東方理想郷~east of utopia~ 作:ホイル焼き@鮭
カポーン。
昔ながらの銭湯に置いてあるような、木桶が湯船に激突し、乾いた音を立てる。
そんな微妙に日本かぶれらしい紅魔館の風呂はバカみたいに広かった。地下から源泉を引いているらしい大浴場は地下にあり、紅魔館の面積とほぼ同じ大きさを誇っていた。どことなく硫黄の香りが漂う。ヒリヒリと、少し焼け付くような湯温が、今日一日の疲れを身体から奪っていくような心地よさを感じさせてくれる。
これはきっと、本当の意味での『いいお湯』というやつだ。間違いない。
ただまぁ、この風呂に入れることはいいのだが。
流石にこの状況は厳しいものがある。
「うふふー。りぃんさーん?お背中流しますよ〜?ほらほら、早くぅ」
「あーっ!こぁずるーい!私もやるー!」
「うふふ、いいですよー。じゃあ〜、フラン様は前やりましょー?私背中やりますので〜」
どうしてこうなったんだろう。
いや、理由は明白なんだけどね?
時は少しだけ遡り。
俺が降参を宣言してからしばらくし、パーティーが終わった頃合だった。
咲夜に案内してもらった部屋はバカ広く、何故かキングサイズのベッドが置かれていた。
4、5人は寝れそうなベッドの上に寝そべっていると、何とも楽しいような寂しいような、良くわかんない感じを覚える。
そして寝転がっていると、無性に眠気を感じる。
そう言えば、今日は色々とあった。
午前中は俺の人生でも最大級のビッグイベントだったし、午後は午後で普段より濃い日常ではあった。疲労も当然、蓄積している。
眠い。今日はこのまま、寝てしまおうか。
瞼が自然と落ちる。今夜はよく眠れそうだ。
「(あぁ……そういや……なんか、忘れてるような…気が………まぁ、いい、か―――――)」
「よくなーーーーーーい!」バァンッ!!!
「――――――っ!!??」ビックーーーンッッッ!
突如ノックもなしに蹴破られたドア(跡形もなく吹き飛んでいった。どうやって直すんだろう)に、寝落ちかけていた意識が無理矢理覚醒させられる。なんだなんだ!?敵襲か!?
蹴破られて美しい穴が空いた入口からドヤ顔で入り込んできたのは、金髪の吸血鬼。
すなわちフランだった。
「なんだフランか。何の用だね」
「何の用だね?なんてカッコつけてる場合じゃないよお兄様!事態は一刻を争うんだよ!」
「ほほう事態とな。事態とはなんだねフランよ、申してみよ」
「お風呂の時間だよ!」
「はぁ。お風呂か。入ってくりゃあいいんじゃ―――――って、あ」
忘れてた。
そういや俺、風呂入るとか言ってなかったか?
そうだ、どうせ負けるわけないと思って約束したけど、俺って負けるとフランと風呂入らなきゃいけないんじゃん!やっべっぞ!
うわー、何が「目的は達した」だよ!俺って負けちゃいけない理由あったんじゃねぇか!
「あのー、フランさん?ちょっと僕ー、急用を思い出したって言うかー……少し出てこよっかなーって言う――か――!」
フランが急激に迫ってきたことにより、俺の華麗なる言い訳は中断されることになる。
「うふふー。おにいさまー?」
「う……なんだいフラン。そして久々に言うけど俺を兄と呼ぶ年ではお前はないよな」
「私のお兄様はー?約束を破るような人ではー?」ニコニコ
超笑顔のフラン。うむ、これは断ったら死に至るアレだ。………この小説的に大丈夫なのだろうか。児ポ法に抵触したりしないだろうか(真剣な疑問)。
しかし、目の前のフランは本当に楽しそうだ。本気で逃げることはまぁ出来なくはないのだけれど、水を差すのも忍びないなぁとは思うのだ。それにフランの言う通り(兄ではないし私のでもないが)、約束を破るようなことは慎むべきなのだ。
「ないない。分かったよ……入ればいいんだろう、入れば」
「やった!それじゃ行きましょ、お兄様!」
