東方理想郷~east of utopia~   作:ホイル焼き@鮭

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あけましておめでとうございます!ホイル焼き@鮭です!
昨年も新年1日目に投稿していたので、何となく今日も投稿させていただきます!ふと過去の話を見返してみると、なんというか、こいつ投稿安定してねーなーと常々思います。今年の受験が終わり次第、多少でもペースを上げられたらと思います!これが新年の抱負ですね!
それでは新年も、拙作をよろしくお願いします!


50話『Who is she?She is...』

紅魔館を出て、次の宿を探す。

とは言うものの、行先は既に決まっている。

香霖堂、紅魔館と来て、俺が次に訪れた場所といえば無論八雲家な訳だが、ヤツも霊夢同様、幻想郷で関わりの深い連中の1人だ。

別に他意はないけれど、なるべくなら後にしたいというのが正直な気持ちだ。

あと地味に気まずい。

いや他意ありまくりじゃねぇか。

というわけで、あとはまぁ分かるだろう。

言わずと知れた幻想郷花の名所、白玉楼である。

 

白玉楼という場所に行くのが実は難しいというのは、案外知られていない。

白玉楼は無間に広がる冥界内において、幻想郷とほぼ同座標に存在する庭園である。

冥界は地獄や天界と違い、顕界と言われる、俺達が今現在生きているこの世界の裏側の世界だという。つまりx軸やy軸やz軸、時間軸は顕界とソレを共にしているが、それとはまた別の軸がズレている、というわけだ。

 

まぁ、アレだ。裏世界とか影時間とか、そういう良くある感じの場所とか思えば大体あってる。

 

そしてその異なった別軸、仮にa軸とするが、a軸が顕界と重なる場所がある。

それが幽明結界という、幻想郷の冥界への接続ポイントである。

この結界に上下の差異はないが、左右には差がある。a軸が重なる部分が限定的だからである。ちなみに上空にある。

 

そしてここが入りにくい所以であるのだが、幽明結界を抜ける為には『顕界との接点が緩やかであること』が必要とされる。

 

つまり幽霊やら亡霊の類でなければ、この結界を超えることは出来ないのだ。

しかし、この結界を超えるのに必要なことと言うだけであり、別に冥界全体が生者を拒むわけではない。

俺や紫のように転移を用いることが出来る(俺の場合はともかく、紫はa軸の計算まで出来ることになる。すげぇなアイツ)か、最悪結界をぶっ壊せば入ることは出来る。

 

長々と書いたが、要は転移しなければ俺は白玉楼を訪れることは出来ないという事だけ留意してくれれば幸いである。

 

「っと、日がくれそうだな……。行くのも久しぶりだ」

 

さぁ、前口上はここまでである。

転符『白玉楼大階段前』。

視界が切り替わり、目の前に出鱈目にでかい階段が現れる。その階段では、目的の人物の1人でもある魂魄妖夢が、今まさに登ろうとしているところだった。フリフリのミニスカートが、視界の上部に入る。

 

…………見え――――――――――ない!!

ちっ、しけてやがるぜ!

 

まぁ、んなことはどうでもいい。

階段を警戒に登り、魂魄の小さな背中に声を掛ける。

 

「こーんーぱーくー………」

「ひゃうっ!……り、凜さんですか……わざわざ忍びよらないで下さいよ……」

 

久しぶりに見る魂魄は、相変わらずに愛らしい仕草で胸を撫で下ろした。

魂魄妖夢。東方妖々夢5面ボス。共に妖々夢の異変をサポートした仲ではある。

が、実はあまり関わりのない人物でもある。彼女が普段何をしているのか、何を好むのか、割合知らない方だ。

 

