神社も似たようなものだが。

もっと安全に参拝する方法があれば、もう少し現状も良くなると思うんだがな。

 

「それにしても、今年もそろそろ終わりか」

 

幻想郷の年明けは静かだ。

別にテレビがある訳でもなし。大晦日だろうが関係なしにそこら中で弾幕ごっこは行われているし、博麗神社の生活も大して変わらない。神社なのに。

霊夢とぼんやり過ごすだけが年明け。

それが長いこと過ごしてきて思う幻想郷の年明けのイメージだ。

なんか味気ない感もあるがな。ただ落ち着いた年明けってのも乙なものだ。

まるで熟年夫婦かってくらい喋らないが。

何年も一緒に過ごしてたらそうなるよね。

 

「それもまぁ、仲良しきよしでいい事だよね」

 

そうだねぇ。

偶には年末に集まって、みんなでパーティとかどうだろう?紅魔館か白玉楼で。

元日は神社に集まって、幻想郷流の初詣というのもいいかもしれない。守矢とモメそうだけど、別に場所はどっちでもいい。

うん、なんか楽しそうに見えてきた。

なんか最近スペルカードばっかりしてるし、偶にはほんわか遊びたいもんです。

 

「まぁ、予定は未定だけれどね………」

 

さて、そんなこんなで守谷神社へとたどり着いていた。相も変わらずバカでかい神社だ。

境内の中に這入ると、どうやら掃除をしていたらしい東風谷がこちらに気づいた。

 

「あら、高橋くん……どうかしたの?こんな朝早くに」

 

ちなみに今は朝の6時。

普通に迷惑な時間帯である。普通なら寝てるか飯食ってるかという時間だ。

しかし俺と霊夢の朝ごはんは朝5時なので適正時間である。老夫婦だからしゃーない。

 

「んー。ちょっと用事。悪いんだけどさ、東風谷。神奈子様呼んできてくんない?いなかったら諏訪子様でいいよ」

「んん?まぁ、構わないけれど……お2人に用事があるの?」

「……………うーん。まぁ、そーだね。結構大事な用というか………簡潔に言うとね、東風谷。俺は守護者として来てるってことだぁね」

「……………。何か悪いことでもしたのかしら?」

 

東風谷は少し怪訝そうな顔をした後、本殿へとくるりと踵を返して向かった。

どうやら東風谷は、何も知らないようだ。

俺だって曲がりなりにも管理側の一員。

俺が守護者として来ていると知れば、顔に出るはずだ。なにか悪いことをしてれば、な。

東風谷にはそんな様子は見受けられなかった。演技なのかもしれないが、それならそれで問題は無い。大したもんだと思うだけだ。

ひとまず、今は東風谷を待つとしよう。

 

 

 

………………………………青年祈祷中。。。。。

 

 

 

「お久しぶり、凜くん」

 

暫し待っていると、件の人八坂神奈子様が現れた。最近会っていなかったが、大してルックスに変化は無かった。相も変わらずの美人。まぁ、神だし当たり前である。

神というのは、決して外観を変えることはない。見るものによっては般若にも仏にも姿を変えるが、それは視る者の精神の変化であり、神の変化ではない。

とは、霊夢や霖之助の談。

ハッキリ言ってさっぱりだ。そういう設定なのだと割り切る事にしている。

 

「お久しぶりです、神奈子様。ご健勝そうで何よりですよ」

「ありがとう。貴方こそ、息災だったかしら?」

「あは。まぁまぁですかね」

「それで。今日は何の用かしら?紫の使いかなにか?」

「いえいえ、紫はあまり関係ありません。あくまで個人的な話ですよ」

「ふむ?珍しいのね、貴方がわざわざ来るなんて、紫の命令かなにかくらいだと思っていたのだけど」

「あは。まぁ間違っちゃ無いですけれど。地霊殿………って言えば、少しは分かります?」

「あぁ…………ふぅん。貴方も核融合エネルギーに興味があるの?」

「えっと、興味があるというか。どっちかというと咎めに来たのですが―――――核融合エネルギー?」

 

