タツミが攫われてから数日が経った。
交代制の見張りといえど、タツミのことを思うとおちおち休むことも出来ない。
私に疲労回復の力があれば…そう思いながら、首から下げたホーリーチャームを握りしめる。
会議室には、腕を組み天井を見上げたレオーネと抱えたパンプキンを見つめるマインが交代の時を待っていた。
ガタッ!
不意にレオーネが立ち上がる。
レオーネ「かーっ!ダメだ!ただ待ってるだけってのは性に合わない!」
そう声を上げ勢い良く会議室の扉を開けると訓練所の方へ歩いて行った。
私とマインは、そんなレオーネの後ろ姿を見届けると再び俯き、一言も発することはなかった。
ーーーもう何時間こうしていたんだろう。
そんな思いが頭をよぎったその時、遠くで激しい音が響いた。
ドオォォン!
マイン「…フェイクマウンテンの方からね。」
リン「まさか…タツミ?」
私とマインは少しでも状況がわかるようにと、アジトの外へと飛び出す。
入り口を出たところで、同じく音を聞きつけたレオーネとも合流した。
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ドオォォン!
激しい爆発音とともに、俺たちの潜む木々が大きく揺れる。
ラバック「っ危ねぇ!」
アカメ「割と近くから聞こえたな。」
ずり落ちそうだってのに、アカメちゃん冷静なのね…。
キュルキュルキュル…
ラバック「糸に反応がある!ここから川下へ800m先だ。ただ、1人だけじゃねぇ…!」
アカメ「問題ない、葬る!」
その言葉を発すると同時に、電光石火のごとく駆けていった。
俺もアカメちゃんの背中を追いかけて行く。
敵に見つからないよう、林の中を進む。いつの間にかアカメちゃんの姿が小さくなっていた。
…相変わらず早ぇーな。逃げ足なら負けねぇんだが。
反応は1人。
インクルシオに似た動きをしていたもう一つの反応は、離れて行ってはいるがまだ結界圏内。
それより気になるのは…
タツミと思われる反応の近くに、なんか蠢いてんだよねぇ。動きからして人間じゃあなさそうだが…
タツミと思われる反応は動く気配がない。さっきの爆発でタツミが負傷してたら、ちょっとピンチかもね。
糸の引き具合から様々な憶測を立てる。
もうほとんど見えなくなったアカメちゃんの後を追い続けていくと、視界の先に光が見えてきた。
ラバック「おっと…」
草木の切れ間には、真っ二つにされた危険種が横たわる。
アカメちゃんか?
そう思うと同時に、目の前に見慣れた二人の姿を確認し、思わず頬が緩んだ。
…が、
アカメ「おかえり、タツミ。」
タツミ「あぁ、ただいま…。」
おぉぉぉぉい!!
なにラブコメし合っちゃってんのよ!!
二人が見つめあって互いの手を取り合おうとした瞬間、
ラバック「どーーーーーん!!」
思いっきり邪魔してやった。
いや、別に悔しいとか羨ましいとかじゃないからな!
ラバック「まずはここを離れなきゃでしょー!ホラ、こっちこっち!」
二人の手を引いて、ひとまずこの場を去った。
タツミ「ラバ、お前までありがとな。」
アカメちゃんに肩を貸してもらいながらひょこひょこと山道を歩くタツミ。
ラバック「お前がいなくなると、男は俺一人。ハーレムだからそれも良かったんだけどさ〜。」
こういう時、素直になれない。
タツミ「ひっでぇなぁ。」
アカメ「あんなこと言っているが、実際はかなり心配していたぞ。」
タツミ「あぁ、わかってる。」
全部聞こえてるっての…。よけい恥ずかしいじゃねぇか。
まぁなんにしても、無事救出できて一安心かな。リンの治療があれば、タツミの傷もすぐ良くなるだろ。
…。
俺、真っ先にリンの顔浮かんでねーか…?
アカメちゃんにあんなこと言われたから?
