ようこそ最強ゲーマーのいる教室へ   作:現魅 永純

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 Q. なんでホワイトルームのこと知ってんの?
 A. 一番最初の『  』を読み返すと分かるかもしれん。

 Q. 帆波ちゃんが手を出したのはウイポかダビスタかはたまたウマ娘か
 A. ウイニングポスト。空崎から貰ったゲーム機の中にダウンロードされてたので手を出した。

 Q. もしかして2年生前にホワイトルーム崩壊する可能性ある?
 A. やれるかやれないかで言うとやれるけど、こいつ基本的に権力には弱いしリスクが大きすぎるのでよっぽどの理由が無いとやらない。





 本当は今話で櫛田と佐倉の二人の話を纏めようと思っていましたが、櫛田が思っていたよりめんd……可愛らしい性格で文字数が嵩んでしまったので佐倉は次回に。
 体育祭編なのに体育祭関係ない話が続く形になってしまい申し訳ありません。でも体育祭のタイミングが1番纏めやすかったんですよね……。




21話

 

 

 

 

「な? な? 良いだろ空崎。これ渡すからAクラスへの移籍を考えてもらっても───」

「却下」

 

 

 

 ♦︎

 

 

 

「ね? ね? 良いでしょ空崎くん。君なら絶対できるよね? だから、さ……堀北のこと退学に───」

「却下」

 

 

 ───アレだけ大胆に立ち回ったのだ。龍園クラスとの契約や坂柳の移籍を考えれば、Aクラスに移籍させてもらおうと擦り寄ってくる生徒が出てくるのは当然と言える。

 実際、9月初日の葛城以外にもこの件について触れる生徒は何人か居た。

 空崎としてはそれ自体は問題視していない。というより寧ろ、そこから情報精査を重ねて「どうすればAクラスに移籍する条件を満たせるか」について考えて欲しいという狙いがある。

 

 Aクラスと他の差が如実に出てくれば『対価』を提示してくる生徒が出てくる事も想定はしていた───のだが。体育祭まで一週間を切り、参加表が決まり始めたタイミングになって、ある二人が空崎の下に訪れた。

 

 一人は橋本。元Aクラス、現Bクラスに所属している生徒だ。彼はAクラスで卒業する為に坂柳の指示に従う形で動いていたが、前述にもある様に『クラスポイントの移譲と全面協力』によりクラス間の差が大きく開いた挙句、坂柳までクラス移籍した影響で自クラスが勝つ事は不可能と判断したらしい。

 そのためクラスの参加表のコピーを持参し今後のスパイ活動を約束するからAクラスに移籍させて欲しい───と、交渉しに来たが、それは空崎の考えた『条件』からは外れているのでにべもなく拒否を示した。

 

 もう一人は櫛田。元Dクラス、現Cクラスの生徒。他の生徒からは男女共に分け隔てなく接してくれるアイドル的存在という認知ではあるが、その行動の大元には極度のコンプレックスの塊で1番で在りたい承認欲求がある。

 そういう人間もいるだろうと空崎は指摘する事なく接していたのだが、ついぞ本日になって隠す気がなくなったらしい。

 

 曰く、船上試験であの契約を申し出たのは自身が優待者であると確信したから。それだけの洞察力があるなら自分のことも分かっているのでは? ……と。そう考えての行動とのこと。

 彼女に関してはAクラスに移籍する目的ではなく特定人物を退学にして欲しいというお願いなのだから驚愕だ。確かに度々やり取りを見かけた時に櫛田からの堀北への嫌悪は他の生徒に対するそれよりも強かったが……。

 

 

「桔梗。出来る出来ないの話で言えば、まあ可能ではあるよ」

「なら───」

「だが船上試験でも言った通り、俺は極力退学者を出したくない。自主退学じゃない限りはな」

「……そうする事も出来るんじゃないの?」

「出来るかもな。けど自主退学に追い込んだ時点で、俺が退学させたのと何も変わらんだろ。そこまでする理由が俺にはない」

 

 

 その為の『対価』として参加表のコピーを用意したのだろうが、それが他者を退学に追い込むだけの理由にはならない。

 

 

「理由を話せ。そこがないと考慮すらしない」

「……なら契約して。私の事を口外しないのと、万が一にでも漏洩したらあんたの退学とプライベートポイントの全移譲を確約するって」

「俺ってお願いされてる立場だよな? ……まあ良いか。誰かに言うつもりもねぇし。じゃあ言質を残すからボイレコでも使って録音してくれ」

 

