【完結】きみと居た時間   作:えいぷりる

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運命2(完)

リン「…しぶといとは思っていたけど、ここまでとはね。」

スズカ「良いセン行ってたんだけどねぇ〜…糸使いの体力もギリギリだったってことだ。」

 

いくら心臓を潰されなかったとはいえ、瀕死の状態からここまで回復するなんて…肉体操作は伊達じゃないようね。

 

スズカ「タツミを奪われちゃうと、エスデスに怒られちまう。まぁそれも快感だけど…殺されちゃうのはカンベンだからねッ!」

 

ナイフのように光る爪が襲いかかる。

左に避けるも、もう片方の手の爪が避けた先に待ち構えていた。

袖に隠し持っていたメスを出し弾くも、切り落とすまでには至らない。肉体が武器なだけあって、強度もそれなりにあるらしい。

このまま間合いをとっていては、相手のペースにのまれてしまう。

 

リン「それなら…」

 

相手との距離を詰めれば、爪の伸縮に隙が出るはず!

応戦しつつ、ゼロ距離になったところで、すかさず首を狙う。

が、その瞬間に見たのは不敵に笑う女の口元だった。

 

リン「うっ…」

 

あと少しで注射針が届くところで、腕に激痛が走る。血が流れる腕を抑えつつ、瞬時に女から離れた。

私の腕を貫いたのは、女の足の爪。ぐにゃりと曲がった爪は女の肩まで届き、その先端には血が付着している。

 

伸縮だけじゃなくて形まで変えるなんてね…ともかくあの爪を封じないことには勝機はない…。

視線を配らせた先に、あるモノが目に入った。

 

これなら…!

 

スズカ「もう万策尽きたのかしら?なら、遠慮なくいかせてもらうよ!」

 

最後の一狩りと言わんばかりの勢いで突進してくる女へ向かって、複数の注射器を飛ばす。

 

スズカ「そんな攻撃じゃ通用しないってわかってるだろう?」

 

余裕を見せながら全ての注射器を弾く。

…もちろん、そんなのお見通しよ。

 

スズカ「!」

 

ドスドスドスッ

女の顔や体に瓦礫が命中する。

 

スズカ「ぐ…」

リン「目先の武器にとらわれていたようね。」

 

目の前に飛び込んでくる攻撃にだけ集中させ、その背後を包帯で操った瓦礫で襲う。

私の武器が器具のみであるという思い込みと、余裕から出る隙を突いた一手だった。

 

スズカ「フフ…片腕は使えないようにしたハズだけどね…。」

 

応急処置であれば、戦いながらでも回復できる。貫かれた腕の傷口は既に塞いでいた。

 

スズカ「その帝具…邪魔だねぇ…。」

 

スイッチが入ったかのように、女の眼光がより強くなっていった。

 

 

そこからは攻防戦が続き、互いに攻撃を繰り出しながら、決定打となる一瞬を探る。

既に割れていた地面のヒビはさらに深く刻み込まれていき、流す血も増していく。

 

このままじゃ、体力が削られて行く一方だ。なんとかしないと…!

たった数分が途方もなく感じ始めた頃、戦いの幕を下ろす音が聞こえた。

 

パァン!!

 

リン「!!」

 

喉元を狙われ、避けることが出来ず受身をとると、一本の爪が帝具を砕いた。

 

しまった、狙いは帝具…!

 

割れた帝具がパラパラと地面に落ちる。

次の一手に出ようにも、焦りを隠すことで精一杯だった。

 

スズカ「…遊びももう飽きただろう?」

 

額から流れる血の隙間から、鋭い女の目が私を捉える。

振り上げた腕を勢いよく地面に突き刺すと、足元からいくつもの爪が飛び出した。

 

リン「!?」

 

どこから攻撃されるかわからない…!

 

ビシッ!ビシッ!

足首や腰や肩、身体のあらゆるところを襲う。

女はあえて急所を外し、痛めつけることを楽しんでいるようだった。

 

リン「くっ…!」

スズカ「うぅ〜ん、いい表情だ。アタシもあんな風にされてみたいよ。」

 

飛び散る鮮血を眺め高揚しながらも、攻撃の手は緩めない。

ドシュ!ドシュ!

