9月も毎日18時更新です
クリスマス編までプロット作って完成しました
よろしくお願いします
「障子くん、常闇くんのダークシャドウは光に弱いはずだ!」
白煙くんの言葉に、障子くんもハッとする。
「そうだ、体育祭の時、爆豪の爆破の光で縮んでいた……!」
「なら、ここから後退して爆豪くんと轟くんのところに誘導しよう! 二人の火力をぶつければ正気に戻せるはずだ!」
透ちゃんの手を引き、障子くんと共に全速力で後退する白煙くん。しかし、暴走するダークシャドウは容赦なく巨大な爪を振り下ろしてくる。
「逃がさないよ、常闇くん! ――相澤先生、名前はまだないけど、必殺技いきます!!」
白煙くんは腹の底から声を絞り出し、体内の全ての煙を前方に大爆発させた。その白い煙をギチギチの超高密度に圧縮し、常闇くんをも包み込めるほどの巨大な『煙の拳の盾』を形成!
――ズガガガガガァンッ!!!
暴走するダークシャドウの猛攻を、バックドラフト仕込みの堅牢な質量兵器と化した煙の盾でガチッと受け止め、時間を稼ぎながら爆豪くんたちのエリアへと強引に突き進む!
同時刻――開墾広場
「ピクシーボブ!!」
不意を突かれ、スピナーらの猛攻によってピクシーボブが遂に倒れ伏す。しかし、キャリアの長いプロは折れない。マンダレイが怒りの刃を振るい、ステインの教えに固執するスピナーを鮮やかに無力化、見事打ち倒した。マグネと虎のパワーバトルは互角のまま地面を砕き続けている。
そして、そのすぐ傍らでは――。
「これで、終わりだァァァアアアッッ!!」
「ぐわアアアアアアッッッ!?」
緑谷くんが自身の肉体が壊れるのも厭わず、全力を解き放った。『ワン・フォー・オール 100%(あるいはそれ以上)』の文字通り命を懸けた拳が炸裂し、最強の防壁を誇ったマスキュラーの巨体を遥か彼方の岩壁へと吹き飛ばした。
同時刻――森の開けた場所
「個性が出なーい」
「嘘だろ!?本当かよ!?マジか!?」
相澤先生の『抹消』の眼光が光る中、個性を封じられたトゥワイスとトガヒミコの分身たちが翻弄される。その隙を見逃さず、梅雨ちゃんは麗日さんの手を引き、「今は退くわよ、麗日ちゃん!」と脱出を図る。
「逃げろ、麗日、蛙吹!!」
二人は相澤先生の背中に守られながら、戦地からの離脱に成功した。
同時刻――ムーンフィッシュのエリア
「肉……爆豪勝己の、肉を……!」
ムーンフィッシュの凶刃に爆豪くんと轟くんが手を焼いていた、まさにその瞬間。
――ドシィィィィンッ!!!
