さてと。
えっと何があったかなあ。確か、キャッチして、落ちたんだった。
よしよし。周りの景色もどんどん見えてきたぞお。ここはどこかなあ?匂いからして、家じゃあないよね。布団じゃなくて、ベットで寝てる地点で。
ああ、なるほど。ここは病院だね。白いし、クスリ臭いし。消毒の匂いがするなあ。
あれ、鼻の上からするなあ。あ、僕、おでこ切ったのかあ。あの時に。
そうだ、マリーちゃんに謝らないと。
まだあまり周りはっきり見えるわけではないけど、なんかじっとしてる気分でもないなあ。
僕が布団から出ようと体を動かそうとすると、その音を聞いたマリーちゃんがむくりとおきあがり、僕の方を見ていた。
「チヒロくん、大丈夫?」そう言いながら僕のそばまで寄って来て僕の両肩を強く握る。
マリーちゃんの目はなんか赤くなっていて、鼻水と涙で顔はぐちゃぐちゃになっていた。
僕は、特に、頭は痛くなくて、ちょっとだるい以外、他に悪そうなところはない。
マリーちゃんは僕がゆっくり縦に頭を二度小さく振ると、今度は僕に抱きついてきた。
マリーちゃんは震えていた。密着した僕の体にもその震えは伝わる。あと、熱と汗の匂いも。目の下に隈できてるし。明らかに顔色悪いよ。
きっと、徹夜して僕のそばにいてくれたのかなあ……。あれ?っていうことは、外、ある程度明るいけど、もしかして、僕一日寝てた?
あらら、アンケートの予定狂っちゃうよ。
まあ、でもそれよりも。今は目の前のマリーちゃんだ。
「マリーちゃん、よしよし。僕は大丈夫だから、そんなに泣かなくてもいいんだよ。」
「でも、でも……。」
「ははっ。」
「!?」
「僕は嬉しかったよ。目が覚めたら君がいて。それも、怪我はなさそうだし。」
「だって……。チヒロくん2日も目覚まさなかったのよ……。」
「え、ちょっ……。」
「私のせいで、うわああああああああんんんんん!」
「いや、大丈夫だから、ね。それに、マリーちゃん助けて勝手に怪我したのは僕だから。だから、マリーちゃんは気にしなくてもいいの。わかった?」
「うん、ありが……うわあああああああああああんんん。」
「よしよし。」
結構時間が掛かったけど、マリーちゃんは落ち着いた。……外、夕焼け架かってるんだけど……。
さてと。これだけされちゃあ、もう僕も向き合わないとなあ。お兄ちゃんみたいになるのは怖いとか、そんなこともう言ってられない。
それに、僕自体がしっかりすればいいんじゃないかなあ。
「マリーちゃん、話があるんだ。そのままでいいから、聞いて、答えてね。」
「うん。」
消え入りそうな小さな声でマリーちゃんは応える。いつもの元気は微塵も感じられない。
でも僕は――――、もう、言うって決めたんだ。
「僕はマリーちゃんが好き」
僕は最初にそう言った。
「えっ、じゃ――……」
マリーちゃん、よくないよ、割り込みは。人の話は最後まで聞かないとね。それに、最後まで聞いて貰わないと、僕にはこれが何か、分からなくなっちゃう。それはきっと、僕にも、マリーちゃんにも、良くないことだろうから。
「だけど、それは、多分、マリーちゃんが思ってるのとは違うと思う。どう、とは言えないけれど、少し違うような、そんな気がするんだ。」
「なんでよ!」
「マリーちゃん、お願いだから、最後まで聞いて。最初の一言で終わらないってことは、そう簡単な話ってことじゃないんだからさ。」
「……。」
「よしよし。」
僕はマリーちゃんを撫でて、おだてた。
「マリーちゃんさ、僕のお兄ちゃんと、お兄ちゃんの彼女さんなリカお姉ちゃん、思い浮かべてみて。」
「……うん。」
「お兄ちゃんの彼女さんが、お兄ちゃんのことを好きっていう、"好き"がきっと、マリーちゃんが僕に向けた好きってヤツ。マリーちゃんは、僕が好きで、僕の彼女さんになりたい。そういうことだよね。」
「……うん。」
「それは、とっても素敵なことだと思う。僕、マリーちゃんといると何だかんだ楽しいし。」
「じゃあ、どうして、……――」
「マリーちゃん、めっ。最後まで聞いて。大事な話だから、ねっ。」
「……、なんで、そんな、いじわる言うのよぉおおおおおおおおおお、あぁぁぁぁぁんんんん、うぁあああああああああああんんんんんんん――――」
いつもなら僕が謝って終わりにするところ。でも、今は、今だけはそうしたらダメな気がする。だって、リカお姉ちゃんが、言ってたから。