「....姉さん。俺らと組まねえか?」
リオスは言った。だが、ゴロンの娘は不思議そうな顔をしながら少年を見つめる。彼女は首を傾けると言った。
「組む?なにそれ。あんた、人間の子供でしょ?悪いけど今あんたの遊び相手してあげる時間はないの。また今度にしてくれる?」
「まぁまぁ。ちょっと待ってくれよ、姉さん」
少年は余裕たっぷりの表情で腕を組むと、もったいぶった調子で続けた。
「俺...会っちゃったんだよね。...その...」
リオスは少し間をおいて、横を見ると、もう一度相手を見ながら微笑んだ。
「何よ?もったいぶってないで言いたいことあるならさっさと...」
苛立った様子でそこまで言うと、ゴロンの娘は何かに気づいたように目を見開いた。
「...え?うそ!まさか?」
「そのまさかってやつさ。あんたの探してるドゴロって男さ」
「...いつなの?どこで?」
相手はたちまち喰いつき、迫るように尋ねてきた。リオスは手を上げて相手を宥めると、またもったいをつけて言った。
「...今日の昼過ぎさ。南の洞窟前から少し北上した荒れ地でね。でも、西の方に移動してたから、その後どうなったかまでは知らねぇがな」
「わかった。教えてくれてありがと」
ゴロンの娘はそこまで聞くと踵を返し、急ぎ足で歩き始めた。
「ちょ...ちょっと待てってば!話を聞けって!」
リオスは慌てて手を伸ばすと、ゴロンの娘の手首を掴んだ。
だがその瞬間だった。少年の身体が空中で一回転したかと思うと、地面に背中から叩きつけられた。下が砂地だったのが幸いしたが相当の衝撃だ。
「い....痛ってぇ」
リオスは呻きながら上体を起こした。リメイラと呼ばれたゴロンの娘は両手を腰に当ててこちらを睨みつけている。
「ちょっと、レディの身体にいきなり触れるなんてどういうつもり?」
彼女は凄みのある声で言葉を継いだ。
「子供だから手加減してやったけど、大人の男だったら腕へし折ってやるところよ」
「お..おいリオス!大丈夫かよ?」
テツジとラジーブが駆け寄ってきた。だがリオスは手を上げて問題ないと合図すると、頭を掻いた。
「わ..悪りぃ悪りぃ。あんたらの文化を理解してなかった俺がいけなかった。謝るよ、姉さん」
「分かればいいわ。で、何?話って」
相手が平静に戻ったのを見てリオスは安堵した。少年は立ち上がると口を開いた。
「あんたがその男を探すのを手伝ってやろうって話さ。何しろ......」
リオスは傍らに立った仲間たちを手で示した。
「このラジーブはシーカー族の狩人さ。長距離追跡ならお手のもの。んで、こっちのテツジはモグマ族の族長代行。穴掘りと宝探しなら誰にも負けねぇ」
「ふぅん...。そうなんだ」
ゴロンの娘は腕を組んだ。だがあまり感心している様子でもない。彼女は肩をすくめると口を開いた。
「で、あんたたちの望みは?何か欲しいものがあるってわけでしょ?」
「ご明察。俺たちの望みは.....」
リオスは顔を上げ、改めて相手を見た。男たちと比べたら細身ながらも、ビッシリと筋肉に覆われた体躯。投げ飛ばされたその瞬間、予感が確信に変わった思いだった。
「―――俺らと一緒に魔物どもと戦って欲しいんだ。だって姉さん...あんた、強えぇだろ?それもヤバいくらいのレベルで。ひょっとして男の戦士より強かったりして?」
リオスがそう言ってから数秒の間彼女はこちらを見つめていたが、やがて抑えきれない微笑がその顔に浮かんでくるのが見えた。
「...ふふん。わかる?」
「わかるさ。もう歩き方からして違うじゃんか」
だが、その時族長が後ろからやってきた。
「....リメイラ。悪いことは言わん。嫁入り前に外を出歩いたりしたら悪い評判がつきかねん。お前は家にいるのじゃ。ドゴロの奴も頭が冷えたらそのうち戻ってくるじゃろ」
