頂上へとすっ飛んで行ったタツミの姿は、あっという間に見えなくなった。
フェイクマウンテンは危険も多いが、遮るものがない分、隠れた夜景スポットでもある。
澄んだ星空と、地上にちりばめられた宝石のような街並みを堪能しながら、火照った体を冷ますことにした。
俺、ナジェンダさんのこと聞かれた時より、リンのこと聞かれた時の方が戸惑った。
…本当は、わかってるんだろ?
でも素直に向き合ったら、今まで積み重ねてきた心地良い関係が崩れちまいそうで…。
この気持ちは、ナジェンダさんの影に隠してたんだ。
それに昔、"みんなと一緒にいるのが幸せ。"リンは、そう言っていた。
だから…このままでいいんだよな。
キュルルルルル!!
突如、クローステールが凄まじい勢いで反応する。
ふもとから山への侵入者!?
なんだこの移動速度…尋常じゃねぇ!
得体の知れないモノが、異常なスピードでこちらへ向かってくる。
とっさに、崖のスキマから生えていた木に身を隠す。
誰だか知らないが鉢合わせはゴメンだ、ここは隠れてやり過ごす…!
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レオーネ「私がリンと組むなんて、片手で数えるほどだよな〜。」
リン「ふふっ、そうね。レオーネ、私の力がなくてもピンピンしてるからね。」
手配書の回っていない私とレオーネは、帝都近郊の調査に出ていた。
ナイトレイド内では、ペアのパターンは大抵決まっている。遠近距離のペアだったり、得意分野が似ているペアだったり。
私は偵察と援護を主としているため、同じく偵察を得意とするラバや、戦闘の際は接近戦を得意とするアカメと組むことが多かった。
レオーネも接近戦タイプだけど、彼女は圧倒的な回復力を持ち合わせているため、ペアを組んだことはほとんどない。
レオーネ「この辺はやっぱ帝国の兵とかイェーガーズがやっつけちゃってるんだろうねぇ。なーんにも出てこなくてお姐さんつまんないわ〜。」
リン「出て来ないってことはこの辺は安全が確保されてるんだから、いいことじゃない。」
レオーネ「せっかく気合入れて来たんだし、ちょっとは暴れたかったけどねぇ…」
右腕をぐるぐる回し、出て来いと言わんばかりの後ろ姿だ。
レオーネ「ま、でもただ歩いてても退屈だしぃ?リンの近況でも聞いとこうかなぁ。」
グフフ、と笑いながらこちらを振り返る。
こういう顔…いつかのお風呂場でも見たような…。
嫌な予感がした瞬間、ガバッとレオーネに肩を組まれる。
レオーネ「で?戻ってきてだいぶ経ちますけど、進展したのぉ?」
リン「…え!?な、ななな、なんのことだろう!?」
一瞬にして耳まで真っ赤になったのが自分でもわかった。
このやりとりも、お風呂場のデジャヴな気がする…。
レオーネ「ふふ〜ん?お姐さんに隠し事しようったって、そうはいかないよ。ライオネルの嗅覚をナメちゃあいけない!」
そんな勘まで鋭くさせなくていいのに…!
茹でタコのような顔を下に向けていると、レオーネがふっと肩の力を抜いて微笑んだ。
レオーネ「あたしはね、みんなには笑っててほしいんだよ。ホラ、こんな稼業じゃん?いつ報いを受けるかわからない。だから、何もしないで後悔して欲しくはないんだ。」
先陣切って我が道を突っ走っているようで、ちゃんとみんなのことを想ってる。
レオーネの暖かさに触れて、私の頬も緩んだ。
レオーネ「んで?ラバのどこが好きなのさ?」
リン「唐突だね…。」
気付けばさっきのニヤニヤ顔に戻っている。
そんなレオーネを横目に、ぽつりぽつりと、言葉を紡いだ。
リン「…ボスから聞いたの。シェーレが死んでしまった時、ラバは泣いてたって。
怒りじゃない、悔しさじゃない。悲しみの気持ちでいっぱいになった…。そんな優しさが好き。」
くすぐったくなって、へへっとはにかんでみると、レオーネがこの上ないニヤケ顔を見せ思いっきり抱きついてきた。
レオーネ「もぉ〜〜そういう甘酸っぱいの、お姐さん慣れてないから恥ずかしいよ〜〜。」
ニャハハハと言いながら、自身の頬を私の頭に擦りつける。
リン「じ、自分から聞いたくせに!ちょっと…苦しいよレオーネ!」
こんな話をしながら堂々と闊歩できるくらいだから、帝都周辺の新型危険種は駆逐済み。
そう確信した私たちは、アジトへと戻ることにした。
アカメ「タツミが戻ってこない?」