いや…もっと…前から?
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冷たい風が頬をさする。
しばらく3人で立ち尽くし、頬だけでなく体も冷え切り始めた頃、
私たちの視線の遠くに待ちわびた光景が映った。
レオーネ「タツミ!」
リン「よかった…!」
マイン「ふんっ、田舎者のわりにやるじゃない。」
ラバを筆頭に、アカメの補助を受けながら帰ってくるタツミの元へ、3人で走り寄った。
レオーネ「おねーさんはなぁ、タツミがいなくて心細かったぞぉ~」
マイン「ま、あのエスデスのとこから帰ってきたんだから認めてやらなくもないわ。」
アカメから奪ったタツミをぎゅうと抱きしめ、自慢の胸に押し付けるレオーネ。
腰に手を当て顔を背けながらも、彼女なりの賛辞をするマイン。
それを微笑ましく見守るアカメ。
"やっと元に戻った。"
そんな暖かさがみんなの心に宿った。
女性陣から一歩引き、頭上で腕を組み安堵の表情を浮かべるラバの元へ、そっと近づく。
リン「ふふっ、ちょっと涙目?」
ラバ「…なっ!んなわけないでしょ…。」
人差し指で鼻をこするラバ。
恥ずかしい時はウソつけないのも変わってないのね。
ラバ「…ありがとね、リン。」
リン「え?」
ラバ「俺のこと心配してくれてたってさ、アカメちゃんに聞いた。」
リン「…ラバも、大切な仲間ですから。」
それっぽいことを言ってごまかしたけど、"仲間"だからってだけじゃない。
ラバにだけは…少し特別な気持ちがある。
ラバ「仲間…ね。」
リン「? 何か言った?」
とても小さな声でつぶやくから、最後の言葉が聞き取れない。
聞き返してみたけど、「なんでも。」と言ってはぐらかされた。
その日の夜は、タツミの帰還を祝して、みんなで飲んで騒いだ。
事あるごとに飲んでる気がするけど…それもナイトレイドの良いところよね。
ただ、当のタツミはレオーネにガッチリ捕まって酒盛りの相手をさせられているから、ちょっと可哀想だけど。
そして心なしか、マインがそんな二人をチラチラ気にしてる気がするような…。
ラバック「メンバーも揃ったし、あとはナジェンダさんが帰ってくるだけなんだけどなぁぁ。」
ラバはテーブルにつっぷし、おいおいと涙を流し嘆いている。
…あれ?なんか、チクっとする…。
ーーーボスを好きなラバを含めてラバだと思うから…。
ついこの前、マインにそう言ったばかりなのに。
今までだって、ラバがボスに夢中なこと気にしてなかったはずなのに。
いつの間にか、私の中のラバが大きくなってる…?
ラバの方を直視できなくて、目の前に盛大に盛られた料理を見つめる。
アカメ「調子でも悪いのか?」
ずい、と突然目の前に骨付き肉が現れる。
リン「ううんっ!なんでもないよ!ごめんね、心配かけちゃったかな。」
アカメ「謝ることなどない。大事な仲間だ、心配ならいくらでもするさ。」
リン「ふふっ。優しいね、アカメは。」
アカメ「? それはリンだって同じだろう。」
私を見て微笑むアカメ。綺麗な朱色の瞳は、全てを知ってくれているような…そんな真っ直ぐな瞳だった。
アカメ「食いたい時に食わないと、もったいないぞ。」
リン「そうね。せっかくのお祝いだもんね。」
アカメから肉を受け取り、ナイフとフォークで一口分ずつ取り分けた。
アカメの分も…と思ったら、もう片方の手で死守していたらしい骨付き肉を、ガブリとかじっている。
リン「もぉ〜」
アカメ「?」
私は…ラバとどうこうなりたいなんて思ってない。
みんなで生き残って、革命を成功させるの。
それが一番の願い。
でも…
平和な世の中になったら、私の気持ち、伝えてみてもいい…かなぁ。