第2回戦は引き続き俺が出て、相手は織斑さんだ。
現状強さ不明、機体不明、能力不明の三拍子。正直こういうよく分からん奴が一番怖い。
曰く既にフォーマットとフィッティングは終わらせているとの事だが、当人はそれをどこまで操れるのかが問題だ。
それこそ、俺みたいな一般人レベルならまだしも、血族バフで代表候補レベルであれば正直勝てる気はしない。噂じゃ倉持技研の開発した最新型、なんて話も耳にはしたが、それがほんとうであった場合、敗色濃厚極まれりだ。
Energy replenishment complete.
Standby OK.
「よし、物は試しだ。覚悟決めて行くしかねぇ。肆三瀬オルガ、カラミティ───出る!」
再びカタパルトに乗り、アリーナへと飛び出し、いつも通り地面に降り立ち、上を見上げて
そこに居たのは一言で言えば《純白》だ。
穢れも、綻びも、傷もない。《純粋な白亜の鎧》とも言える機体《白式》。それを織斑さんは纏っていた。
「初めまして、織斑さん。自分は肆三瀬オルガです。機体の性質上、面と向かって話せはしませんが、よろしくお願いしますね」
「こっちこそ、あと、俺のことは一夏でいいし、タメ口でいいぜ。よろしくな、オルガ!」
おぉ、かなりの陽オーラ。俺みたいなファッション陽キャじゃなきゃ秒で消えてたね。
にしてもオルガ=サブナックじゃなくて=イツカだからちょっと違和感しかねぇな。しかもなんか声が某ユニコォォォォン!に似てるし。それも相まってあの機体ユニコーンにしか見えなくなってきたな。
「改めて、一夏。手加減はなしでいかせてもらう」
「こっちだって!」
そうして戦いの火蓋が切られた。
僅か1.2秒程度。先に動いたのは一夏の方だ。
「はぁっ!」
両手で握っている太刀型の実体刀《雪片弐型》を振りかぶり、袈裟斬りにするように振るってきた。俺はそれを直ぐさまホバー移動で回避し、ケーファー・ツヴァイで迎撃する。
だが、それも敢え無く回避され、再び距離を詰められ、頭目掛けて刀を振り下ろされる。
「ぐぉッ…!」
間一髪でケーファー・ツヴァイで防ぐも、重い。その一撃はとにかく重かった。
それこそさっきのオルコットさんの機体とは比べ物にならないほどのパワー。倉持の最新型という噂は嘘じゃないかもしれない。
「こっちだって──秘策が無いわけじゃ!」
スキュラの砲口にスパークが奔る。既に発射できる。この距離なら外しはしないはずだ。
「不味っ!」
一夏は後方にブーストし、その場から離れようとしたが、俺は逃すまいとその足を掴み、狙いを定めた。
「これでッ!!」
これだけじゃ落とせないと言えど、それが致命的なダメージになることは変わりない。これでやれなくても、次の選択肢が大いに増える。これさえ当てれば勝てる道筋は広く、多くなる。
そう思っていたのも束の間、一夏は雪片をまた構え直し、息を大きく吸った。
「《零落白夜》っ!」
それはスキュラが放たれたと同時だった。
雪片が縦に分割され、その間から青白いエネルギーの刃が形成された。
その状態の雪片にスキュラが直撃した瞬間、スキュラから放たれた極光はまるで雪片に吸い込まれていくかのように消滅した。
「はぁっ!」
呆気にとられている隙を狙われ、雪片で切り伏せられる。
目の前には『Warning』と記されたウィンドウが現れる。シールドエネルギーは一撃で7割程度削れており、俺は急いでスラスターを噴出し、その場から離れた。
「チッ…!ならこれでッ!」
フルバーストの一撃で逆転勝利を狙って勝つ。そう思ったものの、その行動は自身の勘で止められた。
まさかと思いながらケーファー・ツヴァイとシュラークを同時に、低出力で放つ。
そして一夏はそれを予想通り雪片のエネルギーブレードで《打ち消した》。
やはりそうだ。あの《零落白夜》とか言っていた能力。予想が正しければ《エネルギーとビームを打ち消す能力》だ。
だからさっきの大ダメージもスキュラもそうだ。エネルギーを打ち消して無効化、大幅に消耗させたと考えれば辻褄が合う。
「ハハッ…!んだよそれ……!」
俺の天敵極まりねぇじゃねぇかよ……。
まて、落ち着け、よく考えるんだ。あれにだって突破口が無いわけでは無いはずだ。エネルギーとビームだけならトーデスブロックとケーファー・ツヴァイの先っちょが攻撃手段に上がってくる。とりあえず近接戦はダメだ。一発でも喰らえばお陀仏確定。よって攻撃手段はトーデスブロックのみってわけか。
──────これ無理ゲーじゃねぇ?
