洞窟の壁に反響するボコブリンどもの喚き声は、奥、右、そして左の全ての分岐から迫ってきた。
周囲を見回すと、洞窟の分岐から次々と鬼どもが雪崩れ込んでくる。ニ十匹。いや、三十匹。
いや、もっとだ。あっという間に四人は完全に包囲されてしまった。
「ヒイイ!ここら辺は鬼の巣になってやがったんだ!」
テツジが頭を抱える。
鬼どもは武器を構えながら怒声を上げ、ジリジリと包囲を狭めてくる。
だがリメイラは眉ひとつ動かさないまま、肩に担いでいたハンマーを手に持ってクルクルと回しながら言った。
「ねえ、あんたら自分で自分の身は守れるわよね?あたしひとりでこいつら全滅させるくらいわけないけど、さすがに非戦闘員守るのはキツいわ」
「見くびらねぇでもらいてぇな。俺だってもう経験済みなんでね」
リオスは剣を拾い上げて構えると精いっぱいの威勢で答える。すると彼女は言った。
「オッケ。じゃ、はじめよ」
だが、リメイラが動く前にラジーブが矢を撃ち始めた。額に矢を喰らった先頭のボコブリンがたちまち動きを止め、ゆっくりと崩れ落ちる。
それが合図だったかのように、鬼どもが一斉に襲い掛かってきた。
だが、矢に倒れた仲間の死骸を踏み越えてきた一匹がいきなり吹き飛び、横の壁に叩きつけられた。
リオスは驚嘆した。その瞬間が見えなかった。鬼が吹き飛んだそのあとに、リメイラがハンマーを振り抜いたように見えたのだ。
いっぽう狩人は素早く矢をつがえ、あらゆる方向に射かけている。その全てが命中だった。だが、敵の数が多い。二、三匹がその間に接近してきた。
「テツジさん!俺の後ろに!」
リオスは叫ぶと、左手でモグマ青年を庇いながら、右手の剣を横に伸ばした。突進してくるボコブリンの棍棒を剣で弾き、入身して逆回転斬りで首筋を払った。深い斬り跡から黒い血が噴き出す。
再び凄まじい打撃音が聞こえる。目を上げると、ハンマーを喰らったらしき別の鬼が高く宙を舞い、天井に叩きつけられていた。
だが、感心している暇はなかった。立ち尽くす一匹目の鬼を押しのけるようにして二匹目の鬼が襲い掛かってきたからだ。
リオスは首を斬ったばかりの鬼の襟を咄嗟に掴むと盾にした。弱った鬼の頭部に棍棒が誤爆した。相手が苛立ってもう一度棍棒を振り上げたところで、少年は盾代わりの鬼の脇から剣を突き出して相手の胸を刺し貫いた。
目の前の二匹を蹴倒す。だが、三匹目が今度はテツジを標的にして襲い掛かってきた。モグマ青年は悲鳴を上げ尻もちをついた。
だが、少年剣士から目を逸らしたのは鬼側のミスだった。リオスはそいつの横からいきなりジャンプ斬りを浴びせかけると、剣でその脚を払った。もんどり打って倒れたところに突きを入れる。
顔を上げると、ラジーブは鉈で斬りかかってきた鬼を腰投げし、相手が空中にあるうちに矢を放って射殺していた。だがその背後から新手が斬りかかる。しかし狩人は後ろに目がついているかのようにそれを躱し、短剣で素早く相手の喉を斬り裂いた。
「ヌウンッ!ヌウンッ!」
唸り声が連続で聞こえる。リメイラがハンマーを振り回しているのだ。打撃を喰らった鬼どもが、まるで案山子のように次々と倒れていく。
気がつくと、三十匹は軽く超えていた鬼どもが半数ほどになっていた。戦闘開始から十秒も経っていない。
包囲を続けていたボコブリンどもは急速に勢いを失い、立ち尽くし始めた。だがリメイラは両手でハンマーを八の字に振り回しながら、広場に散らばった鬼どもに挑み掛かる。まるで落石でも喰らったような打撃音とともに、ボコブリンが倒れる。
狩人は精密な射撃で生き残りをひとりまたひとりと射倒していたが、ふとリオスを目が合うと、手を止めて困ったような顔で肩をすくめた。
