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ある日、森の中で熊に出会った。「くまさん」なんて可愛らしいものでは無い。「熊」である。
花咲く森の道であれば童謡にでもなったのかもしれないが、今は冬である。花は無い。あるのは針葉樹ぐらいのもの。
さて、この目の前に熊がいる状況はどうすればよいのか。困ったな。寝たふり…いや、今は冬だ。一歩間違えたら永遠に眠ってしまう。木の上に登る…ダメだ。登ってる内に食われる。しかも買い物帰りだから荷物が邪魔。大方冬眠前の脂肪を蓄える時期だから腹減ってるだろうな。どうしたものか…。
「お嬢さん。お逃げなさい。」
ん?今この熊喋ったか?しかもむっちゃ渋い声で。そうだな。例えるなら…そう、妖怪ウ○ッチのウィ○パーのような感じである。というか何から逃げればいいんだ。お前か。お前から逃げりゃええのんか。そうと決まれば華麗なスタートダッシュを決めるため、クラウチングスタートのポーズを取る。
スタコラ サッサッサのサ
スタコラ サッサッサのサ
ぴたり。立ち止まる。今、凄く後方から視線を感じている。 誰だ と言うまでもなく、逃げている最中にトコトコと足音が聞こえていたので、こいつしかいない。
「おい。何してんの。」
「!?」
「何か用ですか?」
「お…落とし物をしませんでしたか?」
こいつ人見知りか。どもってるぞ。もしこれがかの有名な童謡だったなら、私が白い貝殻の小さなイヤリングを落としていることになるが、そんなものは持っていない。では私は何を落としたのか。
「あの…これ…」
熊が差し出してきたのは先ほどコンビニで買った品物達。振り向いてみると、道に点々と品物が…何このヘンゼルとグレーテル。この熊は拾ってくれたらしい。
「…ありがとう。」
「どういたしまして。」
「…」
おや?熊が何か言いたげにこっちを見ている。
→戦う
→逃げる
→持ち物
→歌う
…最後のコマンドがおかしい。ポ○モンかよ。
戦うは無し。逃げる…また逃げるのかってなるから、持ち物…今拾ってくれたばかりだしな。
………………見て見ぬふりをしてたけど、四番目しかないか。
私は息を吸い込んだ。
かくして。歌い終わり、どやあ。と、どや顔で熊を見た。
「」
顔が真っ白になっている。何が悪い。ジャ○アン並の歌唱力で何が悪い。そんな顔スンナ。悲しくなってきたジャマイカ。
「ちょっと。何か言いなさいよ」
「うわあああああああ」
私の歌唱力に熊が逃げた。
どうしよう。あいつ私の荷物持っていきやがった。
「待てやゴラアアアアアアアア」
私は走り出した。