それを聞いたゴロン娘は白目を剥くと思い切り溜め息をついて父親にこう答えた。
「...あのさ。あたしの言ったことまだわかってないの?評判とか嫁入りとかそういうこと言ってる場合じゃないって。それにドゴロ兄ぃが出て行ったの、誰のせいだと思ってんのよ?」
彼女は唸るように言葉を継いだ。
「ああ、もう決めたわ。あたし、この人間たちと組むわ」
「な...な?何を言い出すのじゃ、リメイラ!」
族長はますますうろたえる。だがゴロン娘は顔を上げ、父親の顔に人差し指をつきつけると言い放った。
「いい、パパ?この人間たち見てごらんなさいよ。こんなヒョロヒョロの弱そうな連中だって魔物と戦おうとしてるのよ?それなのにゴロン族は仲間割れ。恥ずかしくないの?『族長の権威が地に落ちるから、ワシは謝らない』?」
彼女は両目を寄り目にしながら声色を使って言うと、また真顔に戻って続けた。
「―――寝言は寝てからいいなさいな!あたしはゴロン族が何の役にも立ってないのが死ぬほど悔しいのよ。だから、もうパパの言うことは聞かないわ。この人間たちと一緒にドゴロ兄ぃ探しに行くから!じゃね!」
* * * * * * * * * * * * * * *
それからしばらくその場は混乱状態だった。狩人は族長に対し「欲しい。一晩。宿」と言い、その族長はしきりに「嫁入り前に外を出歩いたりしたら評判が...」と娘を掻き口説く。そのゴロン娘はリオスたちに対し「話は決まったわ。さっさと出発しましょ」と持ち掛けるが、少年は慌てて「ちょ..ちょっと待てよ。もう夜だぜ。今日は俺たちも一晩休ませてくれよ」と押しとどめる。そんな一同をテツジはポカンと口を開けて見守っていた。
だが、結局その晩、三人はゴロンの洞窟で寝泊まりすることになった。柔らかな砂の上で見張りに立つこともなく休み、すっかり疲れを取ったリオスたちは翌朝早く支度し、洞窟から出た。
「お待たせ。行こ」
リメイラと呼ばれたゴロンの娘もすぐに出てきた。旅装を整え、右手には長い柄のついた道具を持っている。
「それ何だい、姉さん?」
歩き始めながらリオスが尋ねると彼女はそれを二・三回クルクルと回しながら答えた。
「ハンマー。遺跡で拾ったの。使いでのいい武器だから持ち歩いてんのよ」
「へぇ.....珍しいな。ゴロンって素手で戦うもんだとばっかり思ってたよ」
少年の感想を聞くと、彼女は溜め息をつき、目を伏せた。
「そう。『ゴロンの誇り....』ってやつね。いろいろあるのよ。真のゴロンはあれをしない、これをしないっていう掟がね」
「掟?」
少年が興味を惹かれて尋ねると、彼女は片手を挙げて数え上げた。
「一つ。真のゴロンは武器を使わない。必ず素手で戦う。二つ。真のゴロンは敵の攻撃を避けない。必ず受け止め、それから反撃する」
「へぇ。すっげぇ。メッチャ男らしいじゃん」
感心するリオスに彼女は言う。
「でもね、それで戦って死ぬ奴、ちょくちょく出るのよ。男らしさのために命まで捨てるって、どんだけ?ってあたしは思うんだけどね」
彼女は前方を見やり、砂を踏みしめて進みながら言った。
「それに第一、ゴロンの世界では女はいつも家にいなきゃいけないの。だからその時点であたしは掟破りの存在ってわけ。小さいころからいつもああやってパパから叱られてたわ」
「じゃあ姉さん、どうして戦いたいって思ったんだ?」
天候は良く晴れている。朝の日差しが照り付け、たちまち気温が上がってきた。
「あたしは小さいころからドゴロ兄ぃが遊び相手だったわ。ドゴロ兄ぃは父親を早くに亡くしたから、私のパパが父親がわり。あたしにとっては実の兄貴も一緒よ。だから兄ぃ相手に相撲とか拳闘の稽古ばっかしてたの」
