僕は探す!   作:T氏@pixiv

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18 正しさを探す

「坂上さん、真面目だねぇ...」

 

ただ散乱していたごみを集め、ゴミ箱に入れている。

 

そんな最中にクラスメイトの良く話をする子に声を掛けられた。

 

「...そんなことないが?」

 

確かに私自身、真面目な傾向があるが、それはあくまで相対的。

 

まわりが不真面目すぎるのだ。

 

「手伝ってくれたりしてありがたいけど、坂上さん自体何かやりたいことないの?」

 

「やりたいこと...」

 

「部活動とか、何か趣味とかさ。」

 

やりたいことと言われても私には思い浮かばない。

 

転校するまでは色々と遊んでいたが、もう私はあの頃に戻るつもりはない。

 

母が亡くなり、私と弟を一人で育ててくれた父にこれ以上裏切りはしたくないのだ。

 

「...特にないな。」

 

「ふーん、坂上さんリコーダーとか上手だから吹奏楽部とかは」

 

「確かに楽器は弾けるが、合宿や遠征も多いし弟や母のために私はあまり帰りを遅くした

くないんだ。」

 

6時まで残って練習していては、晩御飯の準備や洗濯物の回収ができない。

 

「せっかく学生という青春真っ只中なのに...あ、そうだ。」

 

「?」

 

「坂上さん、生徒会とかいいんじゃない?」

 

これがあくまできっかけ。

 

最初は別に生徒会なんてする気はなかった。

 

(『おい!お前ら使いすぎだろ!』)

 

(『こっちはもうすぐで公式試合なんだ!お前らも規定より長く独占してんじゃねぇ

ぞ!』)

 

運動部同士の体育館やグラウンドの取り合い。

 

(『おいこら!これでもう何回目の遅刻だ!?』)

 

(『はい...ふわぁ...』)

 

生徒の遅刻数。

 

(『トイレ、トイレ...ここ汚ねぇ場所じゃん...』)

 

学校設備の清掃の怠慢。

 

...私は学校のこういった問題を見てられなかった。

 

どうして皆解決しようと思わないか。

 

ずっと心の中でくすぶっていた私にとって生徒会に立候補したくなった。

 

「姉ちゃん、今日のご飯何?」

 

「ん?今日はから揚げだぞ。」

 

「から揚げ!?」

 

学童保育から帰ってきた弟に声を掛けられながら揚げ物を前にしてずっと考えを巡らせて

いた。

 

コトコトと油が奏でながら、喜ぶ弟をふと見る。

 

「太一、宿題を今のうちにやっておくんだぞ!」

 

「はぁーい。」

 

...だけど私には弟の面倒を見なきゃならない。

 

でも、私はどうしても学校の問題を解決したい。

 

「はぁ...」

 

「どうしたんだ、澄子?」

 

父が帰ってきて3人でご飯を食べている中、父が私に話しかけてくる。

 

「特に何もないよ、お父さん。」

 

「何もないって...お前、母さんを無くした後に相当堪えていたじゃないか?」

 

「それは...」

 

あの時を掘り返してくる父に思わず目線を反らす。

 

「....すまんな。ちょっと娘に対して言い過ぎたか。」

 

「そんなことはない...あの時は私はまさに不良少女だったしな。」

 

弟までも口に運んでいた箸が止まる。

 

私は空気を悪くしてしまったかな...

 

「別にお前のあれは悪くない...誰だって踏み外すことはあるし、私が寂しい思いをしているお前たちを見てやれなかったの問題なんだ。」

 

父は優しすぎる...あの時もこうやって私を叱らず、自分を責めていた。

 

「だからこそ、こうやって澄子や太一と一緒にご飯を食べてお前たちの話を聞きたいんだ。」

 

私が変わったように、父もできるだけ早く帰るようになったのも私や弟のためだった。

 

「...私、生徒会に入りたいんだ。」

 

「生徒会、いいじゃないか。」

 

「でも、こうして家事をやったり、太一の面倒を見れなくなる...」

 

父は俯く私に優しい表情を見せながら、弟の方を見る。

 

「太一、お姉ちゃんの帰りが遅くなっても家事ぐらいできるよな?」

 

「うん!平気だよ...それにお姉ちゃん、ずっとやりたかったんでしょ?」

 

無垢な弟の様子に思わず、表情が柔らかくなった気がする。

 

