「今だけは、謝らないよ。僕は。」
「……。」
「それだけ僕はね、マリーちゃんに最後まで聞いて欲しいってこと。その後なら、マリーちゃんにいくらでも謝るよ。お兄ちゃんがリカお姉ちゃんにやる位無茶苦茶謝るよ。恥ずかし過ぎるくらい謝るよ。最後まで聞いてくれるなら、マリーちゃんのお願い、何でも一つ聞いてあげるって、約束してもいい。どうする?」
「ぐすん、きくぅ……、ずるるるる」
「よしよし」
僕はマリーちゃんの頭をまた撫でた。結構癖になるんだよな、この感じ。いい匂いするし、触り心地いいし。
「僕は、マリーちゃんが好き。で、お兄ちゃんが好き。お父さんが好き。お母さんが好き。近所のトモくんが好き。リカお姉ちゃんが好き。」
「えっ……」
マリーちゃんは何か言いそうになるし、何か顔色が悪くなってるけど、そこで堪える。
「誰もきっと、同じくらい好き。これはさ、たぶん、そんなみんなと、仲良くしたいってことなんだと思う。僕はマリーちゃんのことが好きだけど、マリーちゃんの好きが僕の好きと同じじゃない気がするんだ。」
「そんな……」
「だから僕は、マリーちゃんの彼氏になっていいのか、分からないんだ。」
「なんでよぉおおおおおおおおおおおお! あぁぁぁぁぁんんんん、うぁあああああああああああんんんんんんん――――」
また泣き出すマリーちゃん。僕、そんなに、悪いこと言ったのかな……。
……。
…………。
………………。
もう、気付かないふりは、やめよう……。というか、もう、無理……。そろそろ、僕が、もう、持たない……。
もう、ごまかして先延ばしになんて、しない。それで、ここで終わりになっても、悪いのは、全部、僕だ……。
逃げないマリーちゃんじゃなくて、先延ばしにしてごまかしてきた僕だ。お兄ちゃんたちに言われる前から、僕は無意識にずっと、考えていたんだ。
マリーちゃんの覚悟はもう決まってる。僕の覚悟も決まった。後は、僕の納得がつくかどうか。
僕は頑張って考えた。とってもとっても考えた。
「マリーちゃん。結局何で僕が迷ってると思う?」
もう、分かってたんだ……。もっと前から、僕は気付いていた……。考えたら、もう答えなんて、出てたんだ……。
それは、マリーちゃんと他の女の子の違い。もし、ここに立ってるのが他の女の子なら、僕がどうしたか。それがたぶん、答えなんだと思う。
「ぐすん、ぐすん、しっく、しっく……」
問題があるのは、僕のほう。
マリーちゃん、ごめんね、本当に。でも、こうしないといけなかったんだ。だって、僕は、たぶん、自信が持てなかったから。お兄ちゃんとリカお姉ちゃんを見てたら、僕の気持ちって、とっても軽くて、無責任みたいな気がしたから。マリーちゃんの気持ちと僕の気持ちが釣り合わない気がしたから。なら、僕は、お兄ちゃんとリカお姉ちゃんみたいな、素敵なカップルには、なれない。できない。そして、それは、僕が本気じゃなかったから……。
もしかしたら、本気かも知れない。けれど、本気じゃないかも知れない。僕にはどっちか自分で分からないんだ。
「こういうのって、いい加減だと、ダメだと思うから。」
僕にできるのは、せいぜい、真っ直ぐ、言うだけ。マリーちゃんが傷ついても。
「しっく……、なぁんだ……」
マリーちゃんは、半ベソかいて、僕の方を見上げるように向いて、
「ふふっ。チヒロくん、好き」
ぎゅぅぅっ。
とっても素敵に、僕の考えてもみなかった方法で、僕に答えを出してくれた。
「マリーちゃん。僕のこれは、いい加減じゃ、無いってことなんだね?」
こんな素敵に笑って、
「好き」
そこで、言葉じゃなくて、雰囲気で言ってくれるのが、いいんだ。分かって、察してくれて、僕の望む以上に、してくれるのが、いいんだ。
はは、ちゃんと、僕にも理由は、あるってことだ。僕にだって、分かる。それは、とても得難いもので、手放してはならないものだって。お兄ちゃんが、リカお姉ちゃんを好きな理由の本質と同じ。
「じゃあ、僕も。マリーちゃん、僕の彼女さんに、なってください。そのうちきっと、マリーちゃんと同じ位、僕もマリーちゃんのこと、好きになれるように、がんばるから」
待たせてごめん。もう、大丈夫だから。泣かせてごめん。その分位は笑顔にできるように頑張るから。一緒に楽しく、始めよう。
「じゃ、じゃあ……、キス、して……。」
言葉は要らない。そして、ここで場所を間違えたりはしない。
チュッ。
唇。
「これで、僕はマリーちゃんの彼氏で、マリーちゃんは僕の彼女だね」
「うんっ! ふふふふふふ」
はぁ、いつも通りのマリーちゃんを見ると、何だか、落ち着くなぁ。もっとドキドキするのかなって思ったけど、割とそうでもないや。きっと、僕の好きっていうのは、マリーちゃんの隣っていう居心地なんだろうなぁ。