「はぁぁぁ!」
「ッぶねぇ!こっちだって!」
実体刀に戻った雪片を身体を横にずらして回避し、後方に跳びながらトーデスブロックを撃つ。
ビームよりかは遅いと言え、トーデスブロックの弾速も極めて速く、一夏の左腕に直撃する。
削れたのはざっと3割。トーデスブロックだけじゃ心元なさはあるが、無いよりかはいい。このまま地道に削り続ければ勝ち筋程度は見えてくるはずだ。
ビーム兵器はダメージソースとしては無意味ではあるが、目眩しや視線誘導程度には効果がある。数打ち当たるという言葉を信じて、俺は一か八かのフルバーストをした。
そしてその行動は俺の予想の斜め上の結果となった。
「ぐっ!まずい…!」
そう当たったのだ。一夏は
なぜ、使わないのか。なぜ、守らないのか。
そこで2つの考えが浮かんだ。
1つ、あれはブレオン機なのではないか。2つ、零落白夜には何かしらのデメリットが生じる弱点があるのではないか。
ブレオン機であれば懐に入られない限り負けることはおそらく無い。零落白夜にデメリットがあるのであればそれは《使用回数》が決まっているのではないか。というものだ。
防御で2回、攻撃で1回。それで使うのを渋っているということはあと残り1、2回程度が限度だろう。
そうとなればやる事はただ1つ、遠距離からバンバン撃つまでた。
「なるほどな……、最強の能力、って訳じゃないらしいな、
再びビーム兵器にエネルギーを回し、使用可能な状態にする。
そこからは楽なもんだ。ただただぶっぱなすだけだ。
赤色、緑、実弾が一夏に向かった降りかかり続ける。
「くっ───このっ!」
一夏は白式の持つ機動力で回避しながら、雪片で実弾を斬り落とし、道を作りながらこちらに迫ってくる。
だが、俺とて接近を許すほどヤワではない。ケーファー・ツヴァイで威嚇射撃ながらシュラークを撃ちまくる。それだけで一夏の行動の選択肢もかなり狭まるだろう。
「お得意様の零落白夜は使えねぇ筈だ。さて、この状況でどうするよ」
「零落白夜は……まだっ!」
一夏は零落白夜を発動し、突貫してきた。
トーデスブロックで撃ち落とすという手しかないだろうが、それは
なら、ここはあえてシュラークとスキュラで零落白夜の使用回数を潰す!
「終いだ!」
スキュラとシュラークを何度も放つ。それに合わせて一夏は雪片を振るう。
1回、シュラークとスキュラを同時に消し飛ばす。そして2回、目の前に迫ったスキュラを消し飛ばした。
これでチェックメイト───そう思っていたのは俺だけだった。
「なッ!」
3回目、大きく振り払い、間近まで迫っていた。
今は零落白夜は解除されているが、予想外だ。回数制限が決まっていた訳じゃないのか?それとも回数の読み間違えか?
いや、それどころじゃない。今は回避───いや、防御を!
俺は本能的に、直感的にケーファー・ツヴァイで雪片を防ぐ。が、押されるばかりで、このままではパワー負けする。
スキュラやシュラークを撃とうにも撃てば俺まで巻き込まれる。
さっきのオルコットさんとの戦い見たくシールドエネルギーに余裕がある訳では無い。それに最悪これで削りきれ無ければ俺の負けになってしまう。
いくら俺にとって勝とうが負けようが何の関係もない試合だとしても、負けるのは後味悪いし癪に障る。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐッ───ォォォォオ!」
力を振り絞り、押し返す。
エネルギー系は誘爆して無理。トーデスブロックも誘爆するわ取り回せないわで無理。ケーファー・ツヴァイも射角的に当たらない。正真正銘詰みの状態だ。
拮抗状態も長くは続かず、シールドも徐々に押され、周囲には敗色が漂い始める。
「これで───終わりだっ!」
一夏が行動を起こした。ケーファー・ツヴァイの縁を沿うように刀を滑らせ、逆袈裟斬りの構えを取った。
削りきれるかどうかは分からないが、ギャンブルに出ざるを得ない。俺は即座にケーファー・ツヴァイの砲口を一夏に向け、標準を合わせた。
ギュオンッ───!
重々しい発射音がなると同時に空気が裂けるような音がアリーナに響き渡る。
俺のケーファー・ツヴァイは雪片によって弾かれているが、一夏の雪片もケーファー・ツヴァイによって弾かれている。
『両者共にシールドエネルギーエンプティ。引き分けです!』
正直、負けるならいっそ負けた方が清々しくはある。まあ、仮に負けたとしたらそれもそれで納得いかなくはあるが。
「まさか引き分けになるなんてな、機会があればまたやろう」
「おう!これからもよろしくな、オルガ!」
そうしてお互いに握手をして、ピットへ戻り、俺の分の試合はこれにて終幕となった。
《カラミティガンダムの敗因》
相性がクソほど悪かったから。
・白式(高機動近接特化のエネルギー無効化能力持ち)
・カラミティ(ホバーとジャンプ縛りのエネルギー兵器主体遠距離特化)