 

 櫛田が端末からボイスレコーダー機能を使用したのを確認し、言われた内容を復唱する。

 あっさりと言質が取れた事に訝しむ様な眼を向けていたが、内心を知りつつも今まで指摘しなかった事実から「本当に言うつもりがないんだろう」と納得して端末を仕舞った。

 

 

 それから堀北を退学にしたい理由が語られた。

 内心の感情の動きだけでは読み取る事の出来ない過去の出来事。

 

 自分が一番でなければ我慢ならない性格だった。

 幼い頃は周囲より学業と運動両面で優れた成績を残していたが、成長するにつれてそれぞれの分野で飛び抜ける生徒が増え、何事も一番であり続けるのは不可能だと悟ったらしい。

 そこで選んだのが、みんなの相談役になり1番の人気者という立ち位置。自分にだけ打ち明けてくれる秘密を知ることで、承認欲求が強く満たされていたと。

 

 だが元々の性格からそれらはストレスも同時に溜め込み、それを匿名ブログに記載する形でストレス発散をしていた。

 それがクラスメイトに発覚し次の日にはブログが拡散されてしまい、逆上の末にブログに書いていなかったクラスメイトの秘密を暴露し学級崩壊を招いたと。

 

 二度も同じ失敗はしないとこの学校に来たが、彼女は堀北と同じ中学の出身であったらしい。堀北本人は中学時代は他人に関わろうとしない人間だったため、高育に入学しようとしていた事は知らなかった。

 同じ中学出身の堀北から自身の過去及び本性が他者に知れ渡る可能性を危険視し、退学にさせて欲しい───と。それが櫛田から語られた内容だった。

 

 

「───なるほど。確かに知られたくない秘密を握られてるか(・)も(・)し(・)れ(・)な(・)い(・)状態ってのは気持ち悪いしストレスにもなるな」

「……あ、そ。分かってくれたなら退学にさせてくれる?」

「それとこれとは話が別だな。俺が堀北を退学にするだけの理由にはならない」

 

 

 ───薄々感じていたが、この学校って問題児を集めすぎじゃないか?

 

 推薦がある事は前提、高育が予め行っている調査で入学させる生徒が決まっている。それの対象に些か問題のある生徒が多いことに、空崎は疑問を覚えた。

 だが今考える事ではないなと頭を振り、苛立ちで睨みつける眼の櫛田へと向き直る。

 

 

「例えば、堀北が問答無用に言いふらし回ってるとかだったら、悪意のある行動と捉えて一考したよ。けど現実問題として、堀北はお前に関しては沈黙を貫いてる。様子からしてお前が同中だった事に気づいてるかすら怪しいんだろ?」

「……そうだよ。でもあんたが言った通り、秘密を握られてるかもしれないって状況は酷いストレスなの」

「だとしたら自分との向き合い方が下手くそだな」

「は……ッ?」

 

 

 理解を示したでしょ、と。そう顔を歪める櫛田に、空崎は『無機質な瞳』を向けつつ淡々と告げていく。

 

 

「気付いてない事を察せられるなら、下手に積極性は見せず割り切ればいい」

「……それができれば苦労しない」

「いや、お前は出来る筈だ。学力も運動も1番にはなれないと妥協したんだろ? もちろんそれ自体はストレスの一因になっていたかもしれんが、だからと言って貫こうとはしない“諦め”を抱く事は出来る。なのにわざわざ面倒な道を選んでるから言ってんだよ。向き合い方が下手くそだって」

 

 

 ───アレだけ仮面を被ってもなお素顔を忘れないからこそ下手なんだろうが、と。内心で理解を示すが、肯定はしない。

 これは早めに矯正しないと壊れるタイプの人間だ。演(・)じ(・)て(・)る(・)自(・)分(・)に(・)す(・)ら(・)憎悪や妬みが向きかねない。

 

 彼女の優秀さを考えるとDはあり得ない。間違いなくこれを承知の上で高育に入学させたのだろう。ならば高育側で対応して欲しいんだがなぁ、と。表に出さない様に内心で深く溜息を吐きつつ、言葉を紡ぐ。

 

 

「コントロール自体は出来ても奥底にあるモノまで制御する事は出来ない人間が大半だ。それ自体は仕方がない。でも大半は無意識な線引きを覚える。桔梗にはそれがないんだよ」

