【完結】きみと居た時間   作:えいぷりる

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怒涛1

久しぶりのアジトでの朝を迎える。

昨日のことがあったからか、寝覚めはとてもいい。

両手を上にあげ深く伸びをすると、もうすっかり目が覚めた。

 

 

朝食を終え、後片付けをしていると

 

マイン「誰か!アタシと訓練なさい!」

 

訓練所の方へとドタバタ走り抜ける音の後に、威勢のいい声が響き渡った。

骨折したマインの腕、昨日治療した甲斐もあってどうやら完治したみたい。

 

…そう、私の帝具は治療行為に特化した「ホーリーチャーム」。

私の精神、生命エネルギーを使って対象者を治療する。

生命エネルギーだけは、敵から頂いて自分に還元することもあるけれど、

戦闘によっぽどの余裕がないと敵から奪うことは難しい。

話にしか聞いたことはないけれど、エスデスからは絶対無理なんだろうなぁ…。

 

食器を全て棚にしまい込み、みんなが汗を流す場所に向かった。

 

 

タツミ「革命軍本部まで遠出?」

ナジェンダ「あぁ。」

 

どうやらボスは、三獣士から奪取した3つの帝具を届けるためにアジトを空けるらしい。

それまでは、アカメがボス代行となる。

 

ナジェンダ「作戦は、"みんながんばれ"だ。」

アカメ「だいたい分かった。」

 

コクッと機械人形のように頷くアカメ。

 

タツミ「おいっ、アバウトだな大丈夫か!?」

ラバック「アレできっちり役割こなすから問題ないって。」

 

ラバがカラカラと笑う。

ふふっ、私もナイトレイドに入って初めてアカメがボス代行になるって時は、内心心配したなぁ。

うーむ…と半信半疑全開のタツミを見て、当時の自分を思い出して可笑しかった。

 

 

ボスが出発した後、各々が独自に散らばっていく。

ラバとレオーネ、タツミはラバが働いている貸本屋兼ナイトレイドの隠れ家で合流するらしい。

アカメは訓練所でマインの手合わせの相手をしている。

私は治療道具の手入れを終えると、ゆっくりと朝風呂を堪能することにした。

 

切り崩された岩場と木々の自然に囲まれた露天風呂。

あまりの快適さに、自分が暗殺者であることを忘れてしまうくらい。

ほどよく温まった湯船に、鼻が出るギリギリまで浸かった。

 

なんだかちょっと、頼もしくなってたな…。

 

ポーッとした頭で思い出すのはラバのこと。

私がアジトを出る前は、女の子の前ではただただお調子者の男の子って感じだったのに…。

 

マイン「物思いにふけってるとこも、まぁまぁ絵になるじゃない?」

 

声のした方へ顔を上げると、湯をゆらめかせながらマインが体を沈めてきた。

 

マイン「おおかた、ラバのことでも考えてたんでしょー?」

リン「ぇ、えぇっ!?」

 

まさかの指摘に動揺が隠せない。狙撃手って、心の中まで的中させるのか。

 

マイン「バレてないとでも思ってた?皆の目はごまかせても、アタシの目はごまかせないわよ。」

 

ふふん、と鼻をならしながら勝ち誇った顔をするマイン。

一気に顔が火照ったのは、温泉のせいだけじゃない。それをマインに悟られたくなくて、話を逸らした。

 

リン「もう手合わせは終わったの?」

マイン「まぁね。やっぱり、さすがアカメよ。息切れ一つしてなかったわ。…って!話そらしてんじゃないわよぉ!」

 

…バレたか。

 

マイン「久しぶりに会って、ちょっとは印象変わったんじゃない?」

 

諭したようなマインの物腰に露天風呂の開放感も手伝って、なんだか気持ちをさらけ出してもいいような気がしてきた。

 

リン「ラバは…ラバのままだよ。お調子者で…女の子好きで。でも、純粋で一途なんだ。」

 

目を閉じて、ラバの姿を思い出す。

 

リン「普段はあんなだけどね。やる時はちゃんとやるし。」

マイン「ふ~ん、そのギャップがいいってことね。」

リン「ちょっ…そこまで言ってない!」

マイン「この後に及んでまだ隠すつもり~?」

 

顔を真っ赤にしながらムキになる私を見て、マインは一層ニヤニヤする。

 

マイン「ま、仕事ではリンとラバが組むことが多いものね。アタシたちが知らない顔も知ってて当然。」

リン「…。」

マイン「で、どうすんの?奪っちゃう~?」

 

右手を口に当て、ムフフと笑いながら私を見る。

 

リン「わ、私は別に…ボスに一途なラバを含めてラバだから…奪うとか…そういうのは…。」

 

自分の予想を越えた指摘に、しどろもどろになってしまう。

 

ラバとどうこうなりたいなんて、考えたこともなかった。

仲間として一緒にいられるだけで楽しいし、ラバはボスに恋をしている。

それになにより、私たちは暗殺者。いつ命を落とすかわからない上に、恋愛が命取りになることだってあるかもしれない。

そんな稼業に身を置いている私が、つ、付き合う…なんてこと…

 

ポカッ!