「はっはっは。お久しぶりじゃないか。夏以来かな?」

「そうですね。夏と言うと……天人の起こした異変ですか」

「うん。その節はどうも、だ」

「凜さん、あまり冥界には来ないですものね。今回はどのようなご用件で?」

「少しばかり、旅をしていてね。絶賛放浪中なのさ。もう夜になろうとしているだろう?だから、次の宿を探しているんだ」

「はぁ、旅ですか。その結果、白玉楼に白羽の矢が立ったと」

「お願いできるかな?」

「多分大丈夫でしょうが。私には決めかねますので、幽々子様に尋ねてみて下さい。今から戻るところなので」

「ありがとう。………随分荷物多いね。宴会でもするの?」

 

魂魄の両手には、買い物袋がいくつも提げられていた。ゆゆちゃんが幾らフードファイターでも、この量を一度に食うって程じゃあないはずだ。

 

「いえ、そういう訳では。あまり顕界を何度も訪れるのは良くないので、顕界に降りる時はできる限り買い溜めするようにしているんです」

 

はぁん。なるほどねぇ。そう言えば、魂魄妖夢は半人半霊と聞いたことがある。前述の通り、俺はあまり彼女には詳しくないので、その言葉の意味は把握していない。

 

「ふぅん。なるほど……っと」

 

ひとまず、魂魄が引っ提げている買い物袋をいくつか貰う。

重たっ。今朝の冷蔵庫が効いたなこれ。

 

「あっ、いえ。大丈夫ですよ。慣れてますので」

「まぁまぁ。いいんだよ、こういう時は持たせておけば。人の好意は素直に受け取るものだよ」

「……はい。ありがとうございます」

 

相変わらず生真面目な魂魄であった。

道中、魂魄と幾らか会話を試みた。普段ならば、話を積極的に振るような人間ではないこの俺だが、今回の旅の目的はより深くこの世界を知ることなのだ。

対話は必須事項だと言えよう。

 

「半人半霊ってさ。やっぱり人間と幽霊のハーフだったりするの?」

「いえ。なんと言ったらいいでしょうか……生来魂が顕界との繋がりが緩やかで、半分外部に漏れた存在、だそうです。つまりそういう種族、って感じ、ですかね」

「ほほう。外部に漏れてるってのは、そのいつも浮いてるソレのこと?」

 

ふよふよと浮いている、魂魄の傍の小さな塊を指さして言う。

 

「えぇ、そうです。半霊って呼ぶんですが」

「半霊。言ってしまえば、半分昇天しかけみたいな事かー」

「まぁ、はい、そうですけど。あんまり昇天とか言われると……」

「おっと、すまない。悪気はないんだけれど、ついね、軽口がねー」

「絶対悪いと思ってないでしょう?まぁ、そこが凜さんらしさ、なんでしょうけど」

「あは!そーそー。アレだぜ魂魄、人生お気楽に過ごした方がお得だよー?どっちにしても、人生なんてめんどくさいんだからさ?」

「………誰もがあなたみたいなら、この世界はおしまいですね」

 

誰もが俺みたいなヤツの世界。

想像するだけでキモイが、それはそれで面白いかもしれない。

………うわー、最終全員黙ってそー……。

 

「むぅ。魂魄はつれないねぇ。ほらほら、スマイルスマイルー。大抵の事は、笑ってれば上手くいくのだー」

「………あの、凜さん。私なんか構って、楽しいんですか?」

 

うわ、なんか重たそうな質問だな。ウザがられているのだろうか?ありうるけど!

……しかし、妙に神妙な雰囲気でもある。

つーかよくわからんから正直に返すとしようか。

 

「楽しいよ?当たり前じゃない」

「……そう、ですか。…そうですか」

 

何度かそう呟いたあと、魂魄は俯いて黙ってしまう。あー、なんか悪いこと言ったかなぁ?……逆に嬉しいから俯いてんのかな。

それとも黙って欲しいのかな?黙れと言うなら無論黙るが。

 

「うーん。魂魄は嫌なの?俺は君といることは楽しいけれど、魂魄が嫌なら今後控えるくらいのことはするよ?」

「え?……いえ、そんな事はっ……ない、んですけど……」

「えー。そのないはある奴じゃないー。やだなー、嫌われたのかなー」

 

