――Side 頼久
あれから時間は飛んで高育へ戻った翌日。
オレはCPを観ながら1人考え事をしていた。
ふむ……今回の合宿ではあまり大きな変化はなかったな。
いや、女子グループで6位になったのが龍園のクラス女子がメインで、オマケに最下位の時はデメリット倍の効果持ってたトキを引いてたからダメージでかいのか……。
……今までの試験で変動が割とデカかったのもあるのかもしれない。
そして変動はこんな感じ。
坂柳 :1040→1028
一之瀬:1063→1090
龍園 :1162→1091
堀北 :911→934
あと1とかすごいことになったな(他人事)
同率1位になったらどうなってたことやら。
いや、それよりも……
「1年生の4月時点にほぼ戻ったから、そろそろひと波来そうだな」
「それってCP減らす試験……?」
いつの間にか起きてきた愛里が小首をかしげる。
「可能性あるかなと。ゲルマニアグループのおえらいさんが数十億単位でポケットマネー投げ銭して、電気系統はオレの権限で回してるアンサラーの電気があるから、予算は潤沢ではあるが……な」
「そういえばCP、1年生全クラス合算すると、4月より少し増えてるもんね……」
「そして胃痛になりそうなのはオレたち紋章持ち。ワンミスでCP50とか普通に飛ぶようなことになりそうだから戦々恐々ってところだ」
「怖がってるように見えないのに、不思議……」
「頼久は、もっと胃痛なことに慣れてるからじゃない?」
しれっとやってきたのは恵。
「例えば?」「ゲルマニアグループ総帥とか、親に詰められたりとかで……ほら、平田くんのためにやってきたときの千手理事の威圧感とか恐らく抑えてたものだし。……本気なら頼久でも胃痛になるんじゃないかなって」
「否定できないな」
「おおー」
なんか愛里が拍手して、恵がドヤ顔してる。
せっかくなので2人を撫でる。
「珍しいわね、撫でてくるなんて」
「ベットの上とかじゃないとあんまりスキンシップしてくれませんし」
2人の言葉に心当たりしかないせいで手が止まると、2人がオレの手をつかんで各々をなでるように動かしだす。
「……それでいいのか?」
「あんたが動いてくれないから動いてるだけ」
「ベットの上で良く言われてることやり返してます」
こまった、心当たりしかないや。
にしても……性格的に強かというか、図太くなったというか、二人とも……いや、手を出した面々に言えることだが。
「また考え事してる」
「最近は皆で居ること多くなってきて、こうして数人で寡占すること珍しくなってきたから……少しは意識してほし……きゃっ」
素直に甘えてきた2人を抱きしめる。
そこまで言うなら猫可愛がりするしかないな。
「なんか凄く両極端と叫びたい気分!」「でもソレはそれでありかなって気持ちにもなってるから複雑だよね」
仕方ないので朝から再び可愛がりの時間である。
トキが厨房から家政婦は見た!的な覗き込みしてるので、分身を派遣しないとな……。
――Side 南雲
高育の片隅にある、あまり人の来ない喫茶店。
そこにオレは匿名の相手からのメールにより、呼び出しを受けていた。
オレがわざわざ出向くことは普通しない……が、今回は別だ。
『指定した時刻にこないなら、この動画を無作為に高育の生徒へ送信する』という文面と共に、なずなのとんでもない動画が送られてきたからだ。
暫く紅茶を飲んでいると、出入り口のドアに付いてる鈴の音が店内に鳴り響く。
目線を向けるとそこにはなずなとデュノア、何故かチベットスナギツネのような顔してるイザークがいた。
そしてコチラを見つけると、イザークがオレの横、なずながオレの対面、デュノアがオレの斜め向かいに座る。
「……本当なら頼久に始めて散らさせてもよかったんだけどね」
「おまえ……何言ってるのか分かってるのか……!」
開口一番巫山戯倒したデュノアの言葉にオレの頭に血が昇る。
