断崖のアルタン・ハーン 〜12歳の歴史オタ、前世の知識と近代兵器で女系ゲリラ部隊を率いて大帝国を押し返す〜 作:つる植物
ルース帝国軍で手に入れた200名の
持ち帰れないものは火を付けた。
他の部族を太らせるメリットはないからだ。
先触れはを出しておいたので皆が出迎えに来てくれていた。
ウルスに入ると俺達は大歓声をもって迎えられた。
「アルタン!」
母の声がしたのでそちらに首を向けると走ってこっちに向かって来ていた。
俺はエペルから下りるとそのままギュっと抱きつかれたのであった。
「良かった……無事に帰って来てくれて……」
人目憚らずにぼろぼろと泣く母に俺も込み上げてくるものがある。
しかしこの先を考えると俺は人前で泣くわけにはいかないのだ。
でも抱き返すくらいは良いだろう。
道すがらテムレンを始めとする今回襲撃に参加した女衆には俺がウルスに戻った時にする事を話して了解はもらっている。
ありがたい事にテムレンは俺と母をそっとしておいてくれた。
テムレンがウルスに物資の搬入を終えると俺に声を掛けてくれた。
俺が頼んだ通り人も集めてくれた。
名残惜しいが母との抱擁を終わらせた。
テムレンを後ろに従えて俺は略奪して来た物資の前に立った。
集まっていた女衆の注目が集まる。
テムレンが口火を切る。
「これからアルタンより全員に話がある!」
俺は一歩前に出た。
「皆聞いてくれ!このウルスの部族長ついてだ!」
「先の戦いで部族長である偉大なる父バトバヤルは死んだ」
「本来であればその息子たるバトが次の部族長なるべきである」
「しかしバトはまだ5歳、当然部族長の責務を果たす事は出来ない」
俺は腰に刺してあるナイフを取り出すとおもむろに自分の三つ編みを切った。
その瞬間、小さな悲鳴が聞こえた。
「故に部族長はバトバヤルの息子、このアルタンが継ぐ!」
俺は両手を広げる。
俺が部族長として務め果たせるかどうか、略奪してきた物資、
「俺が部族長ふさわしくないと思う者がいればこの場で名乗り出るが良い!」
当然名乗り出るものなどはいない。
名乗り出たら撃ち殺すつもりだった。
俺は首を動かして全員の顔を確認した。
「反対者はいないようだな……ちなみに俺の事を女と言った奴は容赦はしない。男である俺に対して女と言うのは最大級の侮辱あるとここに宣言しよう!」
俺が一歩下がるとテムレンが締めてくれた。
我らが
ん?テムレンさん今俺のこと
訂正する間も無く皆それぞれ動き出す。
テムレンを見るといたずらっ子みたいな顔で俺に舌を出して来た。
腹心に一番舐められてると知って俺は心の中で溜息付いたのだった。
俺の演説から数日が経過した。
皆俺のことをバガ・ハーンと呼ぶ様になってしまった。
意味は『小さな王』だ。
首謀者は分かっているがどうすることも出来ない。
テムレンは優秀でちゃんと俺を表では
2人きりになった時もおちょくってくるとかは全くなく普通に接してくれていた。
さて、俺の
まぁ、狩りに勤しんでいたせいでウルス内の力関係が全く分からないのでテムレンと母が中心となってその辺りの配分を決めてくれた。
ちなみにルース帝国軍が攻めてくる少し前にハラ・タスの周りの集落の非戦闘員についても全部ハラ・タスのウルスに避難させている。
親戚が多いからってのもあるけど単純に放っておけばルース帝国軍に蹂躙されて奴隷と物資を提供することになるからだ。
俺を頭としてテムレン、母、そして親戚の部族の女達が一同に会して会議を開いた。
最初に全員で危機の共有をする必要があったからだ。
「ってことはルース帝国は大規模な軍を派遣してくるってことかい?」
テムレンが驚いたように言う。
「あぁ、おそらく3年後くらいに再度攻めてくると思う」
大隊が蛮族に殲滅させられた。
ルース帝国にとっては醜聞以外の何物でもない。
皇帝の威信のためにも、外交的にも汚名を返上せねばならない。
「今回の部隊は大隊1000人、おそらく次はその10倍、1万の軍勢になると思う」
会議に参加していた全員の顔が青くなる。
1000人の部隊にこちらは3000人が文字通り殲滅されているのだ。
「……勝機はあるのかい?」
「はっきり言って勝機はない、でも負けなければいいだけだ」
「どういうこと?」
「言葉通りの意味だ。今回はたまたま殲滅出来たけど次回も殲滅する必要はない。押し返せば良いだけだ」
まぁ、簡単ではないんだけどな。
「どうやって?」
「まぁ、敵の敵は味方なんだよ」
おそらく舌が複数枚ある国が介入してくるはずだ。
「ルース帝国にも敵はいる。おそらく今回の勝利でその敵からの接触があるはずだ」
「そいつらは信用できるのかい?」
「え、全く信用出来ない。なんならルース帝国の方が信用出来るまである」
「……どうすんだい」
「信用は全くできないけどルース帝国を押し返すためには協力してもらうことは必須。そのためにはハラ・タスをこの地域で最大規模にする必要がある」
ここからが会議のキモである。
「これからは積極的にほかの部族を吸収していくことになる。そのためにも皆には婿を迎えてもらうことになる」
皆が一斉にこっちを見る。
「まるで男を買い漁るみたいな言い方だね」
「まさしく買い漁るんだよ。ルース帝国が攻めてくるのは3年後なんだぞ。悠長に子どもが育つのを待ってられないんだよ。持参金なしで結婚出来ると聞けば下ってくる奴はいるはずだ、それもかなりの数」
持参金、つまり金がなければ結婚できないのが遊牧民の泣き所である。
それが結婚して家庭を持てて家畜や土地が手に入る。
「当然、持参金なしだから家の実権は渡さない。まぁ、結婚した後に舐めている何人かは見せしめに殺すことになると思うけど……」
事前にきつく言っても分からない奴は絶対にいるのだ。
何人かは形式的な裁判を開いて処刑されることになるだろう。
「とにかく、しばらく俺はほかの部族に接触して回ることになる。おそらくいくつかの部族は女子供しかいないと舐めて襲撃してくることになると思う。テムレン、新型のライフルで皆殺しにしろ」
「あんた、やることえげつないねぇ」
「俺が不在の時に本当に下りに来た部族は取り合えず客人としてもてなせ」
最初のいくつかの部族は優遇してやろう。
良い思いをしているという噂が広がれば雪崩を打って下ってくるだろう。
「よし、これで話は終わりだ。俺は明日からほかの部族を回ってくる」
「了解」
「テムレン、俺のお付きは気が短い奴は排除しておいてくれ」
「いいけど、なんで?」
「最初は絶対に舐められる、戦争するにしてもこっちから撃つわけにはいかない」
「……なるほど」
テムレンはドン引きしていた。
会議は無事?終わったのだった。
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