彼女はそこでふっと笑うと、リオスを横目で見ながら言った。
「でもね、兄ぃってゴロンの中のゴロンみたいな男なのよ。もう口癖だったわ。『避けるな』『受けろ』『拳で語れ』って、あたしにもよく言ってたわ」
リオスは興味津々で聞きながら言った。
「じゃあ姉さん、ドゴロ兄貴の影響で?」
「まぁね。でも――」
リメイラはハンマーの柄を肩に担ぎなおした。
「兄ぃと違って、あたしは力じゃ勝てない。ゴロンの女は甲が薄いし、体重も軽いし、男たちみたいに受け止めたら普通に死ぬ。だから....」
彼女は真顔に戻ると呟いた。
「避ける。崩す。読む。死角を突く。兄ぃが『やるな』って言ってたやり方を全部やった。そうしなければ勝てなかったから」
リオスは想像した。あの戦士長と、このリメイラという娘の体格は大人と子供以上に違う。その体格差がありながら、幼い頃から相撲や拳闘の練習相手をしていたというなら、強くならないほうがおかしい。
「避ける。崩す。読む。死角。合理。強い」
ラジーブが横から口を出す。だがリメイラは肩をすくめた。
「そりゃ人間からしたらね。でも、そうやって勝ったときにはあたしはメッチャ怒られたものよ。『その戦い方はゴロンではない』ってね。でもそうしなきゃ勝てない。だからある時点からあたし、兄ぃと稽古するのをやめたの。それで夜な夜な家を抜け出しては外の魔物ども相手に腕試ししてたわ」
「マジかよ?たった一人で?」
「そうよ」
驚くリオスに、彼女は平然と答えた。四人はやがて円筒状の建造物から放射状に伸びた壁を乗り越え、昨日戦士長たちを見かけた荒れ地に近づいていった。
「で、どっちに行ったの?」
リメイラが顔を上げて周囲を見渡す。リオスは西の方を指さしたが、すぐに声を上げた。
「こっちさ.....ってちょっと待った。ヤバイ奴が来やがった...!」
高速で回転しながらこちらに向かってくるものが見える。シャコマイトだ。リオスは前方に走り出しながら仲間たちに声をかけた。
「俺が囮になる!お前らは逆方向に逃げろ!」
人の背の高さほどもありそうな石灰性の殻に入った魔物がこちらに突進してくる。リオスは相手を十分引き付けると、突然横に方向を変えてダッシュした。
側方を回転体が唸りを上げて通り過ぎる。だがそいつは大きくカーブし方向を変えて追尾してきた。リオスは必死で走った。だが息が切れる。
しかも、前方には退避できそうな遮蔽物がない。少年は立ち止まって相手に向き直ると身構えた。
猛スピードで突っ込んでくる。ギリギリまで引き付けると、リオスは横っ飛びした。小さな稲妻のようなものを発散し、空気が焼けるジリジリという音を残し回転体が身体をかすめて通り過ぎていった。
だが体を起こして相手を見やると、またも方向を変えてこちらに迫ってくる。
「クソッ...キリがねぇ」
リオスは毒づいた。すると、背後からリメイラが近づいてきた。
「見てらんないわ。ちょっとどいてなさい」
彼女はそう言うと少年の前に立った。
そこに高速でシャコマイトが突っ込んでくる。リメイラは両手でハンマーの長い柄を握って構えると、大きく振りかぶった。
「ヌウンッ!」
リメイラがハンマーを振り抜く。物凄い衝突音とともに、シャコマイトの軌道が逸らされる。回転体はふたりの前を通り過ぎて後方に走っていく。すると、彼女は後方に向き直ってやおら体を丸め、自分も高速で回転しながら敵を追いかけていった。
やがてシャコマイトは方向を変えるため速度を落とした。だがその瞬間リメイラが追い付いた。
「オリャッ!」
彼女は身体の丸めを解いて跳躍すると、凄まじい勢いでハンマーを振り下ろした。直撃を喰らったシャコマイトの殻が真っ二つに割れる。
