僕は探す!   作:T氏@pixiv

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12 影を探す

鳴り響くアラーム。

 

耳をつつく音に目覚めた僕は立ちあがる。

 

「ふわぁ...六時半、か。」

 

昨日は依頼で帰ってきたのは今日の午前一時半...だったかな?

 

眠い...身辺調査が終わって今日一人裁けば終わりだ。

 

『関東を中心とする強盗事件で京都府に住む夫婦である...が警察署に出頭し、自首したとして逮捕されました。』

 

携帯のネットで動画を開くと闇バイト関連のニュースが流れる。

 

以前の下っ端二人からなんとか逆算して二人を見つけ、修学旅行ついでに脅した効果はあったかな?

 

『捜査関係者によりますと、夫婦は組織の仲介役で、第三者から説得を受けて自ら警察署に訪れたということです。』

 

修学旅行と言えば、僕が助けに行った時の女の子二人はどうなったんだろう...

 

制服が...たしか椚ヶ丘のだったけ?

 

朝食を口にしながらも修学旅行を思い出す。

 

(『待って!』)

 

...あの声、どこかで聞いたような気がしたけど...

 

おそらく二人の女子のうち一人が逆光とはいえあの反応から顔が少し見えていたのだろうか?

 

「...そろそろ時間かな?」

 

時計の針が僕に登校を促す。

 

荷物をまとめて学校へと向かった。

 

 

 

修学旅行が明けて、さらには僕たちE組に新たな仲間が来たこの頃。

 

「ねぇ、律?今日騒がせている不可能犯罪について何か知ってる?」

 

『関東を中心に多くの被害者が常人では不可能な方法で殺害されている連続殺人についてですね。』

 

うん...さっそく今日も律を活用している不破さん。

 

彼女の前にある黒いモノリスのような機械、自律思考固定砲台...通称、律。

 

最初は僕たちに構わず授業中に発砲するなど協調性がなかったけど、殺せんせーに手入れ

された彼女は今や僕たちの強力な仲間だ。

 

『...すいません。監視カメラをハッキングしましたがそれらしき人物は映っていません。』

 

「うーん、さすがにカメラに写っていたらもう捕まっているわよね...」

 

「じゃあさ、不可能犯罪って言っているけど実際のところ本当に可能じゃないの?」

 

肩を落とす不破の代わりに席に座っていた業君が話しかける。

 

『不可能犯罪の内容については死亡原因が他殺なのにどう殺したのか説明できないものや、常人では不可能な長距離の狙撃時間をかければ可能ですが、それが短時間で行われた殺害など今の人間の身体や技術的では難しいものとなりますね。』

 

「やっぱり不可能なんだ。」

 

僕個人ではあまり犯罪方法については興味がなかった。

 

それよりも...

 

「律。」

 

『なんでしょう、渚さん?』

 

「不可能犯罪を起こす人物は殺せんせーを暗殺しに来ると思う?」

 

これだけ多くの人を殺害しているということは暗殺者...とも考えられる。

 

「渚はこれらの殺害は暗殺者だと思っているの?」

 

「うーん...断言はできないけど、足がつかずにこれだけ多くの殺害を達成しているなら暗殺者の可能性があると思って...」

 

見た感じ皆僕の言った可能性はありえなくはないと思ってそうだ。

 

『確かに渚さんの言う通り暗殺者である可能性はありますが、殺せんせーを暗殺する可能性は現状では低いと思われます。』

 

「律はそう思うの?」

 

『はい、不可能犯罪の標的は噂で悪人とされている人物がほとんどで世界全体が隠している殺せんせーは噂はあれど存在が公表されていない。また暗殺対象には悪人と呼ばれる人物であれど一貫性が見られません。そのため特定の依頼を受ける職業的暗殺者というより、独自の基準で標的を選定している可能性が高い以上、殺せんせーの暗殺を行う可能性は低いと判断しました。』

 

...確かに律の語る内容には納得はいく。

 

悪人と思われるものばかり狙う暗殺者。

 

以前、殺せんせーは不可能犯罪について語っていたが、僕たちにとって被害者が本当に悪人かどうか、反省するかどうかは分からない。

 

(「それらに問題がなかったとしても命を奪った本人に必ず傷を残します。」)

 

彼が快楽的に行っているのでなければその心にどれほど傷を受けているのだろう。

 

そしてもし僕らの前にその人物が現れたのなら...いったいどんな人物なのだろうか?