リメイラが止まらない。
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁッ!」
彼女は気合いの声を上げ、もはや浮足立ったボコブリンどもを追い散らしていた。こちらに背を向け始めた個体にさえも容赦なくハンマーを叩きつける。生き残りが数えるほどになり、武器を放り捨てて逃げ出すと、ゴロン娘は振り回していたハンマーをやっと減速し始めた。
ハンマーのヘッドが唸りを上げ空気を斬る音が、次第に弱まっていき、やがて完全に止まった。
リオスは茫然としながら洞窟の中を見回した。床一面には、頭部に矢を受けて倒れた鬼の死骸。そして壁のそこらじゅうには、頭や胴体を砕かれた鬼どもが干しトカゲのような有様でへばりついている。
「お...おい。おめぇらよぉ...。なんか戦力バグっちまってねぇか?」
立ち上がるのも忘れたまま、テツジが怯えた声で言った。リオスもまた同感だった。これだけの数を相手に、合計三十秒も費やしていない。
リメイラは、足元の砂にハンマーのヘッドを埋めると、涼しい顔で狩人のほうを向いた。
「そこの狩人の兄ちゃんも結構戦えるのね。やるじゃん」
「我、普通。敵、雑魚」
狩人は苦笑いすると、鬼どもの死骸を回って矢を回収し始めた。
「なんだラジーブ。お前笑えるのかよ」
意外に思ったリオスが声をかけると、狩人は鬼の死骸から矢を引き抜きながら答える。
「我、笑う。強い者、見る」
「へえ。強い奴を見ると笑うんだってさ。聞いたかい、リメイラ姉さん」
リオスは剣を血払いすると鞘に納めた。そして、先ほど鬼どもに囲まれていた機械亜人の遺体の脇に跪いた。
「こいつは埋葬してやりてぇもんだな。機械とはいっても感情がありそうだったし」
「なに?なんか言った?」
武器の掃除を終えたリメイラが近づいてきた。リオスはもう一度言った。
「なぁ姉さん。こいつ、ただの機械なのか?悲鳴上げてたところ見ると、そうじゃねぇように思えるんだけどな」
「...そうね。『元』人間っていうべきかしら」
リメイラが呟いた。リオスは驚いて目を上げた。
「『元』って...どういう意味だよ、姉さん?」
「聞いた話じゃあ、人間の魂を機械に移し替えたのが機械亜人らしいわ。永遠に働くことができるようにって」
「え...永遠に...働く?」
リオスは愕然として呟いた。
* * * * * * * * * * * * * * *
「学者だった大叔父さんから聞いた話だけどね。何百年も前のことだけど、人間たちはできるだけ多くの鉱物を掘るために、魂を機械に移し替えることを始めたんだって」
リメイラは言う。四人は、ボコブリンの死骸だらけの広場から左の分岐を通って外に出、そこに機械亜人の遺体を埋葬することにした。彼女はもはや動かない機械亜人の顔の上に砂を寄せてやりながら続けた。
「それか...『身体を機械に置き換える』っていうのかな?とにかく、機械亜人になると眠らずに働くことができるようになるって。で、しまいにその数は何十万体にもなったんだって。それがここラネールで採掘とか工場労働に従事してたわけよ」
「な...なんつぅか...エグぃ話...だな」
リオスは思わず感想を漏らした。するとリメイラは悲し気に応じた。
「そうね。でも、これってあたしたちゴロンのせいでもあるらしいわ」
「あんたらのせい?どういうことだよ」
少年が尋ねると、リメイラは作業の手を止めて天を見上げた。
「...古代、硬い甲と拳を持つゴロン族は地の資源を掘って分け与える役割を与えられてた...。でも、ゴロン族は利に敏い人間の貪欲さを嫌い、取引に応じなかったの。それで人間たちは機械亜人を造ることを思いついた。そしてひたすらラネールの地下を掘り続けた。ゴロン族は、人間たちの勝手だと言って干渉しなかったらしいの。それが今のラネールの荒廃を生んだってわけよ」
