元殺し屋がバイオ事件に巻き込まれる話   作:オッパッピー

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本日二度目の投稿です。


Chapter4 地下 Part1

 地下へ続く石段は、ひんやりと湿った空気に包まれていた。

 

 先頭を歩く次郎は、リボルバーを構えたまま慎重に足を進める。

 

 左肩の傷が脈打つように痛んだ。

 

 それでも歩みを止めることはない。

 

 その後ろにはレオン。

 

 さらに店長と客たちが一列になって続き、最後尾ではマービンがショットガンを構えながら周囲を警戒していた。

 

 石段を下り切ると、目の前には重厚な金属製の扉が現れる。

 

 レオンがゆっくりとドアノブへ手を掛けた。

 

「開けます」

 

 ギィィ……。

 

 古びた蝶番が軋み、扉がゆっくりと開く。

 

 その先には、美術館だった頃の名残を色濃く残す地下通路が広がっていた。

 

 石造りの壁。

 

 等間隔に並ぶ柱。

 

 天井には古い配管が張り巡らされ、水滴が一定の間隔で床へ落ちている。

 

 ピチャン……。

 

 静まり返った地下に、その音だけが響いた。

 

「ここが……地下か」

 

 レオンが辺りを見回す。

 

 次郎は懐中電灯で前方を照らした。

 

 長い通路の先には、さらに奥へ続く鉄扉が見える。

 

 その途中には古びた木箱や資材が積まれ、人の出入りがあった形跡も残されていた。

 

「全員、ちゃんといるな」

 

 マービンが後方から確認する。

 

 店長が人数を数え、静かに頷く。

 

「大丈夫だ。全員そろってる」

 

 次郎は通路の奥を見据えた。

 

「ここから先は一本道です」

 

「何かあっても慌てず、一列を崩さないでください」

 

 客たちは緊張した面持ちで頷く。

 

 その時だった。

 

 ゴォン……。

 

 どこか遠くで、重い鉄扉が閉まるような鈍い音が地下全体へ響いた。

 

 全員が足を止める。

 

 レオンはショットガンを握り直した。

 

「今の音は……」

 

 次郎も耳を澄ませる。

 

 しかし、それ以上の物音は聞こえない。

 

「行こう」

 

 短くそう告げると、再び先頭に立って歩き始める。

 

 

 

 地下通路は、どこまでも薄暗かった。

 

 コンクリートの壁には無数の配管が張り巡らされ、天井からは冷たい水滴が一定の間隔で落ちている。

 

 ピチャン……。

 

 静寂の中、その音だけが不気味に響いた。

 

 先頭を歩く次郎は懐中電灯で前方を照らしながら、一歩ずつ慎重に進む。

 

 左肩の傷は包帯の下で熱を帯び始めていた。

 

 脈打つような痛みが続いている。

 

(……熱い)

 

 だが、今は立ち止まれない。

 

 自分の後ろにはレオン。

 

 さらに店長と客たち、最後尾ではマービンが周囲を警戒している。

 

 十分ほど歩いた頃、通路は大きな鉄扉の前で途切れた。

 

 レオンが操作盤を確認する。

 

「電源は生きています」

 

 ボタンを押すと、重々しいモーター音と共に鉄扉が左右へ開いていく。

 

 その先に広がっていたのは、地下駐車場だった。

 

 薄暗い照明。

 

 整然と並ぶパトカーや公用車。

 

 人気はない。

 

 だが、空気だけが異様に重かった。

 

 次郎は手を軽く上げる。

 

「待機」

 

 一行が足を止める。

 

 次郎とレオンは駐車場へ踏み込み、車両の陰や管理室周辺を一つずつ確認していく。

 

 数分後、次郎が振り返った。

 

「今のところ安全だな、問題ない」

 

 その言葉に店長たちは安心して駐車場へ移動する。

 

 マービンは管理室を確認すると、小さく頷いた。

 

「ここなら入口も一つだ」

 

「守りやすくて良い」

 

