怪物と英雄の狭間で 作:伝説の一般元ブロリスト
始まりました映画編。
そして映画編のタイトルはドラゴンボール風にして行こうと決めましたので、お楽しみに
ひさしぶりだなメリッサ! 約束の島での麗しき再会!
『――グスッ、グスッ…!』
『ほらメリッサ。そろそろ離してあげないと、蕗利君が困ってるだろう?』
『だって……せっかく、やっと会えたのに……! もう行っちゃうの……!?』
『蕗利君も、お父さんと一緒に日本へ帰らなきゃいけないんだ』
『大丈夫さメリッサ! 海を隔てていようと、心はいつでも繋がっている!』
『……うん。オレ、メリッサと遊べて、すっごく楽しかった。……だから、泣かないで?』
『……約束、してくれる……? また、絶対に……絶対に会いに来てくれるって……!』
小さな、壊れそうなほど華奢な両手が、自分の服の裾をぎゅっと握りしめていた温もり。
陽光に透けるような綺麗なブロンドの髪と、大粒の涙をいっぱいに溜めた青い瞳。
遠くで響く潮騒の音と、見上げた空にそびえ立つ、銀色に輝く巨大な塔――。
――カチ、カチ、カチ。
規則正しい時計の秒針の音が、遠ざかる記憶の輪郭を現実へと引き戻していく。
「…………ん……」
パチリ、と重い瞼が開いた。
視界に飛び込んできたのは、見慣れた自宅の白い天井だった。
ブロリーは特注の頑丈なベッドの上で、ゆっくりと上半身を起こした。
掌を顔の前に掲げ、ゆっくりと握りしめてみる。夢の中で自分の服を握っていた少女の手の感触は、もうどこにも残っていなかった。
「……夢、か……」
掠れた声が、静かな部屋に落ちる。
胸の奥に、懐かしくて、少しだけくすぐったい温かさが残っていた。
――メリッサ。
夢の中で自分を呼んでいた、あの声。
幼い頃、父に連れられて行った、遠い海の上に浮かぶ大きな街。そこで出会った、自分と同じくらいの年頃の女の子。
自分の怪力や大きな体を一度も怖がらず、無邪気に笑って手を引いてくれた、1人の少女。
(元気にしてるのかな……)
あれから何年も経って、お互いに頻繁に連絡を取ることもなくなっていたけれど、あの温もりだけは身体のどこかにずっと残っていた気がした。
「……よし」
ブロリーは軽く両手で頬を叩いて気合を入れると、ベッドから立ち上がった。
部屋の隅には、先日のショッピングモールで上鳴や耳郎たちと一緒に選んだ、あのオールマイトカラーの特大バックパックが大切そうに置かれている。
その隣、綺麗に片付けられた学習机の上には、一通の特別な封筒が置かれていた。
銀色の箔押しでエンボス加工された、高級感のあるエンブレム。
少し前、雄英体育祭での一位という功績が認められ家へと送られてきた複数の封筒、複数の封筒に共通して表面に印字された文字を、ブロリーは大きな指先でそっとなぞった。
『I・アイランド(I-ISLAND) 招待状』
世界中のヒーロー関連企業が出資し、個性の研究やヒーローアイテムの発明などを行うために作られた学術研究都市、そこの招待状が届いていたのだ。
先日のプールでみんなと交わした「最高の夏休み」の余熱を胸に抱いたまま、ブロリーはいつもの黒いオーバーサイズTシャツに腕を通し、腰に大切なマントをしっかりと結び直した。
窓から差し込む朝の光を浴びながら、少年の新たな旅立ちの準備が、静かに始まろうとしていた。
「―――やってきました!!!一万人以上の科学者たちが住む学術人工都市、I・アイランド!!!フフフフフ、見るだけで興奮してしまいます!! ブロリーさん!お誘いいただきまして有難うございます!!!」
「ほんとに、I・アイランドに来たのか…俺」
「感無量」
「……懐かしいな」
入国ゲートを抜けた先に広がっていたのは、海の上に浮かんでいることすら忘れさせるほどに雄大で、洗練された近未来の超ハイテク都市だった。
個性を使用して行われるパフォーマンスや立体ホログラムの広告、そして世界各国から集まった名だたる科学者やヒーローたちの賑わい。
その光景を前に、発目は両目をカッと見開き、十字の瞳を限界までズームさせて全身をプルプルと震わせていた。
心操はまさか自分がここに来れる日が来るとは思っていなかったのか、感動と緊張が合わさったような顔をしていた。
常闇は内なる興奮を隠しながら、クールに決めていた。
