公園とは、一体何をもって公園たらしめているのだろう、と考えたことがある人もいるかもしれない。
たとえその場所に「〇〇公園」という名前がつけられていたとて、3m×3mの僅かなスペースにベンチしかない空間を「公園」と認識するのは、些か難しいだろう。
人々から認識され──名前をつけられることは怪異の必要条件だが、だからといって名前がつけられることは十分条件足りえないのだ。
……いや、公園と怪異を同列に語るのはさすがに暴論かもしれないけれど。
それでも、「〇〇公園」と書かれた看板ひとつで、公園と呼ぶのは僕にはどこか腑に落ちなかった。
実際には消防法だったか、都市計画法だったかのお役所的な都合で──つまりは公園を作ることが目的ではなく、手段に過ぎない──繁華街の近くに「公園」という名目の空き地を作ることがあるらしいが、それは置いておこう。
僕が言いたいのは、名前だけでは、己を証明したことにはならないということだ。
遊具で遊んでいる子供がいる空間を見て、そこを公園でないと言い張るのは、名前が着いていなくても無理筋というものである。
……これは違うか。いかに寛容な僕とて、あの狭さで遊ぶ子供を見て、その場を公園と認識するのは難しい。同様に河原でボール遊びをする子供たちがいるからといって、河原であることには変わりないのだから。
やはり遊具だろう。砂場と、シーソーと、ブランコ……このあたりがあれば、子供がいなくとも──看板が無くとも、「寂れた公園だなぁ」と憐れまれるくらいで、「公園」という面目は保てるはずだ。
要は、自分がどういった存在かを世に示したければ、最低限のアピールポイントと体裁を保つ努力は必要だという訳だ。
──そして、そのどちらも怠った僕はいま、窮地に立っているのだった。
「ぐすん、ぐすん。記念すべき2回目のデートをすっぽかされるなんて、私はなんて可哀想なのかしら」
……嘘くせえ泣き真似だなぁ。騙す気がさらさらないのが見え見えだ。
だからといって、軽快にツッコむ気にはならなかったが。一報入れたとはいえデートをすっぽかしたのは事実だし、これでも傷ついているのは本当だろうからだ。
……本当だよな?そうじゃなかったら僕が傷つきそうなんだが。
「こんなゴミ……こんな甲斐性なしを彼氏に持った私はマッチ売りの少女よりも不幸だわ」
「今自分の彼氏のことゴミって言ったか!?」
ツッコんでしまった。というか、お前はゴミが彼氏でいいのか、戦場ヶ原。
「ええと、本名は確か阿良々木ゴミであらせられるんじゃなかったかしら」
「本名すらまともに覚えてくれてねぇのかよ……」
ストレートな暴言にここまで傷ついたのは初めての経験だった。……辛ぇ。
「さすがに嘘よ、阿良々木くん。そしてそこまで気にしてないわ」
「阿良々木くんがそういった人なのは知ってるつもりだし、こうして忘れずに逢いに来てくれたしね。……後ろのそれ、わざわざ用意してくれたのでしょう?」
後ろ手に隠した──記念日のために用意した花束は、怪異相手に振り回されているうちに、僕以上に見る影をなくしていた。
「でもよ、結局デートをすっぽかしたのに変わりはないだろう……」
そう。
暴言よりも、ゴミ呼ばわりよりも……いや、ゴミ呼ばわりは相応に傷ついたのだが……それよりも、戦場ヶ原を悲しませたことが何よりも辛かった。
「気にしてないってば。それともこう言えばわかるかしら?」
「──気持ちだけでも嬉しいわ」
その花束が無事ではなかった程度には、あなたも大変だったのでしょうし、と優しさを滲ませる声色で続けたのだった。
「戦場ヶ原……」
「とかなんとか言っても、阿良々木くんは納得しないのでしょうね。……幸いにもまだ夕方だし、日が暮れるまで時間があるわ」
「だからね、阿良々木くん。私と今から、カラオケデートを……デートをして……いただけませんか?デートをし……したらどうな……です……」
「…………」
「カラオケデートをしましょう、阿良々木くん」
どうやら彼氏という面目だけは、まだ保たせて貰えるらしかった。