「それに姉ちゃんいない間にゲームできるしね。」

 

「あ,駄目だぞ太一。」

 

「えぇ~、家事はちゃんとするしさぁ。」

 

こうして弟がふざけてるのも私を元気づけているんだな。

 

「太一もこれから頑張るようだし、生徒会へ行ってこい、澄子。」

 

「...うん。」

 

 

 

「はい、じゃあ今日の範囲はここまで。」

 

「「「ありがとうございました。」」」

 

世間の騒ぎが治まったその翌日の昼休み。

 

「ねぇ、坂上さん?」

 

「一緒に食べない?」

 

広げていた教材を片付ける最中、クラスメイト数人に話しかけられる。

 

「ごめん、生徒会の応募用紙を取りに行くから先に食べてくれないか?」

 

「生徒会って...坂上さん、選挙するの!?」

 

「えぇ~!すごい!」

 

周りは私の選挙の話題に弾む。

 

「やっぱり私の提案で?」

 

「まぁ...別に最初は乗り気じゃなかったんだが...この学校を少しでも良くしたいと思ってな。」

 

「な、なんかすごい真面目だね。」

 

真面目...真面目ではあるか。

 

...昼休みは別に対して長くはない。

 

早く行かねば。

 

「とにかく先に食べてほしい。」

 

「分かった。」

 

「言ってらっしゃい。」

 

教室を後にする。

 

「ほう、坂上さんが生徒会選挙に参加するならこちらとしても心強いねぇ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「真面目な君に期待しているよ。」

 

「失礼しました。」

 

その後、無事に職員室で応募用紙を受け取った。

 

私が生徒会に入るには皆の支持を集めなければならない。

 

私自身、クラスメイトと馴染むことはあれど人気者ではないため選挙は不安だった。

 

「頑張らないとな...」

 

父や弟が認めてくれたんだ...絶対に

 

「あははは」

 

「ばっかじゃないの?」

 

微かに聞こえる不愉快な笑い声。

 

いったいなにが...

 

「あんたさぁ、勉強どころか何もできないのに余計な仕事増やすよね。」

 

「自分が邪魔だってこと分かってないの?」

 

声を辿っていくと、屋上に繋がる階段あたりだろうか。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい...」

 

「謝るより学校来ない方がこちらとして」

 

「おい待て!」

 

一部同じクラスの人も含まれているが、おそらく別グループの集まり。

 

彼女らが囲っていたのは一人の女子生徒。

 

「ねぇ、あいつ誰?」

 

「私と同じクラスの坂上、馬鹿真面目な奴が来たよ。」

 

「よく掃除や手伝いやってるいい子ちゃんごっこの子?」

 

私の方を向き、コソコソと話すグループ。

 

...不快だ。

 

「...」

 

囲われていた女子生徒の髪は何かの液体で汚れている。

 

グループの何人かが紙パックを片手に持っているけど...まさか!?

 

「たった一人に寄ってたかって何をしているんだ!」

 

「!?」

 

私はグループを押しのけて膝を崩す彼女に駆け寄った。

 

「大丈夫か?」

 

「止めて...もう...」

 

助けに来た私にはんのうすることもなく、うずくまる。

 

こいつらどれだけ人を!

 

「あら、こちらを睨んで何かしら?」

 

「...あなたたちはこの子に何をしたんだ?」

 

「何って...私らがただその子を囲んだだけ。」

 

明らかにバレるような嘘を...

 

「...この子に飲み物をぶっかけているだろう?明らかにこの子の服の汚れは」

 

「勝手に泣きじゃくりながら自分で汚しただけよ。」

 

「まったくおつむが足りないこと。」

 

...認めるはずもないか。

 

こんな外道よりこの子は。

 

「うぅ...ごめんなさい。」

 

「お前は悪くない。」

 

恐怖か分からないが、動けなさそうだ。

 

...とにかく、この囲われている状況をどうにか...

