マイン「いったぁぁぁぁぁい!!!」
傷口に消毒液を塗られたマインが泣き叫ぶ。
リン「パンプキンがオーバーヒートするまでエネルギーを放出したっていうのに…それだけ元気なら安心ね。」
タツミ「ちっちゃい体して、無茶すんなよな。」
マイン「ち、ちっちゃいですってぇ!?ちょっと口には気をつけなさいよねー!!」
タツミに牙を向くマイン。
腕や体が包帯で固定されて動けずにいる分、顔がよく動くこと。
ナジェンダ「安寧道の脅威であったボリックも始末した。これで残る標的は大臣のみ…。我々にとって、最後の大仕事だ。」
ラバと私がアジトに戻った数日後、教団の全信者達が集まる設立祭に乗じて、ボリック暗殺に踏み出た。
外部から突入して撹乱する側と、内部に潜入してボリックを暗殺する側に分かれ、潜入組のラバがボリックを始末。
確かに、ボリック自身に戦闘力があるわけでもなく、暗殺対象としては底辺クラス。
でも、あの傷が癒えないまま動くのは、本人が気付かないところできっと負担になってる。これ以上無理しなければいいんだけど…。
ナジェンダ「キョロクでは、イェーガーズや羅刹四鬼とも対する中、皆よくやってくれた。」
火のついた煙草を灰皿に押しつけ、鋭い眼光が潰れたそれを捉える。
ナジェンダ「しばし体を休めたら…いよいよ戻るぞ、帝都に。」
最後の決戦。
ここでの勝敗が帝国の…いえ、国民の将来を決める。
でももう気負いする者はいない。絶対に成功させる、その気持ちがみなぎっていた。
リン「この戦いが終わったら…レオーネはどうするの?」
私とレオーネは、涼風が通り抜ける崖の上で、夕焼けに照らされる帝都を眺めていた。
レオーネ「あたし?うーん…マッサージ屋続けるのもいいし、旅するのもいいし…やりたいこと色々あって困るなぁ〜。」
リン「ふふっ、レオーネらしい。」
レオーネ「とにかくさ!みんなが楽しく過ごせればそれでいいかなって!」
夕日に負けないくらい、レオーネの笑顔も眩しく輝く。
リン「そうだね。私も、みんなが幸せになれる国が見たい。」
レオーネ「もちろん、リンもな。」
リン「え…?」
レオーネ「幸せになるってこと!何があったかは聞かないけどさ、ちゃんと前に進んでるんだろ?」
前に…か。
私が一方的に伝えてしまっただけなんだけど
リン「…うん。」
それでも、何もしなかった頃からはちゃんと進んでいるのかもしれない。
レオーネ「でーもさぁ〜!お姐さんはもっとこう、ラブラブしてるのを見たかったわけよ〜!」
自分で自分を抱きしめながら嘆いている。
レオーネ「それが二人ともなんかぎこちなくなっちまって!お姐さんにも甘酸っぱいエキス吸わせて欲しいっていうのに…。」
怒ったり泣いたり、くるくると表情が変わる。
リン「レ、レオーネ?別に、ラバとどうこうなったわけじゃないよ。」
レオーネ「はっ!?」
ピタッと動きを止め、目を大きくしてこちらを見る。
と同時に、そういや邪魔しちゃったんだったね…と申し訳なさそうにうなだれていた。
リン「あの時は状況が状況だったから。…だからね、この革命が終わったら、もう一度ちゃんと伝えてみる。」
レオーネは目を輝かせながら、うんうんと大きく頷く。
レオーネ「自分の気持ちに素直なリン、好きだ!」
リン「きゃっ!」
頭をワシャワシャと撫でられ、髪の毛や髪飾りが乱れる。
そんな私を見てお腹を抱えて笑うレオーネ。
髪を乱した張本人が大声で笑うのを見て、つられて笑う私。
こんな時間が永遠になればいいのに。
ーーううん、永遠にするために私たちは戦う。
最終作戦決行の日は、すぐ側まで来ていた。
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久しぶりに戻ってきたアジト。あとは安寧道の武装蜂起に乗っかり帝都に攻め入るだけ。
だが、キョロク解放を帝都側も非常事態と受け止め、これから来るであろう革命の波に対抗する為に、
エスデス、ブドーといった帝都最強クラスの将軍だけでなく、大臣の息子まで出てきたって話だ。
あちらさんも、主力を揃えて迎え撃つ準備万端ってわけだな…。
俺とタツミは、宮殿内で働くレジスタンスと協力し、革命軍の突入を内側から支援する役割を担っている。
その日に備えるためさっそく帝都入りし、レジスタンスと落ち合うことにした。