「もー、分かってるって。そんなに急がなくても、風呂は逃げないよ」
「えへへ。それもそうだねー。ぎゅーっ」
フランが俺の腕を取り、すりすりと頬を押し付けてくる。こうしてフランに抱きつかれるのも、本当に久しぶりだ。ココ最近は紅魔館に顔を出すこともなく、博麗神社で霊夢とぼんやりするばかりだったからなぁ……。
ただ、まぁ……。
あんまりくっつかれると、少しばかりドギマギしてしまうのは相変わらずのようだった。
そんな邪な思いを振り払うべく、残された左手でフランの金糸のように細やかな髪を撫でる。
「えへへー。お兄様ったら、最近来てくれないんだもん。わたし、寂しかったんだから」
何故か少しだけご立腹らしい。その甘え方は凡そ俺の知るフランのもので、先程見せた心遣いとは程遠いように思えた。
「(それも一側面、ってやつだよな)」
色んな顔を持つのが、知的生命体の大きな特徴だ。多面性を持つものを、一元的にこうだと語ることは出来ない。どの顔も自分、だ。
ただまぁ……それでも、根っこというものはあるのだけれど。
「はいはい、ごめんよ。少しは来るようにするって」
「むー。せーいが篭ってないよ、せーいが」
「ごめんごめん。ほらほら、君にゃ怒り顔は似合わないよー」
「もう、そんな調子のいいこと言って!そんなんじゃ騙されないんだから!」
「ほほう。とは言っても、俺に出来ることは特にないと思われるが」
「うふふー。じゃあね、お願い聞いてくれたら許してくれなくないよ?」
「お願い?いやまぁ吝かではないが、既に風呂という願いを聞いたばかりな気も」
「今夜はねー。私に付き合ってよ」
「おぉう。言葉だけだとやべぇな。何するんだよ」
「えー?いろいろ!うふふ、帰ってきてのお楽しみね!」
「怖いんだけどー。まぁ、いっか」
どうせフランのことだし、大したことじゃないだろう。そういやトランプとか言ってたっけ?多少のアナログゲームに付き合うくらいは問題ないだろう。
それよりこれからの試練だよなぁ。
果てさて、捕まるような事がなければいいんだけど。
そして冒頭に戻る。
最低限のマナーとして、腰にタオルだけは巻くことにした。フランに剥がされかけた。死守した。これがなければ俺が死ぬ。
風呂場に入ったその瞬間、その場にいたのはフラン、レミリア、こぁさんの3人だった。
全員全裸だった。バカかお前らバカだな!
まだレミリアとフランはいい。幼女は銭湯でも見たことはある。今思えば、なんで男湯に入れたんだろう……女の子なら女湯でいいのでは。片親か?
ただこぁさん、あなたはダメだろう。
見たことある(のが既にヤバい)けれど、ダメだろう。
無言の抗議をこぁさんに示すと、
「うふふー。どうかしましたか、凜さん?えっちぃこと、します?」
誰がするかバカ。
くそ……男を嘲笑いやがって……。そもそも風呂ってなんだ!なんだか男としてなめられてる気がするぞ!いや何もせんけど!何もせんけども!
なるべく見ないように心がけよう……として、ひとまずなみなみと張られた巨大な湯船に浸かった……のが、冒頭のシーンである。
しかし今更ながら気づいた。
恥ずかしさのあまりに誤魔化すように湯船に浸かってしまったが、まずは体を洗うのが先だ。
「うふふー。りぃんさーん?お背中流しますよ〜?ほらほら、早くぅ」
「あーっ!こぁずるーい!私もやるー!」
「うふふ、いいですよー。じゃあ〜、フラン様は前やりましょー?私背中やりますので〜」
何とも怖い作戦会議をたてながら、フランとこぁさんが迫り来る。先に湯船に浸かっていたレミリアに少しだけ期待して、目線で助けを求める。
レミリアは少しだけ考えたあと、ニヤリと笑ってこう答えた。
「早く洗ってらっしゃいな。そんな汚い身体で湯船に浸かっちゃ、お湯が汚れちゃうわ」
くそあいつ分かってて言ってやがる!
しかも正論すぎて反論ができない……!