「コイツ、USJの!!」
「脳無……!!」
八百万さんたちを蹂躙したあの武器持ちの『脳無』が、突如としてこのエリアへと乱入してきた。最悪のヴィランと最凶の怪物の二体に挟まれ、流石の二人にも一瞬の戦慄が走る。
同時刻――毒ガスの深部
「くたばれヒーロー」
「げほっ……もう、限界、だ……!」
ガス濃度が最大になり、鉄哲くんの意識が途切れかける。その時、拳藤さんの目が鋭く光った。
「これで、吹き飛びなさい!!」
拳藤さんが両手を限界以上に巨大化させ、うちわのように激しく一振り! 凄まじい突風が巻き起こり、マスタードの周囲の毒ガスが一気に吹き飛ばされて視界が開けた。
「しまった……!?」
「そこだぁぁぁあああッ!!」
ガスが晴れた一瞬の隙を突き、鉄哲くんが鋼鉄の肉体を弾丸のように変化させて突撃! マスタードの顔面に強烈な鉄拳を叩き込み、見事にしとめてみせた。
ガスマスクの少年が気絶すると同時に、森を覆っていた不気味な紫色の霧がみるみるうちに薄くなっていく。
「鉄哲!!」
「やったな、拳藤……」
勝利の雄叫びと共に、鉄哲くんはその場に膝をついた。
それぞれの戦局が激しく動き、林間合宿の夜はいよいよクライマックスへと向かって加速していく。
同時刻――森の奥
暴走する巨大なダークシャドウの猛攻を、高密度に圧縮した煙の盾でギリギリと防ぎ止める白煙くん。
その背中で、腕をぎゅっと回して必死にしがみついていた透ちゃんは、ガスマスクの奥でこんな緊迫した状況だからこそ、必死に頭をフル回転させていた。
「エンちゃん! 私、閃いちゃった! 相澤先生と考えたやつより、絶対こっちの方がいいよ!」
「ええっ!? 透ちゃん、こんな時に何!?」
「さっきの煙の盾は**『ホワイトシールド』! で、頭の煙を拳にして殴るやつは『ホワイトスマッシュ』**! これならシンプルで、すっごく分かりやすいしカッコいいよ!」
バックドラフト事務所の「ホワイト」を継承しつつ、シンプルにまとめたセンス抜群のネーミング。
あまりの状況の緊迫度と、透ちゃんのどこかズレた、でも最高に可愛い励ましに、白煙くんの緊張がふっと解けた。
「あはは……! ありがとう透ちゃん、それ採用! すっごくいいよ!」
「白煙、葉隠、爆発が見える!!あそこだ!!」
思わず笑ってしまう白煙くんの頭から、ポワンと温かい白い煙が小さく弾けた。
そのまま障子くん、透ちゃんと共にダッシュし、ついにムーンフィッシュ&脳無と対峙していた爆豪くん、轟くんのエリアへと合流する。
「おい、後ろから何かヤバいのが――」
轟くんが振り返った瞬間、白煙くんが「二人とも、避けて!!」と叫びながら『ホワイトシールド』を解除。
「ウオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」
解き放たれた暴走ダークシャドウは、目の前にいたムーンフィッシュと殺戮特化型脳無を一瞥するや否や、怒り狂ったように巨大な爪を振り下ろした。
――ドガァァァァァンッッ!!!!
「うぎゃあああ!?」
「っ!?」
一撃。文字通りの圧倒的な暴力によって、あれだけ苦戦したムーンフィッシュと強固な脳無が、一瞬にして地面に叩き伏せられ、戦闘不能に陥った。強すぎる!
「今だ、二人とも! 光を!!」
「分かった!!」
「チッ!!」
白煙くんの合図と同時に、轟くんが最大火力の『炎熱』を放ち、爆豪くんが視界を染めるほどの強烈な『爆破』の光を炸裂させる。
「オォォ……ッ!?」
眩い光をダイレクトに浴びたダークシャドウはみるみるうちに縮んでいき、常闇くんの影へと収まった。
「……ふぅ、助かった。すまない、みんな……」とへたり込む常闇くん。
だが、その横で爆豪くんは盛大に顔をしかめ、チッと大きく舌打ちをした。
「あァ!? 何勝手にアイツら片付けてんだよクソ闇ィ!! 俺があの化け物ごと纏めてぶっ潰してやろうと思ったのによォ!!」
相性が良すぎてあっけなく終わってしまった戦いに、爆豪くんは完全に拗ねて不機嫌マックスになっていた。
「爆豪、キレてる場合じゃない」
障子くんが厳しい声で制する。
「さっきのヴィランが言っていた。奴らの狙いは、お前……『爆豪勝己』だ。お前を誘拐しに来たんだ」
「あァ!? 俺を攫うだと!? ふざけんじゃねえ、返り討ちにしてやらぁ!!」
当然のごとくブチギレる爆豪くんだが、轟くんが「お前を単独で戦わせるわけにいかねえ。みんなで囲んで守りながら施設へ戻るぞ」と冷静にフォーメーションを指示。
守られる立場になった爆豪くんのイライラは、いまにも大爆発しそうなほど頂点に達していた。
しかし、その防衛陣形を整えようとした、まさにその瞬間だった。
「うわっとっと! 逃げた先がここかよ、大混雑だな!」
「あはっ! みんないる! 楽しそう!」
森の茂みを突き破って、トゥワイスとトガヒミコ、そしてそれを追う相澤先生がこのエリアへと乱入!