 

頭に衝撃が走り、一瞬にして意識が現実に戻る。

 

マイン「アンタのことだからド真面目に考え込んでるんでしょーけど、もっと気楽にしなさいよね。」

 

ザバッと景気良くマインが立ち上がった。

 

マイン「アタシ達だって人間よ?仕事ばっかりじゃなくて、息抜きも必要だわ。」

リン「マイン…。」

 

自分に真っ直ぐに生きる姿がとてもたくましく見える。

そんなマインの優しく強い言葉は、私の気付かないところで、私の背中を押してくれていた。

 

 

マインと共に各自の部屋に戻る途中で、酷く慌てた様子のラバとレオーネに出くわした。

 

マイン「どうしたのよ?」

ラバック「急いで会議室に集合してくれ!話はそこでする!」

 

ただならぬ雰囲気を感じとり、私とマインは顔を見合わせると、すぐに指定された場所へと急いだ。

 

アカメ「タツミがエスデスに攫われた!?」

マイン「ナイトレイドの一員だってことがバレたの!?」

ラバック「殺伐とした空気って感じじゃなかったけど…。よく分からない…。五分五分かな。」

レオーネ「どうする?ボス代行。」

 

張り詰めた空気が会議室を包む。

エスデスが主催している都民武芸試合に出場したタツミが優勝し、そのままエスデスに連れ去られてしまった。

ボス不在でのこの一大事…。さすがのアカメも、苦悶の表示が隠せない。

 

マイン「助けに行くとかバカなこと言わないでよ、アカメ。」

アカメ「…。」

 

助けに行きたい。でも、相手は帝国最強の将軍…。

簡単に出せる答えではないことは、誰しもがわかっていた。

だから、ボス代行であるアカメの判断を待つしかない。

 

アカメはしばらく考え込んだのち、一つの覚悟を決めたようにテーブルに差し出した右手の先を見つめた。

 

アカメ「無策で突っ込んだりはしない。…ただ、タツミは大事な仲間だ。出来ることをする。」

 

ーー作戦は、"みんながんばれ"。

自分に出来ることを尽くして必ず仲間を救出してみせる。

 

さっきまで緊張感で満ちていた部屋も、同じ思いを胸にした仲間たちの結束感へと変わっていた。

 

 

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俺が紹介した大会で、タツミが連れ去られた。

想定外の事態を目の当たりにして、状況を飲み込むのが精一杯だった。

 

ナイトレイドだってこと、バレてないよな…

冷静を装う仕草に反して、心拍数は上がる一方だ。

 

リン「大丈夫。タツミはきっと生きてるし、必ず連れ戻す。」

 

そんな俺の心の内を読んだのか、リンの柔らかい手が背中に触れた。

 

…そうだな、クヨクヨしてたって始まらねぇ。

俺が蒔いた種なんだ。きっちり落とし前つけてやる。

 

マイン「ボスが不在の今、全員がアジトを離れるわけにはいかない。…かと言って、敵陣に乗り込むのに手薄で行くことほど怖いものはないわ。」

アカメ「エスデスは新しく組織を作ったばかり。お手並み拝見と称して外に出る機会があるはずだ。そこを狙う。」

レオーネ「網を張って、掛かるのを待つってことだな。」

アカメ「側にエスデスが付いているかもしれない。必ず誰かが近くにいる範囲で行動してくれ。」

 

各々が行ける範囲まで前線に出る。危うい作戦かもしれないが、タツミを救うにはそれしかない。

クローステール限界まで包囲網を張った。

 

待ってろよタツミ…必ず助けるからな!

 

 

自身が前線まで出る戦いは、その戦闘スタイルからほとんどない。

最強の将軍とその部下が相手だと思うと手に汗が滲むが、そんな時、あの言葉を思い出す。

 

ーー大丈夫。タツミはきっと生きてるし、必ず連れ戻す。

 

普段は穏やかな雰囲気で周りを和ませるリンだが、仕事となると、途端に彼女を纏う空気が変わる。

内に秘めた強さーーー。

ナジェンダさんとはまた別の強さを持つ彼女の言葉が、今の俺の支えになっていた。

 

 

アカメ「ラバ、どうだ?」

ラバック「いんや、何の反応もねぇ。」

 

俺の近くには、アカメちゃんが付いていた。

メンバーの中で最も機動力が高く、別の位置で反応があった時瞬時に対応できる人物だからだ。

 

アカメ「自分のせいだと思っているのか?」

ラバック「…まぁね。」

アカメ「優勝して連れていかれるなんて、誰も予測できない。ラバに責任はないさ。」

ラバック「ははっ。ありがと、アカメちゃん。」

アカメ「リンも心配していたぞ。」

ラバック「…!」

リン「リンは、優しいな。」

ラバック「…あぁ。」

 

少し赤らんだ頬がバレないように糸の反応を見る振りをしながら返事をした。

 

 

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