「見渡す限り、最先端の技術! 未知の合金! 規格外の駆動フレーム! 私の可愛いベイビーたちの進化のヒントが、島中に溢れ返っています!! ブロリーさん、本当に、本当に感謝いたします!!」
「発目が喜んでくれてよかった」
今にも飛び出して手近な警備ロボットを分解し始めそうな発目を前に、ブロリーは安堵しながらそう呟いた。
体育祭の優勝者として、ブロリーの手元に届いていたのは同伴者を数名連れて行ける特別招待状、それを持ってブロリーが声をかけたのがこの面々だったのだ。
心操と明以外の2人は、ヒーローコスチュームを着ている。
「……やっぱり…信じられないな。普通科の俺が、ここに来れるだなんて」
首元に手を当て、まだどこか実感が湧かないといった様子で深い溜息をついたのは心操人使だった。肩をすくめながらも、その紫色の瞳は珍しく物珍しそうに周囲のハイテク建築を見上げている。
「宣戦布告をしたくせに、体育祭で
「心操はあの時はすごく頑張ってたから……。それに、心操と一緒に行けたら楽しいと思ったんだ」
「……相変わらず調子が狂うやつだな」
真っ直ぐすぎる琥珀色の瞳に見つめられ、心操は居心地悪そうにそっぽを向いたが、その口元には微かに柔らかい色が差していた。
「深淵なる海の上に築かれし、知と力の揺り籠……。まさに時代の最先端を照らす光の都だな」
漆黒のマントをはためかせ、腕を組んで佇んでいたのは常闇踏陰だった。
「ブロリー、お前がこの地へ我らを誘ってくれたこと、真に感謝する。個性の新たな可能性、そして闇を研ぎ澄ますための良き糧となるだろう」
「常闇も、来てくれて嬉しいよ」
『アリガトナ!!』
「ダークシャドウも」
巨躯を屈め、少し出てきたダークシャドウの頭をそっと撫でてやるブロリー。
「そういえば」
心操がふと思い出したようにポケットに手を突っ込み、端末の画面をチラリと見た。
「上鳴と峰田のやつらも、今日あたりこの島に来るって言ってなかったか?」
「うん、2人を誘った時に言われた。それで上鳴は『ちょうどバイトでそこにいくことになっててさぁ!!ブロリーも来んならもっと楽しみになってきたぜ!!バイト終わったらすぐ合流するからな!!』って、言ってた」
「峰田は?」
「『世界の美女とワンチャンあるかもしれない』って」
「……相変わらずで、逆に安心するな」
常闇がやれやれと首を横に振る中、ブロリーはそびえ立つ銀色のタワーと、見覚えのある街並みのスカイラインを、じっと見つめていた。
(……変わってないな)
幼い頃、父――オールマイトの大きな背中にしがみついて見上げた景色。
あの時はただただ広くて、眩しくて、少しだけ怖かったこの街。けれど、あの金髪の少女が小さな手で自分の手をぎゅっと握りしめて、笑顔で引っ張っていってくれたのだ。
『蕗利くん、こっち! パパの研究室、すっごく面白いんだよ!!』
耳の奥に、懐かしい幼い声が微かに蘇る。
「……ブロリー、どうかしたか?」
立ち止まっていたブロリーに、常闇が不思議そうに声をかけた。
「あ……ううん、なんでもないよ」
ブロリーは首を横に振り、胸の前でオールマイトカラーの特大バックパックを抱え直した。
「…みんな、先に、寄りたいところがあるんだけど、いいか?」
「俺は構わないぞ」
「俺も、ブロリーのおかげで来れた身だしな。ブロリーがどこへ行こうとも文句なんて言わないぞ」
「同じくです! それで、行きたいという場所は?」
「昔……お父さんがここへ連れていてくれた時に、仲良くなった女の子、その子と今日、久しぶりに会う約束をしてるんだ。」
ブロリーは心の底から楽しみにしているようで、わかりやすく口角が釣り上がっていた。
「このコスチュームを作ってくれたのが、その女の子なんだ」
「なに…!?」
「マジか…」
「なんですってぇ!?ブロリーさんのコスチューム……!!!ブロリーさんの動きやブロリーさんのパワーに耐え切れるほどのコスチュームを作れるそんな人がブロリーさんの知り合いに!!?是非!是非!お話をさせてください!!」
「それは、本人に聞かないと………?」
ブロリーが何かの音を聞き、その方向へと目を向ける。そこにはホッピングみたいなアイテムに乗ってぽよんぽよんとこちらに向かって飛んでくる、金髪の眼鏡をかけている女子がいた。
「――蕗利くーーーーん!!」
「…!!メリッサ!!」
「美人だな…」
「ああ、間違いない」
「なんでしょうかあのベイビーは!!知りたい、あの子の構造が知りたい!!」