何となく察しがついた。この子はアレだ、自己評価の低いタイプだ。だから俺みたいなヤツが近づいてくることが理解出来ていない。

自己を低く見ているからこそ、人が寄ってくるのが不思議なのだ、この子は。

また、なんというか。

おかしな事を言うなぁと思う。

まぁ、それも関わり続ければいずれわかる話か。

 

という考えもあって、俺は少しばかり軽口を強めて笑う。慌てている魂魄が、絶妙に可愛らしかった。

 

「……嫌いとかでは。ただ……いえ。なんでもないです」

「……あは。まぁ、なんつーの?俺はこうして君と居られるのは嬉しい。話すのも好きだ。君がどう思ってようが、そんなのは知ったことじゃないね」

「……勝手な人です。そしてお節介です」クスリ

「なぬ。俺に君の世話を焼いた覚えはないが」

「はい、そうですね。だと思います」クスクス

 

……むぅ。本当にそんな覚えはないのだけれど。

ま、誤解を受けるのには慣れてるけれども。

それから魂魄と、少しばかりだが話をした。

白玉楼へ向かうほんの少しの時間だったが、魂魄はずっと柔らかい笑みを浮かべて、楽しそうに話をしてくれていた。

………なんだろう。この子、可愛いよな。

もっと自信を持てばいいのに。過ぎた遠慮や自己批判は美点にはならないのだから。

 

………少しは、彼女に自信を持たせることが出来ないだろうか?

 

そんな事を思ってから、確かにお節介だなと、少し苦笑する。

そうこうするうちに、白玉楼へと辿り着く。そもそも階段まで来ていたのだからすぐだった。

いかにも古めかしい白玉楼の戸口を開け、先を行く魂魄に着いていく。

 

「ただいま帰りました」

 

魂魄が遠くに向けてそう投げかける。

俺も一応礼儀として、お邪魔しますとだけ言って靴を脱ぎ、魂魄と共に白玉楼の中に入る。

 

これまた久方ぶりに入る白玉楼だが、個人的には居心地のいい場所である。檜らしき木で出来た木造建築は、いかにも日本らしい雰囲気で客人をもてなしてくれる。

 

………但し。冥界自体は、決して人間に好意的ではない。冥界とは、閻魔の裁きを待つまでの霊魂たちの待機地点だ。取り憑かれたりするような事は、怨霊ならぬタダの霊魂にはほぼ不可能だが、霊魂の周囲は須らく気温が低い。よって冥界は、大量の霊魂によって冷え切っている。無茶苦茶寒い。あとここに長く居すぎると、顕界との繋がりが完全に切れて死ぬ(爆)。

 

しかし白玉楼は顕界と直接繋がっている冥界の端なので、他に比べれば比較的暖かく、四季もある。多少マシだ。

魂魄に続いて歩くとやがて、居間へと辿り着く。

 

「おかえりなさい、妖夢。……あら?」

 

中に入ると、そんな声が迎え入れてくれた。

西行寺幽々子。久しぶりに見る彼女の姿は、相も変わらずに綺麗だった。大抵俺、この感想言ってる気がする。

ふふふ、とゆゆちゃんは微笑むと、手招きをして俺を呼ぶ。呼ばれたので行く。

 

「久しぶりじゃないー。元気にしてた?凜」

 

そして何故か、ゆゆちゃんは俺を抱きしめ、むにゅーっと胸を押し付けてくる。

え。なにやってんだこの人。

 

「……あのぅ。ゆゆちゃん……」

「んー?なぁにー」

「……えっとー。なんで俺は抱きしめられてるんです?」

「んー。凜の体温、暖かいからー。抱き心地が妖夢と違って、好きなのよぅ」

「え。魂魄ともやるの、コレ……。別にいいんだけどさぁ。視線が痛いんだけど?」

 

俺の目にはゆゆちゃんの薄ピンクに色付いた髪と病的なまでに真っ白なうなじしか見えないのだけれど、何となく後ろの魂魄の様子が怖い。

ちなみにゆゆちゃんは亡霊なので、タダの幽霊よりは温かい。魂そのものである幽霊と違って、彼女は生前のとある状態を保っているからだ。詳しくは分からないが。

ので、少しひんやりとしたゆゆちゃんの感触は決して不愉快なものでは無い。

けど、うん。

あんまり抱きつかれたりすると、ね?