そんなこんなで、迫り来る魔の手。
「うふふ〜。りんさぁん」
「おにいさまー。観念しなよー」
うぐ……これはどうしようもないやつだ。
これなんてギャルゲだ。ちょっと古い。
仕方ない……見なけりゃいい話だ。幸いにも俺には手段があるのだ。
そう、べらぼうに視力を悪くし、自らの情欲を損なわせるという手段が。
こぁさんとフランに手を引かれて(少し語弊がある。とんでもないことに彼奴ら、素っ裸で腕を組んできやがったのだ。アホか?)、洗い場らしき鏡の前に連れていかれる。
我ながら美しいまでの赤面だった。お湯のせいだと思いたい。
フランは事もあろうに、俺の目の前にでかでかと座り込み、ボディソープらしきものを大量にプッシュし、盛大に泡立てる。その手にはタオルらしきものは握られていない。
「まさかお前、手で洗う気か……!?」
「知らないのお兄様?身体はねー、手で洗った方が綺麗になるんだよ?」
「そんなことは知ってるわ!それ以前に、お前が女で俺が男だっつー事だよ!」
「もー、怒鳴らないでよー。ほらほらー、早く洗わせてよー」
「いやその前に、せめて、せめてタオルを――――ひゃふっ!?」
ぬるん。むにゅ、むにゅ。
フランと言い争っているうちに、突如背中からそんな擬音が鳴り響く。
それと同時に、何やらぬるぬるした、柔らかいものが押し当てられるような感覚を背中が覚えて―――――まさか。まさかこいつ。
「こぁさんっ!?何してんのっ!?」
「えー?言ったじゃないですかぁ。お背中流させていただきますって〜」
「いやそれはいいけど!お前、お前まさか、まさかとは思うがまさか」
「んふふー。気持ちいいですかぁ?私の……」
おっぱい。
そう艶っぽく、こぁさんは囁いた。
バッキャロウ!それはもはやギャルゲですらねぇ!ただのエロゲだ!
だ、だとすればこの、柔らかさの中に点在する、少し固いこの感触は……!
「……ん……ぁ……んんぅ……」
うわダメだ俺!意識するな!意識すれば死ぬぞ!主に下半身的な意味で死ぬぞ!
こぁさんに戸惑っているうちに、今がチャンスとばかりにフランが洗体を開始する。
フランの小さい指が、腕を、胸板を、腹部を、腋を、指先を這う。
普段されることのない洗体を他人にされることは、妙にこそばゆく、妙に心地いい。
いやっ、あっかーん!このままだと、ヤバい。
フランの指は既に、下腹部に達しようとしていた―――――このままじゃまずい。何がまずいかって、全てがまずい。
見なければいいと思っていたが―――甘かった。感触というのは、何よりもの敵だったのだ。
「フラン。それ以上はまずい。やめてくれ、後生だから!」
「えー?ダメだよー。まだ下が綺麗になってないよ?」
「ふふー。凜さん、往生際が悪いですねぇ?フラン様にも、見せてあげればいいじゃないですか、凜さんの……うふふ。そう言えば私も、最近見ていませんねぇ。見ちゃおっかな?」
それはもうギリギリの発言を後ろで放ちながら、こぁさんが背後から抱きついて身を乗り出す。何やってんだこいつ!?
そんなことを言っているあいだに、フランの指がタオルの結び目に手を掛けていて――――するりと、タオルが解かれ―――
「って、流石にそれは無理っ!!!」
そう叫び、タオルが解かれないギリギリのところで洗い場を離脱しようと試みた、次の瞬間。
ツルン。
フランとこぁさんに囲まれ、限られた行動範囲で逃げようとしたためだろう――――無理な体勢からの無理な離脱は、足元を完全に不注意にさせた。
何故かテンプレの如く地面に設置されていた石鹸(なんでボディソープがあるのに石鹸があるんだよ)を思い切り踏んづけ―――――つるりと、半身が浮き上がる。
あ―――――これは―――まずいやつ―――
「凜さんっ!」
そんな間抜けな俺を助けてくれたのは、こぁさんだった。
先程まで胸で洗っていた影響か、膝立ちで座っていたこぁさんはすぐさま立ち上がり、洗い場の方向に向けて倒れ込んだ俺の背中を支えてくれた。
あ―――危なかった。今は何の能力も使っていないから、下手したら大怪我するところだった。
「あ―――ありがとう、こぁさん……」
「もー。急に動くからですよぉ。お風呂場は事故が多いんですからね?次からは――――って、あらあら。これはこれは……うふふふふ」
「お兄様、大丈夫っ?…………あ……」