さらに、トゥワイスが即座に個性を発動し、青い炎を纏った「荼毘の分身」を一気に5人もその場に増殖させた。
「「「「「――焼き尽くせ」」」」」
「お前たち、避けろ!!」
「相澤先生!?」
一斉に放たれる青い劫火! 森の闇が青一色に染まり、視界が完全に遮られる。
相澤先生が「お前たちは下がれ!!」と叫びながら分身を消去しにかかるが、トガのナイフとトゥワイスの変幻自在の攻撃が入り乱れ、エリアは一瞬にして敵味方が入り乱れる大乱戦の渦へと巻き込まれた。
「透ちゃん、僕の近くに!!」
「う、うん!!」
白煙くんは『ホワイトシールド』を展開して青い炎を防ぎ、透ちゃんや常闇くんを必死にカバーする。轟くんも氷結の壁を作って応戦し、全員が目の前のヴィランの猛攻を凌ぐことで手一杯になった。
そして、ほんの数十秒の、混沌とした乱戦が収まりかけた頃――。
「……あれ? 爆豪くんは!?」
周囲の炎を煙で消し止めた白煙くんが、ハッと声を上げた。
轟くんが周囲を見回すが、そこにいるはずの、あの騒がしい金髪の姿がどこにもない。
「嘘、さっきまでここにいたのに……!」
透ちゃんが周囲の空間を手探りで探すが、爆豪くんの気配は完全に消え失せていた。
「ハッハハハ! ヒーローの卵諸君、実に見事な大乱戦だった!」
頭上からの軽快な声に、全員がハッと息を呑んで見上げる。
近くの木の上、月光を浴びて立っていたのは、シルクハットにマスクを纏った怪しげなヴィラン――ミスターコンプレスだった。
彼は手袋をはめた指先で、キラリと光る小さな『青いビー玉』を弄びながら、不敵に笑った。
「私のマジックにより、ターゲットの爆豪勝己くんは……確かに『確保(回収)』させていただいたよ!」
最悪の混戦の隙を突き、隠れていたヴィランの手によって、爆豪くんは声も上げられぬまま拉致されてしまった。林間合宿の夜は、最悪の局面を迎えるのだった。
「ハッハハハ! ターゲット回収、これにてマジック完了!」
シルクハットを模したマスクの奥で、ミスターコンプレスが不敵に嗤う。その指先には、爆豪くんを閉じ込めた小さな青いビー玉が握られていた。
「爆豪!!」
轟くんの叫びが響く。しかし、動揺するヒーローチームの隙を見逃さず、相澤先生が猛然とコンプレスへと飛びかかった。
「捕縛布……!! お前たちの好きにはさせん!」
鋭くしなる布がコンプレスの身体を捉えようとした、まさにその瞬間だった。
「――貴方は邪魔です、イレイザーヘッド」
虚空から突如として湧き出た、どろりとした不気味な黒いモヤ。
「なっ……!?」
相澤先生が目を見開いた時には遅かった。現れた黒霧のワープゲートが相澤先生の身体を瞬時に飲み込み、遥か別の場所へと強制転移させてしまったのだ。
「相澤先生!!」
常闇くんが声を荒らげる。担任という最大の戦力を失い、残された生徒たちの間に戦慄が走る。
「みーんな、傷だらけ!!誰を好きになるか迷っちゃう」
「俺は好きだぜトガちゃん!!」
「「「「「――プロは居ない。このまま生徒を焼き尽くす。それだけで雄英の評判は地に堕ちる」」」」」
トガヒミコ、トゥワイス、そして5人の分身荼毘。この圧倒的な戦力を前に、今の自分たちでは逆立ちしても勝てない。
(逃げるしかない……! 僕のフルパワーの煙幕で視界をゼロにして、みんなを逃がすんだ……!!)