 

「へ?」

 

「ちょっと!?」

 

いじめられている子を立ち上がらせ、囲いの薄いところに彼女を突き飛ばして、輪から出す。

 

「早く走れ!!」

 

「は、はい!?」

 

荒っぽいことをしたが...こうでもしないと彼女を逃がせなかっただろう。

 

走っていく彼女の背中を見ながら、この囲っている女子たちに視線を移す。

 

「早く追いかけた方が...」

 

「大丈夫、あいつは今逃げても立ち向かう勇気なんてないからさ。」

 

逃げていく彼女から私のほうへグループの注目が集まる。

 

思わず飛び込んでしまったが...手に汗が出るほどこの逃げ場のない包囲網に緊張を解く

ことができない。

 

「逃げたあの子よりは随分と度胸があるみたいね。」

 

「...私は急いでる。」

 

輪から出ようとするも、彼女たちは退く気がない。

 

「まぁまぁ...少し話ぐらい付き合ってよ。」

 

「私はまだ昼食をとっていない...後で話は」

 

「坂上さん?見て見ぬふりで良かったんじゃないの?」

 

囲っていた内の同じクラスの女子が口を開く。

 

「...私には耐えられなかっただけだ。」

 

「へぇ~、すごい正義感。」

 

「でも、なんだろう~...なぁんかむかつくんだよね。」

 

いったいなにがしたいんだ?

 

一向に彼女たちの話が見えてこない。

 

「とにかく、何もないなら帰ら」

 

「ねぇ、あんた見た目が良いからって調子乗ってない?」

 

見た目がいい?私が調子に乗ってる?

 

「そんなこと...一度も思ったことはないぞ。」

 

「それにさぁ...優等生様だからってこちらに綺麗ごと押し付けられても困るのよ。」

 

綺麗ごと...いじめなんてそれ以前の話だ。

 

「あなた方はいじめをして心が痛まないのか!」

 

「えぇ?さっき逃げたやつはクラスの足を引っ張るし馬鹿、みんなに嫌われているの

よ。」

 

「嫌っているからってそれは」

 

「ねぇ?変な正義感を出すのもそういうことじゃない?」

 

変な正義感?私はただ助けたかっただけだ。

 

「1回痛い目に遭わせた方がいいんじゃない?」

 

「お、いいんじゃない?...うち、ずっとうっとおしいかったんだよね。」

 

囲む彼女たちは私との距離をぐいぐい詰める。

 

「な、何をする気なんだ?」

 

「それは...そうね。」

 

仲間どうしてアイコンタクトを取りながらニヤニヤとする彼女らに背筋がぞっとする。

私は...何かされる!?

 

「とりあえず、ごめんなさいと言っておくわ.」

 

え?

 

「選挙...頑張ってくださいね、坂上さん。」

 

特に何もすることなく去っていく彼女たち。

 

でも、先ほどの彼女のセリフはどこか不穏な予感がしてならない。

 

「そうい...あいつ...していたっけ?」

 

「そうそう...いかにも...」

 

「.....その.....てわけね。」

 

小声で何かこそこそと話し合う彼女たちの背中。

 

何をしてくるのかまったく分からない。

 

「...怖いな。」

 

...いじめられた彼女もこうした積み重ねで精神をすり減らされたのだろうか。

 

不安を抱きながら私は教室へと戻っていった。

 

 

 

(『...あなたはまだ言えないことがあると思うけど、少しずつでいいからあなたのことを知りたい。』)

 

たった2度助けられただけで僕を知りたがるものかな...

 

昨日、すれ違う瞬間に声を掛け、僕を逃がそうとしなかった神崎さんを思い浮かべる。

 

(『...離しません。』)

 

彼女に掴まれた腕を見る。

 

腕を掴むというあまりにも大胆な行動に驚き、彼女の意志の強さで結局友達になってしまった。

 

クラスメイトはともかく、全然違う学校の女子...なんか変な感じだ。

 

(『こちらこそよろしくね、乾君。』)

...あの時の彼女の笑顔に思わず見とれてしまった。

 

結構綺麗な人だからラバックなら鼻の下を伸ばしていただろうな...

 

「乾君?」

 

呼ばれてふと意識をそちらに向けると沢木君が声を掛けていたようだ。

 

「どうしたの?沢木さん。」

 

「どうしたも何も乾君、毛が抜けてるからさ。」

 

ん?毛?

