【完結】きみと居た時間   作:えいぷりる

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苦境1

胸に小さな決意をしてから、慌ただしい日々が続いた。

 

イェーガーズのメンバーの一人によるアジトの奇襲。

ボスの帰還と、新メンバーのスサノオ、チェルシーの加入。

新しいアジトが見つかるまでのマーグ高地での潜伏。

 

私たちを取り巻く環境が、忙しなくやってきては過ぎ去った。

私とラバはあれから進展もなく、偵察の時にペアを組む、いつも通りの関係だった。

 

 

チェルシー「アタシが地方部隊だった時はまだ風の噂。ま、クロに近いグレーってとこかな。」

ナジェンダ「ヤツの尻尾を掴むべく、革命軍の密偵チームが探っている。」

ラバック「俺たちがその密偵チームと落ち合って、伝達を受けるってわけね。」

スサノオ「ボリックがシロかクロか。安寧道の宗教反乱は、革命において起点となる。そこを潰されるわけにはいかないな。」

リン「まだ不確定要素が多ければ…私たちが、安寧道のあるキョロクで直接調査ってことですね。」

ナジェンダ「頼んだぞ。ラバック、リン。」

ラバック、リン「了解。」

 

 

ーー安寧道。

帝国の東部に位置するキョロクという街で、一人の教主によってまとめ上げられた宗教団体。

"善行により幸せや長寿がおとずれる"という教えが人を呼び、今や一つの勢力として確立するほどだ。

教主の穏やかな性格と超常の力により、信者から絶大の信頼を誇る強固な団体である。

 

彼らの信仰と相反する帝都に対し、近く武装蜂起を勃発させる動きを見せているが、

それを察知した大臣がスパイを送り込み、蜂起の阻止を目論んでいるとの情報が回っている。

 

東の安寧道の武装蜂起を利用し、西の異民族、南の革命軍が帝都に攻め入るのが革命の大枠だ。

この三方からの反乱を成功させるためにも、ボリックを討ち取り、安寧道の内部崩壊を阻止することは必須。

私たちは調査報告を受けるため、事前に知らされていた場所で密偵チームと落ちあった。

 

ラバック「睨んだ通り、やっぱクロだったか。」

リン「ここで安寧道が崩れたら、帝国に反する勢力が削がれてしまう。なんとしても、ボリックを処理しなくてはならないわね。」

ラバック「教団内部のことも頭に叩き込んだし、そろそろ報告に戻りますか。」

 

ボリックが大臣のスパイである裏付けも取り、アジトへと戻る道中だった。

 

???「ククッ。せっかくいいオモチャも手に入ったし、あいつらで遊ばせてもらうか…。」

 

キュイィィィン

 

ラバック「今、変な音しなかった?」

リン「!! 前!」

 

ゴオォォォォ…

 

突如、危険種ともヒトともとれる異形な生物が、土埃と共に、私たちの前に立ちふさがった。

2メートルほどの高さに、大木のような両腕が備わる。

 

ラバック「くっ、なんだよコレ!」

リン「アジトを襲ってきたやつに似てる。」

ラバック「ってことは、科学者サマのお土産ってことか。」

リン「でも、Dr.スタイリッシュは倒したはず…きゃっ!」

 

バキィ!!

危険種が激しく腕を振り回し、道の両脇に構える木々を吹き飛ばす。

飛びかかってくる木片や石をギリギリで避け、危険種と距離を図る。

 

ラバック「なぎ倒されちゃうんじゃあ、隠れても意味ねぇか…。」

 

ラバがクローステールで防御網を張ると、危険種は網めがけて大きな腕を振るう。

 

ズウゥゥン!!

その威力を物語る、凄まじい地響き。両足で踏ん張るラバの体は、ズズッと後方へと滑る。

 

あれに殴られたらひとたまりもないでしょうね…。

けれど、体が大きい分、次の動作への転換が鈍い。

私はその隙をついて裏へ回り込み、殺意の精神エネルギーを込めた注射器を3本、首元へとお見舞いした。

 

ギョオォォォォ!!

 

この世のものとは思えない奇声を発し、膝から力なく崩れ落ちる。

 

ラバック「ナイス、リン。」

 

そう言うと、クローステールを異形種の首へ巻きつけ一気にへし折った。

 

リン「アジトを襲ったやつより精度は落ちているようだけど、一体どこから…。」

ラバック「Dr.スタイリッシュが単独行動をとっていたことを考えても、イェーガーズの報復ってわけじゃなさそうだしな。」

リン「また別の部隊?」

ラバック「だとしたらやっかいだね。」

 

誰が何の目的で?

様々な憶測が飛び交う中、前方から見慣れた黒髪の少女がこちらへ向かってきた。

 

アカメ「ラバ、リン!ここにいたか!」

リン「アカメ!」

アカメ「帝都で新種の危険種が出現している。これらの駆除の任務が決まった。急いで戻ってくれ!」

ラバック、リン「!!」

 

迎えに来たアカメの緊急招集の命を受け、私たちはすぐさま新しく構えたアジトへ向かった。

 

ナジェンダ「やはり、ボリックは大臣の差し金だったか。」

チェルシー「真ーっクロな顔してるもんね〜。」

タツミ「ラバ達を襲ってきた新型の危険種ってのも気になるな。やっぱり、いま帝都で暴れてるやつらの仲間なのか?」

ナジェンダ「なにか関係があることは確かだろうな。」

 

タバコの煙をふぅ…とひと吹きし、言葉を続ける。

 