狩人とテツジも腕を組んで真剣に聞き入っている。リメイラは再び作業に戻った。
「水脈は枯れ、砂漠化も進み、落盤もそこいらじゅうで起きるようになった。でもあたしが何よりもやるせないのはね...」
彼女は機械亜人の身体を埋め終わると、墓標代わりに近くにあった石を積み始めた。
「彼らは本当に身を守る術がないの。絶対に人を傷つけないよう設計されたとかで。そのせいで鬼どもにとってはていのいい慰みものよ」
「マジかよ...気の毒過ぎるだろ」
リオスは石積みを手伝いながら答えた。リメイラは少し溜め息をつくとまた口を開いた。
「でもね、ゴロン族にとっては弱い者は根本的に存在価値がないのよ。だから、ゴロンの男たちはわざわざ機械亜人を守ってやろうなんて思わないわけ。あたし、パパにも何度も言ったわ。強い私たちが守ってやるべきなんじゃないかって。でも何も変わらなかった」
墓標が完成すると、リメイラが代表して祈祷を捧げ、四人は立ち上がった。いつの間にか、頭上では太陽が傾きかけている。
「で...古代の坑道ってのはどっちなんだい、姉さん?」
リオスが尋ねる。
「この道真っすぐよ。数時間で着くわ」
リメイラが答えると、狩人が口を挟んだ。
「少年、モグマ、休む。坑道、戦い、また」
「俺?俺は大丈夫だよ。なぁ、テツジさんもそうだろ?」
リオスが言うとモグマ青年は震え声で答えた。
「ぇ?ぁ..あぁ。そ...そうだ...な..。う...うん...」
「オッケ。無理してヘバったら元も子もないわね。どっかで野営しましょ」
リメイラは譲った。一行がいるのは両側を岩壁に挟まれた谷間のような場所だった。日が傾き始めるとあっと言う間に暗くなる。リオスたちは苦労して灌木や茂みから焚き木を集めると焚火を熾した。
* * * * * * * * * * *
食事が終わると、ラジーブによる特訓の時間となった。リオスは狩人の二刀流でさんざんに打ち据えられたあと、ひと息つく間もなく、今度は弓矢を渡された。
「虫。撃つ」
少年は狩人の指示を聞いて呆気にとられた。焚火にたかってくる虫を撃てというのだ。
「で...できるわけねぇだろ。人間にゃ無理だって」
思わずそう呟くと、ラジーブはいきなり少年の手から弓矢を取り、それを構えて岩壁に向かって撃った。そして見てみろ、と仕草で示した。
リオスが岩壁に刺さった矢を回収しに行くと、甲虫が矢尻に貫かれて死んでいる。
「我。人間。できる」
狩人は平然と言う。リオスは狩人の前に立って、何度も矢を放った。だが一発も当たらず、ヘトヘトになったところで終了を言い渡された。岩壁に挟まれた場所なので矢を回収するのが楽だったのだけが救いだった。
ようやく片付けを終えて座り込むと、テツジが笑いながら尋ねる。
「リオス、今日は何回死んだんだ?」
「まぁ...五十回くらいかな」
リオスが頭を掻きながら答えると、リメイラが向き直ってきた。
「ねぇ。さっきの話の続き。あんたの父さんって剣士だったんでしょ?」
「あぁ。そうだよ」
「で、その...行方不明になった剣士のお父さんを探してんのね...?」
「あぁ。そうだ」
そこまで答えると彼女は何かを思い出すように数秒黙っていたが、やがて口を開いた。
「...あんたの父さんってもしかして、フロウっていう名前じゃない?」
「...な...なんで知ってんだよ!」
リオスは驚嘆した。するとリメイラは言った。
