脳無との戦闘後、オールマイトが助けに来てくれたので、一休みしようとした。
「こんな時に寝てんじゃねえ!クソ大根!」
「耳元で叫ぶんじゃねえよイガグリ君、こちとら連戦で疲れてんの」
「誰がイガグリじゃ!殺すぞ!」
「わかった!わかった!爆ちゃん、起きるってばさ」
寝ようとしたら爆豪に耳元で叫ばれた。瞼を開けると、オールマイトが脳無に連撃の拳をお見舞いしている。だから爆豪、キレるな。今のお前の方がよっぽど敵みたいに怖いぞ。あと、誰がクソ大根だ。次からヘドロの爆ちゃんって呼ぶぞ?
「ヒーローはいつだって命懸けさ!更に向こうへ…プルスウルトラ!」
オールマイトは、脳無の腹に拳を突き上げ、天井高くまで吹き飛ばす。脳無は、天井の硝子を突き抜け、白い雲に突入した。衝撃で雲が霧散し、カラッとした青空になる。
絶望を吹き飛ばし、天気すらも変えてしまう。これが、日本トップヒーローの実力か。
「ふぅ、全盛期なら五発で済んだが、300発も打ってしまったよ!」
前言撤回、力は衰えたと本人は言っているが、それでも、化物だ。何故この人が、長年トップヒーローとして君臨しているのか良くわかった。
「脳無さえいれば奴なら!何も感じず立ち向かえるのに…」
手だらけ男は、ブツブツと呟きながら、首をガリガリと搔き毟っている。
「どうやら子供たちは一人を除いて棒立ちの様子。あと数分もしない内に増援が来てしまうでしょうが、死柄木と私で連携すれば、まだ殺れるチャンスは充分にあるかと」
「そうだよな、そうだよ、そうだ、やるっきゃないぜ、目の前にラスボスがいるんだもの。何より、脳無の仇だ」
そう呟いた手だらけ男こと死柄木は、黒靄にオールマイトを襲うよう命令を出した。
「オールマイトから離れろ!」
さっきまで隣にいた緑谷が黒靄に殴りかかる。その時、一発の銃弾が、靄で転移した死柄木の掌を貫いた。
「ごめんよ皆、遅くなったね」
「1-Aクラス委員長!飯田天哉!ただいま戻りました!」
非常口委員長の飯田が、プロヒーローの教師達を引き連れて戻って来た。緊張で固まっていた体が、安堵によって緩くなっていくのを感じる。あぁ、助かった。
「あーあ、来ちゃったなゲームオーバーだ。帰って出直すか黒霧」
「逃がすかよ!On,Yeanーーーーーーー!」
トサカ頭の英語教師プレゼント・マイクが、死柄木たちに向けて、大声量の音波で攻撃している。
「今回は失敗だったけど、今度は殺すぞ平和の象徴オールマイト。そして、俺をトラックで撥ね飛ばしたクソガキ。お前はオールマイトより先に絶対ぶっ殺す」
スナイプ先生の銃撃を黒靄で逃げた敵連合は、靄の中に沈み、USJから去っていった。
まぁ、なんだ、うん。
「何か大変なことになったね緑谷っち」
「いや他人事!?」
俺ちゃんの言葉に、足をズキズキと痛めているのか這いつくばりながらツッコんでいる緑谷。律儀だな。
教師陣に保護された俺達は、塚内さんという警察の人の元、教室まで移動する。その後、各自帰宅となり、帰路に着いた。
俺の家は、雄英高校から自転車で15分掛かる距離の場所にある一軒家だ。自転車をカーポート近くの駐輪場に置き、玄関の鍵を開ける。
「たでーまー」
「お帰りなさい」
玄関からリビングに入ると、ソファーの上で寝転がりながら、アイスを食べている少女が一人。
コイツの名は、飛騨遥。本人曰く別世界から来た。個性に近しいスーパーパワーと呼ばれる力を持つヒーローや敵が存在する世界から来たらしい。俺と遥との出会いについて話すぜ。あ、これ強制イベントだからスキップ不可ね。
中学三年の冬休みのこと。夜の公園を散歩中だった俺が、野良の敵にガンつけられた時だった。道端で金を揺さぶられたが、面倒くさかった為、十円玉だけ渡した。そしたら、馬鹿にしてんのかと激昂され、十円玉を地面に叩きつけられる。あぁ、発行数が少ない年数のギザ十だったのに。と、思いながら警察に通報しようとした矢先、