着地した瞬間に、リメイラは横にハンマーを振り抜いた。殻の内部にいた本体は、ひとたまりもなく叩き出されてしまった。十メートルほど吹っ飛んで地面に叩きつけられた本体が、慌てふためいて多脚を動かしながら逃げようとする。だが致命傷を喰らったのか、その動きは心もとない。
リメイラはゆっくりと敵に歩み寄ると、武器を振り上げて止めを刺し、それからハンマーのヘッドを砂に埋めて掃除し始めた。
「―――あんた、弱い癖に勇気だけはあるのね。感心したわ」
武器を掃除しながら彼女はリオスのほうを向いて微笑んだ。だが半分呆れ顔だ。
「弱い癖にって....そりゃ余計だよ」
リオスは苦笑しながら立ち上がったが、こう付け加えた。
「ま...しゃぁねぇか。魔物と初めて戦ったのも一週間前くらいだもんな」
「うそ。あんた、戦士の家系じゃないの?」
リメイラが驚いて目を見開く。リオスは答えた。
「親父は剣士さ。だけど俺が五歳のとき家を出ていったんだ」
ラジーブとテツジも追いついてきた。狩人は感心したように漏らした。
「力。速度。強い」
「ま、ゴロンの中じゃあたしは『邪道』扱いだけどね」
リメイラは肩をすくめる。彼女は武器の掃除を終えると顔を上げた。
「で、リオスだっけ。あんたがドゴロ兄ぃを見たあと....」
すると、狩人が手を上げた。近くに生えていたアザミを一心に見つめている。
「見る」
彼はそう言うと、身体を屈めた。
「枝、潰れる。重い、通る」
他の三人も集まって狩人の指さすものを見た。目を凝らすと、アザミの枝が不自然に折られている。
「....方向、こっち、来る。あっち、行く」
ラジーブは枝の折られ方から、その上を通り過ぎていったものの進行方向を推測して指さした。
「やるなぁラジーブ。これで探し人がどこ行ったのかわかるってもんだぜ」
テツジが感心して言った。だがリメイラは納得していなかった。
「ほんと?魔物が通った跡かもしれないじゃん」
しかし、狩人が指した方向にしばらく歩くと、同じようなアザミが同じ方向に折られている。それが何度も続いた。
「どうやらこっちで正しいみてぇだな。これで信用するだろ、姉さん?」
リオスがリメイラの顔を見ると彼女はやっと同意した。
「...そうね....でも」
「でも、なんだよ?」
尋ねると、彼女はやや顔を曇らせて答えた。
「....こっちにはゴロン古代坑道があるの。もしかしたらドゴロ兄ぃ、そこに.....」
* * * * * * * * * * * * * *
「ゴロン古代坑道っていったい何だい?」
四人は頭上から日差しが照り付けるなか西を目指して荒地を横切っていた。リオスが尋ねるとリメイラは答えた。
「千年くらい前の坑道よ。あたしたちの先祖が掘ったの」
やがて一行は西側の岩壁に行き着いた。狩人が身軽に崖の途中の岩棚に登り、ロープを垂らす。残る三人も登ると、リメイラの先導で一行は奥まった場所にある洞窟に行き着いた。
「この先。でも、入り口は埋まってるはず。もうこれ以上は掘らないっていう誓いをしたっていうから」
リメイラは言う。リオスは不思議に思って尋ねた。
「あんたらゴロンって掟とか誓いとか一杯あるんだな。大変じゃねぇのか?」
「そうね。あたしもそう思う。.....でも」
彼女は洞窟に足を踏み入れながら続けた。
「ゴロンみたいなデカくて強い種族がやりたい放題やったら、それはそれで困ると思わない?」
「ま...そりゃそう...か」
リオスは答えた。四人は洞窟の暗がりを前進した。リオスが先頭に立ち、ゴロン娘が二番手、狩人が三番手、そしてテツジの順番だ。
だが、その時前方から金を裂くような悲鳴が聞こえた。人間の子どものような高い声だ。
「聞いたか?今の?」