「えー?女の子とっかえひっかえして、あげく何人かに――売春させてる人に言われたくないかなぁ」
「……!」
登っていた血が引いていく気がした。
当時に、なずなの顔を見ようとしたが、首が動かない。
「双方そこまで。……生徒会長。今の貴方にこの女狐の所業を糾弾する権利は無いと自覚されたほうがよいかと」
「女狐扱いは不本意なんだけど??」「妥当だ」
「…………」
言葉が出ない、声が……枯れたような感覚に陥る。
「……デュノアからは朝比奈女史にこれ以上手を出さず、動画の削除をする代わりに、そちらの卒業まで盤外戦術における手駒を用いての自爆特攻の封印をもとめていますが、如何しますか?」
「……なずなとの、接触も、禁止……だ」
「必要な時もあるし、生徒会長が女の子とっかえひっかえするのも自由なんだから、そこは飲めないかな。こっちから手を出さない。ソレが最大限の譲歩だよ」
……女狐とイザークが言っていた理由が今なら良くわかる気がした。
「それでは契約書にサインを。……次はあの節操なしが盛ってるところに朝比奈女史が一糸まとわぬ状態で放り込まれてもおかしくないとだけ」
「……!」
なずなが何か動いた気がする。でも、目線がそちらへ向けることはできない。
デュノアの名前が既に書かれている契約書に、オレは……手が伸ばせないでいると――声がした。
「誰が節操なしだコラ」
声の方を向くと、あきれた顔でコチラを千手頼久が見ていた。
「……紋章持ちの女たちはその女狐含めて貴方用の肌馬で、既に何人も食い散らかしてる時点で節操なしと言わざるを得ません。そして総帥含め、我々黄金の獣の系譜でも少数派ですからね、複数の伴侶持つのは」
「まったく……事実陳列罪でしょっぴいてくれないものかね」
「その前に貴方と生徒会長が不純異性交遊で退学になるよう立ち回ってもいいんですよ」
「すみませんでした」
何だこのやり取りは。
「……サインするつもりないの?」
なずなが、どんな感情を込めてるか分からない声で、問いかけてきた。
「……なずな、オレは「幼馴染だからさ、雅が清廉潔白じゃないの知ってる。それに……雅の足枷になるくらいなら、離れたほうがいいかなって」そんなことない!」
オレは、気がついたら声をあげていた。
「オレ、あの映像を見て胸が張り裂けそうだった! ずっと踏み出すのが怖くて、今のままでいてくれると甘えて、周りになずながオレのものだとアピールしてた! 今までの女絡みの清算をする。だから、もう一度……やり直し、できないか……」
「私面倒だよ?」「オレのほうが面倒だろ」
「嫉妬深いかもよ?」「寧ろ今まで我慢させてたんだ、ソレくらい受け入れないと」
「次浮気したら刺すから」「覚悟でき……えっ?「そこは即答してよ!」は、はいっ!」
「……話まとまった?」
デュノアがそう告げてオレたちはハッとした。
「……ああ、サインする。それに……堀北先輩たちにも謝らないと「3月まで生徒会長とは面会謝絶だそうだ。ホリーは恋人の橘先輩退学未遂に追い込んだこと相当お冠だぞ」……そう、か」
千手の言葉にオレは力が抜ける。
……昔から愚直にルール無視して痛い目を見てる連中がバカだと思っていた。
ソレくらいどうなるかわかるだろう、と。
でもオレも……そのバカの類なのかもしれない。
なずなが大切なこと、ちゃんと向き合えてなかったこと。
今回の痛い目を見て、漸く自覚したんだから。
オレがサイン終えると映像をデュノアが目の前で削除する。
「彼女さんを大切にね」「貴重な休日を面倒な仲介人させられて疲れました」「ほれ、フェナスエリアのカップル割適応される店とクーポンな。今度ホリーと桃鉄やるから、肉壁よろしく」
なんか最後千手からチケットの束とチラシを渡された。
……まあ、今は……なずなが無事だったこと、一歩前に進めたことを、噛み締めておくか……。