 

 

 

料理...ナイトレイドではアジトでの雑務は能力が低い僕が担当していたけど、炊事に関しては任務がない限りアカメが欠かさず担当していた記憶がある。

 

「あれ?乾君って料理が得意な感じ?」

 

「うん、僕は一人暮らしだから料理する機会は比較的多いよ。」

 

現在は沢木さんに誘われ、料理研究会の方に参加させてもらっているのだけど...

 

「くっ...」

 

僕の目の前には大根の皮を包丁でボロボロとむしり剥く氷川君がいた。

 

「ちょっと氷川君!皮むきでこんなに身が削れてたら...」

 

「...」

 

沢木さんの言葉は届かず、ただ黙々と取り組んでいる様子。

 

「氷川君...僕が皮剥くけ」

 

「乾さん、まだ終わってません。」

 

「いや、その調子で剥くと大根が無くなるけど...」

 

...その剥き方だとアカメに半殺しにされるくらい駄目なんだけど...

 

「大丈夫です。沢木さんに教わった通りにやっています。」

 

「いやいや氷川君できてないよ!」

 

うん、駄目だこりゃ...

 

もう半ば諦めて人参を手に取って包丁で剥いていく。

 

「おぉ...乾君って人参も包丁で剥くんだ...」

 

「え?」

 

あれ?別におかしいことはないはずなんだけど...

 

「やっぱり不器用な氷川君と違って凄いよ乾君!」

 

「う、うん...」

 

そんなことよりまた...

 

「貸してください、乾さん!」

 

「ちょ...」

 

手を止めていたとはいえ、いきなり人参を奪い取るとは...

 

「僕だってこのくらい...」

 

「ひ、氷川君!?」

 

プルプルと震わせながら人参に切れ込みをいれる。

 

もう見ていて不安でしかない...

 

「僕が人参の皮むきをやるから」

 

「痛っ!」

 

力を入れすぎたことにより勢い余って深く指をスライスしてしまう。

 

「なにやってるの!?急いで応急処置!」

 

各グループをめぐっていた顧問が慌てる。

 

もう...この流れ何回目なんだろう...

 

 

 

出来上がった煮込みと鮭大根を前に手を合わせる

 

「「「いただきます。」」」

 

氷川君の指には大きめの絆創膏が貼られている。

 

「氷川君、大根さえままならないのに人参に包丁で挑戦するなんて無茶しすぎだよ。」

 

「...」

 

正論を言われ、黙って口に放り込むことしかできない氷川君。

 

「何ですか皮なんて...こんなものピーラーで剥けばいい話だ...」

 

「いや、大根はともかく俺も人参はピーラーじゃないと無理だよ。」

 

ピーラー?

 

そういえば...髭剃りのブレードのようなものがついた道具があったから...それのこ

と!?

 

「あれ?乾君どうしたの?」

 

「...ご、ごめん...ぼーっとしちゃって。」

 

世の中の常識を学ぶ上で僕はまだまだのようだ。

 

「仕方ないよ、普段テニス部に行ってる氷川君がここに来ちゃってるからね。」

 

「沢木さん...それ、まるで僕が疫病神みたいじゃないですか!」

 

まーた始まってしまった...あれ?今のシーズンだとテニスの大会があったはずだけど...

 

「そういえば氷川君ってテニスの方は大丈夫なんですか?」

 

「え!?」

 

「確かに...テニス部の大会...」

 

沢木さんも気づいたのか首を傾げる。

 

「二人とも...どうしたんですか急に。」

 

...うーん、この反応を見ると...彼は隠しているかな?

 

「いや、氷川さん。あんなに熱心にテニスに励んでたじゃないですか?」

 

「...今日は...そう!みなさんとこうして話す時間を作りたくて休んだんですよ。」

箸が止まり一瞬動揺を見せたが、すぐに隠す。

 

「なーんだ、俺におちょくられるのが恋しくなったんだ。」

 

「違いますよ!」

 

二人の漫才が続く中、料理を食べていくうちに日は傾いていった。

 

 

乾凪さん...転入した初日の彼の姿は真っ白な髪に中性的な見た目からどこか浮世離れした雰囲気。

 

(「...なんか楽しそうですね。」)

 

テニス部に見学に来ていた彼の眼はどこか冷めていて、大会に励む運動部を舐めているように見えた僕は思わず強く当たってしまった。

 

(「す、すいません...」)

 