「だって会ったことあるもん。今でも覚えてるわ。人間なのにゴロン族の間で客人待遇だったもの。強烈に印象に残ってる。大柄でも強そうでもないのに沢山の魔物を倒したって言われてたから」
「そ...そうなんだ....」
少年は言葉を失ってしまった。リメイラは微笑むと、焚火のほうを向いて続けた。
「あの人が遠征に行くたびにあたしこっそり『連れてって』ってせがんだけど、『族長に怒られる』ってどうしても連れてってくれなかった。でも..ある朝いつものように家の出口で見送って...そのまま帰ってこなかったの」
その場を沈黙が覆い、焚火が爆ぜる音だけがポツポツと響いた。だが、リメイラはまた言った。
「...でも一緒に行ったゴロンたちは、乱戦で行方不明になったって言ってた。だから...ねぇ、リオス」
彼女は励ますように少年の肩に手を置いた。
「あたしは、もしかするとあんたの父さんはどこかで生きてるんじゃないかって思ってるの。あんたもそう思ってるから、探しに来たんでしょ?」
「あ...あぁ。そうだ...な」
リオスは焚火を見つめながら言った。
「もし...親父と会ったらまず一発殴らせてもらうよ。なんで俺とお袋を置いて出て行ったんだ...って。いや...」
少年は呟く。
「なんで俺を連れてってくれなかったんだ...ってな」
「その意気よ。希望を持ちなさい、ね?」
「あぁ...」
リメイラに言われ少年は微笑んだ。だが、ふとある事実に気づいて顔を上げた。
「なぁ...姉さん。親父が行方不明になったのって十年前だろ。あんた、一体いくつなんだい?」
するとリメイラは機嫌を損ねた様子で眉を歪めた。
「ちょっと、レディにいきなり歳を尋ねるなんてどういうつもり?」
「ご..ごめん!悪気はなかったんだ」
リオスが慌てて謝ると彼女は溜め息をついた。
「―――まぁ初回だから多めに見てやるわ」
リメイラは続けた。
「三十二歳。花も恥じらう乙女ってカンジ?」
「え...でもやっぱ俺らよりはだいぶ年上...」
するとゴロン娘は再び眉をひそめて睨みつけてきた。
「あんたなんにも知らないのね。ゴロン族は寿命が人間の二倍くらいだから、人間に換算すれば十六なの!わかった?」
相手の剣幕に圧倒され、リオスは頷いた。するとテツジが食後の干し果物を齧りながら呟いた。
「あれ?じゃあおめぇらみんな十代ってことじゃねぇか。アラサーは俺っちだけかよ...」
「あら、そうなの?ねぇ、モグマって平均寿命って六十くらいでしょ?人生後半戦なんだからこんなとこうろついてないで早く婚活でもしていいひと見つけなきゃじゃん」
リメイラはテツジに言う。だが、モグマ青年は得意そうに胸を叩いた。
「へへへ...その点なら大丈夫だぜ。俺っち故郷にフィアンセがいるからよぉ。この冒険が終わったら結婚するのさ」
「マジ?凄いじゃん。でもさ、それって逆に死亡フラグっぽくない?大丈夫?」
ゴロン娘がふざけてモグマの肩を小突く。テツジは大袈裟によろめいた。
「リオス、あんたはどうなの?いいひといないの?」
リメイラに問われて少年はキョトンとした。だが少し考えてみると、幼馴染のイリーナの顔が浮かんだ。
「...まぁ...気になる相手くらいなら....」
「じゃ、リメイラ姉さんがアドバイスしたげる」
ゴロン娘は咳払いをすると改まった口調で切り出した。
「告白は早くしなさい。距離縮めてからとか悠長なこと言わないで、迷わずすることね」
「迷わずって...でも断られたらどうすんだよ」
「バカねぇ。そしたら素知らぬ顔して友達に戻るのよ。そんで忘れたころにまた告白すりゃいいでしょ」
「そ...そんなもんかなぁ」
ゴロン娘の恋愛講釈は延々と続いた。やがて夜が更けると、テツジが全員のために穴を掘ってくれた。ところが見張りの順番を決めようとしていると、リメイラはさっさと自分の寝床に潜り込んでしまった。リオスは慌てて声を掛けた。