俺も男の子なわけで。

 

「えー?凜ったら。暫く見ないうちに、変なとこ気にするようになったのねぇ」

 

すすす、と、これまた彼女の優美な外見に似つかわしいほどゆったりとした動きで、ゆゆちゃんは俺から離れてくれた。

うむ。それはこっちのセリフだな。

西行寺幽々子と言葉を交わすのは、割と久しぶりだけど………こんなにスキンシップの激しいキャラクターだっただろうか?

 

「何はともあれ。いらっしゃい、凜。今日はどうしたの?」

「うん。少しの間だけ、泊めてもらいないかなぁと思ってさ。今、ちょっと旅行しててね」

「旅行。旅行かー。紫はソレ、知ってるの?」

「紫?さぁ。アイツも偶に神社に来るから、もしかしたら知ってるかもしれないけど。なんで?」

「………ふーん。そうなんだ」

 

ゆゆちゃんは少しだけ目を細めたあと、桜色に色付いた唇を柔らかく歪ませ、薄い笑みを浮かべる。彼女はのんびりした性格のように見えて、その実頭がよく回る。

痛い腹を探られても面倒だとは思うが、知者の思考を止めることなどは出来ないので、気付かないふりをして流す。

 

「で、どうなのよ、ゆゆちゃん。泊めてくれるかい?」

「んー。んー。まぁ、いっか。部屋なら余っているし」

「やったー」

 

とまぁ、なかなかに空虚なやり取りを交えつつ。

ただお世話になるのも忍びないので、俺は魂魄の料理作りを手伝うことにした。

トントンとリズムよく筍、人参、ゴボウ、蒟蒻をぶつ切りに切っていく魂魄。

煮物を作るとのこと。サブメニューとしてサラダを作るべく、もう1つのまな板でキャベツを千切りに、胡瓜を輪切りに、トマトをざく切りにする。

 

「……………」

 

そして、再度の沈黙である。

まぁ喋ってると注意が散漫になりやすいので正しい。お互いに慣れているから、喋りながらでも出来るだろうが。

お互い喋りたがりでもないし。

しかし俺としては、なにか喋っておくべきか。

 

「魂魄はさ」

「はい」

「聞いていいのかわかんないけどさ」

「はい」

「親父さんとか、どうしてるの?」

「………分かりません。少なくとも、物心着いた時には、もう居ませんでした」

 

……まぁ何となくそんな気はしたけども。

 

「そう。誰か育ててくれたのかな」

「お爺様が。この白玉楼の前の庭師でもあります」

「ふむ。どんな人だったん?」

「そうですね。あまり多弁な人ではなかったですが、色々な事を教わりました。口じゃなくて、剣で語る人でしたね」

「はぁん。剣の師匠でもあるってか。なるほどねぇ………今はどうしてんの?」

「………さぁ。どうでしょう。どこで何をしてるのか……」

「わかんないの?唯一の肉親でしょう?」

「出ていきましたから。何も言わず。だから、お師匠がどこに居るのかなんて、分かるはずがありません」

 

トゲのありつつも、どこか寂しさの残る魂魄の声音に、俺はそれ以上何も言えなかった。

…………魂魄のお爺様、ね。

そんな人物は、俺の知る東方Projectには居なかったけれど。

どんな人物なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕餉のあと、風呂に入って汗を流した俺は、少しだけ白玉楼を散歩していた。

白玉楼の縁側からは、清冽に整えられた枯山水の様相が伺える。これも魂魄がやっているのだろう。

月の光に照らされて、庭の端に聳え立つ西行妖が、ほのかに淡く色づいている。

 

