"すぐ近くにいたのに"
ーーまた一つ後悔が増える
"今度こそは"
ーーもう何回目だよ?
周りから言われるほど、器用なんかじゃない。
弱さを隠すために装ってるだけなんだ…。
標的を追ったチェルシーちゃんのことは、援軍として向かったタツミとアカメちゃんに任せることにした。
本当は俺がサッと華麗に助けたいところだが、俺に与えられた仕事は、吹っ飛んだレオーネ姐さんの左腕をサッと華麗に縫合することだった。
スサノオ「マインの応急処置は大体終わった。」
リン「ありがとう、スーさん。後は任せて!…と言いたいところだけど、さすがはスーさん。完璧に処置してある。」
ナジェンダ「ふふん。さすが私の帝具だ。」
マイン「ハイハイ。でも本当にすごいわね、全然痛くないわ。」
くっそー…ナジェンダさんもマインちゃんもリンも、スーさんばっかりチヤホヤしやがって。
レオーネ「まぁまぁ妬くなよラバ。私の腕は、ラバとの連携じゃないと治らないんだぞ〜?」
ラバック「ハハ…お気遣いどーも。って俺、糸縫ってるだけなんだけどね。」
部屋の中に、ひんやりとした空気が流れ込む。
あぁ、雨降ってきたのか…。
人目につかない林の中へ建てた仮住まいのアジトは、ログハウスタイプ。外の空気や湿度がダイレクトに伝わってくる。
仮アジトの外は、いつの間にか灰色に染まっていた。
雨の中、仲間の帰りを待つ。こんな時は嫌でもシェーレさんのことがフラッシュバックしてしまう。
もう…あんな悲しい思いは沢山だ。
またあの言葉を聞きたくて、無意識にリンの方を見る。
俺の視線に気付いたのか、こちらを見て微笑む。「大丈夫。」…まるでそう言ってくれてるかのように。
俺の弱さも全部包み込んでくれるリン。
それが、自分でも気付かないうちにすげー救いになってたんだ。
あの笑顔は…絶対に失いたくない。
部屋の中にまで音が聞こえてくるほど、雨足が強くなっていた。
窓の側に立ち、外を眺めていたナジェンダさんがハッとする。
…が、一瞬悲しい目をして、静かに瞑った。
キィ…
ログハウスの扉がゆっくりと開き、ナジェンダさんが目を瞑った意味を、誰もが知る。
帰ってきたのは…タツミと、アカメちゃんだけだった。
"チェルシーは助けられなかった。"
アカメちゃんの言葉を最後に、誰も一言も発することなく時間だけが過ぎていく。
外の空気を吸おうと、俺はそっとアジトを出た。
雨は上がっていたが、灰色の景色は変わらない。
あの時、俺が付いていればチェルシーちゃんは助かったかもしれない。
タツミだって、エスデスに攫われた時も無人島へ飛ばされた時も、俺が近くにいたのに…
"今度こそ"って意気込んでみても、結局誰も救うことが出来ない。
後悔ばかりが積み重なって、ちっとも前に進めない。
俺…なにやってんだよ…
ナジェンダ「お前が物思いにふけるのも珍しいな。」
ラバック「ナジェンダさん…。」
いつの間にか、ナジェンダさんが隣で煙草を吸っていた。
ナジェンダ「帝国兵の時から共にいるが、お前のそういう姿は初めて見るかもな。」
近くに手頃な切り株を見つけて腰掛ける。
俺のこと、追ってきてくれたのか。
ラバック「…俺、臆病だからさ。だんだん皆がいなくなっちまって、本当は怖ぇんだ。」
ナジェンダさんは何もかも見透かしていそうで…だから、本音を打ち明けてみる。
ラバック「でも、タツミやアカメちゃんみたいにバリバリの戦闘タイプじゃない俺に、なにが出来んのかな…って。」
俺の弱音を聞き終えしばらく沈黙していたが、口に含んだ煙をゆっくり吐き出した。
ナジェンダ「…迷うな、ラバック。お前は、お前が本当に大切だと思うものを守れ。」
俺が…本当に大切なもの…
ナジェンダ「もう、気づいているだろう?」
後悔はいつだって付いて回る。
自分の非力さに心が打ちのめされる時だってある。
でも…その分、思いは強くなっていくんだ。
ナジェンダ「先に戻ってるぞ。風邪、引くなよ。」
決意を胸にした俺を見て、安心したようにその場を去っていった。
"すぐ近くにいたのに"
ーーだから、間に合わないことなんてない。
"今度こそは"
ーー必ず、守ってみせる。