高らかな駆動音を鳴らし、ホッピング型のサポートアイテムが最後のひと跳ねで地面を強く蹴り上げた。
放物線を描いてぐんぐんと高度を上げたメリッサは、頂点に達した瞬間、躊躇うことなくアイテムのステップから足を離した。
「ちょっ、おい飛び降りたぞ!?」
「危ない、高度がありすぎる――!」
心操が目を見張り、常闇が思わず黒影を展開させようとした――まさにその刹那。
「わぁぁっ…!」
重力に引かれて落下してくるメリッサの顔には、恐怖など微塵もなかった。
風に揺れるブロンドの髪と、陽光を受けて輝く青い瞳。昔と変わらない、無邪気で眩しい笑顔のまま、彼女は両手をいっぱいに広げて真っ直ぐにブロリーの胸元へと飛び込んできたのだ。
「――おっと…っと」
ブロリーの動きに迷いはなかった。
足元のタイルを踏み割らないよう重心をふわりと沈め、丸太のように太い両腕を大きく広げる。
飛び込んできたメリッサの勢いと体重を、まるで柔らかい羽毛のクッションで受け止めるかのように、完璧な力加減で抱き止めた。
ドサリ、とも音を立てず、衝撃の一片すら彼女に与えない、完璧なキャッチ。
「きゃっ……! えへへ、やっぱりちゃんと受け止めてくれた!」
メリッサはブロリーの首元にギュッと抱きつき、その逞しい胸板に顔をすり寄せながら、心底嬉しそうに声を弾ませた。
「久しぶり、蕗利くん! ずっと、ずーっと会いたかったよ!!」
「め、メリッサ……! 危ないぞ、あんな高いところから飛んだら……」
ブロリーは困ったように眉を下げつつも、その琥珀色の瞳を優しく細めた。
腕の中に伝わってくる、幼い頃と変わらない温もり。けれど、抱きとめた身体はすっかり大人の女性らしく成長していた。
彼は懐かしさで、胸がいっぱいだった。
「蕗利くんなら絶対に落とさないって信じてたから! ……それにしても、すっごく大きくなったね! 昔も大きかったけど、もう私の知ってる蕗利くんの倍くらいあるんじゃないかな〜」
「ああ、あの時よりも……その、大きくなった」
メリッサはブロリーの腕の中に収まったまま、まるで巨大なぬいぐるみを確かめるように、ペタペタとその分厚い肩や胸板を触って楽しそうに目を輝かせている。
そんな二人の絵画のような光景を前に、残された三人はそれぞれまったく異なるリアクションで固まっていた。
「……元気いっぱいな人って、感じだな」
心操がつぶやき首筋を掻く。
「光の都の麗しき再会……。実に絵になるが、少々眩しすぎるな」
常闇が腕を組み、マントの影から目を細めて見守る横で、
「素晴らしい衝撃吸収! あの高度からのダイブを、身体のバネと脱力だけで無音制動してみせましたよ!! そして何よりあのホッピングアイテム! 電磁アシストですか!? それともガス圧噴射ですか!? 初めまして、雄英高校サポート科の発目明です!! お話を、お話をさせてくださーーーい!!」
目を血走らせた発目が、凄まじい勢いでメリッサめがけて突撃していった。流石に空気を読めと思ったのか常闇がダークシャドウを使ってそれは阻止された。
「ブロリーくん、そのコスチューム…気に入ってくれた?」
「ああ、とっても気に入っている。ありがとうメリッサ」
「ううん!気に入ってくれたのなら嬉しい! 本当は、面と向かって直接会って渡したかったんだけど…………ん?」
「?どうした?」
「ブロリーくん、この首のサポートアイテムは……?」
「これか?これは、あそこにいる発目が作ってくれたサポートアイテムなんだ……これが凄いんだ、オレの力が出過ぎていると、自動的にそれを止めてくれる、これのおかげで、オレは今ヒーローを目指せているんだ。もちろん、メリッサのコスチュームのおかげでもある」
嬉しそうにそう告げるブロリーは、言葉を続けながらメリッサの顔をよく見た。――しかしそこに映っていたのは
「―そ、そうなんだ……これの、おかげで…」
「…メリッサ?」
「あ、えっと、ううん!なんでも無いよ」
固まっているような表情を浮かべているメリッサだった。ブロリーは不思議そうにしながらも、彼女をゆっくりと地面へと降ろす。
「……えっと、改めて――ようこそ!I・アイランドへ!」
そして、ブロリーの同伴者である発目達へ向けて、笑みを浮かべながらそう告げるのだった。
オールマイトとデク君はまだ来ておらず、この後にメリッサとオールマイト達が合うという感じです。