魔剣の男の娘にさせられて! 作:える
いつにもなく綺麗な三日月が浮かんでいた日。
僕は異世界で、運命に出会いました。
まぁ異世界生活はだいたい千年を超えてて、運命と出会ったって言っても人と会っただけなんですけどね。
ならなんでこんな紛らわしいを言い方をしたのかですか?
うーん⋯強いて言うのなら、こっちのほうが引き込まれませんかね?
なんか壮大な物語の予兆が現れてるみたいで。
えっ?まったく感じないですか?
それは残念です。でもまぁ良いでしょう。
人の感性というものは、千差万別なのですから。
人じゃない存在がそういう分かったようなセリフを言うなって思うかもしれませんけど。
前世は人間だったので、セーフです。
まぁそれはともかく⋯⋯人ですよ、人!!!!!
千年も時間を懸けて、ようやく意思疎通のできる生物と出会えたこの気持ちが分かりますか?
最高ですよ!!!!!もうフィーバー状態に入っちゃってますね。
ちょっと情緒が不安定になってしまっていますが、気にするほどのことじゃあありません。
今はこの感動を噛み締めておきましょう。
剣の状態のままで、僕は歓喜に打ち震える。
が、それもつかの間。
僕はすぐに我に返った。
これは⋯封印を解くチャンスかもしれませんね。
よし、彼に封印を解いていただくとしましょう。
※※※×※※※
陰の実力者候補生ことシド・カゲノーの内心はいろいろとすごいことになっていた。
歓喜、驚愕、愉悦。
さまざまな感情がシドの中で渦巻く。
彼の意識はすべて、ソレに向けられている。
ソレは一振りの黒き剣。
一見すれば、何の変哲もないただの黒剣だが、シドの陰の実力者センサーがソレがただの剣ではないことをシドに伝える。
(これは……絶対、伝説の武器的ななにかだっ!!)
人気のないはずの森に不自然に存在する、台座に突き刺さった禍々しい雰囲気の剣。
それを見たシドは、前世の経験から黒剣がなんかすごい武器だと判断した。
そう思ったのもほんの一瞬。
次の瞬間には、陰の実力者もびっくりな光景が広がった。
何を隠そう、黒剣が光を放ったと思ったら、人の形に変わったのである。
それも銀髪赤眼の美少年に。
(いやぁ、すごいな。肉塊が金髪エルフになった時と同じくらい驚いたよ。もしかして最近の子どもたちの間じゃあ、意外性のある変身が流行っているのな?)
「はじめまして、暗黒を纏いし人の子よ。僕はデウレクエイズと呼ばれる、神殺しの魔剣です。貴方の名は?」
「僕?僕は────」
そこまでつぶやき、ふとシドは思う。
デウレクエイズさん⋯略してエイズさんが雰囲気を出してくれているのに、自分はそれに乗らなくていいのかと。
否!!ダメである。
ここは陰の実力者らしい挨拶をしなくては。
でないと場を整えてくれたエイズさんに失礼だ。
そんなありもしない意図を感じ取ったシドは咳払いをして、陰の実力者のオーラを身にまとう。
「我が名はシャドウ。世界にあまねく陰の支配者にして、シャドウガーデンの盟主なる者。そして─────貴様の担い手となり、いずれ神をも斬り裂く者だ。」
数秒の沈黙。
そして、デウレクエイズの口元が弧を描いた。
銀の閃光がほとばしる。
「気に入りました。器としては、僕の担い手として申し分ないでしょう。であれば、知るべきことは⋯⋯⋯どれだけの力を持っているのか。それだけです。」
デウレクエイズの背中に六対十二枚の銀翼が顕れる。
シド⋯シャドウの瞳が紅に染まる。
「裁定の時です。陰の御子よ。」
「貴様が振るうに値するモノかどうか、我に見せてみよ。」
頂きに座するモノたちは瞳を交差させて、笑い合う。
それが開戦の合図だった。
※※※×※※※
夜空に浮かぶ雲をかき分けて、紫紺色の魔力のレーザー砲が飛ぶ。
純粋な魔力だけによって放たれる圧倒的火力を迎え撃つのもまた、魔力のみで象られた圧倒的武力。
レーザーと正面衝突をする、無限のごとき数の武具。
この戦いが地上から見えるところで起きていたのなら、ラグナロクだとかハルマゲドンだとか騒がれていただろう。
まぁそれはともかく────
「このやり方はつまらないなぁ。せっかくの強敵なんだから、もっと楽しまないと損だよ、ねッッッ!!」
シャドウはそうつぶやき、一気に加速する。
彼の視線の先にいるのは、銀翼をはためかせながら不敵な表情を浮かべているデウレクエイズ。
シャドウの接近に気づいたデウレクエイズは、ほんの一瞬驚いたような表情を浮かべるも、すぐに笑みを色濃くする。
まるでそうしてくれたことに感謝するかのように。そうすることを待ちわびていたかのように。
「クハッ。」
思わず、シャドウは笑みをこぼす。
“戦いとは、対話である。”
それはシャドウにとっての常識。
対峙した時にはすでに対話は始まっており、どんな些細なことからでも情報を読み取り、応えてゆく。
武器の握り方、視線の向き、足の開き具合などなど。
それらの情報のすべてが、対話の応えとなりゆるのだ。
今この瞬間までのデウレクエイズの動きで、シャドウはすべてを理解した。
彼が何を言いたいのかを。
“手加減も、気遣いも、何も要らない。必要なのは、全ての力を懸けた闘争のみ”、と。
デウレクエイズはそう告げているのだ。
なんと傲慢なことだろうか。
自身が上だと疑わない圧倒的慢心。
だがしかし、それがシャドウには嬉しかった。
それが意味するのは、デウレクエイズにはシャドウの全力と渡り合える自信があるということなのだから。
初めて同格以上と言える相手と戦えていることが、シャドウにはどうしようもなく嬉しいことなのだ。
前世で収めてきた数多の武術。今生で覚えた魔力の使い方。
それら全てをかき集めて、自分史上最高クラスの一撃を振り続ける。
だが─────それでも届かない。
どうすれば届く?どうすれば至れる?どうすれば勝てる?
シャドウは考える。
そして、その解答にたどり着いた。
自分の中で最も強い一撃を放つしかない、と。
シャドウの中にある圧倒的一番。
他と比べることもおこがましいような、最強無比の一撃。
その技の名は──────
「魅せてやろう。我が原点、我が天頂、我が最強を。」
魔力が剣に収束していく。
脳裏に思い描くは、あらゆるものを蒸発させる至高の矛。
「アイ・アム・
世界がまばゆい光に包まれていくのと同時に、シャドウの意識は暗転するのであった。