地面から降る雨のような無数の刃。その内の一つが、私の片足を貫いた。

 

リン「ぐっ!」

 

地面に倒れこむと、勝利を確信したのか、女はゆっくりと攻撃の手を止めた。

 

スズカ「ククク…アタシを殺し損ねた上にダンナには死なれて…あんたには同情するよ。」

リン「!」

スズカ「でも安心しな、すぐにダンナの元へ送ってやる!!」

 

まさに狩りを楽しむ鬼。

原形をとどめない形相のまま、最後の一撃を振るおうと猛スピードでこちらへ走り出した。

帝具を破壊され、私は為す術もない。

 

皆、ごめんなさい…!

 

 

 

 

…!!

 

最期を覚悟したその時、目の前がキラキラと光る。

 

クロース…テール…?

 

太陽の光に反射して輝くそれは、クローステールの界断糸だった。

 

ラバ…!

 

沢山の思いが溢れるのを抑え、漂う一本の糸を強く握り締める。

そして、私を仕留めようと向かってくる女を見据えた。

 

 

スズカ「くたばりなァ!!」

 

ザシュッ!!

 

スズカ「…!?」

 

女の首が飛ぶ。

相手のスピードを利用したカウンター。

宙を舞う女の顔は、両手で糸を張る私の姿にただただ目を見開いている。

切り離された首と行き場をなくした胴体は、同時に地面へ落ちた。

 

これで…終わった…

 

リン「かはっ…!」

 

咳込み膝をつく。地面には血が飛び散った。

手で押さえた私の左胸には、女の長い爪が一本…背中まで貫通していた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

3度目の禍魂顕現…これを使えば私の命も…

だが、エスデス相手に出し惜しみをしている場合ではない!

 

ポゥ…

 

ナジェンダ「!!」

 

突如体にエネルギーが纏う。

これは…リンの…

 

ナジェンダ「くそっ…」

 

だがこの力、活用させてもらうぞ!

 

ナジェンダ「3度目の…禍魂顕現!!」

 

 

スサノオを殿として残し、我々はタツミ奪還に成功した。

いや…成功というには尊いものを失くしすぎたか…。

後味の悪さを残しながら、エアマンタに乗り処刑場の外へ脱出する。

 

レオーネ「ボス!リンの加勢に行ってくる!」

 

脱出するや否や、ボロボロの体のまま威勢良く飛び降りるレオーネ。

 

アカメ「ボス、加勢なら私も… ボス…?」

 

アカメの申し出に答えることが出来なかった。

そんな私の様子を"答え"と受け取ったらしく、アカメは黙ったまま俯いた。

 

 

3度目の禍魂顕現を使おうとしたその時、リンの奥の手「命の信任(ホーリートラスト)」が発動した。

使用者が命を落とす時、予め術を施した対象に自身の全ての力を与える技だ。

この奥の手…使わずに事が終わればと願っていたが…

握りしめた拳は、ギシギシと音を立てた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

レオーネ「リン!リン!!」

 

閑散とした戦場に、レオーネの声が響く。

 

レオーネ「戦いが終わったら…ラバの店、手伝うって言ってたじゃないか…!ちくしょう!!」

 

抱きかかえられたリンの頬に、大粒の雫がポタポタと落ちる。

リンの顔は眠っているかのように安らかで、その手には緑色の糸が一本、大事そうに握られていた。

 

 

 

ねぇ、ラバック…

 

あなたと居た時間は、本当にかけがえのないものだったよ。

 

なかなか素直になれなかったけど…

私が私でいられたのは、あなたが側に居てくれたから。

 

あの時、あの森の中で、私を見つけ出してくれてありがとう。

 

 

生まれ変わったら、またお店をやるのかな?

私も手伝いに行くよ。

だって、あなたに任せてたら変な本ばっかり仕入れちゃうものね。

 

 

二人がまた出会えたら…

この国で果たせなかった約束、もう一度しよう?

 

 

"これからは、ずっと一緒だよ。"

 

 

 

ー完ー

 

 

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