神奈子様は得意げな顔をして、説明を始めた。

 

「核融合エネルギー自体は知ってるわよね?」

「まぁ、流石に」

 

詳しくは知らないけれど。

原子核に熱や衝撃を伴いながら接触することで、大量のエネルギーを生み出すことが出来るという、クリーンエネルギーの一種だ。

 

「なら話は早いわ。灼熱地獄跡、見たでしょう?」

「ええまぁ……空ちゃんのせいで、物凄い暑かったです。普通なら脱水起こして死にますよありゃあ………って、まさか」

 

俺が何かに気づいたように眉を顰めると、神奈子様はより一層自慢げに胸を張った。

ぼいん。

 

「そう、多分考えているとおりよ。彼女と旧灼熱地獄跡の熱を活かした、核融合炉の実現。幻想郷の不安定な電力を安定供給しようって計画よ」

 

つまるところこの神は、熱核融合に必要な熱源に空ちゃんを利用しようってことらしい。

そうやって齎されるエネルギーを幻想郷のエネルギー源にすると。

確かに、核融合は莫大なエネルギーを得られる。核と聞くとすぐ原子力発電所のような発電方法かと思ってしまうものだが、全くの別物だ。

前者は核融合反応――――核と物質の融合反応であるに対し、後者は核分裂反応、原子核の分裂による反応だからだ。

 

まぁ、あまり詳しいことは知らないが。

そもそも幻想入りした時、俺は高二だぞ。

興味の無いことにはとことん興味ない俺がこんなつまんなさそうな事をわざわざ調べると思うてか。

………………しかしまぁ別物とはいえ。

何かしらのリスクがありそうなものだが。

 

「あなたなりのアプローチなのは理解できます。が。そういった事は紫か、少なくとも俺に話してくださいね。異変扱いですよコレ」

「言っても許可くれないと思って」

「子供ですか。まぁ、怪しいとこでしょうけど……。核融合反応にリスクはないんですか?核融合炉が実用された場所なんて、寡聞にして知りません。つまりそこには何かしらの問題があるはずでしょう」

 

そんな俺の懸念を聞いて、神奈子様は更に一層胸を張る。

ぽよよん。

 

「確かに、外では核融合炉の実用はなされていないわ。特に熱核融合なんて非効率的なもの、見向きもされないのが現状。更にその熱を発生させるための燃料は、どれもこれも危険性だらけ。手ぇ出すメリット皆無って感じね」

「ふむ、まぁ妥当ですね。核分裂の方が安易に利用できますから。アレもリスク的には厳しいもんがありますけど……」

 

しかし待て。

原子核と融合させる際に必要なエネルギーが膨大すぎて熱を用意するのがリスキーだというのが、問題点だと。

神奈子様の言う事を平たく言うのであればそういう事だ。

しかし、熱源を空ちゃんに置き換えて考えてみれば。

そこにリスクは存在しない、のでは?

つまり―――――幻想郷において。

核融合炉は実現可能―――――――少なくとも、理論上は。

なの、か?

 

「何となく仰ってることは理解しましたが。そもそもの話です――――」

 

そう、そもそもの話だ。これまで空ちゃんの熱を当たり前のように利用する話をしてきたわけだが……。

確かに灼熱地獄跡とはいえ、あの熱量は異常だった。あの炎の中なら、核融合反応を起こせる公算は高い。

しかし問題はそうでなく。

 

「その熱は、何によるものなのかということ。謎の物体Xに頼るわけにはいかないですからね」

 

何にせよ、分からないものを使うわけにはいかないだろうということである。

特に神力なんてもんは得体の知れない。

神奈子様は先程から、彼女の熱を利用する話しかしていない。

つまりそこには、やましい事があるのではないか……と。思わないこともないのだが。

さぁ神奈子様はどう返してくる…………?