「……仕方ないでしょ。無意識な線引きなんてどう覚えろってのよ」

「そりゃ人に期待しない事だろ。も(・)っ(・)と(・)他(・)人(・)を(・)見(・)下(・)せ(・)ば(・)い(・)い(・)」

「…………」

 

 

 あまりにも非情な発言をあっさりと告げる空崎に、櫛田は唖然とする。

 他人を見下すな、とか。もっと人を信頼しろ、とか。己の本性を知れば吐いて出るはずの言葉ではない。自分の在り方を押し上げる発言。

 

 寧ろなんでそうしない? と言わんばかりの表情で空崎は言葉を紡ぐ。

 

 

「まあそりゃ表向きにやれとは言わんよ? でもお前の仮面の厚さは大したもんだし、俺相手じゃなければ大抵の奴からは隠し通せる。もっとこき下ろせ、見下せ、罵倒しろ。悟られなければ如何なる思考も他人にとっては無いも同然。自分の中の下限を心の中で見極めれば、自ずと線引きも出来る」

「……あはは。そう言ってくる人は初めてだよ、空崎くん」

「後は、そうだな。「私はいつでもお前たちの秘密を暴露できる」って心に据えておくと良い。自暴自棄の末の決断ではなく、最終手段の武器として認識するんだ」

 

 

 ただし───と。

 

 

「絶対に自分からは仕掛けるな。自分の秘密を知られてるかもと思っても、そいつに攻撃的になるのは無しだ。武器を振るう時は必ず正当性を持たせろ」

「例えば?」

「堀北が過去の事を持ち出して何かしら強要した時だな。中学の時みたいにブログという証拠が無いなら、それは脅迫に該当する。何故なら今高育にいる人間にとって中学の事は過去だ。自分達が何かした訳では無いのに堀北の行動によって暴露が起これば、堀北へ責任を負わせられる」

「他責じゃん、それ」

「ああ、他責だ。だが客観的に見て桔梗に問題が無いのに暴露が始まれば、その『原因』にヘイトが集まる。少なくとも中学の時みたいな一方的な対立はなくなるだろう。……まあそもそも、桔梗の過去を知ってるなら、お前が事を起こさない限り過去を利用した脅迫なんざやらないだろうが」

 

 

 これは櫛田の話を聴いてからずっと思っていた事だ。知れば知るほど、なぜ理屈による納得が出来ないのかと不思議に思う。

 だが櫛田にとっては寝耳に水だったのか、一瞬だけ目を大きく見開き問い掛けてくる。

 

 

「……根拠は?」

「お前の中学のクラスメイトはアホな連中だったが、堀北は頭が良いから。普通に考えれば人間関係を悪化させかねない秘密を握ってる相手を敵に回すとかあり得ないだろ」

 

 

 ───中坊なんて考えが足らずに感情や反射で動く奴らばかりだろうが。

 にしても30人以上も居て、明かされたくない秘密を話した自覚があるのに、そんな事に一人も気付かないとはなぁ……と。空崎は嗤う。

 

 それに関しては櫛田も同じだが、彼女の場合は実際に敵意を向けられた経験がある。考えが至らないのも無理はない。

 だが確かな理屈だ。堀北が過去を知っていれば、尚更同じ事を起こさない様に細心の注意を払うだろう。

 

 

「……まあ、言いたい事は分かるけど。でも理屈を受け入れたところで、どうしたってストレスは溜まる」

「それに関しちゃその生き方を選択したお前の責任だろ。生まれついての感性に向き合っての選択肢としては悪くないと思うけどな。運動や勉学だと際限が無くなる。よっぽど才能のある人間なら良い意味での執着に出来るが、中途半端に優等生だと身を滅ぼすだけだし、身の回りに絞ったのは良い判断。お前の生来のコンプレックスがある以上はストレスが生まれるのは必然だ」

 

 

 自分にとっての当然が、他人にとっても当然とは限らない。普通なら承認欲求や一番になりたいという気持ちにはある程度見切りをつけられるが、櫛田はそう出来なかったのだろう。

 人は環境や育てられ方が一緒でも差異が生まれる生き物だ。彼女の場合は何かしらの形で1番で在りたいという欲求。しかしそれによって生まれるストレスは自己責任であり、他人に当たって良いモノではない。

 

