機動戦士ガンダムSEED RE:SONANCE ―星巡りのルナと換装の呪縛― 作:マキ
【あらすじ】
激化の一途を辿るヤキン・ドゥーエ攻防戦。アークエンジェルとドミニオンの死闘は、ドミニオンの大爆発という凄惨な最後を迎える。その巨大な閃光と衝撃波により、暗闇の中で漂流していたルナは奇跡的に目を覚ます。目の前で繰り広げられるキラとクルーゼの死闘。ルナは宇宙空間に放置されていた無傷のマニファードラグーンを遠隔起動し、死角からの不意打ちでキラの危機を救う。しかし、冷徹なクルーゼの即座の反撃によりマニファードラグーンは撃破され、白い機体色によってコアガンダムの存在すらも暴かれてしまう。
――ズドォォォンッ!!
宇宙(そら)を焼き尽くすかのような巨大な灼熱の光芒。 アークエンジェルとの死闘の果てに、大戦艦ドミニオンが巨大な大爆発を起こし、滅び去った。
その凄まじい衝撃波と、通信回線に溢れ出す悲痛なノイズの嵐。 過剰なフィードバックによって意識を失っていたルナの脳(チョーカー)に、その莫大な感情の波が叩きつけられた。
「ハッ……! ぁ……っ!」
ルナは息を呑みながら目を覚ました。 ブラックアウトした頭部右カメラ。肩から丸ごと吹き飛んだ左腕。コックピットの警告アラート。ガトリングパーツの爆破衝撃で遠くへ吹き飛ばされたコアガンダムは、撃破を誤認されたことで追撃を免れ、戦場の暗闇の中に静かに漂流していた。
「ドミニオンが……。そんな……」
絶望に染まる視界の先では、機体を真っ赤に染めたフリーダムガンダム(キラ)が、プロヴィデンスガンダム(クルーゼ)の縦横無尽なドラグーン網に追い詰められ、決定打を撃ち込まれようとしていた。
「まだ……終わらせない……!」
激痛に震える右手で、ルナは操縦桿――Gコン(コントロールグリップ)を固く握り直した。 サブモニターの隅で、微弱な同期信号が明滅している。26話で分離させ、宇宙空間にぽつんと放置・漂流していた2基の『マニファードラグーン』。奇跡的に破壊を免れていた唯一の切り札。
「お願い……届いて……ッ!!」
首元のチョーカーが限界を超えて青白く発光する。ルナは意識を集中し、遠く離れたマニファードラグーンを遠隔起動させた!
――シュバッ! ズドッ!
プロヴィデンスがフリーダムへ止めを刺そうとしたその瞬間。 誰も予測していなかった死角――漆黒の暗闇から放たれた高出力ビームが、プロヴィデンスのビームライフルを掠め、その射線を大きく逸らさせた!
「何……!? 死角からの射撃だと!?」
一瞬の隙が生まれ、キラのフリーダムが間一髪で危機を脱する。 だが、クルーゼの冷徹な反応速度は悪魔的だった。
「ハハハ! 撃破したはずのゴミが……どこまでも鬱陶しいのだよ!」
プロヴィデンスのドラグーン群が一斉に反転。直後、死角から放たれた高出力ビームの連射が、ルナのマニファードラグーン2基を寸分の狂いもなく打ち抜き、一瞬で粉砕・爆砕した。
さらに、クルーゼの鋭い眼光がマニファードラグーンの送信源――暗闇の中に浮かぶ「物体」を捉える。
「見えたぞ……暗闇の中で浮いている、その『白い』機体色をな!」
黒い宇宙の闇の中で、ジュピターヴ(コアガンダム)の白い装甲は、無慈悲にもプロヴィデンスの光学センサーへ鮮明に浮かび上がっていた。一斉に向く無数のドラグーンの砲口。
(やっぱり……撃ち返してくる……!)