 

「あぁ………何かと思ったら。そうね、そこの説明はまだだったかしら」

 

想像していたよりもずっと余裕だ。もしかしたら、本当に良い話なのかもしれない。

確かに幻想郷の電力は非常にか細いラインで、いつ切れてもおかしくないのが現状。

大きなダムもないのに、水力発電のみに依存しているからなのだが………しかし風力や火力を導入できるほどの大きな施設も作れなかったりするのだ。原子力も言わずもがな。

 

八咫烏(ヤタガラス)って、聞いたことある?」

「八咫烏…………ですか。一応名前だけなら……」

 

あまり記憶にないけれど……。

なんだっただろう……足が3つあるとかそんな感じのどーでもいい特徴があったような気がする烏じゃなかったかな。

うん、非常にどうでもいい。

3本あったからって何になると言うのだ。日本人はなんでも多ければ神性を持つと思ってる気がする。猫叉だって高々尻尾が二本あるだけの猫じゃないか。

とか、それこそどうでもいいことを思った。

 

「私達、ヤマトの神々に属する神鳥でね。昔っから、私に命令されては炊事の準備を。建御雷のヤツに使われては内乱の鎮圧へ。よく働くヤツだった…………うんうん」

 

聞く限り、タダの使いっ走りなように聞こえるが………。

というか、建御雷とか言ったか。

確か建御名方神と建御雷は、大喧嘩の大立ち回りをしたはず…………仲良さそうな感じが口調から少し出てる。

まぁ、今回の本筋とは逸れるから聞くことはしないが…………今度神奈子様とお話する時は聞いてみようか。

神話の裏側なんて、字面からして面白そうなものに興味を惹かれない俺でもないし。

 

「はぁ、なるほど………。まぁ平たく言えば雑用係って事ですね」

「そう、まさに雑用よ。もはや下僕ね」

「威厳もへったくれも無いですが。神鳥がそれでいいのかと思いますけれど」

「まぁ、人間だってさぁ。部長だって偉いはずなのに、社長とかには顎で使われてるじゃない?そんな感じ」

「あぁ、なるほど………実に分かりやすい」

 

どうにも夢がないけれど。流石は外出身、実に現実的なお話をする。

非常に耳に痛いお話だ。

ま、俺にはまッッッッッたく!

関係ないけどねぇ。

まぁ画面の前の皆様には身にしみるお話かもしれないけれど。社会人の皆々様がこんなアホみたいな小説読んでるかは微妙だけれど。

 

最近あのバカが全く書かないから俺が暇なんだよねぇ。あまりの書かなさに、どんなにメタ発言をしても、ツッコミを入れることが出来ないのだ。

わはは。今この瞬間、俺は無敵だぜ!

 

「神様〜〜〜………ぱんちっ!」

「何故にっっ!?」

 

やせいのかなこさまが しょうぶを しかけてきた!(強制)

→にげる

しかししゅごしゃはまわりこまれてしまった!

 

「知らなかったのかしら?神様からは逃げられないのよ(*`ω´*)ドヤッ」

「…………いや、まずは急に殴りかかってきた弁明からしてくれませんかね」

「まぁ、なんとなく。神様的な直感?」

「なんですかその信用出来ない感じのモノ」

「神様ってそんなもんじゃない?」

 

これはまた自虐的なことを仰る。そんなんだから外の世界に貴方はいられなくなったのではないのか?

まぁなんでもいいのだが、その下僕様がどうしたと言うのだろう。

 

「そいつはねぇ、基本的には天照の奴の神鳥なわけ。太陽神の下僕、つまりはその神力もそれに類するものである――――のは分かるわよね?」

「天照………えぇ、まぁ」

 

嫌な名前を聞いたなぁ…………って、程でもないけれど。少し懐かしい名前だとは思う。

太陽神。日本の神々を統べていた、あの唯一にして無二の神――――――――――――

テラちゃんの神力、と言えば本質を見透すあの力が記憶に新しくはあるけれど――――それはあくまでも副次的な効果のはずだ。

おそらく、熱や光に関するような神力。

その力に類するものを、八咫烏という神鳥が持っているとするならば――――――――

 