リオスは血相を変えてリメイラを顧みた。彼女も真剣な表情で頷いた。
「行こう!」
少年は真っ先にダッシュした。洞窟の前方には、ぼんやりとした光が見える。ほどなく四人は開けたスペースに出た。前方、右、そして左に穴が分岐している広場のような場所だ。天井に穴が開いているのか、そこから太陽の光が射し込んでいる。
だが、リオスはその広場の真ん中で繰り広げられていた光景に目が釘付けになった。
ボコブリンどもが数匹、何かを取り囲んでいる。彼らの中央には、人間の子どもくらいの体格の者が倒れていた。鬼どもは、まだ弱々しく動くそれを鉈でつつき回していた。
「き......さま......らぁ.........ッ!」
リオスの胸を憤激が満たし、その髪の毛が逆立った。少年は剣を引き抜くと問答無用で走り寄った。
近くにいたボコブリンが振り向いた。深い袈裟斬りを浴びせ、突きで脇腹を貫く。鍔まで埋まらんばかりに突き刺した刃をこじって切り口を引き裂くと、さしものボコブリンも血を吐きながら倒れた。
残りの者たちが身構える前に、リオスは跳躍して剣を振り上げた。二匹目の頭に思い切り縦斬りを叩きつける。着地しざま身体を回転させる。ふらついた相手の首に体重の乗った斬撃が直撃し、深い斬り跡から血が噴出した。
残った二匹が慌てて武器を構える。だがリオスは剣を軽く血払いすると、大音声で呼ばわった。
「まだやんのか!お゛ら゛ぁッ!」
一匹が浮足立って後じさりする。だがもう一匹は何事か喚きながら鉈を振り上げた。
リオスは無構えのまま前に出た。上から鉈が降ってくる。上半身を反らし、ステップして躱すと、左胸めがけて突きを繰り出した。一発で決まった。そいつが崩れ落ちると同時に、四匹目が踵を返して逃げ出した。
粗い呼吸を静めながら剣を放り出し、地面に倒れた人間の子供のような姿の者を助け起こす。だがその顔を見てリオスは驚きのあまり息が止まりそうになった。
顔が金属でできている。顔だけでなく身体もだ。その目は既に閉じられ、身じろぎもしていなかった。
「な....なんだ....これ....?」
「機械亜人よ」
後ろから追いついてきたリメイラが言った。彼女は手を添え、その子供のような者をリオスの足元に横たえさせると、両手を旨の上で組ませた。
「可哀そうにね。鬼どもに捕まったのよ。こいつらって、戦う術を持たない、人間よりも弱々しい存在なのよ」
彼女は言った。そしてリオスに向き直った。
「それはそうと、あんたそこそこ戦えるのね。見直したわ。まあ不意打ちだからゴロン的にはちょいマイナスだけど」
「そうかい?ま、期待してなかったお褒めの言葉は嬉しいよ」
少年は頭を掻くと狩人を指さした。
「でも、全部ラジーブのお陰さ。こいつが教えてくれたんだ」
「一週間で?」
「そ。一週間で」
リメイラが目を丸くし、少年は恥ずかし気に頷く。
「...ねぇ、そもそもあんたなんで突然魔物と戦おうとなんか思ったわけ?」
リメイラは俄然興味を持ち始めたようだ。少年は言葉を探しながら答えた。
「そりゃ...最初は行方不明になった親父を探してたんだ。でも途中から、親父みたいな生き方をしてみろって...ある人から言われてさ」
「あんたのお父さんって剣士?」
「ああ。剣士さ」
そこまで会話したときだった。
遠くから鬼どもの喚き声。洞窟の壁に反響するその声は、奥、右、そして左の全ての分岐から聞こえてきた。
「お...おい。おめぇら!ゆっくりお喋りしてる場合じゃねぇみたいだぜ!」
テツジが慌てた声を上げた。周囲を見回すと、洞窟の分岐から次々とボコブリンが雪崩れ込んでくる。
ニ十匹。いや、三十匹。いや、もっとだ。
四人は完全に鬼どもの群れに包囲されてしまった。