【完結】きみと居た時間   作:えいぷりる

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苦境3

レオーネ「あれぇ?タツミ、なにやってんの?」

タツミ「姐さん!」

 

謎の光に包まれ、エスデスと共に遥か遠くの無人島へ飛ばされていた俺。

しばらく島で生活していたが、再び同じ光が出現し、思い切って入ってみた。

その勘も当たり、飛ばされる前に居たフェイクマウンテンの頂上へ戻って来ていたのだった。

 

レオーネ「体育座りって…プッ!」

 

透明化しているとはいえ、存在が消せるわけではない。

共に帰って来たエスデスに気取られないよう、必死に身を固めていた。

で、ちょうど透明化を解いた時に姐さんと鉢合わせたってわけだ。

 

レオーネ「で、でかい図体して…ちょこんと…た、体育座り…アッハハハハ!」

タツミ「笑いすぎだぞ姐さん…。」

レオーネ「アハハ…まぁなんにしても無事みたいだからよしとしよう!」

 

バシンバシン!と背中を叩かれる。生身の姿に戻ったからか、けっこう痛い。

でも、この痛さが姐さんの気持ちなんだよな…。

 

タツミ「ごめん、また皆に心配かけちゃったな。」

レオーネ「んー?まぁね。でもタツミはもう大丈夫って思ってたよ、皆。強くなったって認められてる証拠じゃーん?」

 

頭上で腕を組みながら山を下る姐さんが、こちらをチラリと振り返りながら言う。

気遣ってくれてるんだろうか。

 

タツミ「ラバにも、謝っとかなきゃな。最後に二人で調査してる時に別々になっちゃったし。」

レオーネ「そうそう!ラバと言えば!」

 

何かを思い出したかのように怒りだす。

 

レオーネ「ま〜た性懲りもなく覗こうとしてるもんだからさ〜!指5本イッといた!」

タツミ「ハ…ハハ…。姐さんは容赦なく体の一部持ってくし、チェルシーはちょん切るっていうし…。」

 

俺の心配はいずこへ?という疑問よりも、姐さんとチェルシーには絶対逆らわないでおこうという恐怖が上回っていた。

 

タツミ「二人のお仕置きでもお腹いっぱいなんだが…果たしてリンは一体どんなフルコースを見舞ってくれるんだ?」

レオーネ「ん?なんでリンが出てくるんだ?」

タツミ「ラバが言ってたんだよ。リンの風呂を覗かないのは一番怖いからだって。」

レオーネ「アッハハ!アイツそんなこと言ってんだ。」

 

何の冗談?と言わんばかりにカラカラと笑う。

 

タツミ「違うのか?」

レオーネ「確かに、リンは静かに怒るからね。怖いといえば怖いけど、危害を加えるようなことはしないよ。」

タツミ「そ、そうなのか?じゃあなんでラバはあんなこと…」

 

真剣に考える俺を見て、姐さんは前へ向き直して答えた。

 

レオーネ「ホントに好きな子の風呂を覗く度胸なんてないんだろうねぇ。」

タツミ「えっ、好きな子って…」

レオーネ「あれぇ?気付いてなかったの?少年。」

 

ニヒっとした顔を向けて、ワザとらしくからかってくる。

 

タツミ「えっ!だっていつもナジェンダさんナジェンダさん言ってるよな!?」

レオーネ「ハハッ、あれは照れ隠しだろ。まぁ最初はボスに惚れてたんだろうけどね、今はリンが気になってしょうがないんだろ。」

タツミ「ぜんっぜん気づかなかったぞ…。」

レオーネ「…あの二人も、素直になればいいんだけどね。」

 

ポソっと呟き、こちらを見て優しく笑う。

でもその笑顔は、俺を通して別の人へ向けているように見えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ナジェンダ「タツミ、よく無事に帰還した。皆も、討伐と情報収集ご苦労だったな。」

 

夕食や各々の作業も済み、私たちはボスの待つ会議室に集まっていた。

ここに集合する時は、たいてい大きな仕事が動く。ボスの緊張感からも、それが伝わってきた。

 

ナジェンダ「戻ってきて早々になるが、時間もあまり無い。次の動きへ打って出る。」

 

革命軍の密偵部隊が掴んだ尻尾…安寧道に潜り込むスパイの暗殺だ。

 

ナジェンダ「ここのところ、ボリックの動きが派手になってきている。ヤツが事を起こす前に、我々で処分する。」

タツミ「安寧道は、帝国の反乱分子。ってことは、俺たちの仲間も同然だもんな!みすみす崩壊させはしねぇ!」

ナジェンダ「そして…」

全員「?」

ナジェンダ「イェーガーズがエスデスの率いる隊である以上、大臣の私兵であることには変わりない。今回の任務を円滑に進めるためにも、先に潰しておくべきだろう。」

 

人に見立てたチェスの駒で、もう一つの駒を弾く。

 

ナジェンダ「あいつらは今、全力で私達を狩ろうとしている。ならば帝都の外まで誘き寄せ、そこで仕掛ける!!」

 

イェーガーズとの全面対決…。

帝具と帝具の戦いは、必ずどちらかに死をもたらす。

それが、実力が均衡している両者ならばなおのこと。

彼らとの戦いは、お互いに死という運命を避けられないだろう。

でも…必ず私たちが生き残ってみせる…!