「つまりテラちゃんと同じような、熱を操る類の力を、その八咫烏は持っている―――と?そう仰るわけですか」

「その通り!いやぁ君って、適度に頭良くて助かるわねぇ。ふふ、こういうやり取りって楽しくて素敵よね」

「あは、それは重畳でございますけれど」

「じゃあついでにクイズ。その八咫烏は、今回の一件にどう関係していると思う?」

 

どう関係して、と来たか。

まぁもちろん神奈子様の事だ。昔話がしたくて八咫烏の話を持ち込んだ訳じゃないだろう。つまり彼女が与えた神力に、八咫烏という神鳥は関係しているはずだ。

しかし、昔テラちゃんは言った――――――能力というものは固有であり、貸与することなど出来ない、と。それは神力に関しても同様の事が言えると連想できる。

 

つまり神力の貸与は不可なのだと。

そう考えるのは当然ではある。

そうなるとそもそもおかしいわけで。だから最初空ちゃんが神力を与えられたと言ったとき、わずかばかりの不信感は抱いていたのだが――――――――――――いや。

ならば、発想の転換だ。

与えられたのではなく、そもそも空ちゃんが『行使していた』ので無かったとしたら―――――――?

 

「まさか―――――神奈子様」

「うふ―――――なにか分かった風ね。ま、頭のいいあなたの事だし、多分想像通り」

「いや―――――突拍子もない事ですけどね。与えたのではないとすれば、もはやそれしかないかと」

「あはは!あなたは見かけよりもずっと、小知恵が回るわよねぇ。そう、与えた訳ではない。ただ私はね」

 

神奈子様は楽しそうに微笑む。

少し茶目っ気のある、見目麗しい外見にはそぐわない笑みだった。しかし意外と似合うもので、少しドキリとさせられる。

 

「便利な下っ端を、あのおバカな地獄烏に植え付けただけよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転符「地霊殿前」」

 

数刻後。

神奈子様や東風谷に断りを入れてから、俺は再度地霊殿を訪れていた。

一応言っておくが、転移を使ったのはものぐさだからではない。

あれだけ派手な大立ち回りを繰り広げてしまった以上、あまり不用意に地底街を歩き回るわけにはいかないからだ。

 

…………そう言えば、パルスィちゃんは元気だろうか。色々と唐突な別れだったので、いつかは詫びにでも行きたいものだ。

あの子はアレかもしれないね、人と関わることを捨てすぎたのかもしれないね。

それじゃあダメだよなぁ。世界なんてもんは、人との繋がりを前提として成り立ってるんだし。あは、ちょいとイイコト言ったか?

………まぁ正直な話、幻想郷では出来ないこともないっちゃないのだが。閉鎖社会の怖いところである。

 

「古明地ー!あっそびーましょー!」

 

とりあえず、地霊殿に向かって叫んでみた。

しばらくの間待っていると、慌ただしい声が地霊殿中から聞こえてきた。

…………何をしているのだろう?

部屋の片付けとかいう、彼女が家に来た時みたいな事をしているのだろうか。

まぁ待つのは慣れているのでいいのだけれど。

 

「ねぇお兄さん、そこでなにしてるの?」

「はぁ〜、それにしても暇ねぇ………」

「んん?あぁ……能力切ってなかったか。聞こえる?」

 

突如、聞こえる?との声が聞こえた。

それと同時に、少女の微笑が目の前に現れる。

ゼロ距離に。

 

「うっひゃいっ!?」

 

流石の俺と言えど、驚かずには居られない。

即座に後ずさり、少女の顔から身体を離す。

しかし、少女はこちらを追従するように顔を近づけ、俺の瞳を見つめてくる。

なんだ、この女は――――――――いや。

微かに覚えもある。

 

黒の帽子、緑がかった白のゴリータファッション、翠色の瞳―――――そして何よりも。

その左胸前に漂う、『きつく閉じられた』第3の眼(サードアイ)

 

「古明地こいし―――――?」

「あら?私の事をご存知?」

 

しまった、つい―――――心の声が漏れた。

まぁ、やったもんは仕方がないけれど。

 