だが、ルナは最初からこの反撃を読んでいた。 ドラグーンが発光したその0.1秒前。ルナは躊躇なくシートのレバーを引き、操縦基幹ユニットであるGコンを取り外した。そしてハッチを緊急開放し、パイロットスーツ単体でむき出しの宇宙空間へと自らの身体を蹴り出した!
――ドカァァァァンッ!!
直後、プロヴィデンスのドラグーン照射が残されたコアガンダムを直撃。白い機体は跡形もなく爆破され、激しい爆炎の華となって散った。
「ふん……今度こそ終わりだ」
クルーゼは背を向け、再びフリーダムとの死闘へと向かっていく。
爆煙から離れた漆黒の宇宙空間。 パイロットスーツのバイザー越しに荒い息を吐きながら、ルナは両手でしっかりと抱え込んだGコンを握りしめ、ぽつんと漂流していた。
「はぁ……はぁ……。キラ……頑張って……!」
機体を失い、身一つで宇宙を漂うルナの視界の中で、最後の決戦が動き出す。 ルナの命懸けの不意打ちが生んだわずかな一瞬。それを逃さなかったキラのフリーダムが、意を決してプロヴィデンスへと突撃。閃光が走り、フリーダムのビームサーベルがプロヴィデンスの胸部を貫いた。
さらに時を同じくして、ヤキン・ドゥーエ要塞が自爆を開始。アスランのジャスティスがジェネシス内部で自爆し、滅びの光は内側から崩壊していく。
「終わった……んだね……」
創世の光が消えていく。ヤキン・ドゥーエの崩壊と、無数の光の粒子が宇宙を包み込んでいく。
片手にGコンを抱えたまま、命の温もりを噛みしめるように宇宙に漂うルナ。 視界の端では、彼女を撃ち落としたプロヴィデンスの猛撃に耐え、無残に砕け散ったジュピターヴの白い装甲の破片や残骸たちが、静かに同じ軌道を揺らめいていた。
――ピピ、とスーツの受信信号が小さな音を立てる。
『こちらクサナギ! ルナ機、応答しろ! ……あっ、いたぞ! 生体反応確認!』 『救援用シャトル、急げ! 機体の残骸も可能な限り回収するんだ!』
暗闇の向こうから、眩い探照灯の光を照らしながら近付いてくる白い艦影――クサナギ。 船外活動用の作業艇が近づき、無重力空間に漂うルナの身体と、散らばったジュピターヴの残骸をそっと優しく抱きかかえていく。
「よかった……」
安堵の笑みをこぼした瞬間、極限まで張っていた緊張の糸が途切れた。 抱え込んだGコンの感触を胸に抱いたまま、ルナは温かな光の中で、今度こそ穏やかな眠りにつくのだった。
第27話をお読みいただき、ありがとうございました! そして、これにて『第1章』完結となります!
ドミニオンの轟沈、そして死角からのマニファードラグーンによる奇襲。 クルーゼの冷徹な反撃によってマニファードラグーンを破壊され、白い機体色を見破られて絶体絶命となったルナでしたが、反撃を予測して「Gコンを取り外し、スーツ単体で宇宙へ脱出する」という命懸けの機転で見事生き残りました。
ルナが作った一瞬の隙が、キラとアスランの勝利、そしてヤキン・ドゥーエ決戦の幕引きへと繋がり、無事にクサナギの手によってルナとジュピターヴの残骸も回収されました。
激闘を駆け抜けたルナたちの物語ですが、物語はまだまだここから続いていきます! 第2章ではどのような新たな物語や戦いがルナを待ち受けているのか……ぜひご期待ください!
ここまで第1章をお付き合いいただき、本当にありがとうございました! もし「面白かった!」「第2章も楽しみ!」と思っていただけましたら、ぜひページの評価(★)や感想、ブックマーク登録をよろしくお願いします!皆さんの熱い応援が何よりの執筆の励みになります!
次回もどうぞお楽しみに!