 

思わず僕は頭部を触るが、特に問題はない。

 

「まーた、誤解を生むギャグ言って...もうちょっと上手いネタ考えないと涼君!」

 

「えー!?これそんなに下手?」

 

沢木君の横から小沢さんが入ってくる。

 

「唐突に毛が抜けてるって言われたら、皆驚いちゃうよ。」

 

「うーん...『気が抜けている』と『毛が抜けてる』はいい感じだと思ったんだけどなぁ...」

 

「あっはは...」

 

沢木君の相変わらずの様子に苦笑するも、安心感があった。

 

いつもの日常...そういえば、事件後に入院している氷川君はどうしているのだろうか。

 

「そういえば氷川君の様子は何か聞いてる?」

 

「ん?氷川君なら今日目覚めたみたいだけど...」

 

彼は起きたのなら...お見舞いに行くべきだろう。

 

「検査やら警察の聞き込みで見舞いはできないって。」

 

...さすがに事件の目撃者として警察が来ているのも当然だろう。

 

(『あなたは...いったい...』)

 

ボロボロな様子だったけど、近くに子供がいたから守るために立ち向かっていたのかもしれない。

 

そう思うと...氷川君は帝具使いに対してよく生きて立ち向かった。

 

とにかく...彼が暇なときに来てあげるほうがいいかもしれない。

 

「...氷川君も乾君もお互い相思相愛だなぁ。」

 

「え?」

 

いきなり何を言ってるのかな?

 

沢木君は僕の怪訝な顔を見ても特に反応もなく続ける。

 

「今朝、氷川君と電話した時も乾君の安否を聞いていたからさ。そして、乾君も氷川君の

様子を心配すると...これって相思相愛じゃない?」

 

「お互い心配していたということになるけど...相思相愛とは違うよ、沢木さん。」

 

「えぇ~...互いに思い合ってるってことは相思相愛じゃない。」

 

...ちょっとしつこい。

 

「涼君、乾君をあまり困らせちゃ駄目でしょ!」

 

「いやだって...」

 

また夫婦漫才のようなものが始まった。

 

まぁ、でも...こういった日常が戻ってきたことにどこかほっとした気分だ。

 

 

 

(『...葬った。』)

 

(僕の目の前に現れて突然現れた黒髪の少女...)

 

「それで...氷川君は男の凶器である斧を持ち出した人物を見ていない、ということか

い?」

 

「はい...でも、おそらく男を殺した黒髪の少女が持ち出したと思います。」

 

現在、氷川は病室で目覚めて警察の事情聴取を受けていた。

 

「うーん...あの多くを殺した外国人をただの少女が殺せるとは思えないんだがなぁ。」

 

「あの少女は刀で男に何回か斬って、しばらくした後に倒れたので毒で殺したんだと思っ

たんですが...」

 

ベットの傍で刑事は首を傾げる。

 

「本来は言ってはいけないんだが...男の死因は心停止で、毒物が検知されなかったんだ。」

 

「...それって不可能なんですか?」

 

「...未知の毒物や何かしらのトリックで検出されないようにしているかもしれんが、現状は不可能だな。」

 

「そうですか...」

 

あの夜の出来事を思い浮かべる。

 

(肩に傷を負っているとはいえ、あんな風に殺害してしまうなんて...)

 

少女と男の戦闘がこびりつく氷川。

 

男の背後の闇から刃の軌道が現れるところが特にそうだった。

 

(まるで...暗殺者としか思えない。)

 

色々思い返す中であの闇からの斬撃が一番最初の攻撃。

 

謎の毒によるものと考えれば、勝敗は決まったも同然だと悟る。

 

「それにしても君、よく大量殺人鬼に立ち向かったもんだなぁ。」

 

「いえいえ...あれは小さい子がいたからで、誰も生きてる人がいなかったら黙って逃げ

てますよ。」

 

「それでも凄いけどなぁ...」

 

「そういえば、あの子は今...」

 

母を殺された子供を慮った氷川は気になって刑事に質問する。

 

「...今は完全に眠ってしまってるな。私たち警察が聞きこむ前は別段問題はなかったんだが、フラッシュバックを起こしてしまってな。」

 

「そうですか...」

 

拳を握り、遠くを見る氷川。

 

「君は気にすることはない...もともと我々警察でも鎮圧できない化け物から君は守り

切った。それだけで英雄さ。」

 

責任感の強い彼は刑事の言葉に引っかかるも、言語化できない不満を口に出そうにも出せなかった。

 

(僕はただの一般人で、英雄なんかじゃない。)

 

日が差し込む窓を見る。

 

梅雨が明けて、夏を伝えたがっているのか晴天が目に飛び込む。

 

(『氷川君、乾君は学校に来ていたよ。』)

 

欠席していた乾が登校していたことを沢木から伝えられていた。

 

(とりあえず、乾君は無事でよかったと思うしかないですね...)

 

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