「取り敢えず、離れてくれない?この俺の美顔を見つめていたい気持ちは非常に理解できるが、心臓に悪いもんでね」

「うん?別に、あなたに見とれてた訳じゃないんだけど」

「………いやまぁ、分かってるけど。別に本気で言ってるわけじゃないんだから反応しないで欲しいなぁ」

「あぁ、冗談?笑えないね」

「あは、随分と辛辣な娘だなぁ」

 

ふむ、こんなにも冷静なキャラだっただろうか、古明地こいしというのは。

確かに、二次創作というのは当てにならないものではあるけれど――――東方project本編ではこんな感じだったのだろうか?

1層、このゲームに触れておかなかったのが悔やまれるが――――まぁ、今更元の世界に戻る事も出来ないしなぁ。

面白くなるとも思えないことだし。

 

「で、古明地こいしさん。何の用なのかな?一応俺は、そこの建物に用がある者なんだけど」

「うん?あぁ……ぼーっと突っ立ってたからさ。何やってんのかと思って」

「ふぅん?ちょっと待ってほしそうな感じしたから待ってるだけなんだけど」

「あぁ、そうなんだ。お姉ちゃんに用なの?」

「うんまぁ、間接的にはね。どっちかと言うとそのペットに用があるんだけど」

「ペット?お燐かしら」

「ううん、空ちゃんの方」

「うつほ?あぁ………お空か。誰かと思ったよ」

「いや、自分ちのペットの名前くらい覚えておこうぜ」

「なるほどねぇ………うん、大体わかったかな」

 

古明地こいしは含みのある笑みを浮かべると、俺の顔からようやく離れていった。

ふぅ………やっぱり、幻想郷の女の子は心臓に悪いなぁ。俺じゃなかったら惚れてるぜ。

ふっ、俺をなめるなよォォォン?

なんちゃって。

品のない言葉使ってごめんね?最近外ではこういう物言いが流行ってるって言うじゃん?

 

「ありがと、お兄さん。また会えたらいいね」

「いや、礼を言うことでも―――――って」

 

古明地こいしはこちらに礼を言うと、瞬き一つの間にどこかへと消えていってしまった。

俺の動体視力で見えない程の―――――まぁ人間レベルのものでしかないけど―――――速度を出せるスペックがあるようには見えなかったのだけど。

 

「何らかの能力――――かな」

 

無意識を操る能力―――――だったか?

そろそろ原作知識も曖昧になってきた所だ。

一応メモには取ってあるので、別に構わないのだけれど。

無意識と聞くと、かなり強力な能力のように思うのだけれど――――個人的無意識を全て操れると考えてみると、個人のスキルとしては強すぎるとも思う。まだそれだけならいいのだが。

 

集合的無意識という言葉がある。

人は無意識の深層に、皆同じような考え方、思想を持っている――――とか、とても簡単に言えばそういう事だ。

カール・グスタフ・ユングの提唱したこの説だが、本当にその集合的無意識が存在するとは証明されてはいない。

しかし、もしそれが存在し、彼女がそれを操れるとしたら。

俺に並ぶ程度には、強力な能力だとも言える。

 

「しかし、だとしたら紫が放っておく訳がないんだよね」

 

それを疑うほど、俺は紫を信頼していない訳ではない。だから俺の心配する必要は全くないのである。

まぁサトリ妖怪1人の妖力で出来ることなんてたかが知れてる。強力な能力を持つものほど、実力があまり高くないというのは幻想郷においてはよくある事だ。

 

レイちゃん(久々すぎて誰か分かんないかな?鈴仙のことね)がいい例である。

波長を操る彼女の能力は、それだけ見ればバカみたいに強力な力だ。波長というのはどこにでも存在するものなので、それを操るというのは世界を操るのと同義。

なのだが………本人の妖力がそこまでのため、やはり危険度は高くない。紫だって似たようなものではあるが、あいつは大妖怪が故になかなか頭の悪い行動も取れたりする。

まぁ、どこかでもしたような説明だけれど。

 

「お待たせしました。さぁ、どうぞ」

 

少し思案している内に、準備が整ったらしい古明地が地霊殿から姿を見せた。

何故かいつもより薄着だ。夏ではないのにキャミソールめいた生地の薄いドレスで着飾っている。口元は口紅のようなもので赤色に色づいている。

うん、凄く可愛い。

しかし何故そうなった?

