【完結】きみと居た時間   作:えいぷりる

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激情3

リン「ラバァァッ!!」

 

女の爪を受けたのは、俺だった。

 

スズカ「カノジョを守るなんて男だねぇ、そういうの嫌いじゃないよ。」

ラバック「こんな時じゃねぇと…いいとこ見せらんねぇからなぁ…。」

 

ドクン…ドクン…

心臓の鼓動に合わせて、切られた腹から血が流れる。

 

スズカ「いい男だってのは認めてあげるさ。でも、ここでお別れだ。」

 

女がゆっくりと右腕を振り上げた。

リンがその手に向かって一刀のメスを投げる。小さなメスは、女の腕にかすることなく上方へ飛んでいく。

 

スズカ「アンタも朦朧としてるのかい?すぐ楽にしてあげるよ。」

 

…いや、キッチリ正確なピッチだぜ?

 

プツン!

布が切れる音がした後、ガラガラと音を立て、女目掛けて無数の岩が落ちる。

 

スズカ「!! トラップか!」

 

岩を回避するために後方へ飛んだその時だった。

 

ズブッ…

 

スズカ「…カハッ!」

 

女の胸を、クローステールを束ねて創った槍が貫いた。

 

スズカ「まさか…全部…」

ラバック「あぁ…。確実にクローステールの餌食にするためのトラップだよ。」

 

膝についた砂を払い、ゆっくりと立ち上がって女の方へ歩み寄る。

 

スズカ「女が…あそこから動かなかったのは…」

ラバック「お前をあの位置までおびき寄せるためさ。」

 

女の体内にある槍が少しずつ一本の糸へとほつれていき、心臓へと走る。

 

スズカ「…じゃあ…最初の斧を回収せずにあのままだったのも…」

ラバック「お前に気付かれないよう槍に変形して、背後から仕留めるためだ。」

スズカ「フフ…これを追いかけながら考えてたってのかい…。痺れるくらい頭の回転が早いやつだ…」

 

観念したように、目を瞑った。

 

ラバック「さっきのお前の言葉じゃないけど…。苦しいだろ?そろそろ楽にしてやるよ。」

 

グッ!

心臓を握りつぶすように糸を引く。

 

スズカ「グハッ!」

 

女は一気に血を吐き出すと、ピクリとも動かなくなった。

 

ラバック「くっ…」

 

終わった開放感からか、どっと疲れが押し寄せた。

 

リン「ラバ!」

 

しゃがみ込む俺の元に近づき、止血をする。

ただ、リン自身のコンディションも良くない。これ以上能力を使わせるわけにはいかないな…。

 

ラバック「このまま夜道を歩くのは危険だね…。明るくなるまでどこかで待機しようか。」

 

小高い崖に浅い防空壕のような穴を見つけ、そこで一晩を明かすことにした。

 

 

周りに遮るものがない景色。雲もなく、澄んだ星空が眼前に広がる。

こんな状態じゃなけりゃ、最高のシチュエーションってやつなんじゃないの?やっぱとことん損な役回りばっかだな、俺…。

 

運のなさに目眩がしたか、血の流しすぎで貧血か…足元がフラつき始めたのでその場に腰を落とす。その隣にリンが座った。

 

ラバック「…リンは大丈夫?」

リン「私は平気よ。それより早くラバの手当を…」

ラバック「それはダメだ。今の状態でその帝具を使ったら…お前が死ぬぞ。」

 

回復の力は、リンの生命エネルギーを使用する。自身の状態が左右され、瀕死の時に力を使えば、術者の生命エネルギーがゼロとなり死に至る。

 

リン「でも、今ちゃんと治療をしないとラバが…!」

ラバック「たとえ俺がいなくても、皆が革命を成功させてくれる…。」

リン「そんなこと言わないで…!ナイトレイドには、あなたの力が必要なのよ!?」

 

かわしてみるが、リンの険しい表情は変わらない。

 

ラバック「リンの能力は勝利に不可欠なんだ。」

 

リンは徐々に俺から目線を外し下を向くと、作った両手の拳を見つめた。

 

リン「…ナイトレイドの…ためだけじゃない。」

 

小さく体が震えている。その手に、ポツリと雫が落ちた。

 

リン「私が! …私が、あなたに生きていてほしいから…!!」

 

いくつもの雫を落とし、肩で息をしながら呼吸を整えている。

ふと、彼女が顔をあげた。

 

リン「好きなの…ラバック…。」

 

ドキン…!

大きく鼓動が鳴った。

 

ふいに名前を呼ばれたから?

泣き顔が美しく見えたから?

いや…

 

ラバック「リン…」

 

ポロポロと涙を流す彼女を見つめる。

 

ドキン…ドキン…

 

何か言わなくちゃ

そう思っても、言葉が出ない。

それでも無意識に、彼女の頬を伝う涙を手で拭った。

 

少しずつ落ち着きを取り戻す姿を見て、やっと言葉がこぼれ落ちる。

 

ラバック「俺は…」

アカメ「ここに居たのか!」

ラバック「!?」

 

突然の大きな声に驚き振り向くと、逆光の中に、ロングヘアーがなびく姿と、耳と尻尾が揺れる姿が映った。

 

リン「アカメ?レオーネ?」

 

アカメちゃんが急いでこちらへ走ってくる。その後ろを、邪魔してごめん!という顔とポーズでレオーネ姐さんが歩いてきた。

 

アカメ「二人とも、なかなか帰ってこないので心配したぞ。」

リン「ごめんなさい…私が付いていながら。」

 

ボロボロの俺と自分の姿を見られ、役目を全うできていないことを悔む。

 

アカメ「何を言っているんだ。二人とも生きてる、それで十分だ。」

ラバック「姐さんが探してくれたの?」

レオーネ「あぁ、二人の匂いを追ってきた。さすがに血の匂いが混ざりはじめた時は焦ったけどね。でも…」

ラバック「心配かけて悪かった。」

 

何か余計なことを言われそうだったから、思い切り遮る。

 

アカメ「さぁ、帰ろう。」

 

俺とリンは、アカメちゃんとレオーネ姐さんの肩を借りながらアジトへと向かった。

 

 

さっき言えなかった言葉…

 

戦いもなにもかも全部終わって、平和な世の中ってやつになったら

ちゃんと伝えるか…あいつに。

 

 

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