白煙くんは歯を食いしばり、体内の煙を一気に最大出力で爆発させようとした。
しかし、その思考さえも、ヴィラン側は完全に読んでいた。
「無駄な抵抗はやめなさい、白煙薫くん」
黒いモヤの奥から、冷徹な声が響く。
「私についてくるなら、周りの者たちは見逃してあげましょう」
「な、なっ……!? 何を言って……!」
白煙くんの頭の煙が、驚愕で激しく波打った。爆豪くんの誘拐に紛れ、この極限の状況下で、自分に対する明確な「スカウト」が突きつけられたのだ。
「断れば、貴方の仲間の命は保証しません。……特に、今貴方が背負っている、その姿の見えないガールフレンドは、一番に死ぬことになるでしょう」
「くっ……!!」
黒霧の冷酷な脅迫に、白煙くんの身体がガタガタと震え出す。自分の背中には、さっきからずっと必死にしがみついている透ちゃんがいる。彼女を守るための『ホワイトシールド』も、今の黒霧のワープを前にしては無力に等しい。
「ダメだよエンちゃん! そんなの、ついていっちゃダメ!!」
透ちゃんが白煙くんの背中で、泣きそうな声を上げて叫ぶ。
「白煙! 俺たちに構うな、お前がヴィランに渡る必要はない!」
障子くんもまた、ちぎれた腕の激痛に耐えながら、必死に声を張り上げた。
「……ッ!!!!」
言葉よりも先に、轟くんが動いた。白煙くんを、爆豪くんを救うため、大地を割るほどの本日最大の氷結がヴィランたちへと牙を剥く。
しかし――。
「「「「――無駄だ、轟焦凍」」」」
5人の分身荼毘が一斉に声を揃え、禍々しい青い業火を吹き荒らした。迫り来る巨大な氷壁は、その圧倒的な熱量の前に一瞬にして蒸発し、激しい熱風となって轟くん自身を襲う。
「ぐわああああああああああああああああああ!!!!」
「轟くん!?」
凄まじい爆風に吹き飛ばされ、轟くんが地面に激しく叩きつけられる。氷結のスペシャリストさえも一瞬で無力化する青い炎の壁。もはや、抗う術は残されていなかった。
「白煙薫くん。ご決断を。我々の時間は限られている」
黒霧の黒いモヤが、じわじわと白煙くんの足元を侵食していく。
仲間たちの命。大好きな透ちゃんの命。それを救うための選択肢は、最初から一つしかなかった。
「………………分かりました。ついていきます。だから、みんなには手を出すな」
白煙くんは静かに拳を握り締め、覚悟を決めた目を黒霧に向けた。彼の足元に、暗く深いワープゲートが完全に口を開ける。
「ダメだ、白煙!!!!」
障子くんが残された手を必死に伸ばし、その身体を掴もうと駆け出す。
「エンちゃん行かないで!!!! 嫌だよ、行かないでぇ!!」
透ちゃんが白煙くんの衣服を掴み、涙をボロボロと流しながら烈火のごとく泣き叫んだ。
しかし、無情にもワープの光が白煙くんの身体を包み込んでいく。
白煙くんは最後に振り返り、切なげに、しかし優しく微笑んだ。
「障子くん、透ちゃん。……みんなを、よろしくね」
その言葉を最後に、白煙くんの姿は黒いモヤの向こう側へと完全に消え去った。後には、ただ青い炎がパチパチと爆ぜる、静まり返った地獄の森だけが残された。
爆豪勝己の拉致。そして、白煙薫のまさかの連行。
ヴィラン連合、完全勝利。
ヒーローチーム、完全敗北。
林間合宿の夜は、あまりにも重く、絶望的な結末と共に幕を閉じた。
本当は因縁のあるマスキュラーと白煙くんを戦わせたかったけど、頭の中では上手く行きませんでした
せっかく秘密基地から中央広場まで移動させましたが、そこでマスキュラーやられちゃいました