 

「どうしたの、古明地。そんなにキャピキャピして………イメチェン?」

「え?いえ、家で男の人を迎えるコーデはこれだ!って外の本で読んだのですが…………何か変でしたか?」

「いや、うん………変じゃないけどさ……」

 

ただその格好は、どっちかというと恋人を迎える感じの服装だと思う…………。

考えが伝わったのか、古明地は顔を真っ赤に染めて俯いてしまった。あぁ、そういやこの子そういう面倒なもん抱えてたわ………。

まぁ、可愛いから良いんじゃない?

似合ってるよ、うん。

 

「あ………ありがとうございます……」

「うん、まぁ取り敢えず上げてくれる?」

「はい、分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日ぶりの地霊殿は、やはりステンドグラスの鮮やかな光で満たされていた。

しかし昨日と違う点としては、まだ地底街が動いていないのか、騒がしげな声が外から入っていないという点だろうか。

まぁ大差は無いのだが……………少しは地霊殿の静けさも目立たなくなるというものである。

今は午前10時頃。ぼちぼち動き出しているようで、ペットらしき動物らが往来している。

その中には旧知の姿も。

真っ黒なドレスに赤髪、そして猫耳の生えた頭。

火焔猫燐は俺たちの姿を見かけると、とたとたとこちらに歩み寄ってきた。

 

「あ、凜!おはようございます」

「燐。おはよう」

「はい!あなたの名前はー?」

「りん!君の名前はー?」

「りん!」

「「(b ・ω・ d)イェァ!」」(*^o^)/\(^-^*)!

 

燐とハイタッチを交わした。

うん、今日も俺と燐のコンビネーションは抜群だな!

 

「いや、唐突過ぎませんか!?」

「「あ、古明地(さとり様)。いたんだ(いたんですね)」」

「………もう、なんか………良いですよ、もう。あなた方はそれで…………」

 

どうやら古明地は諦めたらしい。

残念、ツッコミ役がダウンしてしまった。

まぁ、こういう学生みたいなノリは嫌いではない。俺だって花の男子高校生(本来は)なんだしねぇ。永遠の18歳なのである。

 

「所で、凜。今日は何の用で?怨霊管理はちゃんとこなしていますよ?」

「うん、それは分かってる。でも今日は別件でねぇ」

 

俺は燐と古明地に、神奈子様とのやり取りを簡単に説明する。

ふたりは得心いったような表情を浮かべた。

 

「なるほど、八咫烏………ですか」

「はぇー、お空にそんな偉い神様が………崇めたらご利益あるかなぁ」

「まぁそんなわけだからさ。空ちゃんに会わせて欲しいんだけど」

「もちろん構いません。こちらです」

 

そう言って古明地は、スタスタと歩き出した。俺はその背中に付いていく。

燐はまだまだ仕事中なので、ここでお別れした。やはり地霊殿もバカでかい建物なので、かなり長いこと歩かされそうだ。

あは、まぁ偶には良いか。

 

 

 

 

 

 

歩くこと十数分。

俺は再び、灼熱地獄跡への扉の前に立っていた。分厚そうな扉だが、ムン、と漂う熱気は隠しきれていないようだ。

古明地は見るからに熱そうな扉をコンコンと叩く。熱くないのだろうか。

そんな事を考えてる間に、古明地が手を擦り始めた。ふーふーと手に息を吹きかけている……。

あ、やっぱり熱かったんだ………そっか……。

 

「お空?入るわよ」

 

口調じゃ誤魔化されんぞ古明地………。

まぁ、良いんだけどさ。

ギィ、と重そうな扉を引いて、俺と古明地は中に入る。開けた瞬間、肌を焦がすような熱風が吹き抜け、頬を撫でる。

あっちぃなあ相変わらず………。

 