 店長も周囲を見渡す。

 

「みんな、中へ」

 

 客たちは静かに管理室へ入り、椅子へ腰を下ろした。

 

 張り詰めていた緊張が少しだけ緩む。

 

 レオンもようやく息を吐いた。

 

「少し休めそうですね」

 

 その時だった。

 

 ズン……。

 

 どこか遠くで、重い何かが落ちたような振動が床を伝わる。

 

 全員が顔を上げた。

 

 ズン……。

 

 再び響く重低音。

 

 まるで巨大な何かが歩いているようだった。

 

 マービンが眉をひそめる。

 

「今の音は……」

 

 次郎はゆっくりとリボルバーを構える。

 

「今度は何だ?」

 

 レオンもショットガンを構え直した。

 

 その瞬間――

 

 ガァンッ!!

 

 駐車場奥の壁が爆発するように砕け散った。

 

 コンクリート片が辺りへ飛び散る。

 

 土煙の中から、巨大な人影がゆっくりと姿を現す。

 

 白衣をまとった巨漢。

 

 右肩から異常に肥大化した腕。

 

 大きくせり出した肩に巨大な眼球が脈打ち、不気味に蠢いている。

 

 血走った目が、次郎たちをゆっくりと見据えた。

 

「グオオオオオオッ!」

 

 耳をつんざく咆哮が地下駐車場を震わせる。

 

 レオンは息を呑んだ。

 

「……なんだ、あれは」

 

 次郎は視線を外さない。

 

「マービンさんは管理室の扉前へ」

 

 マービンはすぐに頷くと、ショットガンを構えたまま扉の前へ立った。

 

「了解した!」

 

「二人とも、ここは俺が守る!」

 

 次郎はゆっくりと前へ歩き出す。

 

 レオンも隣へ並んだ。

 

 二人は互いに視線を交わす。

 

「レオン」

 

「右肩の目だ」

 

「あそこが弱点だと思う」

 

 レオンはショットガンを構えた。

 

「分かりました」

 

 次郎は静かにリボルバーの撃鉄を起こす。

 

「行くぞ」

 

 地下駐車場に、新たな死闘の幕が上がろうとしていた。

 

 

 

 グオオオオオッ!

 

 異形は咆哮を上げると、真っ先にレオンへ狙いを定めた。

 

 巨体とは思えない速度で床を蹴る。

 

 一直線にレオンへ突進した。

 

「来る!」

 

 レオンは横へ飛び込み、間一髪で体当たりをかわす。

 

 次にコンクリートの床へ異形が振るう鉄パイプが叩き付けられ、破片が飛び散った。

 

 その瞬間だった。

 

 次郎が一気に距離を詰める。

 

 異形の意識は完全にレオンへ向いていた。

 

 右肩の巨大な眼球が無防備に晒されている。

 

 次郎は至近距離でリボルバーを構える。

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 間髪入れず四発。

 

 すべての弾丸が巨大な眼球へ吸い込まれる。

 

 眼球が破裂し、黄色い体液が飛び散った。

 

「グアアアアアッ!」

 

 異形が苦痛の咆哮を上げ、次郎へ振り返る。

 

「アリスさん!」

 

 レオンが叫ぶ。

 

 異形は怒りに任せ、鉄パイプを振り上げた。

 

 次郎は横へ跳び、紙一重でかわす。

 

 鉄パイプがパトカーへ直撃した。

 

 車体が大きくひしゃげ、警報が鳴り響く。

 

 異形の意識は次郎へと移った。

 

 それを感じ取ったレオンはショットガンを握り締める。

 

「今だ!」

 

 死角へ回り込み、一気に間合いを詰める。

 

 銃口を右肩の巨大な眼球へ押し当てた。

 

 ドォンッ!

