アイズさんの脳を年上お兄さんでこんがり焼こう! 作:脳でバーベキュー
最近、彼との記憶が薄れていっている。
日に日に、彼のことが思い出せなくなっている。
怖い。
彼のことを忘れてしまうのが、どうしようもなく怖い。
寝てしまったら。目を閉じてしまったら。また彼との記憶が手から零れ落ちてしまう気がして恐ろしい。
この何日か、アイズはなかなか寝付けずにいた。
気分転換も兼ねてホームの中庭で素振りをする。
ホームから見る月はとても綺麗だった。
月の光を反射して、アイズの首飾りが鈍く光る。
彼からの最後の贈り物。
何より、アイズにとって彼の生存を証明する唯一の希望。
しばらく無心で剣を振るっていると、アイズの背後で足音がした。
振り向くと、そこには、
「リヴェリア……」
心配そうに見つめるリヴェリアが立っていた。
「なんだ、眠れないのか、アイズ?」
「うん、ちょっと」
リヴェリアは中庭のベンチに腰を下ろすと、自身の横を指し、アイズに座るよう促した。
「で、どうしたんだ?」
アイズは正直、リヴェリアにこのことを相談するか悩んでいた。
レオが消息不明になってすぐの頃、アイズは荒れていて、その時リヴェリアには多大な迷惑をかけてしまったからだ。
自分がまだレオのことで悩んでいるなんて、心配させたくなかった。
だが、そんな気持ちすら見抜くようにリヴェリアが口を開く。
「……レオのことだろう?」
「っ……どうして?」
「ここ最近、その首飾りを気にすることが多かったからな。それに何年一緒にいると思っている。これぐらいわかるぞ。いいから話してみろ。子どもが大人に隠し事なんて出来ると思わないほうがいい」
それからアイズは、リヴェリアに事情を話した。
彼との思い出が日に日に薄れていくこと。
今では声も顔も思い出せないこと。
忘れるのが怖くて眠れないこと。
そして、それが始まったのはベル・クラネルに会ってからだということ。
「ねえ、リヴェリア。私、怖いの。レオの声も、顔も、思い出も全部忘れちゃうんじゃないかって。私はレオにまだ何も返してないのに。約束、したのに……!」
「アイズ……」
リヴェリアは複雑そうに顔を顰め、そっとアイズの手を握った。
「記憶というものは忘れてしまうものだ。それが大切かどうかは関係ない。記憶は平等に零れ落ちていく。だが、大切なのは思い出まで忘れないことだ。声や顔などどうでもいい。本当に大切なのは、楽しかった、嬉しかった、悲しかった――そういう心だ」
一度言葉を切ると、リヴェリアは優しく微笑んだ。
「……アイズ。きっと疲れているんだろう。今は休んだほうがいい。明日もベルとやらに技術を教えるのだろう。なら今日はもう早く寝なさい」
そう言ってリヴェリアはホームへ戻っていく。
私もそのあとをついていき、自室へ戻ってベッドへ入る。
ベル・クラネル。
白髪赤眼のウサギのような少年。
どうして私は、彼に指導なんかしているのだろう。
放っておけなかったから?
ミノタウロスの件で怖がらせてしまったから?
ううん。
建前はそうなのかもしれない。
でも、そんな建前を作ってまで彼を助ける理由は?
……わからない。
わからない。
私はどうしようもなくベルを気にかけてしまう。
ベルは異例の速さでレベルアップした。
私の記録が霞むほどの速さで、レコードホルダーになった。
そんなベルなら、私を救ってくれる英雄になってくれるかもしれない。
違う。
違う。
違う。
私の英雄はレオだ。
私を救ってくれた英雄は、レオ一人だけ。
それはこれからも、絶対に変わらない。
今日も、レオがくれた首飾りを握りしめ、眠りにつく。
夢に見るのは、変わらない景色。
レオが私と次の約束をして。
そして、死ぬ夢。
いつもと変わらない。
変えようのない景色だった。
主人公補正ってまじで嫌いなんですよね。一時期イキリトに対してまじで殺意MAXだった時期がありました。皆さんもありませんか?
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