「月見かしら?」

 

ふと、柔らかな声が背に投げかけられる。

振り返ると西行寺幽々子が、扇子片手に俺へと微笑みかけていた。

 

「まぁ、そんな感じだね」

「そ。隣、いいかしら?」

「ん。どーぞ」

 

すす、とすり足で、ゆゆちゃんが隣に来る。

ふわりと甘い香りがする。女性特有のやつ。

 

「で。どうしたの、凜」

「んー?どうしたってー?」

「どういう心持ちかーって。聞いてるのよー」

「えー。どういう心持ちでもないよ」

「あらそう。何だか疲れてるのかと思ったけど。私の勘違いかしら」

「そーそー。そーゆーことにしといて、ゆゆちゃん。お願い」

「仕方ないわねぇ。私は、少しくらい人に頼ってもいいと思うんだけど……」

「俺だって頼る時は頼るさ。頼る相手は選ぶけど?」

「あー。酷いこと言うわねぇ。私じゃ不足ってー?」

「あはっ、そんな事は言ってないけどなぁ。まぁ気にすんなってー。そうだ、魂魄のじーちゃんって今どこでどうしてんの?」

 

場を誤魔化すために、少し頭に残っていたそんな疑問を聞いてみることにした。

先代の庭師だったというなら、彼女とも関わりはあるはずである。

 

「……妖忌の爺様?急ね、また。爺様なら、何十年か前に出てっちゃったわよ。妖夢から聞いてないの?」

「……んー。まぁそうとは聞いてるけどさ。そも、なんで出てっちゃったわけ?まだ魂魄も若かったろうに」

「まぁ、爺様のことだからねぇ。ふらーってどっか行ったんじゃないかしら?」

「えー。そういうタイプ?」

「爺様は、旅好きだからね。出ていく前も、ふらっと出かけることあったし」

「……ふぅん?なんつーか、意外と飄々とした爺さんなんだね」

 

もう少し厳格で頑固な感じの爺さんかと思っていたけど。

魂魄妖忌。ふむ。この感じを見ると、俺が知らないだけの東方キャラ、なのかな?

……魂魄は、どう思ってるんだろうか。

肉親とは、一緒にいたいものだと思うけれど。

…ま、俺も人の事言えねぇからなぁ。そんなヤツが何を言っても、か。

母さんと父さん、元気かねぇ。俺の記憶が消されてるってんなら、俺を養子に取らなかった事になってるのかな?

 

「まぁ、爺様の事が知りたいなら、蔵にいくつか資料があると思うわよー。かれこれ300年は、ここで庭師をやってくれてたから」

「そりゃまたなげぇな。そうさねぇ、そこまで興味があるわけでもないけど……少し、見てみようかなぁ」

「そう。まぁ、そこは好きにしていいわ。あなたの好きなようにしてくれれば、それで」

「あは。それはそれは、手厚い待遇をありがとう。愛してるぜゆゆちゃん」

 

相も変わらずの軽口を零すと、ゆゆちゃんは少しだけ黙った。はぁ、と息をついたあと、じとっとした目で俺を見る。

 

「あまりそういうこと、言わない方がいいわよ?女の子ならともかく――――女に言うと、本気にしちゃうから」

 

…………うーん、なんとも。

大人の女の人に言われると、身につまされるなぁ、あはは。

………そういや俺って、ゆゆちゃんに告白された事があったような。

まぁ、酒の席だったし。なにやらゆゆちゃん、意外と初心だったし。ちょろっと言い寄られると、勘違いしちゃうタイプだったし。

うむ、俺みたいなクズに引っかかるんだよな。

口にしてみようかと思ったが、流石に不謹慎なことは分かるので。

 

「そりゃあ、忠告ありがと。気をつけてはみるみるー」

「ぜったいつける気ないでしょ、凜。全く……しょうがない人」

 