ナジェンダ「やつらは今も人や家畜を食らっている。イェーガーズや帝国兵が駆逐しているが、数が多く追いつかないそうだ。私たちが手を貸すことは、言ってしまえば帝国に協力する形になるが…いいな?」

タツミ「もちろんだぜ!今回は事情が事情!」

アカメ「話を聞く限り、速やかに葬るべき連中だ。」

 

新型危険種の討伐は帝国側も動いている。

帝国兵士やイェーガーズと対峙することのないよう、俺たちは夜に出動することになった。

 

 

ラバック「ちぇーっ、俺のペアは男かよ。」

 

俺はタツミとフェイクマウンテンの調査担当だ。

この付近ではなかなか高度のある山で、見晴らしがいいといえばいいが、観光用の山じゃないため、道中も落下防止の施しなんてのはない。

落ちたら一環の終わりだぜ…。

 

タツミ「そんな露骨にガッカリしなくていーだろ。」

ラバック「帝国兵とか潜んでねーだろうなぁ…。」

 

肩をすくめてキョロキョロと周りを見渡してみる。とりあえず周囲には何もいねーな。

 

タツミ「ははっ、そんなにビビんなって。」

ラバック「お前ね、臆病さってのは殺し屋が生きる上で必須なんだぜ?」

 

連日の修行で自信をつけたのか、余裕をかましているタツミの方へツカツカと歩み寄った。

 

ラバック「ナジェンダさんだってそう言ってたぞ。覚えとけよ、コラ。」

 

俺の啖呵に圧倒されて言葉も出ないようだ。

 

タツミ「そういえばさ、昼間も思ったんだけど…」

 

と思いきや、ド真剣な顔して含みのある台詞を吐きやがる。

 

ラバック「な、なんだよ…。」

タツミ「ラバはボスのことナジェンダさんって呼ぶんだな。」

 

!!

何言うかと思ったらそこかよ!

って、こんだけ一緒に生活してて気付いてないのかよ!!

 

照れくさいところを突かれたのとタツミの鈍感さとで、返す言葉がなかなか見つからなかった。

 

ラバック「ま…まぁ、そりゃあな。帝国軍時代からの付き合いだからな。」

 

へぇ〜と言わんばかりの表情で、次の言葉を待っている。

この話、続けなきゃダメなのね…。

 

ふぅ、と一息ついて、俺のナジェンダさんへの想いを語ってやることにした。

 

ラバック「…ナジェンダさんが俺のいる地方に赴任してきて、一目見て惚れたね。俺は富豪の家の四男坊だったけど、兵士として志願して、持ち前の器用さで傍に仕える兵に上りつめたってわけ。」

タツミ「じゃあお前がナイトレイドにいるのって…」

ラバック「あの人への愛ゆえに…かな?」

 

前髪をサラッとかきあげてみる。

 

ラバック「帝国抜ける時、記録を死亡扱いにしてついてきたんだ。健気だろ?俺って。…でも報われないんだぜ。泣ける話だろ。」

 

初めて話した俺の一途な愛。これでタツミも俺のこと少しは見直すだろ。

タツミに背を向け余韻に浸っていると、ガシッ!と左肩を掴まれた。

 

タツミ「ラバ…」

 

おっ、今注がれているのは尊敬の眼差しか?

 

タツミ「じゃあ他の女の風呂を覗こうとするなよ!!!」

ラバック「はぁ!!?」

 

ちょっと!想像してた反応と違げーけど!?

しかも!!

 

ラバック「それとこれとは別だろ!?何言ってんのお前!」

 

好きな人がいたって、可愛い女の子が見たいのは男の性だろーが!

 

タツミ「あ、でも…リンの風呂だけは断固として覗かないよな、お前。」

 

ハタ、と何かに気付いたように、俺の方に置いていた手を離す。

 

ラバック「前も言ったろ。あいつを怒らしたら、命がいくつあっても足りねーんだって。」

タツミ「ってか、いつも女の子はちゃん付けで呼ぶのに、リンのことは"リン"なんだな。」

 

!! こいつ…

鈍感なくせに色々痛いとこ突いてきやがる…

 

ラバック「いや…それはまぁ…、リンとは任務で組むことが多いからね。そういう意味では、ナイトレイドの中で一番関わりが深いからかな。」

タツミ「ふーん、息のあったパートナーってわけか。」

 

パ、パートナーって…

なんかそれっぽい響きになっちゃってるけど、そんなんじゃねーし!

しかも俺にはナジェンダさんが…!

 

タツミ「? なに赤くなってんだ?要するに、マインとシェーレみたいな関係ってことだろ?」

 

あ、なるほど…

 

ラバック「そっ、そうそう!そういうこと〜!」

 

アハハハハ、と空笑いで誤魔化す。

…全然誤魔化しきれてはいないが、「変なラバだな。」とだけ言い、タツミはそれ以上は気にしていないようだった。

 

タツミ「それにしても、危険種いそうにねぇなぁ。」

ラバック「糸も張ってるんだが、獲物がかかりゃしねぇ。」

 

クィっと引っ張ってみる。やはり無反応。

 

タツミ「ここらが安全ってなら、ひとっぱしり山頂の方見てくるわ。」

 

背負った剣型の帝具を抜きながら、タツミが言う。

 

ラバック「なんかいても逃げてこいよ、二人でかかるぞ。」

タツミ「了解、すぐ戻る!」

 

瞬時にインクルシオの鎧を纏うと、あっという間に頂上めがけて飛び去っていった。

 

 

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