急に笑い出したこぁさんに、頬を急速に赤らめ、泡が目に入るのも厭わずに手で覆い隠すフラン。
急にどうしたんだろう――――そういやなんか、忘れてるような――――って。
情けなくもこぁさんに支えられた、自分の全身が目に入る。
ぱおーん。
俺のぞうさん(精一杯の表現)が、完全にポロリしてしまっていた。
「うふふー。相変わらず、オイシソウ……食べちゃいたい……♡」
「お、お兄様のって、お兄様のって、あんな風になるんだ……あわわわ」
「………………い」
「い?」
「いやあぁぁぁああああっっっ!!!僕もうお婿いけないーーーーーーーっっっっ!!」
ザッパーン。
幻想郷中に、俺の叫び声が響き渡った―――――後にも先にも、俺がここまで叫んだことはなかったという……。
「うふふー。いやぁ、いいお湯でしたねぇ」
「そうね。今日は特別いいお湯だったわ。見世物が良かったからかしらね?」
「かもしれませんねぇ」
「……………」
「ごくごく………ぷふー。いやぁ、お風呂上がりの牛乳はいいですねぇ」
「そうねぇ。まぁ、私は飲んでも何の意味もないんだけど………ふぅ」
「……………………………」
「もー、まだいじけてるんですー?ほらほらー、凜さんも牛乳飲みましょー?けーきづけにどうぞ〜」
「………うぅ。しくしく。ごくごく。美味い……くそう、今日の牛乳はちょっとしょっぱいぜ………」
「まぁ元気出しなさいな。大丈夫、あなたのぞうさんは立派だったわ。自信を持ちなさい」グッ
「問題はそこじゃないっての!つーかレミリア、お前も見たのかっ!?」
「まぁねぇ。あんだけ綺麗にすっ転べばねぇ」
「…………うふふふへへへへ」
「おー、遂に凜さんが壊れた……おーよしよし。凜さんー、大丈夫ですかー?えっちしますかー?」
「しない………間に合ってる……」
…………しかし。過ぎたことは仕方ないのも確かだ。一生モノのトラウマだが……それはそれでどうしようもない。
はぁ、と一息つく。まぁ何にせよ、いい湯だったのは確かだった。心做しか、少しだけ身体が楽になった気もする。
どうやら温泉を引いているらしいし、なにかの効用があったりするのだろうか?後で咲夜にでも聞いてみよう。
クイ、と袖を引かれる。因みに紅魔館には男物の服はないようだったので、適当ないらない服を作り変えらせてもらった。
袖を引いたのは、先程から大人しいフランだった。
「あの、ね。お兄様」
「ん?」
「その……ね。あんまり、おっきい声では言えないんだけど……ね」
「なんだなんだ、君らしくもない。言いたいことがあるならはっきり言ってよ」
「ありがとう、お兄様。あのね、私初めてだったからよくわかんなかったんだけどね」
初めて?何やらよく分からんことを言い出そうとしているらしい。
フランは顔を真っ赤にしたまま、俺の耳元へ口を寄せる。こぁさんとレミリアが少しだけ怪訝そうだ。
「お兄様の……すごかった……///」
「は?………って!おバカーーーっ!!!」
ボコォッ!
俺の人生史上、最強火力の拳骨がフランを襲った。
急に何を言い出すんだこの495歳は!
「うー!痛い〜!なにするのよー。せっかく意を決して褒めてあげたのにっ!」
「褒めなくていいんだよ褒めなくて!余計惨めになるんだよそれが分かってないなこのアホは〜〜!」アイアンクローッ!
「痛い痛い!もー、お兄様、ひどい!」
「酷いのはお前だーーっ!」
ギャースカギャースカ騒ぎ立てる俺とフランを見て、こぁさんとレミリアは微笑む。
前述の通り騒ぎ立てている俺だったが、それでもその話し声は耳に残った。
「良かったですね、ほんと。フラン様が元気になって」
「……本当。全く、なんというか」
「………感謝しないと、ですね」
「………えぇ」
……………そんなことないんだけど、なぁ。
何かきっと、勘違いをしている。
それは俺のおかげなんかじゃなく、もとよりそうなる運命だった。
それだけの話なのに。
ほんと、参るよな…………。
「………お兄様?」
おっと。また要らない考え事をして、不審がられてるみたいだ。良くない良くない。
「んー?なんだよ、フラン」
「………ううん。何でもない!それよりお兄様、トランプしようよ、トランプ!」
「おっ、やる気かー?俺そういうの、休み時間で鍛えたから超得意だぜー」
「本当?ふふん、負けないんだからっ。お姉様とこぁもやりましょっ?」
「えぇ、いいわよ」