呆れながらもそう言って微笑みかけるゆゆちゃんは、とても儚くて、消えていきそうな気がした。

うん。

俺なんかと一緒にならなくて良かったと本気で思う。

というか、俺みたいなヤツに似合う女の子なんて、この幻想郷には居ない。

俺に相応しい人間が居るとしたら――――それはきっと、同じくらい壊れた人間だけだ。

そんな影のある考えが首をもたげて、何となく黙ってしまう。ゆゆちゃんも、何も喋らなかった。

けれど、俺も彼女も、どこかへと行くことはなかった。

気まずくはなかったが、少し彼女の事が知りたくなった俺は、口を開いた。

 

「ゆゆちゃんはさ」

「なにかしら?」

「いつから、亡霊なの?」

「ん……そうね、何年前でしょうねぇ。500からは覚えてないけれど……」

「そっか。長生きさんだね、それは」

「まぁね。なんで死んだのか、わかんないけどさ。その頃から、紫は居たし……私は普通にやってるから。あんまり気にはしてないけど」

「ふぅん。さぞかし若かりしゆゆちゃんは可愛かったんだろうなぁ」

「かもね。見たい?」

「見たいなぁ。能力で歳いじっていい?」

「バカね。ほんとバカ」フフフ

「えー。バカって言う方がバカなんだよーだ」

 

中途な雰囲気だな、と思う。なにやら怪しい関係にも見えるし、ただの友達だと言われるとまぁそうだねって頷けそうだ。

本来の西行寺幽々子はこうなのだろうか。

ふわふわと笑ってる飄々としたゆゆちゃんと。

今俺の隣で黄金色に輝く月を眺めてる、大人の貫禄を漂わせる彼女。

同じ人間とは思えないほどではある。

 

「ほんっと、おバカねぇ。うん、流石に冬は冷えるわ。お茶でもいれましょうか」

「いいねぇ。乙だねぇ」

「あら、貴方にいれるとは言ってないわよ?」

「あー。ひっどー。いれてくれないのー?」

「……まぁ、いれるけどぉ。そんな当たり前みたいな顔されると、ねぇ?」

「それもそうか。へー、幽々子様ー。どうかお茶をお恵みくださいなー」

「仕方ないなぁ。じゃあ代わりに、すべらない話してね」

「え。無茶ぶりキツくない?まぁいいや、この前霊夢がねー、スペカ中にぐるんぐるん周りながらぶるぶるの口調でむぶぉうぶぅいん!とか言ってさ……」

 

………少しだけゆゆちゃんと、そんな馬鹿話をしたりして。

今日も、幻想郷の夜はふけていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side other

凜が白玉楼の床につき、誰しもが寝静まったころ。

ざわざわと騒がしいどこかの空間で、女性が1人、どこかへと歩いていた。

もはや深夜だというのに、ギラギラとそこかしこが絢爛華美な輝きを放っている。

数多の暖色光を受けてキラキラと、彼女の長い黒髪が輝く。

誰がどう見ても美人だと思うようなその外貌が、良からぬ輩を惹き付けるのか。

見るからにガラの悪い男達が、彼女の行く手を阻むように立ちふさがった。

ニヤニヤと、下卑た笑いを浮かべている。

 

「なぁ、姉ちゃん。1人かい?用がないなら、俺らと遊んでかない?」

 

典型的なセリフとともに、男達は無理やり、華美な大通りから薄暗い裏路地に彼女を連れ込む。

並大抵の女性なら、耐え難い恐怖を感じることだろう。これからの自分の末路を想像して、サッと青ざめてしまうかもしれない。

しかし彼女は、ニコリと微笑んだその表情を崩さなかった。

 

「あらあらー。かよわい女性をこんな所にムリヤリ連れ込んで。いけない人達ねぇ?」

 

くすくす、と彼女は笑う。怯えた姿を予想した男達は少し面食らいながらも、余裕のある態度は崩さない。

それはそうだ。相手は女性一人。此方は男3人。

仮に何かしらの護身術を嗜んでいたとしても、無意味な程の戦力差だ。

しかし。

それは相手が、タダの女性だった場合だが。

 