 

 轟音とともに散弾が炸裂する。

 

 眼球が弾け飛び、異形の巨体が大きくよろめいた。

 

「グオオオオッ!」

 

 異形は反射的にレオンへ鉄パイプを振るう。

 

 しかし、その動きは先ほどより明らかに鈍い。

 

 レオンは後方へ飛び退きながら距離を取る。

 

 その間に次郎は素早くリロードしながら、再び側面へと回り込んだ。

 

 二人は言葉を交わさない。

 

 それでも互いの動きを理解していた。

 

 一人が狙われれば、もう一人が弱点を撃つ。

 

 ただそれだけを繰り返す。

 

 異形は二人を追うたびに弱点を撃ち抜かれ、怒り狂って咆哮を上げた。

 

 レオンは確信する。

 

(倒せる……)

 

 この人となら、勝てる。

 

 

 グオオオオオオオッ!!

 

 怒り狂った異形が鉄パイプを大きく振り回す。

 

 その一撃は近くに停められていたパトカーを吹き飛ばし、車体が横転しながら火花を散らした。

 

 次郎とレオンは左右へ分かれて距離を取る。

 

 異形は一瞬だけ迷うように二人を見比べた。

 

 そして再び、レオンへ狙いを定める。

 

「レオン!」

 

「誘導してくれ!」

 

「了解!」

 

 レオンは駐車場の車両を遮蔽物として利用しながら走り出した。

 

 異形は咆哮を上げ、その背中を追う。

 

 その瞬間だった。

 

 次郎は音もなく柱の陰から飛び出す。

 

 リボルバーを構え、再び巨大な眼球へ照準を合わせる。

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 再び四発の弾丸が立て続けに命中する。

 

 巨大な眼球がさらに裂け、体液が飛び散った。

 

「グアアアアアッ!」

 

 異形は苦痛に耐え切れず振り返る。

 

 その血走った瞳が、今度は次郎を捉えた。

 

「来ます!」

 

 レオンが叫ぶ。

 

 異形は床を砕きながら一直線に次郎へ突進した。

 

 次郎はギリギリまで引き付ける。

 

 そして横へ転がるように回避した。

 

 轟音とともに異形の振るう鉄パイプが柱へめり込み、コンクリートが砕け散る。

 

 動きが止まった。

 

「レオン!今だ!」

 

 次郎の声が響く。

 

 レオンは迷わず距離を詰める。

 

 ショットガンの銃口を右肩の巨大な眼球へ。

 

 ドォンッ!!

 

 至近距離から放たれた散弾が眼球を直撃する。

 

 巨大な眼球は完全に潰れ、異形は絶叫しながら数歩後退した。

 

 だが、倒れない。

 

 右腕を押さえながら、なおも二人を睨み付ける。

 

 「まだ倒れないのか……!」

 

 レオンが息を呑む。

 

 その時だった。

 

 異形の巨大な右腕が突然激しく痙攣し始めた。

 

 ブクブクと不気味な音を立てながら筋肉が膨張し、肩から新たな眼球がゆっくりと姿を現す。

 

 次郎は眉をひそめた。

 

「再生している……」

 

 異形は苦しむように頭を抱え、大きく咆哮する。

 

「グオオオオオオオオオッ!!」

 

 その咆哮を最後に、異形は二人へ飛び掛かることなく、大きく後ろへ跳び退いた。

 

 着地すると、そのまま駐車場の奥へ向かって走り出す。

 

 コンクリートの壁へ肩から激突すると、壁を破壊し、そのまま暗闇の中へ姿を消した。

 

 轟音だけが地下駐車場へ長く響き渡る。

 

 静寂が戻る。

 

 レオンはショットガンを構えたまま、その穴を見つめ続けた。

 

「……逃げられたか」

 

 次郎はゆっくりとリボルバーを下ろす。

 

「ああ」

 

「でも、あれはまだ生きている」

 

「近いうちに、また現れる」

 

 その言葉に、レオンも静かに頷いた。

 

 ラクーンシティの悪夢は、まだ終わってはいなかった。

 

 




G第1形態との戦場を地下施設から生存者を守りやすい駐車場に変更しました。
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