「空ちゃーん?居るー?」

 

呼んでみるが、声は広大な空間に吸い込まれるだけで、なんの返事も無かった。

うん?居ると聞いていたのだが………。

 

「わっ!」

「うわぃっ!?」

 

突如、ドアの側から大きな声が聞こえた。

驚いて前につんのめった。振り返ると、そこには満面の笑みの空ちゃんがいた。

 

「うふふー。びっくりした?」

「…………まぁ、びっくりはしたけどさ……。俺大きな音苦手だから勘弁してくれない?」

 

何度も言わせるんじゃないよって。身構える暇があるならまだしも、急に大音が鳴るのは苦手なんだよ………。まぁ、怒るほどの事でもないけどさ……。

 

「ごめんごめん!許してくれよー」

「別に、怒ってはないけどねぇ。多少は気遣って欲しいっていうかー」

 

まぁ、そんなことは瑣末なことである。

それよりも大事なのは、空ちゃんの中に本当に八咫烏がいるのかどうか――――それだけだ。

俺は簡潔に、空ちゃんに事情を説明する。

なんというか予想通りというか、話の1/4も分かっていないような空ちゃんであった。

しかし、古明地が上手くフォローしてくれ、とりあえずは俺の好きなようにさせてくれるとの事だった。

 

「まぁ、別にいーけど………またえろいことすんなよ?」

「しないわ。バカの裸に興味はない」

「前はひん剥いたくせによく言うぜ」

 

まぁそれも確かなのでとやかく言わないけれど。

さて、どうするかな……好きにしていいと言いつつも、特にどうやって接触を計ろうとは考えてなかったんだよねぇ。

はてさて、どうしたもんか……………。

 

うん、いいこと思いついた。

 

指先に霊力を集中。おにぎりサイズの霊力球を形成する。このままでは精々、当たっても人間1匹殺せやしない。擦過傷が関の山だろう。

さぁ―――――次だ。

 

「事象を理想的にする程度の能力――――――この霊力球の持つエネルギーを、10倍に」

 

俺がそう言った瞬間、指先でふよふよ漂っていた霊力球が、十数倍はあろうかというサイズに膨れ上がる。おお、でけぇでけぇ。

エネルギーはそのままに、サイズのみ能力で縮小する。膨張する。縮小する。膨張。縮小。膨張。縮小―――――――――――

 

「ちょっ、凜さん!?」

「うん?なに?古明地」

「どうするつもりですかそれ!?」

「え?いや、そりゃあ弾幕だからね。撃つんだよ」

「撃つ!!?」

 

いやぁ、何を変なことを言うのかなぁ。そりゃあ撃つでしょ弾幕だし。あ、幕じゃないか。弾だな。

まぁ、ただ単にこれを撃つわけもなく。

ニタァと、嫌味な表情を浮かべる。どうにも、ニヤけが止まらない。最近、悪役も板についてきたらしい。

 

「さぁさぁ、空ちゃんの中の神様?一分以内に出てきなよ。さもなきゃ、うん、とりあえず消し飛ぶことになるよー?」

「消し飛ぶって………まさかお前、それ私に撃とうとしてる……?」

 

空ちゃんがようやく口を開く。空ちゃんの額に、一筋の汗が滴る。地獄鴉である空ちゃんが、今更この元灼熱地獄の熱に耐えられなくなるはずもなく。その汗はいわゆる、冷や汗という奴だろう。

 

「当たり前じゃない。大丈夫、君の中にいる神様が賢明なら何も無いし。最悪死んでも生き返らせたげるからさ☆」

「そーいう問題じゃねぇだろ!何言ってんだお前!」

「あっはっはっは、お前お前言っちゃダメでしょぉ?俺は髙橋凜だ。凜と呼んでくれ」

「どーでもいいわそんなもん!良いから早くその物騒なもんをしまえって!」

「あっははは――――さ、カウントダウンだ」

 

そう言うと俺は―――――ゆっくりと、数字を数え始めた。

 

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