「いいですねぇ。それじゃあ負けたらー、1枚脱ぐことにしましょー?」
「あっ、いいねー!」
「こらこら、年頃なんだからそんな真似しないの」
「お姉様……ダメ?」ウルウル
「う………し、仕方ないわね。うん、フランが言うなら、うん……」
「やったー!じゃあじゃあ、せっかくだからみんなでやりましょっ!私、咲夜と美鈴呼んでくるから、こぁはパチェとタチ、呼んできて!」
「はい〜。分かりましたー」
………うん。
やっぱり俺は、こういうのが好きだ。
目の前のこの光景を、守りたいと思う。
元の世界ではなかった、心から宝物と思えるものを。俺はここで、見つけたんだ。
ただ――――目の前の光景と、自分が相容れないものであることが、どうしても頭から離れないことも、確かだった。
「(いいや……いいじゃないか、今は)」
結論はまだ出さない。どうせ、答えは最後まで出せないのだから。
だったら今くらい、純粋に物事を楽しんでもいいと思うのだ。
「ねぇお兄様っ!行きましょ?」
「……うん。そだね。行こっか、フラン」
やれやれ、疲れてるんだけどなぁ。
ただまぁ……少しは気を抜かないと、ね。
「わはははははははっ!8切りからのー?ジョーカー入り階段革命上がりっ!!」
「あーっ!もうっ、凜ー、余計な爆弾残してかないでよーっ!」
「あっはははは、美鈴、この世は弱肉強食なのだよっ!」
「あ。3で上がりだ」
「私もー」
「ちょっ!あーもー、2残しといたのにー!」
「ちょっと、ダイヤ止めてるの誰!手札殆どダイヤなんですけどっ!」
「………ふふふー」
「……まさか美鈴。貴様……っ!」
「……ふっふっふ。さっきの仕返しだからねー!」
「それはタダの逆恨みではっ!?」
「ダウト」
「えーっ!?お兄様、なんで分かるのっ!まだ手札いっぱいあるじゃんっ」
「いやさぁ、フラン。お前バレバレよ。せめて手番の直前でビクってなるクセは直そうぜ」
「う〜!お兄様の意地悪〜!」
「ふははは、なんとでも言うがいいさ!勝った方が正義なんだよぉ!」シュッ
「凜、それダウト」
「ぅえっ!?な、なぜバレたし……」
「いや、フランを餌にしようとしてるの丸わかりよ?少しはポーカーフェイスを学ぶ事ね」
「……………フラン、俺達は仲間みたいだな」
「………みたいだね………」
「………お兄様。どっちがババ?」
「………フラン。如何に君といえど、これは真剣勝負……敵に塩は、送れないな」
「………もし教えてくれたら。………私が脱いであげてもいいわ」( ・´ー・`)ドヤァ
「……っ!それなら仕方ない…っ!右だっ!」
「よしっ!……まんまと色仕掛けに引っかかったわね、お兄様!………って、あーっ!ババじゃんこっちーっ!」
「わははは!バカめ、俺がその程度の色仕掛けでたじろぐと思うてか!つーか裸ならさっき見ただろ!今更なんになる!」
「もー!絶対、嘘つきなお兄様には負けないんだからねー!」
「すー……すー」
そんなこんなで、バカ騒ぎ(主に俺とフラン)の末のトランプ大会は終わり(ダイジェストでお送り致しました)。
騒ぎすぎたのだろう。フランはいつの間にか、ウトウトとし始め、遂には俺の横で寝てしまっていた。
その場に残っているのは、俺とフラン、そしてフランの髪を優しく撫でているレミリアだけだった。
「……寝ちゃったねぇ」
「そうね」
「……ったく、はしゃぎすぎるからだよ」
「あら、あなたがそれを言うのかしら?」
「……まー、ごもっともだぁねぇ。騒いでたもんね、俺も」
「んー。そういう意味じゃないけど。まぁいいや、あなたが鈍いのはいつもの事よね」
「おいおい、喧嘩売ってるのか?さっきは中途半端なタイミングで終わったからなあ。買ってやってもいいんだぜ?」
「あら。それは魅力的なお誘いね?………でも、今夜はいいわ」
レミリアはふと立ち上がると、俺の方へ向き直る。少し薄めの青い髪が、部屋のベランダからの風でふわりと揺らいだ。
「ねぇ、凜。少し、外に出ない?」
「外に?いいけれど………なんで?」
「うん?特に理由なんてないわよ、ただ」
レミリアはそこで口を噤む。
なんだろう、何か企んでいるのだろうか?
少しだけ逡巡すると、レミリアはニッコリと天使のような笑みを浮かべ、呟くように小さな声で答える。
「少し、あなたと話がしたいと思っただけ。ね、いいでしょう?」
その誘いを断る理由は、俺にはなかった。