 それ自体は本人もよく分かっているだろう。

 だからこそストレスの発散に悩み、堀北に対する判断という面で視野狭窄と言うべき状態に陥っていた。

 今回の対話で多少は緩和されただろうが、櫛田の本性と生き方のミスマッチさを考えればまた同じ状況になってもおかしくはないだろう。

 

 なので、キッカケを与える。

 

 

「お前は中学の頃にクラスメイトの話をブログへと書き込んで、第三者からの励ましが嬉しかったと言っていたな? ストレスの緩和自体が可能ならやりようはある筈だ」

「……けど、高育内だとブログなんて無理でしょ。学校の掲示板でやったら匿名でも直ぐにバレる。一応周囲に注意を払いながら言葉を吐き出す事で発散してるけど、いつバレるか分かったもんじゃない。というか実際バレてるし」

「え、バレてんの?」

「耳良すぎ」

「いや、読唇術」

「なんなのあんたホント……」

「あと多分夏に配置した監視カメラにも映ってるな」

「…………」

 

 

 こいつ殺した方が良いんじゃなかろうか? と言わんばかりの殺意を秘めた瞳で櫛田は睨みつける。

 流石に空崎も本気の殺意を前に冗談めかした言い分はしない。両掌を挙げて敵意無しのアピールをしつつ言葉を紡いだ。

 

 

「当然だけど誰にも言わないし、そのバレた誰かについて追求するつもりもない。……話を戻して良いか?」

「良いけど、少しでもあんたが疑わしいと感じたら一之瀬さんにある事ない事吹き込むからね」

「何を吹き込むのか非常に気になるが、まあ置いておこう。分かったそれで良い。ざっくり言うが、他にストレス緩和の方法があるんじゃないかと。桔梗は抱えたモノを吐き出す形で発散を試みている様だが、他にも試すべきじゃないか?」

「……具体的には? 言っとくけど運動とかじゃこれは発散出来ないよ」

 

 

 ストレス解消には心身の発露が効果的だ。

 運動して汗を流し、セロトニンやエンドルフィンを分泌する事でストレスに対する鎮痛を齎す。適度な運動、美味しい食事、しっかりとした睡眠。これらを充足させれば、心身共に健康を維持することが出来る。

 

 ただ、櫛田の場合はそれらによって発散できる類のストレスではない。

 厳密には多少はマシになるだろうが、また直ぐに押し寄せる類のストレスだ。身近でこなせる事は当然試しており、櫛田はそれを自覚している。

 

 では何を提示するか。

 

 

「ASMRって知ってるか?」

 

 

 逃(・)げ(・)道(・)である。

 

 

「えーえす……?」

「ASMR。Autonomous Sensory Meridian Responseの略称だ」

「……?? 反応……感覚……?」

「自律感覚絶頂反応って意味。聴覚から心地よい刺激を与える事でリラックス効果を生み、ストレス解消や睡眠導入に利用出来るんだ。例えば、そうだな。焚き火のパチパチする音とか、波のさざめき。マッサージなんかを雑音無しで疑似体験するイメージだ」

「はぁ……察するにそれでストレス解消を試みろって事ね。そんなんでマシになるとは思えないけど」

「もちろん俺が紹介するのはただのASMRじゃない。これは環境音だけに限らず、さっきも言った肩叩きみたいに耳掻きやシャンプーなどの疑似体験も出来る。そんで俺が紹介するのは───」

 

 

 手元の携帯から櫛田のアカウントに“それ”を送る。

 通知音に反応して櫛田が携帯を取り出し確認。

 

 

「音声付きのシチュエーションボイスだ。桔梗の声質やキャラの好みは分からんが、取り敢えず肯定的な台詞の多いやつを選んだ」

「…………」

「あ、イヤホンとか持ってるか? 無ければ安物の未使用品があるから渡すぞ」

「……まあ、聴くけどさ。ここまで親身になってもらってるし……。イヤホンは持ってないから頂戴」

「はいよ」

 

 

 ───今更だが、男の部屋で警戒心とか無いのだろうか。まあ他の人間に会話を聴かれない絶対的な場所となるとここ以外はないけども。

 

 櫛田がイヤホンをして机の上に肘掛け、頬杖をつきながら再生する。

 

 

「……はっ、くだらな。現実にこんな男がいる訳ないでしょ」

 

 

 ………。

 

 

「フィクション作品ってこういうの好きだよね。まあだからフィクションなんだろうけど」

 

 

 ……………。

 

 