タツミ「本当に休んでなくてよかったのかよ?キョロクじゃ羅刹四鬼3人も相手にしてんだ。まだ本調子じゃないだろ。」
ラバック「タツミちゅわ〜〜ん、心配してくれてるの?」
タツミ「バカ、離れろって。」
抱擁しようとするが、タツミの手は俺の頬を押して拒む。
ラバック「最後の大仕事になるんだぜ。下準備は慎重すぎても足りないくらいだ。ここで俺が出なくてどうする。」
タツミ「…リンに、こっちに来てもらえなかったのか?」
言いにくそうに問いかけてくる。
最近、タツミがやけにリンの名前を出すようになった気がするが…レオーネ姐さんあたりが変なこと吹き込んでんじゃねーだろうな。
ラバック「…下準備とはいえ、俺たちが潜入するのは国を動かしている中心部だぜ?どんな仕掛けがあるかもわからない。」
タツミ「そうだけど…。」
ラバック「負傷が避けられない中で、回復能力を持つってのはナイトレイドの切り札みたいなもんだからね。ここでリンの力を失くすわけにはいかないよ。」
その言葉に、タツミが立ち止まる。
ラバック「どした?」
タツミ「…失くしたくないのは、能力なのか?」
俯いたまま問いかけてくる。
俺は、何も答えられない。
タツミ「こんな時だからこそ、もっと素直になれよ。」
顔を上げ、真っ直ぐな目で訴えてくるタツミ。その純粋な眼差しを直視することが出来ず、タツミに背を向ける。
そして、一呼吸置いてから答えた。
ラバック「バーカ。お前に言われなくてもわかってるよ〜。」
ポケットに突っ込んでいた右手を出し、ヒラヒラさせながら先へ歩き出す。
タツミ「…そっか。」
ホッとしたように、タツミは俺の後を追ってきた。
女「あの…ナイトレイドの方ですか?」
横道から、フードで顔を隠した女に声をかけられる。
俺たちを知ってるってことは…
ラバック「君が、レジスタンスの?」
女「はい。」
フードを脱ぎながら答える。
うん…なかなか可愛い子だ。
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ラバック「宮殿内部に潜入するのは、俺と透明化できるタツミが担当する。」
宮殿内部への仕掛けと突入の手引きを担うこの任務。
革命の成功を大きく左右する重要な役割なのは言うまでもなく、ラバの提案はもっともだ。
でも、私はラバの傷が完治していないことを知っている。
作戦会議が終わり、上着を取りに自分の部屋へと戻ったラバを追いかけた。
リン「潜入は、私がいくわ。」
ラバック「って…そんなに俺頼りないのかよ。」
口を尖らせてふて腐れる。
リン「隠してもダメって言ったでしょう?」
後ろを向くラバを捕まえ、着ているシャツを思い切って捲り上げた。
ラバック「リ、リンちゃんってそんなに大胆だったっけ…?」
背中とはいえ、あられもない姿にされたことに戸惑いと照れを隠せないらしい。
そんなラバをよそに、包帯と傷跡の目立つ痛々しい背中を見つめる。
ラバ「ちゃんと休養もとったし、大丈夫だって。」
リン「…。」
あまりにも不安げな顔をしていたのだろう。"安心してよ"と言いながら、頭にぽんと手を乗せてくる。
目線を背中からラバへ移すと、少し間を開けて、照れ臭そうに頬を掻きながら言った。
ラバ「…この戦いが終わったらさ、聞いて欲しいことがあるんだ。」
頬が熱くなり、瞳が大きく開いたのが自分でもわかった。
そんな顔を見られるのは恥ずかしかったけど、今ここで目を逸らしてはいけない…そんな気がした。
ラバ「だからお互い生き残る!約束な。」
小指を差し出すラバ。
向けられたの小指の元へ、ゆっくりと自分の小指を近づける。
リン「私も…もう一度聞いて欲しい。」
そう答え指切りをすると、役目を終えたそれらは離れていった。
アカメ「リン… ? リン?」
アカメの呼びかけにハッとする。
アカメ「考え事か?」
リン「うん…少し。」
アカメ「こんな時だもんな。色々とよぎることもあるだろう。」
ボス、アカメ、スーさん、私は帝都突入の最前線。
いつ事が動いてもいいように、帝都の入口付近に布陣を置いていた。
アカメ「もう済んだのか?」
リン「ええ、完了したわ。」
アカメ「…それが準備のままで済むことを祈る。」
リン「もちろん…そのつもりよ。」