だけど、彼自身は沢木さんほど無神経ではなさそうだ。

 

その後、沢木さんと乾さんに対して二対一で試合をした時。

 

(「フィフティーオール!」)

 

(「フォーティーオール!」)

 

...沢木さんの煽りに乗せられた僕にも非があるが、それでもまるで接戦に見せようとするかのよう。

 

(「僕のサーブが打ち返せる実力があるのに君はわざと打ち返す回数を減らしましたね?」)

 

そう思わざるを得ない...僕の目には彼の振られるラケットがまさにそう語っていた。

 

(「それにしても乾君、テニスの経験とかあったの?」)

 

(「ん~...特に無いけど、観察力があるって言われてたから氷川君の打ってくるパターンがなんとなく分かったんだと思う。」)

 

...彼の言う通りなら、もうそれは才能か何かではないのだろうか?

 

それならますます全力で挑まない彼に腹が立ってくる。

 

また、友人との会話でも彼はどこか一歩引いた感じで聞き手に回ることがほとんど。

 

別に彼自身は笑ったり、冗談に付き合ったりなどコミュニケーションに関しては問題ない。

 

ただ...乾さん自身から話すことがないから僕は彼がよく分からなかった。

 

(「昔のことを思い出してしまって...」)

 

ただ京都の時に見た彼の涙をきっかけに人間らしさを感じた反面、彼に対して危うさを感じていた。

 

(「隠すも何も...氷川君、僕はちょっと体調が優れていないだけだよ?」)

 

だからこそ、自由行動で勝手に抜けた乾君はおそらく訳があったに違いない。

 

何も話そうとしないならこちらから...と思い、下校中の彼の背中を追っている。

 

(「そういえば氷川さんってテニスの方は大丈夫なんですか?」)

 

彼は勘が鋭いのでこうしてついていくにも気を使う必要がある。

 

...しかし、乾さんは家に帰る気配もなく、駅を通り過ぎる。

 

僕自身、彼の自宅について知らないが、それでも明らかに帰る気がないことが分かる。

 

人が賑わう繁華街に差し掛かった頃、乾さんは脇道へと曲がる。

 

もしかすれば立地的に家がそのあたりにあるかもしれない。

 

「あれ?乾さんは...」

 

脇道に入った直後、あの特徴的な白い髪の彼の後ろ姿が見られなかった。

 

 

 

『昨夜遅く、東京都内で四十八歳の...殺害されました。』

 

真っ暗な部屋で動画サイトのニュースを見る男。

 

『警察によると、昨夜...で男性が死亡しているのが発見され...』

 

傍にはギターケースの中にある何かが携帯の光を照り返す。

 

『死因は鋭利な刃物による刺殺ですが、現場周辺の防犯カメラには犯人らしき人物が確認されていません。』

 

(『まじかよ!また、不可能犯罪!?』)

 

(『ちょっと怖い...』)

 

(『カメラに写ってないのにどう捕まえるんだ?』)

 

ニュースの画面の下にネットの反応が次々と流れていく。

 

(『てことは今度の被害者も悪人か』)

 

(『ダークヒーローが世直しか!』)

 

(『ただの人殺しじゃん』)

 

「...殺しに正義とは実に滑稽なもんだ...そろそろ食事か。」

 

チャイムが鳴り響き、立ち上がった彼は高揚した様子。

 

「お待たせしました、お客様。」

 

部屋に入る従業員。

 

ルームサービスで食事を運んできた彼女は明かりをつけて、部屋の奥へと進む。

 

並べていく食事を横目に彼はギターケースを手に取る。

 

「準備が終わりましたお客様。」

 

「ありがとう。」

 

「食事が終わりましたらまたご連絡ください。」

 

並べ終わったため踵を返す従業員。

 

「あ、ごめんね。」

 

「なんでしょうか、お客様?」

 

男の静止に振り返る。

 

「食事と共に君もいただくよ。」

 

振り返った瞬間、彼女の首が崩れ落ちる。

 

彼の手には変わった形の両刃の斧。

 

「今回も綺麗に切れたな...だが、物足りない。」

 

ドサリと床に崩れた遺体に気にもとめず、席につく。

 

『一連の事件との関係と絡めて捜査を続けています。』

 

「...不可能犯罪、私のこの斧に匹敵するのだろうか...」

 

にやりと笑みを浮かべながら、ニュースを見ながら口に食事を運ぶ。

 

「ならば、試す他ないな。」

 

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