「そこの男!未成年にカツアゲなんていい度胸ですね!サクラスパイダーが成敗します!」
某蜘蛛男みたいな柄をした桜色のパーカー少女が、照明柱の上にしゃがんでいた。サクラスパイダーと名乗った彼女は、手首にある機械から射出した糸で野良の口を塞ぎ、全身を糸巻にする。え?サクラスパイダー?どこかで聞いたことが有るような気がしなくともない。そう考えていたら、彼女は糸でスイングしながら、蹴りを叩きこんでいた。
「おりゃあ!」
「ぐえっ!?」
空中一回転からの飛び蹴りで、一発KO。着地による風の影響で、パーカーがふわりと舞い上がる。
あら、茶髪の美少女。大きなお友達とかが好きそうなビジュアルしてるね。お兄さん、心配しちゃう。
そう、くだらない事を考えながら、彼女に御礼を言おうとした。その時だった。
「きゅぅ」
「お、おい!どうした?」
かっこよく決めた後、蚊の鳴いたような声で鳴き、ばたりと倒れ込んだサクラスパイダーちゃん(仮)。
サクラスパイダーの背中に手を回し、安否を確認すると、きゅるるというお腹の虫が聴こえた。発生源は、彼女のお腹だった。サクラスパイダーちゃんは、頬を林檎のように真っ赤に染めて、恥ずかしそうに呟いた。
「その、二日間、水以外摂取してなくて」
可哀そうに思った俺は、ポッケに入れていた満腹バーを渡した。受け取った瞬間、ガツガツと一心不乱に食べていたっけな。力が少し戻ったのか、水を一口飲んだサクラスパイダーは自己紹介を始めた。
「先程は食べ物を恵んでくださりありがとうございました。私は飛騨遥。サクラスパイダーとして活動しています。といっても、この世界のヒーローではないですが」
遥の話では、元居た世界で敵との交戦中に、敵が放った攻撃で時空が歪み、異世界へと放り出された。そして、二日前に、この世界にやってきたとのこと。道端に落ちていた千円札の顔から違う世界ということを理解し、そのお金は交番に届けたらしい。あらま、めっちゃ良い子。それで、一人ぼっちで苦しい中、ヒーロー活動していたみたいだ。
「一応、この世界だとヴィジランテって呼ばれる犯罪者予備軍扱いだけど、遥ちゃんは異世界人だからセーフっしょ」
「わ、私は犯罪者予備軍だったのですか!?」
「ダイジョブダイジョブ、世界が変わればルールも変わる。仕方ないさ、大丈夫バレなきゃ犯罪じゃない」
このまま、放っておくのも見るに忍びない。そう思った俺は、彼女を家に連れ帰った。
これから、家族会議の時間だ。
「父さん、母さん、この子は諸事情により家なき子でね。公園で俺の落とし物を拾ってくれた優しい子なんだ。お願い、この子を住まわせてあげて」
遥が異世界から来訪したことを隠し、親父とお袋に遥の現状を説明したら、快く承諾した。というか、遥の境遇に涙ぐんだお袋は「遥ちゃん、住むところが無いなら、ウチに住まない?私は大歓迎よ!」と言いながら、遥に抱き着いていた。こうして、遥は俺んちの居候として住むことになった。
しかし、もう一つ問題があった。彼女は、この世界の戸籍が無い。なんせ、戸籍が無い為、公共機関の恩恵は受けられない。いじめが原因で、療養の為に笑井家に居候している親戚のいとこということにした。一応、無戸籍ということで、役所に申請途中という設定も付け加えた。
え?話がご都合展開すぎるって?仕方ねえだろ。こういうのは、物語のお約束なんだよ。
しみじみと回想に浸っていたが、現実に戻る。ふと、遥の方を見ると、桜色の小さな舌で、アイスの先端を舐めていた。うむ、中々グッとくるな。俺の息子ももっこりと起き始めたぜ。遥の方をじっと見ていると、怪訝な顔で此方を見た。
「…なんですか?」
「いや、ミルクアイスバーを舐めている遥ちゃんを見ると、なんかエロいぶほっ!?」
「へんたい!」
顔面に枕を投げつけられた。もう、思春期なんだから。そう思いながら足元を見ると、右足に蜘蛛の糸が巻き付いていた。彼女に引っ張られ、カーペットに背中を打つ。ちょいちょい、強引すぎぃ!