「なんだ、意外と話の分かりそうな姉ちゃんじゃねぇ?」

「あぁ。普通にやれんじゃね?」

「おう、わりいな姉ちゃん。俺らも、アンタを痛めつけてぇわけじゃねぇんだ。だからよ、分かるだろ?なぁ」

 

下卑た話を、ニヤニヤ笑いの男達は始める。

この場がどこかなどは些細な話だが、このような連中が往来を闊歩している時点で、凡そ治安の良い場ではないだろう。

少なくとも『幻想郷』のような。

平和な場所では、きっと。

しかしそんな話をしても、彼女の態度は崩れない。

んー、と人差し指を頬に当て、可愛らしい所作で悩む素振りをとる。

 

「そうねぇ。そろそろ、身体も持て余してたしねぇ?いつまで経っても姿を見せてくれないあの子の事なんて忘れて、1日ぐらい遊んでも、バチは当たんないかしらね?」

「おっ?なんだ姉ちゃん、彼氏に捨てられたのかぁ?」

「そいつぁいけねぇなぁ!おし、いっちょ飲み行こうぜ飲み!」

「いいねぇ!今夜は祭りだ!」

 

………思ったよりも、気のいいヤツらだったかもしれない。

どうやら乗り気そうな彼女の様子に、男達は口々に大声を上げながらそう歓喜する。

馴れ馴れしく肩を抱こうと、男の一人が腕を上げた、その時だった。

振り上げたその腕は空を切り、男はバランスを崩す。

 

「ああ?」

 

見ると、先程まで彼女がいたそのスペースには最早なんの痕跡もなく。

何もかもを溶かすような甘い香りだけが、その場に彼女がいたことを示していた。

 

「――――――気が変わったわ。うん、普通にビッチは良くないわよね。やっぱり女の子は、大和撫子でないと。黒髪ロング幼馴染。誰にも負け属性だなんて言わせないわよ?うふふっ!」

 

突如、男が背を向けていた大通りの方から声がした。男達が振り返ると、先程と全く同じ笑みを浮かべた彼女が、そこに居た。

 

「それではさようなら、気のいいお兄さん達?私は付き合ってあげられないけれど、ま、男子会ってのも、悪くないかも?」

 

ひらひらと後ろ手に手を振りながら、彼女は裏路地を後にし、再び大通りへと戻っていく。

 

「……?お、おい!待てよ!」

 

数秒呆気に取られていた男達だったが、ハッと我に返り、女の曲がった方向へと駆ける。

しかし、つい先程曲がったその美しい後ろ姿は既になく。辺りを見回しても、彼女の姿はどこにも見えなかった。

 

「あ――――あぁ?な、なんだったんだ……?あの女……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ。さっきのもハズレだった。あの子のことだから、同じ群に居ると思ったのになぁ。考えを改めるべきかなぁ。『後ろ』にも『前』にも、ヒントはなかったし……。『今』を変えないと、『前』を見ても意味ないしねー」

 

『彼女』は呟く。

先程までいた所とは別の場所で。

 

「私がここまで探しても見つからないとなると……本気で隠れてる?てことは、もしかしてあのバカ、返しちゃったの、アレ?もしそうなら……一生探しても、見つからないかもしれない」

 

そこまで考えてから、彼女はブンブンと頭を振って、頬を叩く。

 

「何考えてるのかしらね、私は。仮にそうだとしても………私が探さない理由にはならない」

 

意を決したようにそう呟くと、彼女は頭上の月を見上げる。同じ月を眺めていることを、『彼』が見ていることを信じて。

 

「そうねぇ。次外したら、偶には創作系の群も巡ってみようかしら?ラノベとかアニメとか、好きだものね?」

 




今回はちょろっと短めかもしれません。それともこれくらいが丁度いいんですかね?
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