「なぁ...姉さん。交代で見張り...」
「あ。あたしパス」
彼女は平然と言った。
「だって睡眠不足で目の下にクマでもできたら嫌じゃない。うら若い乙女がそんな顔になってるの見たくないでしょ?」
リオスが反論する前にリメイラは穴の奥で体を丸めてしまった。
「選択、ない。我、お前、モグマ、見張る」
ラジーブも諦め顔で言う。結局三人で輪番で見張りしてその夜を明かした。
* * * * * * * * * * * * * * *
翌朝、谷に日が射し込む前に一同は宿営を片付け出発した。
「あぁよく寝た!モグマの巣穴って静かだし寝心地もいいし最高ね」
リメイラは大きく伸びをしながら歩き始める。リオスは呟いた。
「戦力倍増したはいいけど色々気ぃ遣うことが増えて大変だぜ」
「何?なんか言った?」
睨まれた少年は慌てて首を振り、話題を変えた。
「なあ姉さん、古代坑道って広いのか?」
「広いっていうより..............」
リメイラは少し考えてから言葉を継いだ。
「ひとつの都市くらいの大きさって聞いたわ」
「そ...そんなにデケェのか?」
少年は驚いた。テツジも声を上げる。
「スゲェな。俺らモグマ族でもそこまでデケェ穴は掘ったことがねぇよ」
「だからなのよ。封鎖されたのは」
リメイラは足を運びながら答える。足元は、いつしか深い砂地になっていた。
「掘り続けたら落盤が起きるから。でも...もしドゴロ兄ぃたちがそこに行ったとしたら心配よ」
彼女はそう言いながら眉根を寄せた。
「兄ぃは誓いを重んじるひとだし、危険もじゅうぶんわかってるわ。でも、あたしたちゴロンは岩石が主食だから、戦士たちを養うためには最低限はどこかを掘らないと」
「じゃあ一刻も早く見つけて戻るよう説得しねぇとな」
リオスは応じた。数時間歩き続けると、道が少しづつ登り坂になってきた。足元の砂が深くなっていく。その中には岩塊も多く混じっていた。まるで、元々谷だったのが埋め立てられたかのような地形だった。
「なんか道が悪くなってきたな。本当にこっちなのか?」
思わず少年が問うとゴロン娘はまた睨みつけてきた。
「うるさいわね。地元民のあたしを信用しないの?」
「い...いやそりゃそうなんだけど」
リオスは困惑顔で答えた。
「なぁ...ヘンな匂いがしねぇか?」
テツジも鼻をヒクつかせながら言う。リメイラは苛立った様子で答える。
「なに?あんたまで文句あるの?」
「い...いや、そういうわけじゃねぇよ。ただ...匂うんだよ、なんか」
モグマ青年は慌てて黙り込んだ。
「クソッ...なんなんだよこれ」
リオスは呟いた。深い砂に脚をとられ、思うように進めない。しかも砂の中には夾雑物が多く混じっていて、サンダル履きのリオスにとってはしょっちゅう何かが足に当たるので気持ちのいいものではない。
少年は、思わず足に当たった細長い棒状のものを蹴り上げた。砂の表面から飛び出したそれは、前を歩いていたテツジの後頭部にコツンと当たった。
「おいリオス!なんか当たったぜ」
モグマ青年が振り返る。リオスは慌てて謝った。
「ごめんテツジさん。わざとじゃ.....」
そう言いかけて、少年は目を見張り、立ち止まった。
砂地に落ちたその物体は骨だった。大腿骨だ。
明らかに人間のものだった。
「え?...な...なんなんだよ...ここって..?」
少年は驚愕の面持ちで周囲を見渡した。他の仲間たちも立ち止まった。
周囲の砂からはそこらじゅうから骨が顔を出していた。
肋骨。肩甲骨。手骨や尺骨や橈骨。
...そして、頭蓋骨もだった。