マイン「あいつ、どんだけ心配かければ気が済むんだか!」
一足先に帰っていたアカメやマインと共にダイニングにいると、フェイクマウンテンからラバが一人で戻って来た。
ナジェンダ「エスデスか?」
ラバック「糸の重さからして、女じゃなかったね。」
ナジェンダ「あれからタツミも成長している。エスデスでなければ、そう簡単にやられはしないと思うが…。」
チェルシー「一人で突っ走るからよ。」
リビングの入り口から声がした。
チェルシー「夜のフェイクマウンテンなんて、どんなヤツが潜んでいるかわからない。なのに単独行動を起こすなんて…やっぱり甘いのね。」
チェルシーとスサノオが任務から戻ってきていた。
口調はキツイけど、チェルシーの言うことも一理ある。それは誰もがわかっていた。
ラバック「一人で調査するのを許したのは俺だ。タツミを甘いって言うなら、俺も同じだよ。」
チェルシー「仲間を庇う、か。優しいんだね〜。ま、それがココの良いところなんだもんね。」
リン「そんな風に言ってるけど、チェルシーも心配なんでしょう?」
チェルシーが私たちを"甘い"と言ったのはこれで二回目だ。
でも、以前とは全く違う。タツミに対する厳しさよりも、心配が優っている…そんな顔をしていた。
スサノオ「一本取られたな。」
チェルシー「勝手に代弁しな〜い。」
やれやれ、という仕草をしながらスサノオとともに私達の輪に入る。
ナジェンダ「新型危険種の駆逐とともに、タツミに関する情報収集。これを新たな任務とする。」
全員「了解。」
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タツミの行方を探す日々が続く。
その一方で、新型危険種狩りはあらかた片付いていた。
レオーネ「よーっし!この辺の掃除も完了!いや〜働くって清々しいねぇ。」
チェルシー「結局、タツミの情報はなんにも出てこないね〜。」
マイン「新型危険種のことも、どっから現れたのかとかなんにも得られてないけどね。」
チェルシー「今のところの手がかりは、ラバ達が聞いた音か。」
レオーネ「危険種が出現する前に聞こえたってアレか?おねーさんがいれば、音の元がわかったかもしれないのに、残念だ。」
マイン「フンッ、新しい勢力だろうとなんだろうと、このパンプキンで撃ち抜くまでよ!」
チェルシー「へぇ〜気合い入ってるじゃん、ホ・ケ・ツ♪」
マイン「はぁぁぁあ!?アンタいつまでそれ言うつもりなのよー!!」
キャイキャイ言いながら、レオーネの周りをぐるぐる追いかけ合う二人。
レオーネ「おーい…任務中だぞ、一応。」
ラバック「張り切ってるねぇ、マインちゃん。」
一連の様子を遠目で鑑賞しながら、別の場所を担当していたアカメとラバ、私はレオーネ達に合流した。
レオーネ「おぉ、お疲れ。」
アカメ「こちらの地区もほぼ殲滅した。」
レオーネ「さっすが、仕事が早いねぇ。」
リン「でも相変わらず、タツミに関してはなんにも。」
レオーネ「う〜ん…。なぁラバ、タツミはフェイクマウンテンではぐれたんだよな?」
ラバック「あぁ。中々戻ってこなくて様子を見に行ったけど、タツミも、異常なスピードで山頂に向かって行ったヤツも姿はなかった。」
アカメ「もしかしたら、また同じ場所に現れるかもしれないな。」
レオーネ「そんじゃあ、次はあたしが迎えに行かせてもらおうか!この間は待ちくたびれちゃったからな!」
言うや否や、ピュン!とフェイクマウンテンの方へと走り去って行った。
アカメ「そこに戻るかは確実ではないが…。」
親友の声も、レオーネ自慢の耳にはもう届いていないようだった。
マイン「ちょっとぉ!単独行動は危険だって言ってるじゃないの〜!」
ピンクのツインテールを大きく揺らしながら、レオーネの後を追いかけて行った。
チェルシー「ありゃりゃ、マインは先を越されたね。」
アカメ「チェルシーはいいのか?」
チェルシー「え、私!?いやいや、なんで急に振るかな〜。」
アカメ「まぁ、別のところに現れるかもしれないからな。こちらはこちらで調査しよう。」
チェルシー「それ、乗った〜♪」
そう言うと、アカメとチェルシーはフェイクマウンテンとは反対の方向へ歩き出した。
リン「タツミ、人気者だね。」
ラバック「くそぅ…なんでアイツばっかり…。」
取り残されたラバは、振り子のような涙を垂らしながら悔しがっていた。