 

 

そう…きっとこの時から、

私たちの秒針は、定められた運命へと加速していたんだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

次の日、私たちは安寧道のあるキョロクへと歩を進めていた。

睨んだ通り、イェーガーズも同じ目的地へ出発したとの情報が入っている。

 

キョロクまでの中間地点となるロマリーの街でイェーガーズの戦力を分散するために、私たちの目撃情報を操作する。

…ボスの狙いはアタリ。

ナイトレイドが東と南に分かれたと知り、イェーガーズも二手に分かれ、私たちを追っていった。

けれど、実際はナイトレイド全員が南側の渓谷で迎撃の構えをとっていたのだ。

 

ラバと私は、ボスを追って東へ向うであろうエスデスが、罠と知り引き返してきた時に足止めをする役目。

息を潜めていると、無数に掛けたクローステールが激しく軋みだした。

 

ラバック「戦い、始まってるみたいだね。」

 

隠れていた木が揺れる。

 

リン「厳しい戦いになるでしょうね。せめて、革命軍のターゲットになっているボルスとクロメだけでも始末出来れば…。」

ラバック「この先誰が倒れても、回復役のリンは絶対逃げのびる。いいな。」

 

実力が拮抗しているからこそ、勝利の鍵は体力や精神力にある。私がそこをサポートすることで、自軍の勝率を格段に上げられるのだ。

勝って次に進むためにも、絶対に倒れるわけにはいかない…!

 

 

地面の揺れを何度か感じた時、ふと、チェックのスカートがひらりと横目に映った。

 

リン「チェルシー!」

ラバック「もうそっちは片付いたの?」

チェルシー「あっちチームでの私のノルマ、終〜わり。」

 

化粧箱型の帝具をラバと私に見せ、ふふっと笑う。

 

チェルシー「正面切って戦うのはもう懲り懲りよ。次は隙をつかせてもらうわ。」

 

チェルシーの帝具は、変身自在なガイアファンデーション。

メイク道具の形をしたアイテムで様々なものに変化し、対象に近づいて暗殺する。

 

チェルシー「…で、火炎放射器持ってるのって、白いマスク男よね?」

リン「ええ、ボルスよ。村を丸ごと焼き払う力を持つ帝具、ルビカンテの持ち主。」

チェルシー「そう…。」

ラバック「って、チェルシーちゃん!?」

 

突然立ち上がると、チェルシーは地面へと降り立った。

 

チェルシー「エスデス達の足止めは任せたわ。よくは知らないけど、ボスが認めるほどだもの。ラバの奥の手、頼りになるんでしょ?」

ラバック「まぁ…時間稼ぎ程度なら、だけどね。」

チェルシー「オッケー、そっちはよろしく!」

 

何か策があるかのように、一人林の中へと入っていく。

 

リン「一体、どこへ?」

チェルシー「私は私のやり方で確実に仕留めさせてもらうわ。まぁ任せなさいって。」

 

そう言い残すと、チェルシーの姿は林の奥へ消えて見えなくなった。

 

リン「一人で大丈夫かしら…。」

ラバック「チェルシーちゃんも、アカメちゃんと同じくらい任務を成功させている手練れだ。何か策があるなら任せて大丈夫でしょ。」

 

心配ではあったけど、今は自分たちに命じられた任務に集中した。

 

 

しばらく潜んでいたが、エスデスが引き返してくる気配はない。布石として配置しておいた賊が役に立っているのだろうか。

その間にも、仲間達の命の削りあいの怒号が何度も轟く。

イェーガーズ…やはり対峙するだけあって、そう簡単に決着をつけてくれそうにないわね…。

そう思った瞬間、辺り一面を激しい閃光が覆いつくし、少し遅れて鼓膜が破けそうなほどの爆発音が鳴り響く。

 

ゴオォォォォオ!!

 

リン「…っ!」

ラバック「まさか…ルビカンテの自爆!?」

 

爆発音とともに、爆風が襲ってくる。

 

ラバック「最終手段を引っ張ってくるってことは、こっちが優勢だったのは確かだろうね。」

リン「今ので、一人は倒した…?」

ラバック「いや、なかなか一筋縄じゃいかないみたいだぜ。」

 

ラバの糸は、自爆を引き起こした本人がまだ生きていることと、向かった先がチェルシーと同じ方向だということを示していた。

 

ラバック「後を追おう!」

 

 

ラバの意図を頼りにチェルシーとボルスの後を追っていくと、広場の中でチェルシーが見事ボルスを仕留めた姿が映った。

 

ラバック「逃がさずかっちり標的を仕留めるなんて、さすがチェルシーちゃん。」

チェルシー「ラバ、リン!」

ラバック「みんなと合流しようぜ。」

チェルシー「…私はこのままクロメを追って、エスデス達と合流する前に仕留める。」

リン「なっ…!」

ラバック「おいおい、さすがに危険だぜ!ここで無茶するキャラじゃないだろ!」

チェルシー「このままクロメを逃したら、また体制を整えて襲ってくる!そっちの方が危険でしょ!」

リン「でも…」

チェルシー「二人は戻ってこのことを皆に伝えて。で、新しく戦闘タイプを2人派遣して。」

 

いつもなんとなくかわすチェルシーだけど、この時の彼女には鬼気迫るものを感じた。

 

ラバック「…わかった。でも、くれぐれも無茶は」

チェルシー「しないよ。エスデスと合流してたら、とっとと引き返すし。」

ラバック「すぐに援軍を向かわせるからな!行こう、リン。」

チェルシー「よろ〜!」

 

クロメの追跡をチェルシーに任せ、私たちは臨時のアジトへと走った。

 

 

ナジェンダ「なるほど、ボルスは仕留めたか。」

マイン「あいつ、単身でクロメを追ったのね。」

リン「これまでの情報を合わせると、クロメはドーピング以上の何かをしている。どんな動きをするかわからない以上、チェルシーでも攻撃を当てられるか…。」

マイン「援軍は、急いだ方がいいわね。」

ナジェンダ「アカメ、タツミ!聞いた通りだ。まだ回復し切っていないと思うが、急いでチェルシーを援護しろ!」

アカメ、タツミ「了解した!」

 

 

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