"せいすい"って、なあに?   作:鯣 肴

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第7話 いらっしゃい、マリーちゃん!

 さーって、朝がやってきた。マリーちゃんにあれ聞くぞぉっ!

 

 でもその前に宿題だね。なんとかしてマリーちゃんに宿題やらせてしまわないと。

 

 今日は誰も手伝ってくれないからなあ。お兄ちゃんは朝からいつも通り ちゃんに引っ張られていったし、お父さんとお母さんは夜まで帰ってこない。

 

 マリーちゃんのお父さんお母さんとお出かけらしいんだよね。

 

 だから、僕だけで、僕一人だけでなんとかマリーちゃんに宿題やらせちゃわないといけないわけだ。これはしんどい。マリーちゃん往生際悪いからなあ。絶対ごねるよ。言うこと効いて欲しかったら先に私の言うこと効きなさいよ、がくるぞぉ、きっと。

 

ピンポーン

ガシャ!

 

 あ、これはきたっぽいぞ。マリーチャンのお父さんお母さんがマリーちゃんも連れてきてるな。よっし、部屋から出すのは僕がやらなくてもいいくさいな、これ。

 部屋の窓から外ちょうど見えるんだよね。こういうときはいいけど、これのせいでマリーちゃんには居留守使えないからなあ。

 

 でも、早くいってマリーちゃん確保しないと。逃げられたらめんどくさいけど、手握ってたらおとなしくなるし。昔はそうじゃなかったからほんと楽でいいよ。

 

ドタドタドタドタ、スッ、ダン!

スタタタタタ

 

 はぁ、間に合った。

 

「お、降りてきたな。お前マリーちゃん大好きだもんな!」

 

いや、そんなことないから、お父さん。

 

「そうね、仲良くお留守番しとくのよ。」

 

いやいや、お母さん、違うから、ね。

 

「今日はマリーを頼むよ、チヒロくん。」

 

「はい、任せておいてです。」

 

ふふっ、メインはその後の例のアレだけどねっ。

 

「君だけが頼りなのよ。お願いなんとか宿題やらせちゃって!」

 

「分かってるよです。」

 

 だってそうしないとアレ聞けないから。何もせずに聞いたらマリーちゃんに変な条件つけられるの目に見えてるし。」

 

「いってらっしゃ~い!」

「いってらっしゃい、パパ、ママ、おじさん、おばさん。」

 

バン

ブルルルルっ、ブゥーン!

 

ブォーーーーーーーッ……。

 

 さてと、いよいよだ。まずは、なんか今にもそろりと逃げ出しそうなマリーちゃんの手をつかむとこからだな。

 

すっ、ぎゅっ。

スカっ!

 

 ですよね。逃げるよね、やっぱり。

 

「マリーちゃん、おとなしく僕につかまって宿題するんだ! 夏休み最後に泣きたくないでしょ! そのときなって手伝ってって言ってきても手伝わないよ!」

 

「や~よ! だって、宿題やったからって私にいいこと何もないじゃないの。しんどいだけだし。」

 

 いやいや、宿題終わらせといたら夏休み最後までめいいっぱい遊べるじゃないの。マリーちゃん、先のこと考えなさすぎ……。

 

 逃げるマリーちゃん。僕の横をすり抜けて階段へと向かう。

 

 ふふっ、かかったね。なんのためにわざわざ玄関でマリーちゃんを迎えたか全然分かってないみたいだね。逃げ道を決めるためさ。玄関で待つとすると、逃げれるのは台所か、二階。台所へ逃げたとしても、道たくさんあるし簡単に追い詰められるからね。で、鍵を開けながら外へ出るのは時間が掛かるし、どうあがいても逃げ切れない。

 

 となると、二階だよね。二階の僕の部屋とお兄ちゃんの部屋は鍵掛かるもんね。ところがどっこい。お兄ちゃんの部屋には外から鍵かけられるようになってて、お兄ちゃんが帰ってこない今はどうしようもない。僕の部屋は内側からしか鍵かけられないけど、実は、テレフォンカードとかでちょっとへこんだマイナスの鍵穴回すとあけられるんだよね。当然マリーちゃんはそのこと知らな~い。

 

 まあでも、僕の部屋に逃げ込まれるって何かいらつくなあ。だから、とりあえずちょっと仕返しだあ。

 

ドンドンドン、ド、ドン!

スタタタタ。

 

 マリーちゃん、ぱんつ見えてるよっ、ありがとうございます。

 

 そう、お兄ちゃんに教えてもらったのだ。女の子のパンツは見たらお礼を言いましょう、と。お兄ちゃんはたまにお礼言い忘れて お姉ちゃんに怒られるらしい。前も起こられてるの見たし。でもお兄ちゃんそのときもなんか嬉しそうにしてたんだよなあ。床に頭ぐりぐりされてたんだよ、おねえちゃんの足で。痛いでしょ、普通。僕だったらそこまでやられたら怒るかなあ。

 

 お兄ちゃんが言うには、「お前にもそのうち分かる! ……かもしれない……。」らしいけど、うん、きっと僕には一生分からない気がする。

 

 さーって。今のうちに距離つめちゃお。部屋に着く前に捕まえちゃうぞお。マリーちゃん顔真っ赤にしてなんか言ってるし。小声だし、何言ってるか聞こえないけどね。

 

バシッ

 

「まりーちゃん、つっかまえた~!」

 

 マリーちゃんは顔をさらに顔を真っ赤にしてゆでダコのようになってそのまま女の子座りでくずれた。危ないよ、ここでそんなことしちゃあ。階段のおどり場だから別にそれでもいいけどさあ。あ、でもなんでこれ、女の子座りって言うんだろう?うん、お兄ちゃんにでもまた聞いとこう。

 

「チヒロくん、あのね。私宿題やるから後で私の言うこと聞いてくれない?」

 

 あれ、なんか偉そうじゃないぞ。ダダもこねてない。それになんか、かわいい? うん、気のせいだね、きっと。

 

「いいけど。その代わりこっちの言うことも一つ聞いてね。それでよかったらいいよ。もちろん宿題じゃあないからね。」

 

「うんっ!」

 

ゾッ

 

 あれ、寒気が。なんか、 おねえちゃんからたまに感じるのといっしょの寒気がするんだけれど……。うん、気のせいだね、きっと……。

 

 気を取り直して宿題、いってみよう!

 

「じゃあ、私の宿題はね、これよ。」

 

”   日記”

 

 そう書かれた濃紺のA4のノート。薄めの表紙でつるつるしてそう。

 

「え、なにそれ? それで自由研究ってどういうこと?」

 

 よく見ると、おかしいことに気づく。日記の文字の左横。なにやらテープ? のような何かが張ってある。日記の文字がなぜかノートの中央上部ではなく、右側上部寄りに書いてあったのはそのせいだった。

 

スルッ!

 

 めくるよね、当然!

 

えっ……。

 

 僕は目を疑った。だって、そこに書いてあったはどうみても僕の名前。え、僕観察日記ってこと? それ手伝えってどういうこと? え? え……?

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