「こんな……、……………」

 

 

 …………………────

 

 櫛田が聴き始めてから空崎はずっと俯いて端末を弄り時間を潰していたが、渡した音声作品の再生時間から終了したのを把握し顔を上げる。

 

 

「どうだ?」

「…………はっ、これがなんだっての。男の囁き声を聴いて何が楽しいんだか。てかシチュに無理があるし。こんなんで喜ぶ女がいるとか世も末だね。はーくだらなくだらなっ」

「そう? じゃあ他の手段を探し───」

「まあ? 1作品だけで判断するのも悪いし? あんたのおすすめがあるなら聴いても良いけど?」

「俺のおすすめっていうか、クラスの女子に人気がある奴なら」

「じゃあそれで2〜3作品くらい見繕って。会話のネタにするのにも丁度いいし」

 

 

 ……………。

 

 

「そのイヤホン、かなり安物だからな。もし音質を高めたいなら自分でいいヤツを買ってくれ」

「……別にASMRとかはどうでも良いけど。まあ音楽とかしっかり聴くのには丁度良いかもね。それなりのポイントも入った訳だし」

「アイマスクなんかがあると臨場感も増すと思うぞ」

「……寝る時にも使う物だし、それ用で買うことにする。寝る用に」

 

 

 ───思ったよりハマったかこれ。

 

 空崎は冷や汗を垂らしながらそう思考する。

 ASMRは少しでもストレスが緩和されれば「吐き出す以外の選択がある」と実感させることが出来て、キッカケになると思い咄嗟に提示した案だった。

 だからこれ自体が解決法になるとは思っていなかったのだが……。

 

 マジか、と。そう微妙な顔で櫛田を見つめる。

 

 

「……なに、その眼」

「いや別に」

「あ、そ……。訊いていい? 何で他クラスの人間にそこまで親身になってくれるわけ? 私は承認欲求からだけど、あんたからはそういうのを感じない」

「うん? まあ俺のは承認欲求ってよりは……そいつの持つ可能性を引き出したいって気持ちが強いからな」

「……なにそれ?」

「分かりやすく言えば、桔梗とは逆の性質かな。俺のは後天的だけど」

「余計分かんない……」

「まあ気にすんな。ただの悪癖だよ」

 

 

 誤魔化している訳ではない。

 『逆』と言っている辺り、自分には理解し難い感性なのだろうと櫛田は納得した。

 

 目を瞑り数秒。

 パッと弾ける様な笑みに変化し、『1番の人気者な櫛田 桔梗』へと素早く切り替えた。

 

 

「───お邪魔しちゃってごめんね。相談に乗ってくれてありがとっ。また学校でね!」

「あ、帰る気満々なところで悪い桔梗。一つ頼んでいいか?」

「ん? あまり無茶なお願いじゃなければ……はっ。こ、これはダメだよ? 血迷って持ってきちゃったけど、流石に参加表はクラスを裏切る形になっちゃうから……」

「違う違う。実は帆波のことでお願いが───」

 

 

 

 

 

 

 






♕ Tips. ✍︎

 櫛田に渡したASMRは空崎が収録したもの。
 趣味でやっている訳ではなく、『変声』を知ったクラスメイトの女子が複数人でお願いしてきたのでシチュ指定を受けつつ渋々了承した。既に機材を買い揃えられていたので断るのが申し訳なくなった為。
 最初は羞恥があったが2〜3作品やったら仕事と割り切って恥ずかしいという感情は完全に消えた。
 ちなみに1番ハマってるのは姫野。CV神谷さん(変声再現)の甘々弟ボイスとかいう有り得ないシチュで沼に引き摺り込まれた。
 後ほど事実を知った櫛田は唖然とするが葛藤の末にシチュ指定する様になるし、専用のイヤホンとアイマスクも購入する。

 著作隣接権? ……AI学習じゃなくて声真似だしネット販売する訳じゃないからセーフ。





 櫛田に変な属性が追加されました。ついでに姫野にも。
 でも東山さんと早見さんの二人で甘々ボイスとか催眠音声が出たら私も脳が溶けて沼から抜け出せなくなる自信があるからこうなっても仕方ないと思う。

 ちなみに私のおすすめは鈴代さんの『わがままギャルJK』と夏吉さんの『ブルアカASMR カズサ編』です。YouTubeで聴ける奴ならパトラちゃん全般。
 台詞無しなら心音とかマッサージ系。

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