シャツを捲られ、腹部や胸肌を見られる。リビングでするプレイにしては攻めすぎてない?まだ、親父とお袋が仕事中でいないから良かったが、な!
俺の個性の性質上、どんな攻撃も一日で治る怪我で済むし、回復能力も異常に高い。
「ちょっとちょっと、ここリビングだって!もう…はじめてだから優しくしてね?」
「先程、テレビで一が通っている高校に敵が襲撃したというニュースを目にしました。やはり、戦闘後と思わしき傷跡があります」
「流石の俺でも、無視されると恥ずかしくて凹むよ」
「貴方と似ている人を私は嫌というほど知っていますので」
「それってデップー?いいよね、あのダークヒーロー」
「どうして、一が彼の事を知っているのですか!?」
俺の腹に馬乗りになっている遥は、首を傾げながら尋ねてきた。大丈夫、この作品はR15だから心配するなよ諸君。R18の期待している?首を長くして待ってってちょ。
「簡単さ、俺はこれを読んでいるから。遥のことも、この漫画に載っているよ?」
俺は、小道具部屋から取り出した『デッドプール:SAMURAI』を遥に見せる。彼女は、漫画の表紙を見て、一瞬苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべるが、受け取った。
「まぁ、此処は遥の言う平行世界だし?デッドプールやスパイダーマンは、俺にとって個性黎明期以前の作品なんだよね。そもそも、この作品自体が原作の二次創作だから好き勝手な事できるし」
「メタ発言やめてください!見ていて痛々しいですよ!」
えぇ~メタ発言がこの小説の醍醐味なのに?メタ発言は控えろってこと?それだと、この作品が味のしないガムになっちゃうぜ?そう思いながら、遥の方を見ると、漫画をパラパラと読み進めては、震え始めた。
「嘘、私が漫画に出て…でも、このやり取り記憶にある?うぅ、頭が痛くなってきました」
マジ破天荒だよデッドプール。戦闘の軽口もスパイディーやデップーを意識しているんだよな。
さてさて、遥の情緒が不安定になって来たな。ま、俺のせいだけど
「遥ちゃん遥ちゃん」
「何ですか、一」
「明日、臨時休校でお休みだから、俺ちゃんとデートでもしない?」
「ふぇ!?」
林檎のように顔を真っ赤にした遥。もう、熱血系な性格って割りに可愛いんだから!
その後、自分のお尻で俺のもっこりに気付いた彼女によって、前蹴りで折られそうになった。
その頃、とある町のバーにて、死柄木は命からがら逃げ延びた。
「両腕両足撃たれた…完敗だ」
「脳無もやられた。手下共も瞬殺だ、子供も強かった」
「それに、平和の象徴は健在だった。話が違うぞ…先生」
『違わないよ』
ねっとりとした声が、パソコンから聴こえる。死柄木は、先生と呼ぶ人物に向かって、文句を垂れ流した。
『ただ見通しが甘かったね』
『うむ…舐めすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。ところで、ワシと先生の共作の脳無は回収してないのかい?』
パソコンから、爺臭い声が聞こえてくる。どうやら、パソコンの先には二人の人間が集まっているようだ。
「そうだ…二人いる。一人はオールマイト並みの速さを持つ子供がいたな。そして、もう一人は俺をトラックで撥ね飛ばしやがったクソガキだ」
『へぇ…え?大丈夫かい?弔』
「あの邪魔が無ければオールマイトを殺せたかもしれない…ガキがっ!ガキがっ!」
怒りで荒れ狂っている弔の様子を見た悪意の親玉は、コホンと咳払いをして、彼を元気づけようと声を掛けた。
『悔やんでも仕方ない!今回だって決して無駄ではなかったはずだ。精鋭を集めよう!じっくり時間をかけて!』
パソコンの先にいる悪意は、死柄木に向けてエールを送る。その言葉により、死柄木の目に光が戻っていく。
『我々は自由に動けない!だから君の様な〈シンボル〉が必要なんだ。死柄木弔!次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』
悪意は、死柄木を悪党側の次世代の象徴として、祀り上げる。それは、己の野望の為に、死柄木は先生の期待に応えるべく、内側の憎悪を燃やし続けた。
主人公の体育祭における言動
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ハジケリスト!
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真面目にやれ