ガガガガガガ!
路地の幅を超えたそれは、邪魔だと言わんばかりに左右に建つ家や店に深い爪痕を残していく。
リン「ここだと一般市民に被害が出るわ!」
ラバック「街の外まで誘い出すしかないか…」
リンは近くにあった瓦礫を包帯で巻き取り、勢いをつけて地面へ叩きつけた。
衝撃でアスファルトの欠片や土埃が舞い上がり、相手の視界を塞ぐ。
その隙にクローステールでトラップを作りつつ、街の境界へ向かって駆け出した。
スズカ「この糸の切り口…なかなか刺激的。」
女は糸をかわすどころか、切られるのを楽しんでるように見える。
でもそれで女の進行速度が遅くなったのは確かだ。ある意味トラップ成功か。
少し走った先に、街の終わりを示す塀が現れた。
帝国以外で境界に塀を構えるのは初めて見るが、それだけ教団の力が大きくなっているということだろう。
自分の身長より少し高い塀を飛び越えると、栄えた街から一変し、大小に隆起した赤茶色の岩山が広がった。
早くリンを治療させないとヤバイ。止血した部分から少し血が滲んでいる。
ラバック「この辺なら身を隠せそうかな。」
街から離れてしまったが、岩山の合間で身を潜めた。
リン「ごめん…やっぱり、足手まといになっちゃったね。」
ラバック「なーに言ってんの。お前のフォローがなかったら、俺あそこでやられてたし。」
リン「とりあえず、応急処置は終わったから大丈夫。」
ラバック「相手の気配が完全になくなったら街に戻るぞ。」
スズカ「街に帰る前にさぁ…もっと攻めておくれよ。」
ラバック、リン「!!」
上を見上げると、女が崖の上でクスクスと笑っていた。
ラバック「姿は隠したつもりだったんだけどね。」
スズカ「別に見えなくったって関係ないさ。美味しそうな血のニオイがしたからねぇ。」
撒くこともままならないってか。
ラバック「防戦一方じゃ許してくれないってんなら…これでどうだ!」
高速で糸を束ねて、身長の倍もある大きな斧を作り上げる。
ラバック「くらえ!!」
スズカ「へぇ…器用なもんだ。」
両ひざを目一杯折り曲げ、女へと飛びかかる。その力を利用して斧を思いっきり振り下ろすが、右にかわされる。
女の動きを読んでいたリンが、女が避けた位置へ即座に注射器を投げつけた。
スズカ「いいコンビネーションだけど…」
避けた勢いを殺さず一回転し、注射器を弾く。
スズカ「手負いで不完全燃焼なのかしら。もっと鋭く来てくれなくちゃ。」
斧を振り下ろした遠心力で空中に舞っていた俺は、腰元に手刀をぶち込まれ、思い切り地面へ叩きつけられた。
ラバック「ぐっ!!」
シュルルルル!
地面スレスレで糸のクッションを敷き、激突を免れる。
スズカ「へぇ〜、シュテンとメズを殺っただけはあるんだねぇ。」
体に巻きつけた糸で防御するも、帝国至高の武術を極めた者の手刀はかなりのダメージをくらう。
俺もリンも、余裕かましてる場合がねぇ。クローステールが相手の体にさえ刺されば…。
女は攻撃の手を緩めることなく、やっと立ち上がった俺へと向かってくる。
スズカ「ボロボロのやつを相手にしても張り合いないし、そろそろ戯れは終わりにさせてもらうよ!」
ラバック「容赦なしかよ…!」
鋭く光る爪を防ごうとクローステールを構えた時、風のように白く細長い布が横切る。
女の攻撃と同時に放ったリンの包帯だ。
スズカ「クスッ、そうくると思ったよ。」
ニヤリと笑う。
自分へ向けて放たれた包帯のムチを飛んでかわし、俺の頭上を超えてリンへ襲いかかる。
リン「しまった!」
ラバック「くそっ狙いはリンか!」
スズカ「まずは一人目!」
ザシュッ!!!
血飛沫が舞う。
女の顔に、飛び散った返り血が付着する。
全てがスローモーションに映り、一連の出来事が走馬灯のように頭の中を過ぎ去って行った。