侍女「ここです。」
宮殿内の広々とした庭の角に、普段使われていない倉庫へと続く道がある。
どうやらそこに、反大臣派を中心にまとまる革命軍の協力者、レジスタンスが集まっているらしい。
コンコン…
ノックの返事はない。
侍女「…?」
タツミ「どうした?」
侍女「変です、いつもなら合言葉変わりのノックが返ってくるはずなのに…」
嫌な予感がする。
ふと、足元を見た。
ラバック「!!」
冷たく閉ざされた扉の隙間から、大量の血が流れ出ていた。
予感…的中か…?
扉に手をかけ、ゆっくりと開く。
ラバック「なっ…」
侍女「キャァァァァ!!」
眼下に広がるのは一面の血の海。
惨たらしい姿を晒し、レジスタンスは全滅していた。
タツミ「こ、これって…」
ラバック「マズイな、ここはもうバレてる…!」
先手を打たれたか…そう思ったのも束の間、横たわっている死体の一つが突然膨張し始めた。
ヤバイ!!
ラバック「みんな!逃げろ!」
ドォォォォォォン!!!
倉庫一つが吹っ飛ぶほどの爆発が起こり、辺りは焼け落ちた。
もうもうと立ち込める煙と熱気。気付けば俺たちは数人の兵士に囲まれていた。
シュラ「遅かったなぁ…待ちわびたぜ。」
声がする方へ振り返ると、崩れ落ちた瓦礫の上に、蜃気楼に揺れる一つの影が映っていた。
シュラ「レジスタンスとやらは全員粛清させてもらったぜ。」
炎を背に、男が現れた。
褐色の肌と無駄なくついた筋肉が、一筋縄ではいかないことを印象づける。
シュラ「んん?どっかで見たことあると思ったら…お前、エスデスのネエちゃんを辺境に飛ばした時に一緒にいたヤツじゃねぇか。」
コイツがタツミとエスデスを遠くの島へ…?
チッ、やっかいな能力持ってそうじゃないの。
タツミ「じゃあ、あの時の危険種はお前が…何のために!?」
シュラ「決まってんだろぉ?おもしれーからだよ!」
タツミ「この野郎!!」
タツミが先陣を切る。
バリバリバリバリ!!
突如雷鳴が響き、褐色の男へと駆け出したタツミの目の前に、タツミの倍くらいはあるだろう体格の男が雷と共に現れる。落ちた雷は強烈な風と土埃を巻き起こし、燃え盛る炎を掻き消した。
こいつはもしかしたら…とんでもねぇクジ引いちゃったんじゃねーか…?
タツミ「な、なんだ…?」
ブドー「やはりネズミが入り込んでいたか。」
圧倒的な迫力の前に、タツミも俺も立ち尽くす。
ブドー「我が名はブドー。主君より大将軍の任を賜りし者だ。」
ブドー…やっぱりな。
コイツまで出てきちまったってことは、無事には帰れなそうだぜ…。
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ナジェンダ「わかった…。引き続き調査を続行してくれ。」
密偵「ハッ!わかりました!」
囲いとしての役目をギリギリで保つ白い瓦礫から、ボスが出てくる。
ナジェンダ「西の異民族との連絡が途絶えたようだ。」
アカメ、スサノオ、リン「!?」
アカメ「じゃあ…」
ナジェンダ「いや、作戦は決行だ。」
光る眼光でアカメとスーさんを見つめる。
ナジェンダ「宮殿内への突入…お前達が先陣を切ることになる。頼むぞ…!」
スサノオ「わかった。」
本来であれば、安寧道と西の異民族の反乱に私たちが紛れ込む作戦だった。多分、エスデスが西を鎮圧したのだろう。
…これで、大きな戦力の一つを失ったことになる。
タツミとラバの成功が雌雄を決する大きな鍵になるのね。
ふとボスを見ると、嘆願するような表情で空を仰いでいる。きっと、同じことを思っているのだろう。
…ここで私が二人を信じなくて、どうするの!
不安な気持ちを払うように頭を振り、気合を入れ直した。
リン「大丈夫ですよ、ボス。二人ならきっとやってくれます。」
ナジェンダ「あぁ…信じているさ。」
ボスと私は、突入してくる革命軍を先導するために、アカメ達と別れ帝都の門へと向かった。
馬に乗り門へと向かう途中、道端に白い花がちらほら現れ始める。帝都の門近辺でしか見られない珍しい花だ。
私は馬の足を止めると、素朴ながらも毅然と咲くその花を一つ摘んだ。
ナジェンダ「その花、お前に似ているな。」
リン「ふふっ。ラバにも同じこと言われました。」
ナジェンダ「ラバックが?」
リン「私がナイトレイドとして帝都に来たとき、ラバに帝都一帯を案内してもらったんです。」
ナジェンダ「そういえば、そんなこともあったな。」
リン「その時にもこの花を見つけて…。」
ナジェンダ「会ったばかりでその人となりを見抜くとは…アイツらしいな。」
小さな花を、そっと胸に抱いた。
リン「村が滅んでからずっと一人だったから、自分のこと見てくれる人がいるんだって…嬉しかったんです。」
ナジェンダ「そうか…。」
普段は男性と見間違えてしまうほど淡麗な顔立ちをしているボスが、とても女性らしい、柔らかな表情で私を見つめた。
ナジェンダ「専門分野が得意なお前達を組ませることが多かったからな。沢山の時間を共有した者同士、絆も深くなったのだろう。」
リン「ボス…?」
ナジェンダ「お前が遠征に行った時、平然を装ってはいたがあまりにも様子が違くてな。レオーネに散々からかわれていたぞ。」
思い出したかのようにハハッと笑う。
そんな話を聞いて、顔が赤くならないわけがない。
ナジェンダ「この戦いが終わったら…お前達には幸せな未来を築いて欲しいと切に願うよ。」
ボスがゆっくりと馬の歩を進める。
私は熱い頬を冷ますように勢いよく馬にまたがり、ボスの背中を追った。